Fate/destruction   作:ニーガタの英霊

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 ―――一年前―――
ニーガタ「ロムルスとかヤベェな、いつか出したいもんだ。あとアッティラとかカッコいいなぁ・・・・・・」

 ―――現在―――
ロムルス「ローマッ!」
アルテラ「CMではお世話になりました」(ニコッ)

ニーガタ「」


第31話

「素晴らしい・・・・・・」

 

 キャスターは目深くかぶったフードの中から、それを見つめる。

 圧倒的な魔力量、善に傾く杯。

 これこそ、彼女が求めていたものではなかろうか。

 

 英霊として中堅程度の能力しか持たなかったアーチャーの霊格を引き上げ、それ相応のものとした能力は敵ながら称賛に値するものだった。

 

 そして、それを感じているのはキャスターだけではない。

 アサシンも、レイヴも、七海もまた彼の圧倒的な魔力に気圧されている。

 

「計算外にも程があるな。だが、これで狙いは確実にアーチャーのマスターに向く・・・・・・」

 

「ここからが踏ん張りどころか・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 三者三様の判断、しかし、ここで手が止まったことも事実、しかし、そのような状況で真っ先に動いた存在があった。

 

 飛来する炎剣、狂いなくそれはキャスターに向かって投擲され、キャスターの一瞬の隙を突く。

 しかし、幾ら肉弾戦に優れない英雄であろうとその身体能力は折り紙付き、キャスターは炎剣をすんでのところで躱す。

 

「―――(Tiphereth)

 

 だが、そんなことは織り込み済み、呪歌による詠唱の合間を縫い、一気に接近する神父。

 第二のスペルによって底上げした肉体強化に実践によって磨かれたクロスレンジからの武錬によりなすすべもなく、圧倒されるキャスター。

 

 魔術戦ならば兎も角、このように相手の土俵に持ち込まれればなすすべもないのはキャスターの弱点だ。

 肉体を大鷲に変えようにもその為のタメの一つすら許さないとばかりに打ち出される連打の嵐。

 

「アーチャーッ!」

 

 そして、敵は何も一人だけではない。

 

「―――『梵天よ、(ブラフマー)

 

 装填は完了、魔力も充実、ならばこの一撃ですら後顧の憂いなく放てるというもの。

 狙いは宙を駆ける舟、対軍ならば兎も角、対国レベルの一撃を食らえばどのような頑丈な舟ですら一撃で破壊される。

 

「チッ、骨が折れるッ―――!」

 

 苦虫を噛んだかのような苦渋の顔を浮かべ、キャスターはただ、神父の攻撃を耐え続ける。

 どこか、含みのある笑みを浮かべて。

 

地を覆え(ストラ)ッ』!」

 

 やがて放たれる、暴威の一撃、陽光の一矢。

 舟の旋回は間に合わず、一撃のもとに堕ちるのは単純に考えても確定した未来である。

 

 しかし、その道理を力技で超えて来た者を人は英雄であるとするならば、彼女はまさしく英雄だった。

 

「―――『災厄翻す魔女の領国(ポホヨラ)』 」

 

 瞬間、世界が塗り潰された―――。

 

 視線を覆い尽くす光に目が眩んだのもつかの間、晴彦が瞳を開くと、そこには別世界が広がっていた。

 

 一面に広がる銀世界、極寒の凍土のその中に晴彦は立っていた。

 一気に体から体温を奪い、凍てつく寒さを越え、一種の痛みすら感じる猛吹雪の中でそれは荘厳と待ち構えていた。

 

「大したもんだよ、アタシの切り札を切らせるなんざ」

 

 そして、晴彦たちの前方。

 洞穴の上に立つ女性が両手を広げて晴彦たちに相対する。

 目深く被ったフードが脱がされたその顔は、雪のように白い髪、尖った耳は人間離れした出で立ちだが、それ以上にまるで引き込まれるかのように美しかった。

 

「けど、ここがあんたらの終着点だ。精々足掻きな―――」

 

 そして彼女の周りには様々な現象が晴彦の敵となって襲い掛かる。

 

 それは大熊や巨人、雪で作られた兵士などの数多くの魑魅魍魎、厄災であった。

 

 

 

 

 

災厄翻す魔女の領国(ポホヨラ)

 ランク:A 種別:対国宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人

 魔女ロウヒがカレワラの地と賢者等に齎した災いの数々。

 即ち、魔法の軍勢、霜の精霊、海巨人、大風、冥府の王女が産んだ九つの病、大熊。

 そして太陽と月を幽閉した岩窟である。

 キャスターは悪疫の根源国ポホヨラの主として、これらを召喚し駆使する。

 ■■■■■と固有結界型の二種類があり、固有結界型は■■■■■よりも強力である代わりに多大な魔力を消費する。

 固有結界型の場合、知名度補正も上昇され、あらゆる判定でキャスター優位に戦闘を進めることが出来る。

 

 ―――以下、詳細不明―――

 

 

 

 

「とんでもないな・・・・・・、神代の風景というやつか?」

 

「晴彦、無事かい」

 

「一応は・・・・・・、飛ばされたのは俺達だけか」

 

 晴彦のそばにはアーチャーが控えていた、どうやらキャスターの固有結界発動時に晴彦とともに移動させられたのだろう。

 

「いや、私も居ますよ」

 

 そういって振り返った先にはハーペン神父の姿があった。

 晴彦はキャスターの求める聖杯の器として、アーチャーは舟の破壊を阻止するために固有結界に飛ばされたとして、恐らく神父こそ、固有結界発動時にキャスターのそばに居たがゆえに巻き込まれたのだろう。

 

「固有結界、数少ない魔術師だけが行える最も魔法に近いとされる魔術の一つ。キャスターが持っていても不思議ではないですが、成る程。ここは神代のポホヨラを再現した場所と言うわけですか」

 

「つまり、どういうことで」

 

「私とアーチャー、そして貴方以外すべてが敵といっても過言では無いでしょう、そして、キャスターにとって最も有利な戦場と言うわけです」

 

 細かく、そして的確に説明する神父。

 さっきまでエロ本を読んでいたとは思えないほど鋭い見解だった。

 

「・・・・・・なにか?」

 

「い、いいえ。兎も角、来ますよ・・・・・・」

 

 キャスターは何らかの魔術を使うと、自身を浮かび上がらせ、その周囲に様々な魔法陣を浮かび上がらせる。

 晴彦はわからなかったが、その魔術一つ一つが大魔術とされ、普通であれば数十節の詠唱を必要とする物にも関わらずいとも簡単にやってのけた。

 レイヴや七海であれば、目を覆うかあきらめてしまうであろう圧倒的な魔術の妙技。

 そして、肝心の口からは一つの詠を謳う。

 

Ukko,(ウッコ) O ylin Jumala,(至高の神よ、) tappaa kaikki leikata minun vihollinen,(我が敵を皆切り殺せ)

 

 それは悪意の詠、肉体が重く、軋み、ただ苦しみを与える呪い。

 常人ではとてもじゃないが耐えられない負の音階。

 現にアーチャーですら顔をしかめ肉体に確かな重みと鈍さを感じている。

 

「―――基礎(Yesod)

 

 だが、それであきらめるほど人間は単純な存在ではない。

 

「『補佐は任せたまえ、あの歌を我が聖歌で打消し給おう』」

 

 明らかな反応を示したのはキャスターであった。

 眉を顰めると、語気を強めながら高らかに謳い上げる。

 そして、それは神父とて同じこと―――!

 

「『Stabat Mater dolorosa Iuxta crucem lacrimosa, Dum pendebat Filius. Cuius animam gementem, Contristatam et dolentem, Pertransivit gladius.』」

 

 それは讃美歌、神を讃えし誓言であり、確かな言霊を以てキャスターの呪歌に対抗している。

 そう、それは魔を祓う言霊、歌にのせて運ぶことによってその力は何倍にも膨れ上がる。

 

ja kirjoittamisesta raekuurot rautaa,(鉄の雹を以て打ち殺せ) se on tuhottu rutto,(疫病を以て滅ぼし) ja Shinase mies in puutarhassa,(庭の中にて男らを死なせ) kuoli nainen kerroksessa navetta tapaus(牛舎の床に女らを死なせよ)

 

「『O, quam tristis et afflicta Fuit illa benedicta Mater Unigeniti !』」

 

 響く旋律は互いの力を打消し、無効化する。

 

(成る程、カレワラの終わりはキリスト教の登場をもって終わりを告げる。だとしたら、キリスト教の誓言は何より効果的という訳か・・・・・・)

 

 キャスターを超える歌い手と言えばあの不滅の賢者ワイナモイネン。

 その彼が必要とされなくなった原因は新たな時代が来たからとされている。

 

 そして、その新たな時代の到来とはキリスト教の登場とされており、キリスト教の優位性を表すとされれば、幾ら彼女とてその讃美歌に対し手こずるのは当然と言えるだろう。

 

「アーチャー、この結界を解く方法は」

 

「空間そのものを破壊するか、術者が結界の維持を出来なくさせるかだね。そして現状、結界の破壊は不可能だ」

 

 つまり、キャスターを倒すし方法はない。

 そうこうしている間にも、敵は集まり、こちらを攻撃する。

 四方八方を囲まれた絶対絶命の極地、されど恐れることはない。

 

 なぜなら彼らには信頼できる相棒(パートナー)がいるからだ―――。

 

 

 

 

 

「さて、戦力の分断か・・・・・・これは痛い」

 

 教会の前にてアサシンは一人呟く。

 キャスターの固有結界によって、アーチャーに神父という戦力を失った彼らは改めて作戦の変更を余儀なくされた。

 

「アサシン」

 

「問題はない、高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変にに対処すればいい話だ」

 

 こちらの最大戦力の一つであるアーチャーを失ったが、それは相手も同じこと、キャスターがいない場合この戦況での最大指揮官はキャスターのマスターか、はたまた。

 

「では作戦を発表してもらえるかな」

 

「勿論、フォーク准将とは違うのだよ」

 

 アサシンは手に持ったナイフを懐に収めると、レイヴと七海に向き合って答える。

 

「まずもって、戦況はこちらに不利だ。敵は大軍、対してこちらはタロスが最大戦力となるわけだが。まず間違いなく相手はタロスを封じ込めに来るだろう」

 

「敵にタロスを封じ込める手合いが?・・・・・・いや、可能性はあるだろうな」

 

 レイヴは疑問を口にするが、ふと思い当たる節が一つあった。

 

「説明してもらえるかな、レイヴ・ロザン」

 

 アサシンがレイヴにそう詰め寄ると、レイヴは一息おいて告げた。

 

「・・・・・・バーサーカーだ。妙だとは思っていたさ、何せバーサーカーとしては能力値があまりにも低い。そして、相手の本来の姿は二十八対の腕をもつ怪物だ。タロスに対抗できるサーヴァントであればおそらく・・・・・・」

 

「成る程、バーサーカーは確か短期決戦型のサーヴァントだったな。魔力不足を解消するためにもキャスターと組んでいる可能性が十分にありえるな。いや、ここまで動きを見せていないなら・・・・・・。ふむ、ある程度の指針は決まったな。とりあえず、タロスの投擲は続けさせ・・・・・・おい待て」

 

 振り返ったアサシンが見たもの、それはこちらに突き進んでいく舟の姿だった。

 

「―――レイヴ・ロザンッ!」

 

「―――わかっている! タロスッ!!」

 

 瞬時に状況を理解、アサシンは七海を抱え、レイヴはタロスに抱えられ、分断して舟から逃げる。

 舟は轟音を上げ、教会に突撃。

 教会は一瞬にして瓦礫と化す。

 

「―――チッ! 完全に後手に回ってしまったかッ!」

 

 白衣を靡かせ、校内に入るアサシン。

 

 そんな彼の姿を見つめる赤い目は冷淡に冷静に指示を出す。

 

「ボクらはライダー陣営を、君たちはもう片方を完全に仕留めてくれ」

 

 舟の後方から現れた青年、バーサーカーのマスターの一人である八号はキャスターから預かった指揮権を元に魑魅魍魎に指示を下すと、渋々ながら軍勢は指示に従って校内へと進む。

 

 その様子を見つめる八号の背後には二十八対の腕をもつ怪物が主の命を待つかのように鎮座していたのだった。

 

「・・・・・・征こうか、バーサーカー。ボクらの勝利に向けて、これ以上の失敗は許されない」

 

 願うは勝利、それ以外は彼に、彼らにとっては不要。

 

「ボクらの未来のために・・・・・・!」

 

 彼らはホムンクルス、培養液の中から誕生した人工生命体。

 その寿命は遥かに短く乏しい。

 それはすなわち、人並みに生きることすらできないということだ。

 

 無知であればどれ程よかっただろう、はたまた、自我というものが無かったらどれ程よかっただろう。

 そう、彼らは知ってしまった。

 世界は想像を超えるほどの広さと未知にあふれることを、人間という存在がどれ程生きれて、そして死ぬことを。

 

 矮小な人造人間、彼らの願いは、人間になることだった。

 

 八号という名前が与えられておよそ三年、残る活動期間はおよそ五年、八号に至ってはあと三年ほどの猶予しか残されていない。

 それが創造主の掌の出来事であったとしても、それをはいそうですかと認められるはずがない。

 

 そして創造主もそれを承知の上で聖杯戦争に参加させたのだ。

 彼にとっては最初で最後のチャンス。

 敗北は死であるならば、彼は勝利に向かい突き進むしかない。

 

 命の長さ、短さに価値がある物じゃないと誰かが言うが、それでも人並みに生きることができるとしたら、これほど幸せなことはないはずだと、そう想わずにはいられないのだ。

 

 戦いの幕は再度上がる。

 全陣営が戦場へと赴く、騒がしくも静かな秘められた戦場へと、勝者は誰か、その答えは運命のみが知っているのだろうから。

 





アヴィケブロン「僕の知ってるカバラと違う」
型月の神父は強いからね、仕方ないね。
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