カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい 作:黒点大くん
どうしたものですかね。
「拠点は絶えず動いているから脱出は難しいですね」
「呪いによりレールを敷かずとも動き続ける列車の拠点を作り出したのだぞ。さすがガリオン様だぞ」
「そんなこと出来るんならまともに働いたほうが良いのでは」
そんなこと出来るの一部のエリートぐらいなんですよね。
猫耳をつけた人にデコピンされました。
「ガリオン様はお前らみたいな息するだけで生きてるようなのとは違うんだにゃ」
「あまりモノを知らないくせにいっちょ前に賢いと思い込んでそうですよね」
私は人質なんで命の危険はないです。安全地帯から煽らせてもらいましょうね。
列車が止まりました。ヘルズの力で手を守護するのと同時に硬くします。
「皆様この隙に逃げてください」
「強引なやり方だにゃ。でもそういうの嫌いじゃないにゃ」
「そうか。俺はお前らのこと大嫌いだぜ」
マッハパンチで壁に小さな穴を開けまして、穴を無理やり広げてこじ開けました。
何故いきなり止まったのでしょうか。
「侵入者め、いつの間に入ってきたんだ!?」
「お嬢様 お久しぶりですね。連れてきましたよ。用があるみたいなのでデカブツの操作権を一時的に奪わせてもらいました」
「メイドさんもうちょい優しく運んで~ あうっ」
レイナさんがメイドさんに担がれながら入ってきました。
床からアンドリューと縛られているガリオンが出てきます。
「操縦席のレバー弄りまくってたらなんとかなった」
「自動操縦にしておくんだったぜ」
レイナさんはガリオンにビビっています。心が折れたままの人を連れてくるなんて何を考えているんですかね。
レイナさんの震える腕をがっしり掴みます。
「相手を必要以上に小さく見たり大きく見たりするのは恐怖の元ですよ。あれは逮捕されている盗賊を神のようにあがめていて、大したことがないんです。マインドですマインド」
「マインドってなんですか。そんな気楽に考えないでくださいよ」
「そうですか。その割に顔は緩んでますけどね。まあ気楽になったなら良かったです」
自分でも何を言っているのか理解できませんが、レイナさんには是非ガリオンを何とかしてほしいので細かいこと考えないように言いくるめましょう。
アンドリューは何かを察したようにガリオンを解放しました。気が効く人ですね。
「情けをかけるとはな。せっかく拘束したのに開放するなんざバカだ」
「……俺の幼馴染の心の澱を消すために開放しただけだ」
「女のために欲を張ったってことか。長生きしないぜお前」
それでも18歳で死ぬ私より長いでしょうけど。
私は大柄のビッグを何とかしますか。
「そこのお魚臭い侵入者はこの魔猫 クラムラの餌食になるにゃ」
「俺のユナイツカード見抜かれてら。正直ぎょっとしたよ」
メイドさんは多くの構成員を圧倒的な身体能力でシメています。
私は大柄のビッグを追い詰めました。
「残り生命力は1で追い詰めたように見えますが、前回はこの状況で負けましたからね」
「よく覚えていて偉いぞ」
「おちょくってますね。こんな時にバーンがあれば嬉しいのですが」
私は手札の藁人形の呪術を見せつけます。
大柄のビッグの顔は絶望に染まりました。
「妖刀ムラマサでブッタ斬ります」
「ぐああああ」
「へっあまり大したことなかったですね」
「残り生命力1になっておいて何を言っているんだ。強がりは良くないぞ」
本当はボロボロだけど虚勢を張るしかないんですね。
大柄のビッグ:生命力1→0
危なかったですね。おっアンドリューの決闘も終わったみたいです。
「なかなかやるにゃ。負けてしまったにゃ」
「危なかった。最初に手加減されてなかったら負けてた」
「イヤミなやつだにゃ。私は最初から最後まで全力だったにゃ」
あとはレイナさんですね。
ガリオンの5ターン目です。
「ドロー。チャージ。変化獣遁 ナンナンジャの効果発動。絡繰忍者に変化する。コスト4で忍法 クローン・ジツ発動。絡繰忍者を選んで2枚まで手札に加える。ターンエンド」
「マジカルワールドでも使えるやつですね」
効果的には入れても意味ないので使えませんが。
2 モンスター 変化獣遁 ナンナンジャ 属性:ニンジャ 使い魔
効果:1ターンに1度発動できる。ターン終了時まで好きなモンスターの名前を得る
攻撃力:1 防御力:2 ライフ:1
4 魔法 忍法 クローン・ジツ 属性:ニンジャ 魔導書
効果:自分の場の攻撃力2以下の属性:ニンジャを持つモンスターを選ぶ
選んだモンスターと同じ名前のモンスターをデッキから2枚まで手札に加える
レイナさんの5ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト4でプロメテウス・プログラム召喚。そしてコスト1で翼の使徒を召喚してプレイヤーに攻撃してターンエンド」
「前みたいに取り返しがつかずに負けてしまうかもしれないんだぜ、そんなちまちま生命力を削っていいのか?」
「前みたいな感じならまだ大丈夫。生命力を1削っただけで逆転されることはない」
生命力がギリギリになって逆転する性癖がある以上この場合チマチマ削ることが正解なんですよね。
ガリオンの6ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト2でクノイチ、コスト4で絡繰忍者召喚。絡繰忍者でプレイヤーに攻撃してターンエンド。これで次のターン勝ちかな」
「ハッタリでもなさそうですね。分身の術が二枚あればギリギリいけるかもしれませんから」
「こんな時に相手の手札を捨てることが出来たらなぁ」
『プライムディスティニー』って他のカードゲームにありがちなハンデスが1枚しかないんですよね。
レイナさんの6ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト4で伝説の剣召喚。伝説の剣でプレイヤーに攻撃。そしてコスト3でプリンシパリティズを召喚してターンエンド」
「順調ですね」
「でもここからが怖いんだ。これはガリオン様のいつもの勝ちパターンだぞ」
確かにそうですね。気が抜けません。
ガリオン:生命力9→4
ガリオンの7ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト4で絡繰忍者を召喚。さらにコスト2で絡繰忍者に分身の術を発動。絡繰忍者でプレイヤーに攻撃、これでトドメだ」
「アクションストライク。ハイロゥ」
「トドメを刺せなくなったのは残念だが、このデカブツは絡繰忍者共で攻め立てれば倒せるな。1ターン生き永らえるためにそこまでするなんて惨めだ」
絡繰忍者の3回目の攻撃をプリンシパリティズが肉壁になることで防ぎました。
レイナさんの7ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト8でセラフ召喚。セラフでプレイヤーに攻撃。これでトドメ」
「アクションストライク。忍魔法 ミラージュ。クノイチを破壊する」
4 魔法 忍魔法 ミラージュ 属性:ニンジャ 魔導書
効果:アクションストライク。自分の場の攻撃力2以下のモンスターを破壊する
その後攻撃を無効化して1枚ドローする
「うまい具合に避けた……なんて思わないでね」
「このシチュエーション なぁんか見覚えがありますねぇ」
「そういうこと。スペルコンディション、百王の生誕。忍魔法 ミラージュを無効化する」
セラフの火がガリオンを焼きました。
ガリオンは力なく倒れます。
「もう俺にはどうすることもできない……がやることはある」
ガリオンは懐から爆弾を取り出します。そしてそのまま私に爆弾が投げつけられました。咄嗟にヘルズの力で防ごうとしましたが、衝撃を防ぎきれず意識が切れそうになるのを感じました。
数日後 私は喪失感と人生にまとわりついていた憑き物がとれた高揚感を味わっていましたわ。
「それにしても今日も紅茶が美味しいですわ」
「美味い紅茶は不味い珈琲よりマズいって言いそうな性格してるくせに」
「私そこまで酷い性格ではありませんの」
列車事故以降8歳以降の記憶がかなりあやふやなので、以前はそんなだったのかもしれませんわ。
それにしても私に馴れ馴れしく話しかけている人は誰なんでしょう。
「ところで貴女の名前をうかがっても……」
「オットー・シゴだけど。君にはよく勉強を教えていたよ」
「私によく勉強を教わっていたシゴ先輩ですね。よろしくお願いいたします」
「ちゃんと覚えているのね」
シゴ先輩は何か違うなあという顔をしていますわ。
記憶がうすぼんやりする前の私について調べれば調べるうちによく分からなくなっていますわ。
「一人の人間がやったこととは思えませんわね。中途半端な記憶によると自分のことしか考えず計画性皆無人間のクズなのは間違いなさそうですけどよくわかりませんわ」
記憶が戻らない方がいいのはそうなんですけど、それはそれとして悪行の責任として知らなければならないのは確かなのです。
図書室で新聞を調べていますと誰かいましたわ。
「あ……こんにちは。ソウコお嬢様また会いましたね」
「またと言われましても初対面……いやどこかでお会いした……顔と名前が一致していないという感じですわね」
「名前覚えているならいいや。私はレイナ 再びよろしくお願い致します」
「貴女がレイナさん、顔と名前が一致しましたね」
私なんかと友人だった見る目のない人ですわね。おっと、半端に残っていたせいで性格の悪さが影響されましたわ。
レイナさんは私の手を握りました。
「単位が足りなくなってテストをすることになったら、また私に相談してほしいです」
「もうそんな惨めなことはないと誓いますわ。というか前の私は頭良いのにバカですわね」
「そうですね。それに皆に悪者扱いされていたし、自分のことを悪し様に言い過ぎな節もありました。でも間違いなく私にとっては恩人でしたよ」
そりゃあ面と向かって文句は言えませんわ。なにせ学費全額負担していますので。
寮の部屋に忘れ物をしていたことを思い出し、取りに行きましたわ。
「こうして会うのも久しぶり、今の君は毒気が無くて素敵だね」
「貴女も美男子顔ですわね。しかし私は王子様一筋ですので……その、残念ですわね」
「ありがたいことになんか消えそうな雰囲気するね」
何を考えているんでしょうねこの人。私には理解できませんわ。
図書室から出ると愛しの王子様がいましたわ。
「王子様、何故ここにいらっしゃるのですか? いや別に会いたくなかったとかではなく、その」
「ソウコ嬢に一目会いたかったから……ですかね。色々忙しくて会いに行けなくてすみませんでした」
「私はこうして会いに来てくれただけで嬉しいのですわ。私としましては女性の方から殿方に会いに行くのははしたないと思っていまして……なかなか会えなくて」
久しぶりですわね。嬉しくてあまり言葉が出ませんわね。
トゥスル王子様は私をじっくり見つめてきましたわ。これが人生で最高の瞬間だと思いますわね。
「ソウコお嬢様も変わりましたね。前みたいなアグレッシブさがなくなりました。実は私のせいでアグレッシブさが増してしまったので少し責任を感じていてですね……だから今更」
「昔のことは気にしない、今以降のことが大切なのですわ」
実際私は気にしていませんわ。寧ろトゥスル王子様に色々弄られたとなると、下品ながらいやらしい妄想をしてしまいますわ。
度重なる調査の結果以前の私は無茶苦茶やっていることが分かりましたわ。
「レディのように慎み深く生きるしかないですわね。以前の私と比べますとマナーがない人でももう少しお上品でしたわね」
「お前は本当に清く正しく生きられるのかな」
スカートの短い服を着た人が私の前に現れました。
手がすり抜けますわ。これって幻覚ですわね。
「ボクはアブゾーブ 君に沈められた君の人生の澱」
「私そんな物騒なことしていたのですわね。本当に申し訳ございませんでしたわ。どの口がと言われるかもしれませんが、私の記憶によると倫理観がないだとか」
「謝って許されることじゃない。お前のやったことは問題の先送りでしかない」
問題の先送り……これはよくありませんわね。
夜になって寝ることにしました。
「こんにちは」
「貴女は何者ですか?」
「貴女に四年間纏わりついて性格を大幅改変した存在だよ! 良かったね。元来の性格の悪いところも私に押し付けることが出来て」
「イヤミな言い方ですわね」
ワガママだった私をただの悪人に仕立て上げた人のくせに嫌ですわね。
悪霊は私に近づいてきました。
「このくらい言ってもいいよね。君が私を乗っ取り返せていたのは王子様への恋が溢れていた時だけだし、結果ほとんど常に個性の薄い君に変わるのは大変だったんだから」
「こういう悪霊が憑いていたんですね。それは嫌われても仕方が無いです」
これからは悪霊の尻拭いにして生きるしかありませんわね。