性格とか大幅に変わってます。当たり前ですけど
人は生まれながらに平等じゃない。
「なんだよそのコセー、ショッボ!!」
「ひでぇ!!でもよ、あいつよりマシだろ!?」
これが齢4歳にして知った。世界の真実。
「なにせコセーがまだ出てないんだぜ!?」
「ムコセーなんじゃねーの?あははは」
そして、これが
「デクのコセーもショボイよなー」
「あはは、確かに強くないよね、でも」
爆豪勝己が初めて知った、尊敬だった。
「僕はこのコセーでヒーローになる!!」
・緑谷出久(4)
個性「引き寄せ」
近くにある物を引き寄せることが出来る!!ただし100gまで!!落っことしたスマホを引き寄せることは出来ないぞ!!
◆
「くるんじゃねええええええ!!!」
新たなシーズンの始まり、麗かな春の日差しが降り注ぐ爽やかな朝。を、ぶち壊す絶叫が響いていた。
とは言えこの個性社会を生きる者たちにとっては日常的、では無いにしろ、精々毎年のようにやってくる台風のようなものであり、つまるところ電車が止まるくらいの影響しか受けない。直撃してない台風などそんなものである。
通学路への影響がない以上、爆豪勝己にとってもそれは彼岸の火事でしかなかった。
「個性使ってやることが犯罪か。底が知れるわ」
「お?随分厳しい発言だなこのリアリストめ!!」
「あん?ああ、・・・まあな」
話を聞くに暴れているのはどうやら怪獣化の個性を持ったヴィランらしい。ヒーロー向きかと言われれば首を傾げる個性だが、理性を失うわけでもないのなら活用法はあるだろう。並の増強型個性を上回るパワーを発揮できるのだからはっきり言って強個性だ。
「碌に鍛えもしない個性でヒーローに勝てるなんざ、夢見すぎだ」
「そう言うこったな!!ホレ来た新進気鋭の樹木ヒーロー、シンリンカムイだ」
「アレに拘束されたんじゃぁもう終わ・・・」
「キャニオンカノン!!」
「「!!?」」
怪獣ヴィランは突如現れたデカ女によって蹴り飛ばされた。きっとヴィランも自分よりも大きいヒーローに倒されるとは思ってもよるまい。
線路や道路を粉砕しつつも無事?ヴィランを倒したデカ女はデビュー初日からニッチなファンを獲得していた。
「中々衝撃的な絵だったな」
「だな」
◆
「えーおまえらも3年ということで!!本格的に将来を考えていく時期だ!!」
やけにテンションの高い担任教師は気のいい先生と慕われている。慕われてはいる。
ちょくちょくテンションに任せて口を滑らすわ、手を滑らすわと教師としては二流であるが。
「今から進路希望のプリント配るが 皆!!!」
ほら、くるぞ・・・!!
「だいたいヒーロー科志望だよね」
ハイやった。配ると言った筈のプリントは一枚残らずぶちまけられた。最早恒例行事。生徒達も慣れたもので、テンションに任せて個性を見せびらかしている。
個性を持っていない、一人を除いて。
「うんうん皆良い個性だ。でも校内で個性発動は原則禁止な!」
「あれ?じゃあ僕も個性止めたほうがいいですか?」
「ああ待て待て緑谷、先生が許す。配ってしまってくれ」
「僕はプリント配布係じゃないんですけど・・・」
ヒラヒラとぶちまけられたプリントが舞い踊っていた教室だったが、一枚たりとも床に落ちることは無かった。不自然な軌道を描きながらヒラリ、ヒラリ、スイーみたいな感じで全てのプリントが教室内の生徒達へと行き渡った。
当然ポンコツ教師のプリント配布スキルが神掛かっている訳ではない。
「お、センキュー緑谷!!」
「相変わらず個性の使い方上手いな!!」
「流石に慣れたよ。もう数十回はやったよ?」
・緑谷出久(14)
個性「物体操作」
見える範囲にあるものを自由自在に操る事が出来る!!ただし、100gまで!!落っことしたスマホは拾えないぞ!!
「いやすまんすまん、ついな。でも流石緑谷だ!!雄英高志望なだけある!!」
手も滑るなら口も滑る。最早お家芸となったポンコツ具合は誰も取り合わない。今驚くべきは緑谷出久の進路である。
『雄英高校』誰もが知る超難関校。トップヒーローの前提条件とすら言われ、西の士傑と比べても頭一つ抜けたヒーロー育成学校である。
この折寺中学でも第一志望に名前を書いては担任に「絶対に無理だ、諦めろ」と言われ、心が折れたという先輩の話は一度くらい耳にする話だ。
そこに、緑谷出久は挑むらしい。
「国立の!?今年偏差値79だぞ!!?」「倍率も毎度やべーんだろ!?」「3000倍は堅いってよ!!」「119960人も落ちるの!!?」「むしろ試験官が凄いなそれ・・・」
緑谷出久は自分で自分に配った進路調査書を一瞥すると、オールマイトデザインのシャープペンシルを手にとって記入。即提出した。
「ヒーローになるならやっぱり雄英一択でしょ。幸いにも通学圏内だしね」
クラスメイト達は感嘆のため息を漏らし、ポンコツ教師は満足げにその進路調査書を受け取った。
そして、ポンコツする。
「あ、そういやあ爆豪も雄英志望だったな」
「っち」
クラス中の視線は一斉に爆豪に向いた。だが、先ほどの緑谷出久に向けた視線とは種類が違う。先ほどはチャレンジャーに対する尊敬や期待であり、今爆豪勝己に向いている視線は道化に対する嘲笑だ。
「「「「「「本気で!!?」」」」」」
「あ゛!!?文句あるかよ?」
「「「「「「無いです」」」」」」」
ほんの少し睨みを利かせて脅してやれば黙る程度のモブ、もといクラスメイトに爆豪勝己が怯んでやる理由は毛ほども無い。
この学校においての有名人と言えばやはり爆豪勝己なのだ。
曰く無個性でありながら喧嘩で負けたことが無い。
曰く人を殴るときに発動する個性をもっている。
曰く人を殴るためにヒーローを目指している。
どれも、悪い噂なのは間違いなかった。
「でもよお」「無個性なのに」「受かるわけ無いじゃん」「対人試験なら受かるかもよ?」
「「「あはは」」」
唯一人、そんな噂を一切受け付けない男が居た。
「先生。毎度毎度手やら口やら滑らせるの、大概にしてくださいね」
緑谷出久。このクラスの中心人物であり、お人よしで、温和な性格として知られている。そんな彼が発した怒声でもなければ大声ですらない注意勧告は、クラスの空気感を刈り取った。
「す、すまん」
「・・・」
「えっと、爆豪もごめんな?」
「・・・気にしてねぇよ」
死んだ空気を入れ替えようとホームルームの締めとして進路調査書はちゃんと真剣に考えろよ。といった当たり障りの無い話をしてポンコツは教室を後にした。
◆
「いやーイズッち流石の貫禄だったな!!」
「そうそう!!流石ヒーロー志望って感じたったよ!!」
「あはは、うれしいけど、僕なんかに貫禄なんてあるかな」
「ある。あった。どっかの恫喝ヤローとは違うぜ」
「ねー!!」
「あはは。まぁ、かっちゃんの口の悪さは治したほうが良いよね」
「だってよ爆豪!!未来のヒーロー出久君が言ってるぜ!!」
「っせえよ」
「だはは!!あ、そうだイズッちカラオケいかねー?」
「ごめん、母さんに買い物頼まれてるんだ。ごめんね?」
「孝行だね~。おう、分かった、またな!!」
荷物をまとめ、帰ってからのトレーニングメニューを考えながら教室を出る。寸前。
「かっちゃん」
「あ?」
「がんばろうね!!」
それだけ言って走り去っていく緑谷出久。爆豪勝己は、彼の目が嫌いだった。
一人で帰る通学路、話す相手が居ないとなると、どうしてもやることが自問自答に行き着いてしまう。
『ヒーロー』
誰もが憧れる超人気職業。それは運動や勉強が出来る程度ではなれはしない。
個性という、千差万別強弱優劣の存在する超常の力を使いこなす必要がある。
『足の小指の関節は1つだけ、もしかしたら分かり難い個性があるのかもしれない』
『けれど、ここまで調べて分からないなら、もう諦めたほうが良いかもね』
『無個性かもしれないこと、ちゃんと向き合いなさい』
6歳のとき、病院で医者から言われた言葉だった。言ってしまえば最後通告。
爆豪勝己はヒーローになれ無いのだ。
ふざけんな。
今日は妙に苛立つ。そんな感覚を抱きながら爆豪は目に留まったコンビニの中に入っていく。
自動ドアを潜り抜けた先、ブラックの缶コーヒーをレジに持って・・・行こうとした。
「オイ待て」
「え?」
心底不思議そうな顔をした幼女の手には安価なパン。未会計であることは間違いない。そしてここは自動ドアの真下である。実に堂々とした万引きだった。
「・・・万引きは犯罪だ」
そう言って爆豪はパンを掠め取り、ついでに棚にあった菓子パンを適当に鷲掴みにして目的の缶コーヒーを手にとってレジに置いた。
手早く会計を済ませレジ袋から缶コーヒーを抜き取る。
「ほらよ」
「あ、りがと」
「おう」
パンでパンパンになったレジ袋を幼女に押し付た。挙動不審な幼女(不審者なのは爆豪の方だが)は恐る恐る袋を受け取り、トボトボと歩き去っていった。
・・・年頃は4、5才。風呂には数日入ってないだろう。着ていた赤のワンピースも皺くちゃだ。
「俺に、何が出来る」
ネグレクト。実に胸糞悪い単語だ。通報するなら警察か?児童相談所か?ネグレクトされているかも知れない子供を見つけました。とでも?調査ぐらいはするだろうが、果たしてそれでいいのだろうか。
・・・少なくとも、何もしないことが間違っていることは分かっている。
「帰るか」
爆豪は買った缶コーヒーをポケットに突っ込んだ。
そんな爆豪の視界に赤い鮮血が、血飛沫が映った。
「ゴッホ!!ゲホゲホ!!」
「うわっ!!なんだガイコツ!!?なんだてめぇ!!?血ィ吐いてんじゃねえか!!?」
コンビニを出てすぐ、危篤状態のガイコツ男とエンカウントした。噴出した血は辛うじて制服にはかからなかった。もし血の染みなど付けようものならば母から問答無用で拳骨三発は覚悟せねばならなかっただろう。
そんなことより救急車だ。きっと病院から抜け出してきた何かしらの末期患者だと爆豪は判断した。間違っては居ない。
迅速な判断にてスマホを取り出し淀みなく119。コールボタンを押すギリギリのタイミングで腕を掴まれて阻止された。
「ああ待て待て少年、持病なんだ。ふぅ、いやすまない、心配をかけたね。うん、迅速な119。感心だね少年」
「全くだよ、なんで入院してねえんだ、どう考えても出歩いていい状態じゃねぇだろてめぇ」
「いやははは、全くその通りだ!!その通りなんだけど、口悪いね君。そんなんじゃヒーローにはなれないぞ」
恐らく若者はヒーローに憧れているという一般的意見からでた冗句なのだろう。実際爆豪勝己はヒーローを目指している。それは事実だ。だがそいう本音を語れないのが中学三年生、思春期というものだ。
「っけ、俺は無個性だぞ」
「むむ、そうだったのか」
いまどき珍しい。と呟きながら押し黙ったガイコツ、余計な励ましや同情を向けないだけきっと誠実な大人なのだろう。死にかけの体で病院を抜け出す破滅願望はあるらしいが。
とはいえそんなことは爆豪勝己には関係ない。大丈夫というならば自分の世話は自分でしてもらおう。そう考え、爆豪勝己は帰路に戻る。
「っち」
舌打ちを一つ、零しながら。
遠回りの予定を止めたところで更にガイコツが言葉を発する。
とても重要な情報を。
「待ちたまえ少年!!この近辺に強盗犯が逃走したらしい、ヘドロ状のヴィランだ!!捕まるまで・・・」
「それを先に言えよクソッタレ!!」
爆豪勝己は鞄を捨てて走り出した。仮定ではあるが、ネグレクトを受けて栄養失調状態の子供だ。そう遠くには行ってない筈だ。
「誰かぁ!!!!助けて!!!!」
「ホンットにクソだな!!今日は!!」
悲鳴が上がった。救けを求める声を聞いた。ならば爆豪勝己は動かなくてはならない。
ヒーローになりたいから。
声の聞こえた方向、路地裏を全速力で疾走する。障害物はあるがパルクールの技術で一切の減速をせずに駆け抜ける。
「なんっつぅ場所行きやがるあのガキ!!」
室外機を飛び越え、ゴミ袋をかわし、開いたマンホールを飛び越えた先で人影?が視界に入る。
「ここまでくりゃあ流石に巻いただろあのバケモノめ・・・!!」
「やだ、こないで・・・!!」
話に聞いた流動体のヴィランと先ほどの幼女が視界に入る。状況は最悪。ガキは物陰に隠れているが、ヘドロのヴィランはすぐそこにいる。見つかるのは時間の問題、いや、今見つかっても可笑しくない。
「テメェそこで何やってやがる!!」
賭けだった。見つかったことに警戒し、逃げてくれればよかった。だがもしも
「!! 隠れ蓑を探していたんだよ!!ありがとう!!」
もしも人質として捕らえられたら対抗手段は無かった。
「殴れる訳ないだろ流動的なんだから!!」
少しでも時間を稼げればと殴るなり制服を被せるなりしてみるが、効果は無い。
ならば不純物を混ぜてやろうと先ほど買った缶コーヒーをぶちまける。
「お、気が効くじゃないか、でも俺ブラックは好きじゃないんだ」
効果なし、万事窮す。ではあるが、諦める理由にはならない。まとわりつくヴィランからは力を殆ど感じない、なら狙いは窒息のはず。スマホで救助を要請し、息を止めて耐える。スマートではないが、もうこれしかなかった。
最後の一息、最後の一言、言わなければならない。
「逃げろガキ!!早ぐ!!ん゛ん゛ん゛」
「ああクソ塞がれたか!!でもずっと呼吸を止めるなんて出来ないだろう?苦しい時間が長引くだけさ。諦めてくれ」
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!」
爆豪勝己の長い戦いが始ま、
「DETROIT」
「SMASH!!」
狭い路地裏に一陣の強風が吹きぬけた。爆豪の目に映ったのは誰もが知る・・・いや、己が憧れた最強のヒーロー。オールマイトだった。
殴れないヴィランすら殴り飛ばすその力。まさしく憧れたNo1ヒーローそのものだった。
「ああ!!!またかよ!!うっとおしいんだよチクショウ!!!!」
「イカン!!ヴィランが!!!」
だが、どうやら周囲の建物に配慮したためかヴィランはすぐに行動を再開した。行き先は田等院商店街通りだった。
そこは、緑谷出久が良く買い物に使う場所である。そして今日、母から買い出しを頼まれた緑谷出久が偶然目の前に現れたとしても、何の不思議もありはしなかった。
「逃げろデク!!」
「ん?かっちゃん゛ん゛ん゛!!!!」
「今度こそ!!乗っ取る!!呼吸を止めても無駄だ!!無理にでも入らせて貰う!!」
最早追い詰められたヴィランはなりふり構わず緑谷出久を乗っ取ろうとしている。暴れ方が尋常ではなかった。
だが問題は無い。なぜならばここには、No1ヒーローであるオールマイトがいるのだ。
どれだけ抵抗しても、無意味・・・
「オールマイト!!緑谷が・・・!!?」
そこにいたのは、さっき会ったガイコツだった。
「まだだ。まだ・・・!!終わっては!!」
血を噴出して蹲る男、オールマイトと変わらない服装。燃え盛る目。
「クソ!!休んでろオールマイト!!」
「どれだけ抵抗するんだこのガキ!!しぶといな!!」
「まだヒーローは来ないのか!?」
「もう少しだ!!頑張れ!!」
ふと、緑谷出久と目が合った。爆豪勝己の嫌いな目をしていた。
「お前、こんな時に、ふざけんなよ!!」
ガサリと物音がした。出久の買い物袋からだ。そこに彼が示した逆転の手札がある。
どれだ
さがせ
出久の個性と、ヘドロヴィランに対抗するなら・・・
・・・コーラの容器!!
「な、何してんだガキ!!あぶねえぞ!!」
「うるせぇ!!黙ってろ役立たず共!!」
コーラの容器を逆さにして空にする。出久が欲しいのは空容器だ。
デクの口から一際大きな気泡が出た。俺の予想が正しければ、アレは相当な無茶だ。
「は、ようやく諦め、な、なんだ!?」
空の容器にヘドロが少しずつ入っていく。
無論、緑谷出久の個性である。
・緑谷出久(14)
個性「物体操作」
視界にあるものならば、なんだって操作できる。たとえ空気であっても、液体であっても。100gまでなら例外なく。
ヘドロヴィランも抵抗しているのだろうが、緑谷によって少しずつ、100gずつペットボトルに押し込まれて、最後には爆豪によってキャップは閉められた。
「ふう、助かったよかっちゃん」
「うるせえ、俺の助けなんか無くてもどうとでもしただろうが」
「いやいや、結構無茶してたから、危なかったよ」
「っけ」
肺の中に圧縮空気を入れてボンベ代わりにする。発想は分かるが実行するのが狂気的だ。勿論爆豪はそれが狂気ではなく、自信ゆえの実行であると理解していた。
その後爆豪は警察にこっぴどく怒られた。それに対して不満は無かった。何せやったことはコーラのペットボトルを空にして、キャップを閉めただけなのだから。言ってしまえば誰でも出来るし、出久なら一人でもどうにかしただろう。
(俺とは違ってな)
ある意味、丁度良かったのかもしれない。本物のヴィランと戦い、手も足も出なかった。諦める理由としては、上等だ。
なんならこれから警察を目指し、緑谷とは別の視点で人と平和を守ればいい。そう、納得しようとしていた。
緑谷はヒーロー達に囲まれてナードっていたので、放って帰ることにした。
帰路を辿って暫く。
「待ってくれ、少年」
そこにいたのは。ガイコツだった。
「・・・誰かと思えば、死にかけのガイコツじゃねえか。良かったな、ヘドロのヴィランなら俺の馴染が捕まえたぜ」
「いやはや随分と皮肉が利いている。私が誰だか、君はもう分かっているだろう?」
ある意味、コイツと緑谷が出会わなかったのは幸運だったのかも知れない。緑谷は爆豪よりも純粋に彼に憧れているのだから。
「オールマイト、だろ」
「正解!!」
そう言うと、ガイコツが突如ムキムキのマッチョマンに変身した。
いや、誰もが知るNo,1ヒーロー。オールマイトに。
爆豪勝己が、緑谷出久があこがれたスーパーヒーロー、オールマイトに。
「いやはや、君には随分と迷惑をかけた!!謝罪させて欲しい!!すまなかった!!」
ズバッと下げた頭により強風が吹きすさぶ。謝っているのか煽っているのかどっちかにして欲しい所だ。
「別に、私服ってことは今日非番だろ?謝られることじゃねえよ。むしろ助かった」
「HAHAHA随分とクールな男じゃないか」
「・・・なあ、もう帰ってもいいか?」
これ以上、彼と話すべきではないと理性が言っている。
オールマイトの目が、緑谷出久の目と、被って見えたから。
「一つだけ、聞きたいことがある」
「手短にな」
「君の、将来の夢だ」
警察だ。ついさっき警察になった。別に警察じゃなくてもいい。ヒーロー以外の、人を助ける職業が爆豪勝己の新しい・・・
「・・・君は、ヒーローになれないぞ。と聞いて、無個性だ。と答えた!!なる気が無いでも、なれ無いでもなく、無個性という壁があると言った」
「だから何だってんだ!!?」
壁などではなかった。無個性と言うのは崖だった。その現実を見たのだ。壁を乗りこればヒーローになれると、そんな幻想はもう抱いてはいないのだ。
「なりたいんだろう!!?ヒーローに!!」
「なれるわけ無いだろ!!見ただろ!!俺はヴィランに手も足も出なかった!!デクは殆ど一人でヴィランを捕まえた!!あいつだ!!ヒーローに相応しいのはああいう奴の事を言うんだ!!」
「なる程!!確かに彼もまたヒーローに相応しいガッツがあった!!しかし!!君もまたヒーローに相応しい!!」
憧れは、爆豪勝己にとって、あまりにも。
「どこがだよ!!俺の!!どこが!!?」
「人のために戦えるところさ」
声が震える
「・・・んなの、たたかってるうちにはいるかよ」
「確かに君は勝ち目の無い戦いを挑んだのかもしれない、けどヒーローなんてそんなもんさ。時には勝ち目が無かろうと戦わなければならない時もある。成りたいんだろう?ヒーローに!!」
視界が滲む
「俺には、無理なんだ」
「そう言い聞かせているように、私には聞こえるよ」
憧れが蘇って・・・
「てめぇに、オールマイトに何が分かる!!恵まれた個性の!!お前に!!」
「君がまだこれっぽっちも諦めちゃあいないってことぐらい、誰でも分かるさ。そうだろ?」
自分自身がまだこれっぽちも諦めていない事くらい、爆豪勝己は分かっている
『なろうよ!!ヒーローに!!』
「なろうぜ!!ヒーローに!!」
「ああ!!」
賢ぶった諦観が剥がていく。
ずっとずっと残っていた火が、思い出せと燃え上がる。
「成ってやる!!ヒーローに!!」
オールマイトが、緑谷出久が眩しかった。
出来ると信じて疑わないその目が、爆豪勝己には眩しかった。
抱いた夢が眩しかった。
もう、目を逸らさない。
これが俺の、爆豪勝己の原点だ。