おまえんちヒールないの?   作:野井ぷら

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顔見えてないから顔面セーフ

「そういやラヴィーネと初めて会ったときもこの辺だったよな」

「もしかすると我が家の秘宝を隠している場所に近かったから警戒しての反応だったのか?」

 

 それはありそうだな。俺もメッコの実を隠していた場所を妹に漁られたときはすげー動揺したことがある。あれ以来家の中に食い物を隠すのは止めにした。木の洞に隠して置いたら猪に漁られていたときは泣いたっけな……。

 

「位置は間違いないが、この指針では方向しかわからないな。この建物はあまりにも巨大だ。どの階層に隠されているかを探すとなると骨が折れるぞ」

「あーまぁそれなら何とかなるだろ。ちょっとその方位指針かして」

 

 要はこの方位指針に登録されている魔力を探し出せば良いんだよな。ソルソル、ム、ワイ、キ、カラ、イ、ドムフ、メ、シンで採って、ミ、シン。良し出来た。

 

「これでいいな。んー、地下だな。結構深いぞ」

「ホームページで調べると、都庁の地下は三階までみたいだね。駐車場だけどそれより深い?」

「おいまてタケシ早まるな。メイジ、お前今何をやった」

 

 何って立体的におまえんちのお宝を探す探知をやってるんだけど。

 

「そんなことが出来るなら先に言え! だいたいそれが出来るならなぜ今までやらなかった!」

「いや大体の場所見つけるのに俺だけ方角分かっても納得感薄いだろ」

「何故こういう時だけ急にもっともらしいことを言うのだ……わかった。先導は任せる。私は認識阻害の魔術を使う」

「えーあの雑なやつぅ?」

「雑ではない! お前の術が複雑すぎるのだ! だいたいお前の術では効果が高すぎて我々がお互いを認識できなくなるだろう!」

「た、たしかに……」

 

 初めて気づいたぞその欠陥。この前かくれんぼやった時に見せておいて良かった。術使ったら本気で見つけられなくてラヴィーゼ半泣きだったしな。でも普通に隠れてるだけのタケシを見つけられないのはどーかと思う。

 ところで。

 

「なあタケシ。これって『ふほーしんにゅう』になるのか?」

「まあそうだね。でもバレなきゃいいんじゃない?」

「俺嫌だぞこの年でゼンカモノになるの。ラヴィーネ、ちゃんと姿見えないようにしてくれよ。心配だから俺フード被っとこ」

「心配するな。役目は果たす」

 

 そんな感じで探索は始まった。

 

 

「オン、ミル、ソ、コ、コ、ナン」

 

 地下駐車場から奥につながる扉があり、そこから暫く階段を進んでいくと建物の中に出た。探査で調べてみたところ明かりは付いてるし人の気配もあるけど、一部屋に固まって過ごしているな。何やってんだろう。鍵は魔術的なのがかかってはいたけど、トントン教授のなぞなぞの方が百倍難しいような出来だった。

 前に見かけた借金取りみたいな黒服の人たちもそうだったけど、もしかして魔術協会の人たちって初心者の集まりなのか?

 暫く進んだり曲がったり下りたりして、ようやく目的の部屋にたどり着いた。

 扉を指さして頷く。二人とも頷いたのを確認して扉を開ける。

 何もない天井の低い体育館みたいな広さの部屋の中央で、宝石とかをしまっておくショーケースがぽつんと設置されていた。中には黒い水晶みたいな球体が鎮座している。探知魔術はあの水晶に向かって矢印を向けているから、あれがラヴィーネが探していた『メラージュの涙』みたいだ。

 

「よかった。無事に見つかった……!」

「あ、ラヴィーネちょいま」

 

ウーウーウー!

 

 止めようと思うより前にラヴィーネがショーケースに触れてしまった。探し物が見つかると所かまわず取りに行きたくなるよな。気持ちはわかる。俺もくるみ割り用のとんかち見つけてその上に乗っかってたキリやらノコギリやらハンマーに気づかないで大変な目にあったことがある。

 触るとどこかに連絡が行く仕掛けがされていたのだけれど、警報に繋がっていたみたいだ。めっちゃうるさい。

 もうバレたみたいだしいいよな、力技で。ショーケースを拳で叩き割って中身をラヴィーネに投げて寄越す。

 

「投げるな! 家宝だぞ!」

「今度は失くすなよ。タケシんちで待ってて。俺も後から行くから」

「失くしていない。盗まれたのだ! て、え――」

 

 オド、イル、シン、マヌ、オ。

 

「タケシも家で待っててくれよな」

「えっ、メイジくん今なにしたの!?」

「家まで飛ばしたんだよ。ちょっと急ぐぞ。酔うかもしれないけど怒るなよ?」

「いやそういう話じゃな――」

 

 おー流石に二人も遠くに飛ばすとゴッソリ減るな。

 シャッターが下りた出入口が蹴り飛ばされて開いたのはタケシを転移させたのと同時だった。

 廊下の明かりを逆光に強そうな登場をしたのは普通のスーツを来たおじさんだった。

 ただ、普通のおじさんっていうには目がちょっと戦う人の目をしすぎて違和感がすごい。去年うちの集落に来た剣士の人みたいな目してる。

 

「メイジとタケシの色々チャンネルのメイジだな」

 

 あっ、こんな時まで俺その呼ばれ方するのか。

 俺は『雷神の息子』というかっこいい二つ名があるから是非そっちで呼んで欲しい。てかフード被ってるのになぜバレた。

 いやそうか。カマかけられてるのか。

 

「それはどうかな」

「御託はいい。五体満足で帰れると思うなよクソガキ」

 

 言うが早いか立ち昇る魔力。

 なーんだ、やっぱ都会にも居るじゃん。

 ちゃんとした魔術師。

 

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