私は「キアナ・カスラナ」ヒーローを目指すものだ 作:伽華 竜魅
林間合宿襲撃から翌日。
世間は雄英が再び襲撃され、被害者や意識不明者。そして、拉致者を二名も出してしまったことにより、その責任を追及しようと、襲撃後の翌日には各テレビ局の報道陣が、雄英高校のゲート前でひしめきあっていた。各教師、オールマイトも全員が会議室に集まっており、沈痛そうな面持ちで話し合っていた。
ヴィラン連合に対する認識が甘かった。ヒーロー社会崩壊の序曲。内通者がいるんじゃないか?。一歩間違えれば内輪揉めに発展しかねない現状。
特に根津校長、オールマイトは表情を暗くしている。理由は、"キアナ・カスラナの拉致"だ。既にキアナの個性は入学した当時から、警戒をするほど強力かつ危険と判断されいる。その理由は、個性登録に書かれたキアナの個性内容。
個性名「薪炎」。
能力
「炎・熱の操作・生成・放出」
「物体の解析と分析・物体や武装の創造」
「意識の操作」
「虚数空間の生成・浮遊」
とくに彼らが気にしていたのが、「意識の操作」。「物体の解析と分析・物体や武装の創造」。「虚数空間の生成・浮遊」の三つ。
「意識の操作」。
対象に幸せな夢を体験させている内に死に追いやる。
「物体の解析と分析・物体や武装の創造」
物体、武装を創造することもできれば、解析と分析をすることができる。
「虚数空間の生成・浮遊」
自身を浮かし、泳ぐように自由に飛ぶことができるのと、使用者にしか認識できないワープゲートを使うことができる。
ヴィランからすれば、雄英だけでなく、あらゆるセキュリティの高い場所、「タルタロス」や「I・アイランド」すらも簡単に突破できる可能性が高すぎる能力。誰もが"個性を奪える"なら、喉から手が出るほど欲する個性だ。そんな個性を持つキアナ。オールマイトは、キアナが拉致された時点で、"あの男が関わっている"ことに気づいたのだ。「あの男は、カスラナ少女の個性を必ず欲しているはず」と心の中で思っていたのだ。そして、オールマイトに着信が入り、オールマイトは一度会議室を後にし、着信に出た。
『今二人から調書を取っていたんだが、思わぬ進展があったぞ! ヴィラン連合の居場所、突き止められるかもしれない』
電話の相手は、オールマイトの友人である塚内警部だった。その知らせにオールマイトは思わず目を見開いた。塚内警部が言うには、部下が聞き込み捜査をしてた時、ツギハギの男がテナントの入ってないビルに入っていった情報を入手していたのだが、調べた結果、爆豪を拐ったヴィランの一人と合致したというのだ。裏が取れ次第すぐにカチ込むとのことで、救出・掃討作戦に協力してほしいと頼み、オールマイトは間をおいて、返答した。
「私は、素晴らしい友を持った……奴等に会ったらこう言ってやるぜ……私が反撃に来たってね!」
―
――
―――
後日、二日目のある病院では、切島と轟が緑谷に、爆豪とキアナの救出に向かうと相談していた。共にお見舞いに来ていたA組のみんなもその話を聞いていた。
「オールマイトの言うとおりだ! これはもう俺達のできる際限を越えている案件だ! 大人しくプロ達に任せるのが正解だ! 俺たちの出ていい舞台ではないんだ馬鹿者!!」
「そんなもんは分かってんだよ! でもよ、俺はあんときなんもできなかった……! 仲間が狙われているってのに、なんも出来なかったんだ!! しようともしなかった!!」
飯田は、自分たち生徒が口を突っ込んではいけない領分だと咆えた。そんな飯田の言葉に切島は己の激情を吐き出した。
「ここで動けなきゃ俺は、ヒーローでも漢でもなくなっちまう!!」
そんな二人に、他の皆が一応は病院だから静かにと宥めた。
「飯田が、皆が正しいってのは分かってんだよ……! でも! なぁ緑谷!! まだ手は届くんだよ!! 助けに行けるんだよ!!!」
「……ッ」
切島は、緑谷に手を差し伸ばした。緑谷は落ち着きながらその話を聞いていた。そして轟が口を開いた。
「ヴィランは俺らを殺害対象と言い、爆豪とキアナは殺さず攫った。生かされるだろうが、殺されないとも言い切れねぇ。だから俺と切島は行くつもりだ」
飯田は我慢が出来なかったためか、より反発をした。
「ふざけるのも大概にしたまえ!! 君たちは――」
「待て。落ち着け。切島の何もできなかったという思いも、轟の眼前で奪われた悔しさも分かる。俺だって当然悔しいさ。だがこれは勘上で動いていい話じゃない。そうだろ?」
その言葉に、一同は静かになった。戦闘許可も解除された今、より冷静になろうと話を纏めていく。
「みんな、爆豪ちゃんとキアナちゃんが攫われてショックだってのは分かるわ。でも、冷静に考えてちょうだい。どれ程正当な感情であろうとも、また戦闘行為を行うというのなら……ルールを破るというのならその行為は、ヴィランと何ら変わらないものなのよ?」
蛙吹の言葉が一番全員の胸に響いたことであろう。全員が神妙な顔つきになった。そこに緑谷の診察医がやって来た事により、全員が退室していく。だが切島は緑谷に近づき、小声で話しかけた。
「……八百万には昨日話した。行くなら即行……今晩だ。まだ体調が万全じゃないお前が行けるか分からないが、一番悔しい思いをしているお前だからこそ誘ってんだ。考えといてくれ……今晩、病院前で待つ」
そう言われて、緑谷は無言で考えていた。だがその会話を、飯田は聞き逃さなかった。
―
――
―――
時刻夕方。薄暗いある施設。
そこに一つの固くボロボロの布の上に、横に寝かされているキアナがいた。そんなキアナの両腕には、チューブが繋がれており、瀉血されていた。それでなおキアナは眠っている。理由は強力過ぎるほどの麻酔と、催眠系の個性の合わせ技によるもののせいだった。これを行っているのもは、キアナが抵抗すれば、0%確実に不可能だと思っているからだろう。
「だいぶ集まって来たのう。これなら"脳無の強化改造"も"トリガー強化"もよりできるわい!」
眼鏡をかけ、白衣を着た老人は興奮しながら、端末などを操作し、キアナの瀉血を行っていた。
『あまり抜きすぎないでくれよドクター。血液不足で死んでしまっては困る』
「わかっておるわい。ワシも彼女が死んでは困るからのう!」
その背後にあるモニターから、男性の声が響いていた。
「しかし、この子の個性は本当に珍しいのう。これほどの個性を宿しておるとは驚きじゃわい!」
ドクターはキアナの血液が入った瓶を一つ取り、それを機械に入れて解析と分析を始めた。
「まさに、死柄木弔の言う通り"神の力"。"魔王として君臨する"オール・フォー・ワンからしても、ワシからしても、欲しくてしょうがないわい」
すると、端末から、「完了」という文字と共に音が鳴った。ドクターはそれを一回タップすると、キアナに繋がれたチューブが抜かれていった。
「ワシの作業は終わった。持って行っていいぞ。オール・フォー・ワン」
『ありがとう。ドクター』
途端、キアナの口から黒い液体が吐き出され、キアナを包み込んでいき、その場から姿を消した。
―
――
―――
時刻夜。
神奈川県横浜市、神野。バー兼ヴィラン連合アジト。
そこには連合の若きリーダー「死柄木弔」に加え、カウンターには黒霧、死柄木の傍にベルナ、周辺には荼毘、トガヒミコ、トゥワイス、マグネ、スピナー、Mr.コンプレスといったメンバーがおり、謝罪会見の生放送が流れていた。
「不思議なもんだよなぁ……何故ヒーローが責められてる?」
テレビを見ながら上機嫌に言い放った死柄木。その視線の先には、拘束具で拘束されて、椅子に座らされていた爆豪がいた。
「奴らは少ーし対応がズレてただけだ! 守るのが仕事だから? 誰にだってミスの一つや二つある! "お前らは完璧でいろ"って!? 現代ヒーローってのは堅苦しいなァ、爆豪くんよ」
「守るという行為に対価が発生した時点で、ヒーローはヒーローでなくなった。これがステインのご教示!」
「そもそも、ヒーローや警察に何でも任せるのが悪いのです。自分たちがその場にいたら腰が抜けたりして何もできない者共が、何を偉そうに言っているという話ですよ」
「人の命を金や自己顕示に変換する異様。それをルールでギチギチと守る社会。敗北者を励ますどころか、責め立てる国民。俺たちの戦いは"問い"。ヒーローとは、正義とは何か、この社会が本当に正しいのか一人一人に考えてもらう! 俺たちは勝つつもりだ……君も、勝つのは好きだろ?」
死柄木は、自身の思想を長く語った後、荼毘に命じた。
「荼毘、拘束外せ」
「は? 暴れるぞコイツ」
「いいんだよ! 対等に扱わなきゃな。スカウトだもの。それに、この状況で暴れて勝てるかどうか……分からない男じゃないだろ? 雄英生」
「…トゥワイス、外せ」
荼毘は、その命令を隣にいるトゥワイスに代わりにやるよう命じた。
「はぁ俺!? 嫌だし!」
「(私に頼ってもよかったのでは?)」
荼毘にそう言われて反対の事を言いながらも、それに応じたトゥワイス。ベルナは、自分に命令してくれればよかったのでは?と思っていた。Mr.コンプレスは爆豪を見て言った。
「強引な手段だったのは謝るよ。けどな…我々は悪事と呼ばれる行為に勤しむただの暴徒じゃねぇのを分かってくれ。君を攫ったのは偶々じゃねぇ」
「ここにいる者、事情は違えど、人に、ルールに、ヒーローに縛られ苦しんだ」
Mr.コンプレスの言葉を繋げて、死柄木が爆豪に歩み寄りよる。
「君ならそれを―……」
瞬間、爆豪はトゥワイスの顔面を蹴ってそのまま死柄木に右の大振りをして爆破した。それによってバー内に黒煙が漏れ出す。
「死柄木…!」
「陛下…!」
トゥワイスとベルナは、死柄木の心配をしていた。黒煙が晴れると、そこには……。
「……あっぶねぇなあ」
「っ!?」
爆豪の右の大振りを、右手で簡単に止めてる死柄木がいた。爆豪がそれを止められたことに驚き、死柄木は器用なことに、ちゃんと五指が触れないよう、中指だけは爆豪の腕に触れていなかった。だが、爆破の勢いによって、死柄木が顔に着けていた手のひらは落ちてしまった。死柄木の視線は手のひらへと向いた。
「お父さん……」
その瞳に映る模様は、段々とくっきり見えるようになってきていた。
「生徒の安全……とおっしゃりましたがイレイザーヘッドさん。事件の最中に生徒に戦うように促したそうですね」
さらに同時刻。記者会見場では前として質疑応答が行われていた。そんな中、一人の記者が質問していた。
「意図を聞かせていただいてもよろしいですか?」
「私どもがヴィラン連合の襲撃によって混乱する状況を完全には把握することが叶わなかったために、最悪の事態を避けるべく、そう判断して各生徒の皆さんに戦闘の許可を下しました」
「最悪の事態というのは……? 26名もの被害者と2名の拉致は最悪だったとは言えませんか?」
「…………私があの場で想定した"最悪"とは、生徒達が成す術もなくヴィラン連合の人間たちによって殺害されてしまう事でした」
「被害の大半を占めたガス攻撃。敵の個性から催眠ガスの類いだと思われます。拳藤さん、鉄哲くんの迅速な対応のお陰で全員命に別状はなく、また…生徒らのメンタルケアも行っておりますが、深刻な心的外傷などは今のところ見受けられません」
「不幸中の幸いだとでも?」
「未来を侵される事が最悪だと考えております」
相澤と根津のミスのない回答に、先ほどから質問をしている記者は痺れを切らしたのか、より奥深くまで踏み込み、話をした。
「攫われた爆豪くんとカスラナさんについても同じことが言えますか?」
その内容に、相澤が微かに反応した。記者は爆豪の精神面の不安定さなどを攻撃的に話した。それだけでもストレスを与えるには充分だが、記者は、キアナのことも話だした。
「次にカスラナさんに関してです。体育祭優勝、体育祭で見られた彼女の個性と、まだ若き学生にしてはあまりにもプロヒーローと同等。それ以上の身体能力。学科などは例外として、彼女の成績はキリがないかもしれません。ですが私は常々不思議に思っているのですよ」
「不思議とは?」
「本来個性は基本一人一つが当たり前の世の中で、彼女は複数の個性を持っていると思うんですよ」
相澤は、その質問は必ず来るものだと既に予想していた。記者は続けて話をする。
「あまりにも異常すぎる個性。関連性も全くなく、人とは思えない力」
相澤もそれは当時はそう思ってた。だが個性登録には一つしかなく、相澤は、複数個性の融合型と思っていた。だが記者は、とんでもないことを言いだした。
「ヴィラン連合には改人脳無という複数の個性を操るヴィランが複数確認されています。もしかして……"カスラナさんはその脳無と同じ存在"なのではないですか?」
「は?」
相澤の口から呆けた声が出る。
「考えてみてください。爆豪勝己くんはともかく、キアナ・カスラナさんはヴィラン連合が彼女を回収するという目的であったかもしれないと……雄英は実は彼女がヴィラン連合のものだったと一般には隠していたと……と、ここまでが私の推測ですが、そこのところどうなのでしょうか? 未来があると言い切れる根拠をお聞かせ下さい」
「……」
キアナの個性は、前世、崩壊世界での律者の力が、そのまま個性として宿った。だがこの超人社会にとっては、その力は異常すぎる故に、複数個性の所持者としかとらえられない。個性が一つしかないのは、雄英らが危険と反し、隠ぺいしているからだと記者は思っている。さらに付け加えて、連合は複数個性を操る改人脳無がいる。それによって、キアナは……人の姿をした完全な脳無と思われてしまったのだ。
「(分かっちゃいたが攻撃的…! ストレス掛けて粗野な発言を引き出そうとしてる。いかんぞ…恐らく、イレイザーのメディア嫌いを知っての挑発! ダメだ、乗るな……!)」
ブラドキングが心配している中、相澤は立ち上がり、頭を下げた。
「爆豪勝己の粗暴な行動については、教育者である私の不徳の致すところです。ただ…体育祭での一連の行動は、彼の理想の強さに起因しています。誰よりもトップヒーローを追い求め、もがいている。あれを見て隙と捉えたのなら、ヴィランは浅はかであると考えております」
「…根拠になっておりませんが? 感情の問題ではなく、具体策があるのかと伺っております。それとカスラナさんはどうするんです?」
「キアナ・カスラナが脳無という可能性は断じてありません。彼女もまた、ヒーローを志し、歩んでいます。なにより、私は教師として、彼女を信じております」
「……結局具体策はあるんですか?」
「我々も手を拱いてるワケではありません。現在、警察と共に調査を進めております。我が校の生徒は必ず取り戻します」
場面は戻り、神野。バー兼ヴィラン連合アジト。
記者会見の場面がテレビから流れてる中、爆豪は死柄木に抑えられていた手を振りほどき、なんとか離れることができた。
「ハッ! 雄英も先生も言ってくれるな…! そういうこったクソカス連合! 言っとくが、俺あまだ戦闘許可は解けてねぇぞ!」
そう言って爆豪は両手を構えて身構えていた。そして視線だけであたりを見渡す。
「(記者はあの三つ編みも拉致されたって言っていやがった。だがここにはいねぇ…別のアジトがあんのか? 自分曲げんのはクソだが…アイツがいりゃあ、ここを脱出するのも、もっと楽なんだが…)」
「自分の立場よく分かってるわね…! 小賢しい子!」
「いや、馬鹿だろ」
「刺しましょう!」
「その気がねぇなら懐柔されたフリでもしときゃいいものを…やっちまったな」
「したくねぇモンは嘘でもしねぇんだよ俺ァ。こんな辛気臭い所、長居する気もねぇ!」
「……」
死柄木は、落ちた手のひらを見つめていた。黒霧はそんな死柄木を見て、慌てて落ち着かせようとすると、死柄木は睨みだした。
「いけません死柄木弔!落ち着いて――」
「大丈夫です黒霧さん」
「ッ!」
ベルナが黒霧を止めると、死柄木が冷静でいることに黒霧は気づいた。
「手を出すなよ……お前ら。こいつは……"大切なコマ"だ」
死柄木は手のひらを拾い、顔へ装着し直した。
「少しでも陛下のお言葉に耳を傾けてはいただけませんか? あなたのような人間は、陛下にとっても分かり合える人種だと思いますが……」
「ねぇわ!」
「そうですか。いかがなされますか? 陛下」
「…はぁ、仕方がない。ヒーロー達も調査を進めていると言っていた…悠長に説得してられない………先生、力を貸せ」
死柄木は、後ろにあるモニターに視線を向けた。
そして、そんな連合たちのアジトの外の周りでは既にヒーローらと警察らが集まっており、いつでも攻め込める態勢にいた。
「グラントリノ……今回は必ず奴も動き出すはずです」
「オール・フォー・ワンか……」
「ええ。ですから用心にかつ大胆にいきましょう」
「うむ」
オールマイトとグラントリノがそう話すと、塚内が叫びだした。
「今回はスピードが命だ! ヴィランにはなにもさせるな!」
塚内は、根津にのみ協力要請を出したことを全員に伝える。
「流れを覆せ!! ヒーロー!!」
同時に、もう一つのアジトでもベストジーニストらが既に包囲する態勢に入っていた。
戦いが……間もなく始まる……。
とある空間。否、精神世界。
ガタンゴトンと音を鳴らしながら揺れ動く吊り手。窓の外は真っ暗なトンネルのような空間。扉の前に持たれて端末をいじる一人の少女。ここはその少女の夢の中。するとトンネルの黒い空間を抜けて、光が差し外が見えるようになる。それは、超人社会では見ることができない。少女にとっては前世の世界。
「崩壊3rd」の世界だった。
キアナが主人公なのにキアナが一回も喋ってない!!!
それと、そろそろというか、もう皆様の違和感とかそういうのとかさせない為にも、本格的にキアナの最強無双やろうかなと思ってるんですけど、一部のキャラは互角とか少しだけでも苦戦させたいって思っちゃうんですよ。まあそれもちょっとなぁ…って思う方もいると思います。
ワタシ、皆サマノタメ二、ガンバリマス…。
キアナの個性「終焉」に関しては、まだみんなの前で使ってないし明かしてないので、オールマイトたちは視野に入れてません。