玲と楽郎が同じクラスの設定。付き合ってはいないです。
______________________________________________
ホームルームが終わった放課後の教室にて、帰宅の準備をしていた俺に想像もしていなかった爆弾が叩きつけられる。そしてこのことが原因で黒歴史を一つ更新することになるとはこの時の俺はまだ思いもしなかった。
「楽郎に斎賀さん、これはどういうことか説明して貰おうかぁ」
そういうと雑ピは1枚の写真を見せてきた。
えーとなになに、うんうん俺と玲さんが私服で?公園のベンチで弁当を食べていて?
「ゔぁっっっっっ!??!??!?」
おいおいおいおい!聞いてないぞこんなの!?いや今聞いたから当たり前なんだけどというかプライバシーーーー!?
「んで何で2人は仲睦まじく弁当を食べているんですかね」
「別にいいだろ弁当くらい」
「睦ッッッ!?」
遠くで聞こえてたらしく玲さんがバグった。というか玲さんも尋問されるやつだろこれ…あっ連行されてる。こっち来たわ。俺の隣の席に座らされた玲さんを横目に、クラスメイトに囲まれたこの状況を打破する手段を考える。うーん…あるにはあるが…まぁいいか大人しく犠牲になってくれよな雑ピ君。
「僕は傷つき荒れた海…君は僕を照らしてくれる月…。僕の心を優しく包み込んでくれる光のようで…」
「ばっっっっっっっ」
クリティカルヒット!
「な、なんでそれを…どこで…?」
「まぁまぁそんなことはどうでもいいじゃないか、暁ハート先生。」
「暁ハート…?」
「おい検索引っかかったぞ」
「うわ、めっちゃバズってるし」
わいのわいのと盛り上がる教室。注目が俺らから雑ピに集中し緩まる包囲網…いまだ、ここしかない!
「逃げるぞ玲さん!」
「ほぇっ!?」
玲さんの手を引き教室を出る。玲さんはぷしゅーと頭から煙をだしながら赤面していつものように挙動不審になってるけどこの際気にしていられない。
「おい、クソッ待てー!」
後ろから雑ピの声がする。クソ、どこへ逃げる!?このまま外へ向かうにしてもカバンは教室に置いたままだ。とりあえず階段を降りて…「待てー!陽務ー!」やば、もうあの包囲網を!?ええいこうなったらここの空き教室に逃げて…隠れられそうなとこ…掃除ロッカー!これしかない!まず開けて中を確認、幸いなことにバケツや掃除用具などの物は入っておらず綺麗で何とかギリギリ2人が入り込めるだけのスペースがあった。
パタンと扉を閉める。ふー、かなり狭いけどこれで何とかやり過ご…。……………。息を整え、冷静になる。え、何で俺こんな逃げ場のないところに隠れたの?俺は逃げるのに必死でそんなこと考える余裕なかったし玲さんは入るとき右手抑えながらぽーっとしてたしうーん…2人とも冷静じゃなかったな。おいおいおいどうすんだよこれ!ていうか距離近くね???
ぐるぐると思考が加速していく。額に冷や汗がつぅーと流れ落ちる。気を抜けば唇と唇が触れてしまいそうになるほどの至近距離。目と目が合う。じっと見つめる瞳に吸い込まれそうで。心臓がバクバクと打ち鳴らす。自分の鼓動が相手に聴こえるんじゃないかってくらいに。おおおおお落ち着け俺、そうだ、深呼吸だ深呼吸。すぅー…はぁー…。………。肺にめいっぱいの空気を取り込む。瞬間、玲さんの髪の甘い香りが鼻腔を支配する。逆効果だった。鼻から脳へと甘さがじんわりと広がっていく。めっちゃいい匂いする…。なんだこれ。女の子の髪の匂いってこんないい匂いすんの?ぐぬぬこのままだと理性が死ぬ。
学校でもトップクラスに人気のある美少女、斎賀玲。いくらゲームや学校で接し慣れているとはいえそんなみんなの憧れの女の子と2人きりで個室にいて密着状態で冷静でいろという方が無理があるわけで。俺だって思春期の男子である。辺りに充満する甘い香りとたまに当たる胸の感触に理性がドロドロに溶けそうになるのを必死で堪えながら、この地獄のような時間を耐える。どれくらいの時が経過しただろうか。永遠にも感じられるような時間。その静寂を破ったのは2人のどちらでもなかった。
「クソッ陽務のやつ、どこにいったんだぁ?」
どくん、と心臓が跳ねる。
外から雑ピの声が聞こえる。教室に入り周りを探しているようだ。こちらに近づいていくにつれ足音が大きくなっていく。
「ら、楽郎くんっ!」
「シッ、玲さん!」
ロッカーの目の前でピタッと足音が止まる。
「ロッカーの中にいるとかねぇよなぁ?」
心臓が早鐘を打つ。
「ちょっ」
玲さんが目を瞑りぎゅっと身を寄せてくる。
いやこれはまずいでしょ。たわわに実った二つの丸いものが先ほどよりも強く身体にむぎゅむぎゅ押し当てられているわけで。玲さんにそんな気は一ミリもないとわかってはいるもそれでも今見つかったらひじょーにまずい。いろんな意味で。いやまじで頼む乱数の神よ!
響く息遣い。
「「……………。」」
玲さんの袖を掴む力がきゅっと強まる。
じっと息を潜める。
「まぁ、ねぇわな。」
遠ざかっていく足音。
「「ふぅー…」」
安堵の息が漏れる。た、助かったぁー…。なんかもうすごい疲れた。
「あの玲さん、大丈夫…?」
緊張感が切れて崩れてる玲さんに向かって声をかける。正直このまま密着されてたら身がもたない。
「へっ!?〜〜〜〜〜〜?!?!??!!」
危機が去って冷静さを取り戻したからか、自分が何をしていたのか理解したようで。いつも以上に頬を紅潮させてぷしゅぷしゅと頭から湯気をあげながらフリーズしていた。
あれ、ていうかこれフリーズじゃなくて気絶してるーー!?
その後気絶した斎賀さんを保健室に連れて行き一緒に教室に戻った後、斎賀さんが盛大に自爆して結局クラスのみんなから尋問されることになった。ちくせう。覚えてろ雑ピめ!