カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい   作:黒点大くん

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 レイナさんは先輩方に可愛がられていますね。

「これも私がわざと嫌われ、レイナさんに苦労人ポジションを位置づけたおかげですね」

「恩着せがましい言い方だなぁ」

 肩に手を置かれました。

 

 この声は聞き覚えがありますね。

「一人だけお見舞いに来なかったオットー先輩じゃないですか。お久しぶりですね」

「色々忙しかったから仕方がない。決して忘れていたわけじゃないよ」

 これは忘れていましたね。先輩は比較的情に厚いが世間的には薄情です。

 

 まぁいい事ですね。

「ところでオットー先輩は何の用があって私を訪ねたのでしょうか。もしかしてテスト範囲で分からないことがあるとか……」

「実は行方不明だったあの人を見かけたんだ。実は最近人探しと勉強で忙しくてね」

「あの人ってどなたです?」

「あそこで可愛がられている子に嫌がらせしたお嬢様」

 あの人ですか。名前を覚えていないとピンと来なくて辛いですね。

 

 オットー先輩に真実を言うと傷つくだろうから言いたくないのですが、あの人全てを奪われているんでオットー先輩が見たのは別人なんですよね。

「なんか全てを知っていると言いたげな顔をしているね」

「先輩が見たお嬢様が実は偽物でそのお嬢様を実質殺害した犯人だというところまで知っています」

「噓だよね。事実だったら軽い調子で言い過ぎなんだけど。そういうことばかり言うから嫌われるんだよ」

「冗談に決まっているじゃないですか。すみませんね酷いジョークを言ってしまってすみませんね」

 たとえ嘘でもそういう情報を事前に入れて予め耐性を付けておきます。

 

 モブに厳しめですよねこの世界。

「という訳で今日ちょうど授業が終わっているわけだし、探しに行こうよ」

「門限までに終わるなんて舐めた考えです。でもまあ面白そうですね。やりましょう」

 さっそく行くことにしました。

 

 オットー先輩が見かけた所を探してみることにしました。

「お久しぶりですわ」

「あっさり再会です。出来れば会わずに門限ギリギリまで粘りたかったですね。面倒な事になりました」

「あっ酷い。お見舞いに行かなかったこと根に持ってる」

 事情を知らなかったら薄情な発言でしたね。反省です。

 

 オットー先輩が取り巻きをしていた人の隣には案の定イツがいました。

「聞いてなかったのか一縷の望みの賭けているのか分かりませんが、あの人はもはや貴女の知っている人ではないです」

「何を言っているんだ」

「説明する手間が省けたよ。悔しいことに長い付き合いなんだからな」

 アブゾーブは次々と姿を変形させてスレンダーな姿になりました。

 

 オットー先輩はがくがく震えながら縋るようにデッキケースに触ります。なんとなく本能で真実と自らの死を察したんでしょうね。

「何がジョークだよ。とんだ正直者じゃん」

「あの時はジョークのつもりだったんですよ……」

 恐怖とそれを多い包み隠せるような凄まじく鋭い殺気……どうやら今回私の出る幕ではないですね。

 

 アブゾーブは私を睨み続けています。

「なんだただのザコか。ボクはお前のような人間に興味はない。見逃してやるからとっとと帰れ」

「私や貴女に興味がなくとも私の先輩にはあるんですよね」

「そう言うことならお前はいらないな」

 ニンゲンという見下していることが透けて見える言い方から一転油断もなくなっていますね。これはなにかあり……

 

 咄嗟に心臓を左肘で庇いました。

「クロスボウですか。運よく心臓を狙ってくださったので助かりました。あの鉄串四本束ねて一本にしたような矢で頭を狙われたらのっぺらぼうでしたね」

「さりげなくナナメで受けてちょっとダメージも減ってる。やっぱ暗殺されそうな立場となるとそういうのも慣れるのか」

 ヘルズの力もなければ左腕……下手すれば肩も砕けていましたね。

 

 矢を抜きました。

「しかし左腕に深く刺さってはいる。毒が塗ってあった時のことを考えないなんて頭が悪いね。カードで弾かないなんてらしくない」

「こんなやたら重い矢をカードで弾けるわけないじゃないですか。それに毒だとしてもこの血液の量なら毒ごと出ているので問題ありません」

 マッハドローで傷口を塞ぎつつイツの顔に血をかけて目潰しします。

 

 アブゾーブは襲い掛かってきました。

「よくも呪眼を潰したな。テメーはボクの人生における害虫みたいな存在らしい。殺しておかないと駄目みたいだなぁ」

「貴女を抹殺したいのは私とて同じです。でも貴女無駄にしぶといから抹殺できないんですよ」

 アブゾーブの右肩をマッハパンチで抉ってからイツを気絶させます。

 

 オットー先輩の機嫌が分かりやすく悪くなっていますね。敵は私に打たせてくれと言うことですね。配慮が足りていませんでした。

「大丈夫ですよ。彼女はああ見えて殺し方が分からないくらいには再生力ありますから。カードで倒して悔しがらせて退散させるぐらいしかやり方がないんです」

「抉った右肩がもう治ってるもんね。つまり殺せたら凄いってこと」

 アブゾーブは生贄食ってて不老不死らしいですし、水底に永遠に沈めないと処理できないと思われます。

 

 となると相応しいのはここではなく島公園でしょうか。

「敵討ちも良いでしょうが、こんなところではなくて島公園みたいな綺麗なところでやった方が浮かばれますよ」

「ボクが島公園とやらに行く意味がないよね」

 イツからくすねた数本の鉄串の矢を見せました。

 

 これならば充分な重りになりますから、手足に刺せば浮くことも出来ないでしょう。

「分かりました。貴女がオットー先輩に勝ったら島公園の水底に沈んでやりますよ。私が死ねば貴女はハッピーですよね。なにせ目の上のたんこぶが勝手に消えてくれるのですから」

「ナメた言い方しやがって。お前ごとき殺せないボクだと思っているのか」

 あからさまに喜んでいますがまだ乗り気に見えませんね。

 

 ……これならいけますね。

「それとも貴女はただの人間にすら勝てないと吹聴するつもりなのでしょうか。それじゃ兄弟姉妹に笑われてしまいますね」

「あえて挑発に乗ってあげるね」

「私よりも頭の弱いやつ。こんなのにあの人は……」

 オットー先輩には死体処理の効率などを教えて島公園が非常に効率がいいと言う方便で説得しました。

 

 島公園の関係者以外立ち入り禁止エリアに入ります。

「悪い奴だな」

「良いんですよ。お父様のコネのおかげで一応関係者ですから。不法侵入をするような人物と思われていたことに驚きですね」

 一応育ちは良いということを忘れられつつありますね。

 

 オットー先輩とアブゾーブの決闘が始まりました。

「ボクとしてはこんな毒にも薬にもならないのと戦いたくないんだけど」

「毒そのものにそんなこと言われてもね。お前が殺して変装した人にはそれなりに世話になってたのに……」

 言葉自体は柔らかいのに発音にトゲトゲしいものを感じます。

 

 そうこうしてオットー先輩の5ターン目です。

「ドロー。チャージ。青邏ナドリスでプレイヤーに攻撃してコスト4で雷魚召喚。ナドリスの効果で1枚ドローしてターンエンド」

「雷魚……不快なカードだ」

 アブゾーブのスタイルを伝えていないのに対策できていますね。

 

 3 モンスター 雷魚 属性:フィッシュ、マーフォーク

   効果:効果でダメージを受ける代わりに1枚ドローしてもよい

   攻撃力:0 防御力:0 ライフ:2

 

 アブゾーブの6ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト4でリフレクトアーマー発動。雷魚を対象に取る。そしてスライジュエリーで雷魚に攻撃」

「魔法の壁にぶつかって破壊された……一体何がしたかったんだ」

「まずい、とても危険です」

 雷魚の中にスライジュエリーが入り込んで操りました。

 

 オットー先輩は少し悩んでいますね。

「コントロール奪取か。でもわざわざバーンメタのコントロールを奪ったということはバーンも使うってことか」

「ごちゃごちゃ考えたところでどうせ負けるんだから、考えるだけ無駄だ。洗脳諜報発動。洗脳諜報を魔法の教科書で回収してターンエンド」

 アブゾーブは順調です。

 

 オットー先輩の7ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト3でナドリスを召喚して二体のナドリスでプレイヤーに攻撃。そしてコスト4でハンティングマーメイド召喚。2枚ドローしてハンティングマーメイドでプレイヤーに攻撃。1枚ドローしてターンエンド」

「それだけやって手札五枚か。しょっぱいなぁ」

 

 アブゾーブ:生命力10→8

 

 アブゾーブの7ターン目です。

「ドロー。チャージ。魔法の教科書で洗脳諜報を回収してそのまま発動。コスト5で魔法の雷発動。3ダメージターンエンド」

「たかが3ダメージか」

 アブゾーブにしては少し調子が悪いですね。これがなにか悪い事の予兆でなければよいのですが……

 

 オットー先輩の8ターン目です。

「ドロー。チャージ。二体のナドリスで攻撃。そしてコスト8でマレンティの審神者召喚。2枚ドローしてマレンティの審神者の効果発動。効果によってドローした時デッキから属性:海竜のモンスターを2枚まで手札に加えて自分の手札の枚数以下の属性:海竜のモンスターを場に出す。オルトシナウズを2枚手札に加えて手札が7枚以上だからコスト7のオルトシナウズ召喚。二回効果を発動するからオルトシナウズ二体召喚。ターンエンド」

「強力な上に操っても意味がないカード……ボクそういうカード嫌いだな」

 オットー先輩の手札から強力なモンスターが飛び出します。

 

 アブゾーブの8ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト4でスライジュエリーモルガナイト召喚。スライジュエリー復活。コスト4でマッドクロック召喚。スライジュエリーを攻撃済み状態にしてオルトシナウズ一体を次のターン攻撃可能状態に出来なくする」

「ちょっとだけ面倒だなぁ」

「魔法の教科書で魔法の雷を手札に加えてターンエンド」

 上手い使い方ですね。これで生き残りやすくなりました。

 

 オットー先輩の9ターン目です。

「ドロー。チャージ。ハンティングマーメイドでスライジュエリーに攻撃。ハンティングマーメイドは操られるけどグリッピアとシャスタザウラーを手札に加えてオルトシナウズ召喚。オルトシナウズでプレイヤーに攻撃。これで残り生命力は4、コスト6でグリッピアを召喚して攻撃、これでトドメ!」

 イルカのような竜がアブゾーブの生命力を削り取り、見事勝利した……

 

 はずでした。

「アクションストライク。裏切りへの怒り」

 グリッピアは雷魚に噛みついていました。

 

 3 魔法 裏切りへの怒り 属性:魔導書

   効果:元々のコントローラーが相手のモンスターが自分の場にあるならこのカードはアクションストライクを得る

      1度だけ自分が受けるダメージは代わりに元々のコントローラーが相手のモンスターである自分のモンスター1体が受ける

 

「ターン……エンド」

「残念だったね。ボクを殺せなかったわけだ。この決闘ボクの勝ちだよ」

「ハッタリを……俄然有利なのは私の方なんだけど」

 ここから逆転できるプランがあるんですかね。

 

 アブゾーブの9ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト3でスライジュエリー召喚。マッドクロックの効果によりスライジュエリーを攻撃済状態にし、オルトシナウズの行動を封印。コスト5で魔法の雷、ハンティングマーメイドでプレイヤーに攻撃」

「アクションストライク。ドローガード」

「墓地の裏切りへの怒りを手札に加えてターンエンド」

「たかが2回攻撃を無効化出来るだけじゃない」

 強がってはいますが焦りを感じていますね。

 

 オットー:生命力7→4

 

 オットー先輩の10ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト6でカイリュウブラスター武装。手札のグリッピアとシャスタザウラーを捨ててスライジュエリー破壊。オルトシナウズでプレイヤーに攻撃」

「身代わりの怒り、その攻撃はハンティングマーメイドが受ける」

 無駄なあがきですね。

 

 グリッピアはアブゾーブの生命力を0にして体を弾き飛ばしました。一瞬すさまじい闘気を出しましたね。

「湖に沈んだ……これでアイツも死んだだろう」

「ダメですよ徹底的にやらないと」

 浮かびそうになっているアブゾーブに矢を突き刺して浮かばなくなるようにしました。

 

 湖の掃除をされない限り100年は浮かばない……私が生きている間は邪魔になりませんね。

「でも敵討ちってのは気分が悪いね。それに気の所為だったけど死ぬかと思ったし勝ててなかったらふたりとも無事じゃなかった」

「そうですね」

 オットー先輩は怒りとアドレナリンで麻痺していた恐怖を体感しているように見えます。そこのところすっぽ抜けてるから私はイカれているんですねぇ。

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