たった一つの願い事 わがまま少女あやの物語   作:まめた みか

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思っていたよりも時間が取れず、文章にするのに苦労しました。次話は水曜日か木曜日辺りには投稿したいと思います。


第二十一話 黄色い衣

 

 

「たたみの裏をめくーると、そこーはパーティー」

 

 

バックではジャラランとギターが鳴っている

 

 

「ありーもくもーもむか〜でも、みんなが集まるー」

 

 

何故だか小毬さんと恭介が舞台の上で出し物を披露していた。

 

ちなみに歌っているのが小毬さんで、その後ろでギターを弾いているのが恭介だ。

 

 

 

「沙耶さん、こっちこっち」

 

「こっちなのです」

 

 

そんな二人の様子にしばらく唖然としていたが、舞台そでからの声に正気を取り戻した。

 

 

見てみると、葉留佳とクーニャが手招きしている。

 

「おじいちゃん、あたしちょっとみんなの所に行ってくるね」

 

「うん、いっておいで」

 

 

おじいちゃんを席に案内した後、舞台の裏へ向かう。

 

そこには既にみんなが集合していた。

 

 

「隠し芸大会?」

 

 

「ああ、恭介のやつが急に言いだしてな」

 

「あいつのする事はいつも突然で、予想がつかないからな」

 

 

何をするか話し合った結果、みんなで協力して、何か出し物のような事をする事になったらしい。

 

 

「地域のお年寄り方との交流もリトルバスターズの大切な任務だ、って言ってたわよ」

 

棗先輩にも呆れたものね……と言いながら時代劇風の格好をして、カツラの位置を調節している二木さん

 

この人、ノリノリである。

 

 

「沙耶君、私も悪役として参加する。君も出たまえ」

 

 

唯に黄色い着物を渡された。

 

 

あれ? どこかで見たことのあるような衣装だ。これはひょっとして……

 

 

「印籠はここにある」

 

 

「水戸黄門かよっ!」

 

 

やっぱりそうだった

 

 

確かに時代劇はお年寄り受けが良いかもしれないけれど。

 

 

そもそも一体どうやって衣装なんかを用意したんだろう

 

「うおー、燃えてきたぜっ!」

 

「これが『いんろー』ですか~、初めて本物を見ました!」

 

 

理樹くんがここに居たら、『いや、本物ではない』と心の中でツッコミを入れた事だろう。

 

 

「まさに、わんだふぉー、じゃぱん! なのです」

 

 

とにかく見ての通り、真人くんとクーニャはやる気満々だった。

 

 

「カツラ、カツラーっと」

 

 

葉留佳も忙しく走り回っている。

 

 

ちなみに配役だが、助さんは葉留佳で二木さんは格さんらしい。

 

 

真人くんは木

 

(これはくじで決まった)

 

 

謙吾くんは悪徳大名に雇われている用心棒

 

鈴ちゃんはさらわれる町娘

 

 

クーニャは宿屋の女将

 

 

小毬さんがナレーター

 

 

ちなみに恭介は、唯の台詞の後に「その後はしっぽりむふふ、といきたいものですな」と付け加える小役人の役だ。

 

 

「皆さん、頑張って下さい」

 

 

演技指導兼監督が西園美魚さん。どうやら演劇の経験があるらしい。

 

 

理樹くんは担当になったおじいさんの部屋の掃除が忙しいとかで、ここには居ないので、総員11名での劇になる。

 

 

セリフを覚えている時間がないので、大まかな動きと流れだけを決め、あとは各自のアドリブで進行させるらしい。

 

 

恭介いわく「俺達リトルバスターズはアドリブでこそ輝く!」ということらしいのだが

 

 

…正直に言って、すごく不安だ。

 

顔をしかめていると、唯がつかつかと歩みよってきた。

 

 

「この劇の成功は恐らく、主役の沙耶くんと監督の西園女史に懸かっているだろう」

 

 

う……プレッシャーがかかるような事を

 

 

「まあ…、失敗してもいいや、くらいの気持ちで、気負わずに頑張りたまえ」

 

 

「フォローは私に任せて……な」

 

唯は、そう言って笑うと反対側の舞台そでに歩み去っていった。

 

 

『ジャーン!』

 

それとほぼ同時に一際大きなギター音が鳴り響く。

 

 

どうやら、ちょうど小毬さん達の出し物が終わったみたいだ。

 

 

「素晴らしい!」

 

 

「小毬ちゃ〜ん!」

 

 

お年寄りの方々が、お辞儀をしている小毬さん達に大きな拍手を送っている。

 

 

「ありがとうございました〜!」

 

準備で忙しくて、あまり聴けなかったけど、小毬さんのステージは大好評だったようだ。

 

 

「背景はこっちだ」

 

「おっしゃ」

 

謙吾くんと真人くんが大きな紙を準備する中、小毬さんと恭介が帰って来た。

 

クーニャと葉留佳が幕を閉め、最終準備を始める。

 

 

「頑張れよ、黄門様」

 

 

ギターを担いだ恭介に肩を叩かれた。

 

「うん、ありがと」

 

1つ頷いて舞台の上へと向かう。

 

 

 

「続いて生徒達による演劇、水戸黄門です」

 

 

あーちゃんのアナウンスと共に、ゆっくりと幕が開いた。

 

開演だ

 

 

『〜じーんせい』

 

 

「今は昔、水戸の光圀といふものありけり」

 

聞き覚えのあるテーマ曲と共に小毬さんのナレーションが流れ出した。

 

 

 

「お付きの2人と国を回りて、よろずの悪を成敗す」

 

 

「一行のゆく手には、何やら暗雲立ち込める気配。さて、一体何が待ち受けていることやら」

 

 

舞台がパッと明るくなる

 

 

 

始まりは二木さん演じる格さんのセリフだ

 

「御老公様、町が見えましてございます」

 

「今晩はこちらの町で宿を取る事と致しましょう」

 

 

「致しやしょー」

 

 

スキップする助さんと、あたしの歩幅に合わせて歩く格さんに連れられ、木(真人くん)の前を通り過ぎる。

 

「ざわ…ざわ……」

 

 

真人くんは既に汗だくになりながら、激しく木のセットを揺らしていた。

 

 

と、黒い服を着た謙吾くんと恭介が現れる。

 

ビリッと音がして、背景の大きな紙が、森の絵から町の絵に切り替わった。

 

「無事に森を抜けた一行がたどり着いたのは小さな港町」

 

 

再び小毬さんのナレーション。

 

「って、俺の出番はこれで終わりかよ!」

 

 

ツッコミを入れながら、真人くんが舞台裏に引っ込んだ。

 

 

観客のおじいさんおばあさん達の間から笑いが起こる。

 

 

よし、真人くんのおかげで掴みはオッケーだ。

 

 

「こんにちは、しばらくの部屋をお借りしたいのですが」

 

 

杖をつきながら、宿の女将役のクーニャに話し掛ける

 

 

「あんたみたいなえらいべっぴんさんが、うちみたいなおんぼろ宿屋に来てくれるなんて嬉しいねぇ」

 

 

「部屋は二階が空いてるよ。さ、ついて来な! なのです」

 

「おお、かたじけない」

 

 

「かたじけのうござる」

 

 

クーニャの動きに合わせて、舞台裏に引っ込む。

 

 

「一方、その頃」

 

 

小毬さんのナレーションが響き、舞台が暗転する。

 

 

 

「……ふっふっふ、あーはっはっはっは」

 

みんなの目が暗闇に慣れるまでの一瞬の間に、いつの間にか唯が舞台中央で仁王立ちをしていた。

 

スポットライトが唯を照らす

 

 

「いよいよこの私の計画を実行する時がやってきた」

 

 

「その後はしっぽりむふふ、といきたいものですな」

 

横に居るのは恭介演じる小役人。

 

 

「町のかわいい娘をさらって、ひゃっほい、こいつはうっはうはだぜ! と洒落込むのだ」

 

 

「その後はしっぽりむふふ、といきたいものですな」

 

 

何となく心配だった悪巧みをする唯と恭介のシーンだったが、2人とも見事に悪役を演じている。

 

 

「よし、計画は明日決行だ。剣布留鹿能ヶ無侍(けんふるしかのうがないざむらい)にも、そう伝えておけ」

 

 

「その後はしっぽりむふふ、といきたいものですな」

 

 

「ふふふ、明日が楽しみだな」

 

唯演じる悪代官は、はっはっはと高笑いしながら悠々と舞台そでへ歩いていく。

 

 

「その後は…しっぽりむふふ、といきたいものですな」

 

 

恭介もその後に続いた。

 

 

舞台が徐々に明るくなり、

 

 

「所変わって町の宿屋」

 

ナレーションが響いた。

 

 

「猫ー、待てー」

 

いよいよ鈴ちゃんの出番だ。

 

 

舞台中央の辺りをくるくる走っている鈴ちゃんを追う形であたし達も舞台へ上る。

 

 

「可愛らしい子ですな」

 

 

「あの子は鈴って名前でね。誰に似たのかわんぱくに育っちまって、いつも手を焼いてるんだよ」

 

 

クーニャ演じる宿屋の女将と、そのまま二言三言、言葉を交わしていると、

 

 

「ご隠居、我々は少々野暮用を済ませて参ります」

 

背後に控えていた二木さんが頭を下げた。

 

 

「気を付けて」

 

「はい」

 

「いってらっしゃーい」

 

手を振る葉留佳

 

 

「あなたも一緒に来るのよ」

 

 

「うう、やっぱしか……」

 

 

葉留佳も二木さんに引きずられ、舞台そでに消えていった。

 

 

ここで、助さんと格さんは情報を集めに行ったという設定だ。黄門様は拠点となる宿屋からあまり動かず、2人が集めた情報を整理する役目を負う。

 

 

劇を続けよう

 

「この町で最近、何か事件がありませんでしたか」

 

 

「事件、事件……秋刀魚が値上がりしたくらいかねぇ」

 

 

「いえ、そういった事では無く」

 

「そうさねぇ……」

 

クーニャが考え込んでいる間に、一度大きく辺りを見回す。

 

 

「おや…鈴ちゃんの姿が見えないようですが」

 

 

「いつものように猫を追い掛けて辺りを走り回っているんだろうさ、なのです」

 

 

「さあ、部屋に寝床を用意するよ」

 

「これはかたじけない」

 

 

 

「一夜あけて」

 

 

小毬さんのナレーション

 

 

 

「鈴ちゃんが帰って来ていない?」

 

「ええ」

 

 

「ご隠居、我々が得た情報によりますとこの町の代官は私腹を肥やし、やりたい放題だとか」

 

「二丁目の斉藤さんが言っておりました」

 

 

「まさか、うちの鈴は……」

 

 

青ざめるクーニャ

 

演技が上手だ。

 

 

「女将、落ち着いて下さい、まだそうと決まった訳ではありません」

 

「ご隠居のおっしゃる通りです、とりあえず我々が調べて参ります」

 

「頼みましたよ、助さん格さん」

 

「お任せを」

「合点承知っ!」

 

 

一度照明が落とされ、真人くんの手によって幕が閉められた。

 

舞台の準備をしないといけないので、一度舞台から降りる。

 

「能美さんは小道具、宮沢さんは背景の準備を」

 

「はいっ!」

「これだな」

 

 

「朱鷺戸さん達は今の間に、セリフとアクションの最終確認を」

 

「わかったわ」

 

 

この後の流れは勧善懲悪モノらしく悪代官を懲らしめ、捕らわれた娘を無事に帰して終了だ。

 

この分なら結構楽に終わりそう…

 

なんてあたしの甘い考えは、もちろん粉々に打ち砕かれる事になる。

 





沙耶「かーみはだーれをすくいたもー」

謙吾「あれは何をやってるんだ?」

真人「沙耶のテーマ曲があるとしたら、あんな歌詞を付けるんだとよ」

謙吾「深くは詮索しまい」

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