Fate/destruction   作:ニーガタの英霊

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 次回作の鯖生成、もしかしたら問題児ばっかになりそうな気配になってます。
 一応次回作はセイバー、ランサー、バーサーカー以外のデータはほとんど完成しているけど、これを終わらせなきゃ登場することも出来ない。
 一応F/GOとかの被りはないけど、ニアミスばっかしてる布陣だよコレ。
 あと下手したら公式に先を越されそうというジレンマ。


第35話

「―――シッ!」

 

 両断せしは小さな人型の精霊、半身をひねり、背後に回った丸い妖精を捉えると、回転の勢いのまま、さらに一刀を加える。

 留まるべからず、アサシンは最小限の敵を切り伏せると、廊下を駆ける。

 

 たった一人、入り組んだ校内で一人、並み居る魑魅魍魎に対し大立ち回りを続けるアサシンの姿がそこにあった。

 

「―――敵が多い! 流石に骨が折れるぞ!!」

 

 声を張り上げ、大声を出しながら、逃げ続ける暗殺者。

 これでも鬼ごっこは得意だ、何せ警察相手に培った逃走術はハンニバルだけではなく、多くの殺人鬼が持ちうるものであるが故だ。

 

 切り上げ、或いは回避。

 命を取るまででもない、ただ動きを鈍らせ、他の魑魅魍魎の邪魔になる様に障害物とする。

 現状に至って最も重要なのは逃走路の確保、追い詰められて死んでしまったじゃ話にならない。

 

 ちらりと外を見ると、校庭にうずくまる海巨人の姿があった。

 流石に地の利はこちらにあるが、多くの魑魅魍魎に加え、あれを相手にするのは流石に無理だ。

 引き攣る頬に喜悦に浮かぶ瞳、二律背反の感情がアサシンを覆う、何という無茶、されどこれほど楽しいことはない。

 

 嗚呼、世界は斯くも面白い。

 だからこそ生まれ落ちた意味がある。

 

「でも、出来たら人間が相手が良いな。それも悪人が良い」

 

 ひっそりと後ろから迫ってきた妖精を切り捨てながら、多くの魑魅魍魎を引き連れ、更に入り組んだ回廊を渡り、駆け抜く。

 

「おーい、そろそろ歩かないか? 廊下は歩くなと教わらなかったのか!? ・・・・・・駄目だ、全然話を聞いてくれない」

 

 肩を竦めながら、駆ける速さは変わらずに廊下を疾駆するアサシン。

 やだ、心細いと泣き言を言おうとしたとき、不意につながる念話があった。

 

『―――、―――』

 

「はいはい、了解っと」

 

 七海からの指示を聞いたアサシンは、一枚の符を投げ捨てると一面に目くらましの閃光が辺りを包む。

 当然のことながら廊下からの光は窓を照らし、校外の魑魅魍魎はその階に釘付けになる。

 

『キャ―――!!』

 

 そして、その閃光と時を同じくして少女の叫びがその階から響き渡る。

 それはまさしく目的の叫び、魍魎は一目散にその階層に集まり、飽和状態と化す。

 廊下の多くが魑魅魍魎に占拠されたとき、魍魎たちの目はどこに行くのか、それは未だ開かれていない教室である。

 

 ふと見れば、教室の扉が開いている、そしてその奥にはうずくまる一人の少女の姿。

 そう、あれこそが標的。

 あれこそが我らが魔女の敵である。

 魍魎たちはその少女に向かい牙を突き立てるが、防護壁があるのかうまくいかない。

 

 一体、また一体と防護壁に阻まれながらも、やがて魍魎たちの重みを以て防壁は破壊される。

 そして残るのは一人のおびえた少女、魍魎の一体が少女にかぶりついたとき、閉じる扉の冷たい音と共に、世界は塗りつぶされた。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、射ち零しはこれで終わりと。こちらの仕事はほぼ完ぺきだろう」

 

 校庭で寝そべっている海巨人を肴にし、射ち漏らした妖精を切り捨て、アサシンは問題の階のフロアにて腰をかけていた。

 

「そうね、策は大まかにはまったとみていいでしょう。あとの海巨人の処理ですけど、どうせこっちに釘付けにしてれば最低限の問題はクリアでしょう」

 

 アサシンの傍にて、一人作業に勤しむ七海は淡々とそう言葉を添えた。

 

「作戦成功、ふふふ、この早瀬七海女史の魔術工房は最強よ・・・・・・この勝負、我々の勝利だ」

 

 傍からみたらフラグだらけの言葉であるが、悲しいかな、七海にはわからない。

 完全スルーの状態で七海は疑問を口にする。

 

「もし負けたら?」

 

「令呪で帰る、囮は・・・・・・、お前だ・・・・・・!」

 

「は?」

 

 どうも彼女には冗談は通じない、何故だ、現代っ子じゃないのか?

 怒りの形相を浮かべる七海から顔を逸らしながら、アサシンはこれまでの作戦を回想していた。

 

 そもそも作戦はそんな難しいものではない。

 アサシンは魑魅魍魎をひきつけ、誘導し、七海はその間にルーンの多くを作成、或いは教室内に魔術を張っていたのだった。

 作成した魔術は部屋内の異界化に、七海の姿を映す幻術に、七海が元々持ち合わせていた防護壁を出す礼装を組み合わせたものだ。

 部屋内にて術式を設置した後、アサシンが扉に扉に対し施錠のルーンと閃光を出す符を与え魍魎を一気にその階に追い込む。

 

 気配遮断で姿を隠し、廊下内にて潜伏し、魍魎を教室内に入ったのを確認し、防護壁が破られた後に別室にて待機している七海に指示を出し、ルーンを発動、密室状態になった途端に教室内を異界化、魍魎たちを決して外に漏らさない檻を完成させる。

 

 その後は恐慌状態に陥った魍魎を死角から的確に討ち、作戦完了。

 中々に無茶な作戦であり、アサシンの協力が無ければ、達成は不可能であっただろう。

 

「あ、あー。とりあえず準備はどうだね」

 

「・・・・・・露骨に話を逸らしたわね、まぁいいわ。順調よ」

 

 七海は扉に術式を刻むと手を当て、魔術を起動させる。

 すると陣からは赤黒い宝石が数個ほど出現した。

 

「ふむ、中々に興味深い」

 

「まあね、けど一種の外法よ、その気になれば人間を贄にして魔力を抽出する方法だからね」

 

「使ったことは?」

 

「今日が初めてよ」

 

 アサシンはナイフの背を肩に乗せ、七海の作業をジッと見つめる。

 何が面白いのか終始にこやかに見つめる様子はどこか寒気がするが、七海は気にせずに淡々と作業を推し進める。

 何せ、魔力は有って損するものではない。

 いざというときの予備バッテリーはあって然るべきだ。

 

 ふと、視線を逸らすと、アサシンは廊下の窓から外の海巨人の様子を見ていたのた。

 

「また悪だくみかしら」

 

「失敬な、私はいつも清く正しいただの医者だぞ」

 

 ポツリと口を滑らしたその言葉をアサシンは自前の地獄耳でしかと耳にしていた。

 改めて厄介な男だと、鼻歌を歌い、笑みを浮かべるアサシンを見ながら七海は作業を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「―――フゥ、まったく。無尽蔵か、その体力は・・・・・・」

 

 息を切らし、体の至る所に裂傷を刻みながらレイヴは荒れた息を整える。

 そして肝心の八号はレイヴに対し現在攻勢を緩めていた、それはレイヴの足元に理由があった。

 

『グルルル―――』

 

「良い仕事だ猟犬。さて、バーサーカーのマスター。これで戦況は五分と五分か? いいや、もしかしたら私の方が有利やもしれんぞ?」

 

 バーサーカーとの対決から数分とせずにレイヴのもとへはせ参じた猟犬。

 探知能力と追跡能力に優れたこの猟犬は、遅れることなく舟を追跡し、ここに至ってレイヴの下へとたどり着いた。

 そしてそれは今のレイヴにとっては優秀な剣であり、盾となって八号と向き合う。

 

 本来は戦いを得意とはしない猟犬ではあるが、紛いなりにも神代の犬、その能力は折り紙付きだ。

 そう、現代のマスター程度なら相手として不足はないだろう、それに加え、背後にはレイヴもいる。

 

 状況は完全にレイヴの方へ傾きつつある。

 八号は魍魎をこちらに呼ぶことを視野に入れつつも、その考えを振り払う。

 

 サーヴァントを失ったマスターと、最弱ながらも立ち回りでここまで生存してきたアサシンが相手だ、ここでさらに兵力を分散させるのは良い手とは言えない。

 八号は敵を過小評価することはない、最強と言えるバーサーカーを擁しながらも、向かう敵は大英雄や、精強たる青銅の巨人。

 並外れているのは五号の魔力供給だ。

 そして、ここでの敗北は八号の沽券にもかかわる。

 

「―――だからどうした、その程度で、ボクが立ち止まると。そう思っているならとんだ思い違いだよ」

 

 甲高い少年の声、おそらく創られてからそう経っていないのだろう、真新しい声帯はそれが故だ。

 

「―――ボクは、叶えたい願いがある。目指すべき夢がある。それが手に届くんだ、誰だって手を伸ばそう。

―――たとえ、何かを犠牲にするとしても・・・・・・!」

 

 それははっきりとした拒絶。

 事、ここに至って彼とレイヴは分かり合えない、もうそれほどまでに聖杯戦争は進んでいたのだから。

 

 きっと、そう、もっと早くあっていれば手を取り合うことが出来た、そんな未来があっただろう。

 しかし、それはもはや夢のまた夢。

 彼は選んだのだ、全てを犠牲にしても、自身の願いを叶えるために。

 

「君は、あれがどんなものかを知って言っているのか」

 

「・・・・・・大まかだが、大聖杯は願望器としては機能はしないだろう。あれはまさしく破滅の箱だ、如何な願いとて捻じ曲げて解釈するだろう。だからこそ、ボクらには『ナルタモンガ』が必要なんだ」

 

「・・・・・・」

 

「語ることは最早ない、戦おう、レイヴ・ロザン。ボクらには、後がない」

 

「そうか」

 

 レイヴ・ロザンは魔術師だ。

 魔導を研究し、根源へ至るために研鑽を積む魔術師だ。

 そんな魔術師だからこそ、時には切り捨てるという行為も知っている。

 何を拾い、何を捨てるか。

 損得勘定で物事を進めることが魔術師に求められるが故に、彼は真っ先に目の前の敵を切り捨てる算段を立てる。

 

「―――君は、とても大切な願いがあったのだろう。そしてとても優しい子なんだろうね。願いを叶える、ボク『ら』の為にね」

 

「―――ッ!」

 

 レイヴから覗かせるは冷徹な表情、時計塔の貴族の一角、その中でも海千山千という怪物を相手に大立ち回りをし、それなりの派閥を形成する貴族の一角、レイヴ・ステュアート・ロザン。

 錬金術と元素変換を得意とする稀代の秀才、ロード・ステュアートの生き方はもっと単純なものだった。

 

 詰将棋のように、淡々と時計塔という組織の中を生き、そして次代へ血脈を残し、根源という悲願という名の呪いを明け渡す。

 

 嗚呼、何というつまらない人生だろう、なんて無価値な生き方だ。

 

「きっと、君の願いは切実なのだろう。ほかの何かを犠牲にしても叶えようとするのだろう。嗚呼、わかるとも、君の気持ちは十分に理解しているさ」

 

 だからこそ、あの出会いは劇的だった。

 彼は初めて愛を知った、そこで初めて、彼は人となったのだ。

 

「そうだ、理解しているからこそ、私は君の願いを踏みにじもう。どれ程高尚であろうと、どれ程の重い願いだとしても、私はこの手で、君をうち倒す。それが、私が君に出来ることで、しなければならないことだからだ」

 

 レイヴ・ロザンは知っている。

 人の情も、愛も、人を想いやるということの美しさを、彼はようやくとわかったのだ。

 

「君の願いがどれ程心に響こうとも、それに対し私が涙を流し感動したとしても、または、強い強い同情の念を抱いたとしても、私は君を倒そう、君という存在の生を踏みにじって、君を殺そう。

―――それが、私に託された使命だ。残されたものとしての生き方であろう」

 

 彼女は最期にありがとうと言った。

 おそらく、その言葉以上にレイヴの人生を超える言葉はないだろう。

 早ければ十数年、遅ければ一生の彼の初恋。

 

 そう思えるほどに、彼の心には彼女の存在がある。

 

 だからこそ決めたのだ、彼女の仇討ちはもとより、これからの人生で、きっと彼女にまた会ったとして、恥じない人生を送ろうと。

 

「所詮は我欲だよ、私のはね。それと同時に、君のもまた我欲だ。何かをしたい、何かをしなければならない。誰かの為だとか言っていても、それを決めたのもまた自身だ、そう元をたどれば所詮は我欲だ。どっちが上だとか、どっちが下とかは関係ないさ。

―――だからこそだ、そう思っているからこそ、私は君の願いを踏みにじよう、他ならぬ私の為に、私の信念の為に」

 

 願いに高尚さなんて関係ない、そこで折れるなら、その程度の想いだったのだろう。

 レイヴもまた同じだ、心のどこかで望んでいても、彼女にまた死を与えてしまうのではないかと、そして、彼女のあの最期を、あの微笑みと口づけを汚してはならないとそう思ってしまうのだ。

 

「・・・・・・」

 

「おしゃべりが過ぎたようだね、では再開だ。お互い、死力だけは尽くそうじゃないか」

 

 レイヴもまた、守りたいものがある。

 例えばとある喫茶店、彼女と共にデートを楽しんだ、とある雑貨屋では犬のぬいぐるみを買っただろうか、それなりに思い出もあるのだ。

 例え、時に苦しくなる思い出だとしても、それでも残しておきたいものがある。

 そんなわがままだ。

 

 神速の初動、礼装であるナイフを片手に、レイヴの下へ突っ切る八号。

 常人にはとても目に追えない速度で迫りくる白影。

 

 それに対し、真っ先に反応する猟犬。

 精錬された動きである白影に対し、野生の如き荒々しさを以て、牙を突き立てんが如く迫りくる。

 

 二つの影がかち合う寸前、辺り一面に響く轟音が鳴り響いたのはほぼ同時だった。

 

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