私は「キアナ・カスラナ」ヒーローを目指すものだ 作:伽華 竜魅
雄英高校は新学期の始業日を迎えた。
夏休みにしてはあまりにも色濃いでき事が多すぎた。うん、多すぎる。ある意味学生の日常には程遠く、今はその普通の日常が戻って来たともいえる。
そして、共有スペースに向かうと、なぜか制服ではなく、私服の恰好で掃除機をかけている緑谷と爆豪がいた。
「二人ともなにやっとるん? 遅刻しちゃうよ?」
「いや、えっと……」
麗日の質問に対して、緑谷は言いづらそうな感じで説明を始めた。
「ケンカして」
「謹慎~~~!?」
「バカじゃん!」
「馬鹿かよ!」
「骨頂」
二人は、みんなの罵声に対して言い返せることがないのかぐぬぬって反応しかできていない。なんでも、仮免試験の晩に、二人は喧嘩をして相澤先生に謹慎を命じられたらしい。
「それで、仲直りしたの?」
「仲直り……っていうものでも……うーん……言語化が難しい……」
「よく謹慎で済んだものだ! では君ら、これからの始業式は欠席ということだな!!」
「爆豪、仮免の補習どうすんだ」
「うるせぇ……! てめぇには関係ねぇだろ!」
二人が幼馴染なのはわかるけど、喧嘩した理由があまりわからない……う~ん?まあでも、喧嘩なら自業自得ってのもあるのかもしれないね。
「んじゃ掃除よろしくな~!」
そうして私たちは、始業式へ出るため寮を出始めた。
「おい三つ編み」
のだが、私は爆豪に呼び止まれた。
「なに?」
「今夜、話がある」
「えっ」
今夜、話?え、怖い……なに!?え!?
「キアナさん。かっちゃんが話す内容は昨日のケンカも関係してるから……」
「なぜ私も関係者!?」
「オールマイトのことだ。これ以上は言わねぇ。それとクソデクも余計なこと言うんじゃねェ!!」
「ご、ごめん!!」
オールマイト関連……そのことで話か……。
「わかったよ。今夜ね」
今夜話をするという約束をして、私は急いでみんなの後を追った。
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――
―――
始業式は一限目からグラウンドで行われるらしい。その後にHRを挟んでの授業開始の予定となっている。んで、グラインドに向かう列は出席番号順である。
「皆いいか!? 列は乱さずそれでいて迅速に! グラウンドへ向かうんだ!!」
「いや、おめーが乱れてるよ」
「はっ…委員長のジレンマ…!」
飯田は相変わらずの真面目で、腕をブンブン振ってる。列から乱れてるのを瀬呂に指摘されて、震えているし。
まあそんな久々な感じで進んでいると、奥でB組の問題児がいた。
「聞いたよA組ィィ!」
「あっ?」
「二名!! そちら仮免落ちが二名も出たんだってぇぇ!!?」
「B組物間…!」
「相変わらず気が触れてやがる!」
どんな生活をしたらあんな鬱陶しいほどのヤバい奴になるんだ。爆豪も爆豪だけど、物間も物間で問題児なのはもう確定かもしれない。
ものすっごくニヤニヤしながらご機嫌な感じダダ漏らしてるもん。
「さてはおめーだけ落ちたな?」
切島がそう聞くけど、物間は逆にさらに笑顔に、自慢げに腕を広げた。
「ハッハッハッハ! 僕だけ落ちる? 残念、こちとら全員合格。水があいたねA組!」
そもそも何であんな一方的に物間は競ってくるんだ。拳藤が心がアレって言ってたのは覚えてるけど。
「……悪い、お前ら」
「向こうが一方的に競ってるだけだから、気にするな? な?」
轟へこんでる~……入学時と比べて変わったなあ~。
グラウンドに整列すると始業式が始まった。
校長先生のどうでもいい話がとても長くて眠い……てかなんでどこの学校も、校長先生の話はこんな長いんだ……。
あとハウンドドッグのもう言葉の意味が分からない言葉にドン引きもした。もう空気が悪い。
ブラドキングがハウンドドッグの言った内容を補足したけど、完全にあれは緑谷と爆豪を指している言葉だった。
「キレると人語忘れちまうのかよ……雄英ってまだ知らねーことたくさんあるぜ……」
「緑谷さんと爆豪さん、立派な問題児扱いですわね……」
「ウチはハウンドドッグの言った内容を補足したブラドキングにも驚いてるけどね……」
困惑した空気に包まれたまま、始業式は終わった。
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――
―――
相澤先生が後期の授業の話を軽く話していると、芦戸が蛙吹にコソコソと話し始めた。
それに気づいた先生は髪の毛を逆立たせて、目を光らせながら睨んだ。
「何だ芦戸?」
「ひっ! 久々の感覚…!」
「ごめんなさい、いいかしら先生」
芦戸が身体をゾワゾワさせてると、蛙吹が手を上げて、相澤先生に質問した。インターンについてだ。
「さっき始業式でお話に出ていた"ヒーローインターン"がどういうものなのか、聞かせてもらえないかしら」
私も含めてみんなが疑問に思っている。相澤先生もそれに気づいたのか、説明を始めた。
「平たく言うと"校外でのヒーロー活動"。以前行ったプロヒーローの下での職場体験……その本格版だ」
「はあ~そんな制度あるのか……あれ? ……じゃあ体育祭の頑張りは何だったんですか!!?」
「む、確かに……インターンがあるなら、体育祭でスカウトをいただかなくとも道が拓けたのでは?」
相澤先生の平たい説明を受けてクラス一同がおおむね納得した雰囲気の中、麗日が突然立ち上がりながら大声を上げて、すぐ前の席にいる飯田もそれに気づいた。
「ヒーローインターンは体育祭で得た指名をコネクションとして使うんだ。これは授業の一環ではなく、生徒の任意で行う活動。むしろ体育祭で指名を頂けなかった者は活動自体難しいんだよ。もともとは各事務所が募集する形だったが、雄英生徒引き入れのためイザコザが多発し、このような形になったそうだ。分かったら座れ」
「……早とちりしてしまって、すいません」
なるほど、じゃあ体育祭での指名が多かったから、そこらへんにインターンで行くこともできるってわけか……。
―
――
―――
夜。
「で、話って?」
「……」
私と爆豪はみんなが寝静まった時間に、寮の外で話をすることにした。
「てめェが、オールマイトとデクの個性の共有者だってのは聞いた」
「…OFAのことだね」
「あぁ、だがそれとは別だ。てめェはオールマイトのことをどう思ってる」
「? どういう……」
「俺たちがオールマイトを終わらせた。俺とてめェがクソヴィランに捕まったから、神野事件は起こった。その結果、オールマイトはもう戦えなくなった。てめェはそれに対してどう思ってんだって話だクソが」
……そういうことか。もともと、私と爆豪があの日、拉致なんてされなかったらオールマイトは今も活動していたかもしれない。爆豪は、自分のせいでって思ってるんだ。
「確かに思ったよ。そもそも拉致されなければって。似たことが、経験が昔にもあったから……」
「あ?」
まだ力に飲まれ、"彼女"と対立しているとき、大切な先生を手にかけてしまったことを思い出した。
「わたしにも昔、爆豪がいうオールマイトのような、尊敬する大切な先生がいた。でも、その人は亡くなった。私はひどく後悔してたよ……最悪、自殺すらも考えちゃった……だけどね、その先生が"何を迷っているの"って、"前を向きなさい"って言ってきたんだ」
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『前に進みなさい、キアナ。恐れず、大胆に! 私はこれからもずっと、あんたを見守ってるわ。だって――あんたは、この無量塔姫子の生徒だもの』
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「……だから、私は彼女の"炎"を受け継いで前に進む。後悔しているなら、前を向いて進み続けるって決めたんだ」
私は無意識のうちに、薪炎の律者になっていた。そして、赤いクリスタルが現れて、私の右手にフワフワと、輝きながら浮遊している。
「だからさ、まだ後悔してるなら、一秒でも早く最高のヒーローになって、オールマイトに言えばいいんだよ」
「もう大丈夫。ゆっくり休んでって」
「……」
クリスタルを優しく握る。クリスタルは消えて、薪炎の律者の姿は解除された。
「これが私の答えかな……」
「……てめェの思ってることはわかった」
爆豪はそのまま寮へと戻っていった。
そう……たとえ別世界だとしても、見ていてくれてるかもしれない。だから、前に進むんだ。