まぁ、今回でアサシン、キャスター以外の真名を看破する人もいるだろう(小並感)
男は、生まれながらにして、選ばれた存在であった。
七代続いた名門という家系。
魔術師としての名高き才能。
貴族という優れた一門の直系であること。
己の持つ技量を研鑽し、何時しか神童と呼ばれた男となった彼は、より高みを目指すことになるのはある意味当然のことであった。
聖杯戦争。
その言葉を聴いたときは何時だっただろうか。
記憶にないということは、まあどうでもよいことだったのだろう。
男は深くは考えなかった。
後日、男の片腕に令呪が宿ることとなる。
やはり、自分は選ばれた存在なのだと、男は自身を疑わなかった。
ならば、自身にふさわしい英霊(道具)が必要である。
男は捜した。
自身にふさわしい英霊を、その触媒を。
やがて、それを見つけ出す。
クレタ島に眠る、とある古ぼけた槍の一部。
目に見えて分かるその神秘に対し、男は圧倒され、同時に柄にもないほどの高揚感に包まれた。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
詠唱はすでに頭に入っている。
召喚するのは、彼のクレタ島の王―――!
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」
収束する魔力、魔術回路が仄かな熱を持ち、稼動する。
「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
男にとって敗北など知らない。
そして、これからもだと。男はそう思っていた。
「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
完璧な詠唱だったと男は自画自賛する。
魔力供給も、パスも確かに繋がれている。
―――なんだ、英雄といっても大したこともない。
想像以上に少ない魔力供給に余裕を見せ、軽く嘲笑する。
やがて光が晴れ、自身の召喚した英雄を見る。
「なんだと―――!?」
絹のように艶やかな金糸の髪、豊満な肉体に整った顔立ち。
そして、何よりもその美しさ。
「サーヴァントライダー。ここに」
彼女はライダーといった。
同時に明かされるステータス。
彼女はマスターたる男を見つめ、微笑みながら問う。
「貴方が、私のマスターでしょうか?」
ドクンと、心臓が跳ね上がる感覚が男に降りかかる。
「あ、あぁ。私が君のマスターだ」
「そうですか。あぁ、私の真名は―――」
そこからのことは覚えていない。
一目ぼれというのだろうか。
男は彼女にどうしようもなく魅せられてしまった。
そして、それは共に戦う中でより一層、想いを強くする。
その出会いは何をもたらすのか、そして男は何を想うのか。
そのとき男は、まだ何も知らなかった。
「・・・・・・マジかよ」
「大丈夫かい、晴彦」
柊市から自然公園を見渡せるとある高台にて彼らはいた。
アーチャーは持ち前の千里眼を持って、晴彦はアーチャーと視界を共有化して戦場を俯瞰していた。
「・・・・・・毒槍、怪物、複数のサーヴァント」
「晴彦?」
晴彦は知っている。
葛西晴彦、年齢20歳。
文学部、史学科。
趣味、TRPG。
そして、元中二病患者。
北欧神話、ケルト神話においてはほぼ完璧に熟知。
ギリシャ神話、日本神話、中国神話も嗜み、中東圏の民間伝承、神話もある程度の概要も熟知・・・・・・!
「クラン・カラティン」
「!?」
「ケルト、アルスターの伝承。クーリーの牛争いに登場するコノート側・・・・・・つまり、敵方の英雄。クーフーリン、最期から二番目の英雄」
「真名を特定したのか! 晴彦」
「アーチャー! バーサーカーの数は!」
「およそ、20体だ」
「クラン・カラティンは28対の腕を持つ怪物だ! だとしたら、バーサーカーはかなりの本気だ。マスターの護衛か、伏兵も十分考えられる!」
クラン・カラティンは27人の息子と合体し、クーフーリンに立ち向かった英雄。
考えられるものとして、召喚時に28対の腕を持つ怪物を令呪によって分離させたのだろうと予測をつける。
「どうする、晴彦」
「どうするって・・・・・・」
「この距離なら狙撃は可能だ」
「この距離って、四、五キロも離れてんだそ!」
「なに、僕はアーチャーのサーヴァント。この程度の距離。造作もなく中てて見せよう」
「・・・・・・」
つくづく、英霊の非常識さを思い知らされる。
しかもこれで弱体化しているのだ。
アーチャーは弓を取り出し、矢をつがえる。
「何時でも準備は出来ている・・・・・・」
アーチャーの視線は既に遠くのバーサーカーに注がれている。
「一度に仕留めることは?」
「可能だが、恐らくはばれるだろう。わざわざヘイトを集めることもない。それに、やるなら令呪の一画が必要だ」
晴彦は己の左手に刻まれた痣を見る。
令呪。それは、マスターたる証、己がサーヴァントに対する絶対命令権である。
(使うのか・・・・・・ここで・・・・・・)
晴彦は悩む。
バーサーカーは危険である。もちろん早々に消えてもらうなら、ここで令呪を切るのも手だろう。
しかし、聖杯戦争は長い。
あの、参加者達が悪人かも善人かも分からないなら、まとめて凪払うのは早計。
「・・・・・・宝具は使わない。替わりにバーサーカーの撹乱とあの二人のサーヴァントのサポートを頼む」
「承知した・・・・・・!」
己がマスターの指示のもと、アーチャーは狙いを定める。
狙いはバーサーカー。
自然公園にいるマスター達を差し置いて、早々に弓を引き絞る。
一閃。
アーチャーの弓はバーサーカーを捉え、頭を射抜く。
糸が切れた操り人形のようにそのままバーサーカーは地面に倒れ伏す。
周囲の狂戦士達は気が気でない。
狙われている、しかもアーチャーに。
互いの力量は知っている。
このままでは勝てないことを知っている。
更に付け加えれば、遠距離戦はアーチャーの独壇場。
此処でバーサーカーには幾つか選択肢があった。
一つは撤退。
しかもただ撤退する訳ではなく、分体を数体残し、アーチャーを牽制しつつのベター策。
二つ目は、乱戦。
幸い、此処には多くのサーヴァントがいる。
最初はゆっくりと包囲、各個撃破の策だったが、そうもいってはいられない。
かなりのハイリスクハイリターンだが、交渉がうまくいく可能性もなくはない。
数瞬・・・・・・されど、バーサーカー陣営にとって数秒に思える時間が過ぎ、彼らが選択した行動は後者であった。
バーサーカー陣営の最も優位な点である物量。
それが一番効果を発揮するのは戦場・・・・・・それも乱戦時である。
そのことをバーサーカーのマスターは十分に理解していた。
そして、十分に理解しているが故に、彼らは最大の失敗を冒してしまった。
「はっ! 面白れェことになったじゃねェか!」
「セイバー?」
「おう、わかってるよ」
セイバーは突如として現れた巨人に対し正眼に構える。
「だが、こんな相手と戦えるんだぜ? 最高すぎるじゃねェか・・・・・・!」
セイバーは口角を吊り上げ、満足そうに笑みを浮かべる。
先ほどの戦いからの疲労をまるで感じていないかのようにセイバーはいきり立つ。
そのマスターたる少女もやれやれと言わんばかりにため息をつく。
「ここまで来たらしょうがないわね。宝具の開帳を許可するわ。セイバー」
「いいのか? あんなに口ずっぱくいってただろ」
戦いの前、セイバー達は宝具の開帳について利器型以外の宝具の使用を禁じていた。
しかし、一転して七海は宝具の開帳を許可した。
どうせいつかはバレること。
ならいっそ、堂々と公表して格の違いを見せつけよう。
それに、こうまでして敵が多いならまとめて吹き飛ばすのも有りという判断であった。
「いいわよ、アナタも大分フラストレーションが溜まってたようだし。
ーーーそれに、」
七海は己がサーヴァントを見つめる。
七海の何倍もあろうかという背丈、隆々と引き締まった肉体。
そして、最強という自負、矜持を持て合わした、最高の英霊。
「ーーーそれに、私が召喚したサーヴァントが最弱のハズないじゃない。大丈夫よ。私とアナタに敗北の文字はないわ」
「言うじゃねェか、マスター。あァ、全く持ってその通りだ!」
瞬間、収縮する強大な魔力をセイバーは篭める。
気づいたときには遅すぎだ。
バーサーカーはライダーに注視し、動いたとしてもあの肉体を突破する決定打を持ち合わせていない。
ライダー、―――基、巨人の本来の能力は防衛戦特化。彼が本来守るべきマスター(ライダー)の護衛。且つ!
「宝具の一撃か・・・・・・よろしい、受けきれるだろう、ライダー」
「無論、私の巨人は無敵です」
それは自信・・・・・・! セイバーの一撃を受けきれるという意志の表れ他ならない。
加え、ライダー陣営の本来の戦闘能力は高いものではない。
いや、最弱といっても良いだろう。
宝具依存、宝具特化型の陣営。
本来、ライダーとマスターは穴熊が基本戦術であろう彼らが戦場に出てくること事態珍しいほどだ。
しかし、その間、セイバーの魔力は刻々と充足される。
「―――受け切れるか・・・・・・! 我が、神威の一撃を・・・・・・!」
どす黒く、深紅に染まる、セイバーの剣。
心臓の鼓動が一つ、また一つ、一段を強く響くような感覚が周囲を包む。
マスター達に襲い掛かる潜在的な恐怖。
あぁ、アレに立ち向かってはいけないと誰もが思う。
しかし、誰も足を掬わせようとはしない。
それは、魔術師として、人間として、上に立つものとしての矜持。
進んでこの戦いに挑んだ者たちの覚悟そのもの・・・・・・!
「―――『
真名開放。
それは英雄が英雄たる証。
英雄自身が保持する武装、はたまた、自身が積み上げた武功、逸話を基にした『最強の幻想(ラスト・ファンタズム)』。
しかし、それを持つのはセイバーだけではない・・・・・・!
「『
瞬間、ランサーの持つ双剣の片割れから黒の瘴気が漏れ出す。
その瘴気をあろうことか斬撃にしてランサーは放つ!
「―――セイバー!」
斬撃そのものはどうということはない、それはセイバーも七海も分かっている。
セイバーに当たった斬撃は霧散し、セイバ-に傷一つつかない。
だがその結果は着実に発揮していた。
「―――!!」
霧散した瘴気はセイバーにまとわりつき、一瞬、ほんの一時、セイバーの動きが鈍る。
たった一瞬の出来事、されど一瞬のこと。
その一瞬は他の者にとっての千載一遇の好機他ならない・・・・・・!
「ライダー!」
「心得ております」
「■■■■―――!」
あるものは後退、あるものは防御に移る。
そして―――
「―――『
―――神が創りしその溶鉄の剣は放たれた。
『
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:100人
この世でもっとも優れた騎士にしか抜けないと呼ばれた剣。
ランサーは真の担い手にもかかわらずこの剣を引き抜き自らの物とした。
真名開放により、呪いの瘴気を纏わせ、瘴気に触れたもののステータスをワンランク減少させ、幸運値を最低ランクまで低下させる。
この世でもっとも愛しい者を殺すと云われており、ランサーは最愛の弟をこの剣で殺した。
『
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:3~99 最大捕捉:1000人
鍛冶神によって鍛えられ、父の仇を殺すときに使われたセイバーの剣。
膨大な質量の灼熱した熔鉄を刀身の中に収めているため、
攻撃の際にその強大な熱量による追加ダメージを敵に与える。
また真名開放によって、刀身に収められている灼熱した鉄を散弾のように解き放つ。
熔鉄の雨が広範囲に飛び散ることで被害を拡大させ、対城規模の破壊を行うことが可能。
かつて海を赤く染めたという灼熱の剣。
【没鯖】
【元ネタ】旧約聖書
【CLASS】アーチャー(ランサー)
【マスター】
【真名】レミエル
【性別】女性
【身長・体重】160cm・48kg
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷A+ 魔力B 幸運E 宝具A
【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。
【固有スキル】
幻術:A+
魔法形体の一つ。
個人から大衆を欺く、偽装能力。
アーチャーは神の代わりとして、その啓示(黙示)を授ける役割を冠していた。
魔力放出(雷):A
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
アーチャーの場合、肉体や武器に雷を纏わせ、あるいは形成しダメージを与えることが出来る。
神性:―
かつて『神の雷霆』の異名を持つ天使であったが、堕天したため現在このスキルは失われている。
【宝具】
『神の雷霆(レミエル)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1人
神の雷霆と称されたレミエルの雷。
戦闘時、魔力放出(雷)を使用時のみ発動。レミエルの敏捷をA++(雷速と同等)とする。
自身から生成する雷のほか、雷雲を操る事を可能とし、ダメージを与えるほか一定確立でスタン(気絶)を与えることもある。
【没理由】
悪くはない。
悪くはないが、これでは勝ち抜けないと悟った・・・・・・。
雷を射出するアーチャー、ちょっと邪道かな。
宝具も改良の余地あり。