おまえんちヒールないの?   作:野井ぷら

18 / 36
居ない人返事して

 最初に会った時からそうなんじゃないかって気はしてたんだけど、ジョナサンさんは結構変な人だ。外国の人なのに日本語がペラペラなのも変だし、喋り方がラヴィーネばりに偉そうなのも変だ。桐原さん曰く「あれはキャラ付けしてるだけで素じゃないです。VUtuberやってるあたしがいうんだから間違いないです」とのことだけど(VUtuberってなんだろう)、まあ会話に難があるわけじゃないから別にいいか。むしろ英語で話しかけられた時の方が困るまである。

 何より変なのは、戦って負けた俺に念動力を師事しにきたことだ。なんでも桐原さんがやってるゾボラの弦を使った練習を見てピンと来たらしい。あっという間に近場のホテルに住処を作って足しげく通う妙な行動力はマサヒロにも通じる変な人だ。

 

 桐原さんとの特訓にジョナサンさんが混ざるようになって1週間が経っている。大人の外国人と年上のお姉さんと中学生の俺が奥卵の公園に集合して各々が好き勝手訓練する。知らない人からしたらけっこー奇妙な集まりだと思う。

 元々の目的だった桐原さんの念動力制御も最近は落ち着いてきていて、念動力の精度そのものも上がっている。けど偶に行き帰りの電車でやらかして電灯を割ってしまったりするらしい。

 

「どーですかメイジくんさんジョナサンさんさん! 見てください我が渾身の力作を!」

「OH、ボーティガールキリハラ。これは何というキャラクターなのだ?」

「よくぞ聞いてくれました! 大手VUtuberの兎野かしらちゃんです!」

 

 そう言って桐原さんはなんかアニメの絵っぽい絵が描かれたゾボラの弦を見せてきた。凄いな。ずっと下向いてなんかやってるなと思ったら編みこんだんだ。俺がやった目がチカチカするアート(?)ワッペンよりよほど出来がいい。

 凄いね桐原さん。桐原さんって絵とか描けるんだ。

 

「ふふーん。これでも時間だけはありましたからね。配信者として絵心は必須なんですぞ~メイジくんさん」

「念動力でゾボラの弦を編んだなら実際凄いよねこれ。イラストも可愛いね」

「むふー。かしらちゃんは推しなのです」

 

 うーん、これだけ出来るようになったらもうこの特訓に来る必要ないんじゃない? 遠くて大変でしょ。

 

「そ、そそそ、それはそうなのですがメイジくんさん……あ、あたしとしてはなんといいますか、この生活が結構気に入ってて……あ、ほら! あたしって出不精だったから結構ふと、ん、んん! ぽっちゃりしてましたけど、ここに通うようになってからちょっと痩せたんですよ!」

 

 くるっと回る桐原さん。相変わらずムチムチぽよんぽよんしてて正直服を着ていると見た目には差が分からないけど、重さで感知してみると最初に会った時より5キロくらい「何故それを!?」減ってるみたいだった。念動力って使うと魔力使うしね。

 

「それでは我もボーティガールという呼び方を改めねばならんな。Msキリハラ」

「ジョナサンさんさんにそんな風に呼ばれると、な、なんか急に恥ずかしくなってきました……あ、いやそうじゃなくて! 出来ればこれからもここに来たいんです。その、迷惑じゃなければでいいんですけど……」

「別にここに集まらなくてもいいんじゃない? 桐原さんはもう紐状の物なら大体制御出来るようになってるから、次はそれ以外の対物制御だね。だけど訓練ばっかりでもつまらないし普通に遊んだりしようよ」

「ホ、ホホホホ! だ、男子中学生と遊ぶ……ウヒヒヒ……」

 

 急に笑い出した。桐原さんはたまにきしょい。

 

「我は今しばらくは鍛錬の時間にあてる事にしている。我が身の不甲斐なさを味わったばかりだからな。A国最強と呼ばれる女史にも勝てるくらいの実力を身に付けたいものだ」

 

 ジョナサンさんは元から使えてただけあって、元々の精度が桐原さんとは比べ物にならないくらい高かった。まあ時間を触れる念動力者だしね。訓練で伸びる能力もやっぱり早い。

 でもA国最強か……いいなぁ……俺も三界無敵とか言われてみてぇ……。

 

「ではもう暫くはこの集まりを続けたいのです!」

「いいよ。元から桐原さんのための時間だし、俺も見てて楽しいから」

「Ms桐原よ。貴女は我が姉弟子となるのだから相応の実力を兼ね備えてもらわねば困るのだ。これからも我は協力する故、日々共に研鑽を詰もうではないか」

「ジョナサンさんさん……! 努力、友情、勝利。これが人生の方程式なんですね……! あたしは今我が世の春をイケメンの外国人とナマイキショタに囲まれて過ごしている!」

 

 なんかよく分からないけど桐原さんが楽しそうでよかった。出会ったころみたいに暗い顔してない方がいいしね。

 そういう訳でこの集まりは続くことになった。

 

 

 のだけど、その翌日。時間になっても二人は待ち合わせ場所に現れていない。

 あれー、土曜日だから休みにしたのかな? 今までは来てたんだけどなぁ。

 なんか二人とも用事でもあったんだろうか。連絡くれればよかったのに。

 とスマホを見ると丁度着信があった。桐原さんかな? あれ、村木さんだ。

 

「はいもしもし」

『メイジ。お前桐原あやかとジョナサン・モストの居場所を知っているか』

「桐原さんとジョナサンさん? 今ちょうど待ち合わせの時間に来なかったから連絡してみようかと思っていたところだけど」

『やはりそうか。いいかよく聞け。

 桐原あやかとジョナサン・モストの両名共に、昨夜18時以降の行方が確認出来ていない。公安と対魔特別対策課はA国の念動力者による誘拐と見ている。

 解決にお前の力が必要だ。手を貸せメイジ』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。