「私の、私の自由は何処!?」
慟哭する少女、誰もが見とれるその美しい髪を振り回し、少女は叫ぶ。
「あなたの愛なんて欲しくない! 帰りたい! 帰りたいの! フェニキアに・・・・・・、パパとママの所に・・・・・・!」
幼き少女は涙を流し、両手で顔を覆う。
『愛しき■■■■よ、泣かないでおくれ』
「―――誰のせいだと!」
『愛しき■■■■よ、家族が恋しいか、ならば与えよう。君と私の子だ』
「いや! 貴方の子なんて産みたくない!」
『ここは、君の島だ。君の国だ、■■■■―――』
なんという横暴、なんという傲慢。
しかし彼は許される、彼の言うことは絶対―――。
『欲するならば与えよう。君が望むモノはすべて与えよう。この私(神)に不可能はない』
違う、彼は絶対に私のほしいものはくれない。
彼女は知っていた、自分のことだから、何より知っていた。
『だから君はもう、
静寂に包まれた街頭。
ゆっくりと滴り落ちる血痕。
「―――!」
「ッチ・・・・・・!」
耳障りな舌打ちは誰がしたのか、レイヴ・ロザンはただ呆然とソレを見つめていた。
「外したか・・・・・・!」
流れゆく金糸の髪は血に濡れ、とめどなく流れゆく血は大きな水溜まりを作る。
「何故だ・・・・・・、何故かばった・・・・・・! エウロペ!」
「―――」
身体が熱く、熱を発する。
彼女には分かる、だってそれはすでに一度経験したからだ。
―――私がほしかったものはなんだっただろう。
ろくに動かすことの出来ない身体の代わり、頭は妙に冴えていて、世界がゆっくりと動く。
(あぁ、いけませんよ。マスター、アサシンが逃げてしまいます・・・・・・。それと、そんなに真名を言わなくていいですよ。正体が、ばれちゃいますよ)
何度も、何度も、彼女のマスターは彼女の名を呼ぶ。
余裕ぶった態度をかなぐり投げ、必死に呼び続ける。
ライダーにはそれが好ましく思えた。
なぜ、ライダーはマスターをかばったのか。
にじむ視界の中、ライダーは思考する。
彼は―――レイヴは彼女にとってどのような存在であっただろう。
はじめてあったときは、少しだけ失望した。
何処までも余裕ぶって、自身が選ばれた人間のように振舞う傲慢さ。
だからだろうか、彼をオリンポスの神々と重ねてしまったのは・・・・・・。
「―――何をしている! 追えッ! ラエラプス!」
しかし、猟犬は動かない。
医術:B
現代医学に基づいた治療法。
解剖学に基づき人体の構造を熟知しており、瀕死の重傷であろうと生還させることが可能。
『薬学』にも精通し、催眠療法も得意とし、封じられた記憶を取り戻すことも可能。
また、本職は精神科医であり、メンタルケアや思考の誘導などその能力は多岐にわたる。
それはアサシンのスキルにあった。
冷静に考えて相手は暗殺、諜報に特化したサーヴァント。
猟犬が噛み付いた瞬間、持ち手の毒を仕込むなどアサシンにとって造作もないこと。
「―――タロス! あの薄汚い暗殺者を追え・・・・・・!」
しかし、巨人は動かない。
巨人はライダーの宝具。
所有権はライダーにあり、それはレイヴのものではないからだ。
本来なら、レイヴはヒステリックにわめき散らしながら怒っていただろう事だったが、今の彼にそのような余裕はない。
目を見開いて、患部の衣服を剥ぐレイヴ。
「大丈夫・・・・・・、助ける・・・・・・! 助ける・・・・・・!」
レイヴ・ロザンは天才だ。
魔術師としては超一流の才覚を持つ時計塔の貴族にふさわしく、魔術属性は炎と水の二重属性。
当然、治療の魔術も踏襲済みだ、だが、しかし。
英雄という幻想に傷つけられた彼女の肉体はすでに滅びへと向かう。
霊核の損傷。
いくらその名を歴史に刻んだ英雄といえど、それを傷つけられてはどうしようもない。
加え、相手はエウロペ。
彼女自身、これといった武勇的逸話の持たない英雄。
そう、彼女自身の能力はただの少女と変わりないのだ。
「助ける・・・・・・! 助かる・・・・・・! 塞がれ、塞がれ・・・・・・!」
あぁ、彼はわかっているのだろう。
もう、自分がどうしようもないことになってることを。
ボロボロと涙を零し、その両手で無理やり患部から溢れる血をとどめようとする。
「マス、ター・・・・・・」
「エウロペ・・・・・・、私は・・・・・・私は・・・・・・!」
―――君を助けられない。
その事実は深く、深く、レイヴの胸に突き刺さる。
レイヴ・ロザンは天才だ。
彼はその言葉の通り、何時だって周囲の期待に応えてきた。
努力だって怠らなかった。
いつか参戦するであろうこの戦いにだってすら、リサーチを怠らなかった。
そして、手に入れたのだ。
当初とは違うが、それでも、自身が手に入れた最高の人を。
それを、何も手を尽くせないまま失ってしまう。
それがあまりにも歯がゆくて、辛くて、悲しくてしょうがなかった。
挫折。
レイヴにとって、それは初めての経験であった。
(あぁ、そうか・・・・・・)
そんなレイヴの様子をもって、ライダーは確信する。
(彼は、アレとは違ったのね・・・・・・)
彼は、何処までも純粋だった。
だから、いつも好きな人の前でカッコつけていたのだ。
顔の表面に貼り付けていた仮面を取り外せば、彼という人間はそういうものだったのだ。
ライダーを好きにしたければ、とっくに出来ていただろうに、それをしなかったのは好きな人を悲しませたくなかったから。
そう、たったそれだけだったから、彼は常にライダーの意思を尊重してくれた。
違ったのだ、表面上似てるが、根本から違った。
彼女は気づかない振りしながら、きっと心の底で気づいていたのだ。
震える手がそっとレイヴの頬に触れる。
「ごめん・・・なさい・・・・・・、貴方の、気持ち・・・・・・気づいて、いたのに・・・・・・、いつも・・・、はぐらかして・・・・・・」
「いい、良いんだ・・・・・・! 頼む・・・・・・! 頼む・・・・・・、生きて・・・・・・! 生きてくれ・・・・・・!」
レイヴか気づかない。いや、気づきたくないのだろう。
すでに、彼女との別れが近づいているのを。
ライダーは笑顔を作り、そして、首を左右に振る。
彼女なりの精一杯のやせ我慢と配慮だった。
レイヴはいっそう顔色をなくし、蒼白となる。
「ねぇ、笑って・・・・・・レイヴ」
「エウ・・・ロペ・・・・・・」
レイヴにとって、ライダーに名前を呼ばれたのは初めてだった。
ライダーという女性は何時だってレイヴから一歩引いたところにいた。
彼女の生きた人生を知っていれば、それも当然と言えた。
だから、出来る限り配慮はしたし、いつか彼女から歩み寄ってきてくれると、そう信じていた。
それでも、その歩みが最期なんて嫌だ。
「顔を・・・・・・、見せて・・・レイヴ・・・・・・」
「・・・・・・それが、我が女王の頼みならば・・・・・・どうして、否といえましょう・・・・・・」
レイヴはライダーの手を握り締め、涙を拭い、笑顔をつくる。
いつもと変わらない、これまでも、これからも、いつも彼女に向ける笑顔。
これが最期なら・・・・・・。
もう、会えないとしたら。
精一杯の笑顔で送ろう。
彼女が辛くないように、笑っていけるように。
「あり・・・・・・が・・・とう・・・・・・」
もう、時間がない。
それでも、伝えることは伝えた。
まぶたの裏には、どこか平和でなんてことのない日々で。
すごく、楽しかったことを覚えている。
(貴方と、あえてよかった)
愛してる。なんて言わない。
こんないい男の一生の女になったら、彼がかわいそうだから。
(だから、私は、貴方の初恋の女性でありたい・・・・・・それくらい、望んでもいいでしょう?)
初恋は実らない。
どこかで聴いた言葉。
だが、今の彼女にはそれで十分。
(さよなら・・・・・・、私の初恋・・・・・・)
見つめあう目と目。
彼女は最期に、冷たい口付けをした・・・・・・。
【CLASS】ライダー
【マスター】レイヴ・ロザン
【真名】エウロペ
【性別】女性
【身長・体重】168cm・50kg
【属性】中立・中庸
【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具A++
【クラス別スキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
騎乗:A
幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。
【固有スキル】
魅了:B
かのゼウスに愛され、さまざまな宝具を与えられた美貌。
魔性の美貌により異性・同性を問わず惹きつける。
ランクBではほぼ対象の意思を無視して精神を支配する。
対魔力で抵抗可能。ただし自分の近親者には最初から無効である。
神々の加護:C(A+)
危機に瀕した際に神霊レベルの支援行使が行われる。
ゼウスのによる神の加護を受けているが、彼女はゼウスを嫌っているので、ランクが減少している。
■■■■:C
詳細不明
【Weapon】
『不尽の投槍』
幾ら投げても尽きることのない投槍。
幾らでも取り出すことができる。
【宝具】
『
ランク:A++ 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:500人
ゼウスの命により、ヘパイトスより生み出されたクレタ島を守る全長18mの青銅製守護者。
内側に流れる霊血により、常に灼熱を帯びている。
通常時はエウロペの周囲の空間に潜み、限定的な熱線放射及び投石によって主を守る。
『
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~3 最大捕捉:1人
ゼウスから与えられた猟犬。
探知能力と追跡能力に優れており、判定次第で気配遮断を看破しうる。
護衛もこなすが、戦闘力は高くない。
なお、エウロペはラエラプスと遠方からでも意思疎通が可能な装飾品を所持する