私は「キアナ・カスラナ」ヒーローを目指すものだ   作:伽華 竜魅

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第46話 ビック3。

 

 

 

 

「ご迷惑をおかけしました!!」

 

「デクくん、オツトメご苦労様!」

 

三日後。緑谷の謹慎が終わった。そして教室に入ってくるなり大声で謝罪しだした。

 

「飯田くんごめんね!!! 失望させてしまって!!」

 

「う、うむ。反省してくれればいいが……しかしどうした?」

 

「この三日間でついた差を取り戻すんだ!」

 

「あぁ、良いなそういうの! 好き俺!」

 

鼻息めっちゃ荒い……そこまで焦ってたのか。

 

「全員席に着け」

 

「ぐはっ!?」

 

うわ相澤先生いつの間に緑谷の背後に来ていたんだ。緑谷なんて驚きのあまり変な声出してるし……。

 

「おはよう。じゃ緑谷も戻ったところで本格的にインターンの話をしていこう。入っておいで」

 

相澤先生が扉に向けてそう言い放つと、待っていましたとばかりに扉が開いて、そこから三人の生徒が入って来た。

 

「職場体験とどういう違いがあるのか。直に経験している人間から話してもらう。多忙な中、都合を合わせてくれたんだ。心して聞くように。現雄英生の中でもトップに君臨する三年生三名。通称"ビッグ3"の皆だ」

 

ビッグ3……しかも現雄英生の中でトップに君臨って、実力気になるな……。

 

「じゃ手短に自己紹介してくれ。天喰から」

 

相澤先生がそう言ったその瞬間、一番右端の人が反応した。多分天喰という人はあの人なんだろう。んでまたその瞬間、ギロリと面々を睨んできた。

迫力……ていうのかこれ?そんな感じじゃない感じがする。どっちかというと緊張とかそう言うのでつい目つきが悪くなっちゃってる感じかな?

みんなは迫力に当てられてるような感じで、緊張が走っているみたいだけど。

 

「駄目だ、ミリオ、波動さん……ジャガイモだと思って臨んでも…頭部以外が人間のままで依然人間にしか見えない。どうしたらいい…言葉が出て来ない…。頭が真っ白だ…辛い……! 帰りたい……!」

 

ジャ、ジャガイモ……?頭部以外が人間のまま……?どんな感じで人を見ているんだあの人……てか帰りたいって……。

 

「あ、ねぇ聞いて天喰くん! そういうのノミの心臓って言うんだって! ね! 天喰くん人間なのにね! 不思議!」

 

ノミの心臓……なにそれ?てかこの人もなんか、まともそうには見えない気がする……。

 

「彼はノミの天喰環、それで私が波動ねじれ。今日はヒーローインターンについてみんなにお話しして欲しいと頼まれて来ました! ねぇねぇ、ところで後ろにいるマスクをした君、なんでマスクをしてるの? 風邪? オシャレ?」

 

「これは昔に…」

 

いきなり障子にマスクの質問をしてきた。あぁ、相澤先生の機嫌が悪くなっていってる。

 

「あ、そのひとつ前の横にいる彼は轟くんだよね! なんでそんなところ火傷したの?」

 

「っ、そ、それは…」

 

「そっちの彼女は芦戸さんだよね! その角折れちゃったら生えてくるの? 動くの!? 峰田くんのそのボールみたいなのは髪の毛? 散髪はどうしてるの!? 蛙吹さんはアマガエル? ヒキガエルじゃないよね? どの子もみ~んな気になるとこばっかり! 不思議!」

 

なにこの質問攻めは……答える前に次から次へと質問をして言ってる。

 

「……合理性に欠くね?」

 

「イ、イレイザーへッド! 安心して下さい!! 大トリは俺! なんだよね!! ……てことで!」

 

相澤先生が髪の毛を逆立てながら、目を光らせてると、ずっと黙っていた金髪の男子が慌てたようにしながら、一歩前に出た。

 

「前途ー!!?」

 

……え?

 

「多難ーーー! つってね! よぉしツカミは大失敗だ!!」

 

前途多難って言いたかってこと?わからな過ぎて頭痛くなってきた……。

 

「三人とも変だよな……ビッグ3という割には、なんかさ……」

 

「風格が感じられん。キアナのほう纏うオーラのほうがよっぽど風格であり強者だ」

 

え?え??なんで私の名前をいうの常闇?

 

「まぁ何が何やらって顔してるよね。必修ってわけでもない校外活動の説明に突如現れた三年生だ。そりゃわけもないよね。今年の一年生って凄く元気があるし、そうだねぇ……何やらスベり倒してしまったようだし、君たちまとめて俺と戦ってみようよ!」

 

「「「えっ、えぇぇぇ!?」」」

 

突然の模擬戦の提案に、全員が驚いた。

瀬呂がいきなりかよとか言ってるが、まさにいきなりすぎる。

 

「俺たちの"経験"をその身で経験した方が合理的でしょう? どうでしょうね、イレイザーヘッド!」

 

「……好きにしな」

 

 

――

―――

 

 

体育館γ。

体操服に着替えた私たちA組はひとかたまりになって、前方には、金髪の男子、"通形ミリオ"がいる。

 

「あの……マジでやるんすか?」

 

「マジだよね!」

 

マジなんだろう……たった一人でA組全員と模擬戦をするなんて、普通は提案しない。

でも逆に考えれば、そう言う提案をするほどの実力を自覚しているってわけだ。

 

「……ミリオ、やっぱりやめておいた方がいい」

 

「遠っ!」

 

「インターンについては形式的に"こうこうこういう感じでとても有意義です"と語るだけで十分だ……みんながみんな上昇志向に満ち満ちているわけじゃない。立ち直れなくなる子が出てはいけない」

 

「あ、聞いて、知ってる。昔挫折しちゃってヒーロー諦めちゃって問題起こしちゃった子がいたんだよ、知ってた!?大変だよねえ、通形。ちゃんと考えないと辛いよ、これ辛いよ~」

 

話を聞く限り、あの二人はこの模擬戦を反対しているようだけど……。

なんか、ちょっと舐められてる感じがする……。

 

「待ってください……我々は、ハンデありとは言えプロとも戦っている」

 

「そしてヴィランとの戦いも経験しています! そんな心配されるほど、俺らザコに見えますかね……?」

 

「うん。いつどこから来てもいいよね。一番手は誰だ?」

 

「俺が……「僕、行きます!」意外な緑谷!?」

 

切島が前に出ようとして、そこを緑谷が割って入った。

通形先輩はなんか嬉しそうに笑った。

 

「問題児! いいね君、やっぱり元気あるなぁ!」

 

「(雄英トップと今の僕、距離はどの程度か…!?)」

 

「近接体は一斉に囲んだろうぜ!」

 

「よっしゃ! そいじゃ先輩……ご指導ぉ、よろしくお願いしまーっす!!!」

 

 

切島のその言葉に合わせて、それぞれが個性を使って戦闘態勢に入り、緑谷が通形先輩へ突撃した。

しかし次の瞬間、通形先輩の服が全てばらばらと地面に落ちていった。つまりそれは……。

 

「うわぁーーーーー!!」

 

「今服が落ちたぞ!?」

 

「ああっ、失礼! 調整が難しくてね!」

 

全裸になったってことだ。でも、落ちたにしてはどこかおかしい……そもそも何でいきなり服が脱げる(・・・・・)ではなく、落ちた(・・・)んだ?

そう考えていると、私の後ろにいた耳郎の叫び声が突然聞こえた。振り返れば、そこには素っ裸の通形先輩がいた。

 

「ワープした!?」

 

障子がそう言うけど、ワープにしてはどこかおかしい!あの遠距離攻撃を集中的に狙われたタイミングですぐにワープはできない!

私が虚数空間を使う際も、必ず足元に開いて落ちる、もしくは入らなきゃいけないんだ。だけど、そう言うそぶりを一切見せなかった!

そんな考えをしている間に、半数以上が一瞬でやられた。

 

「これは……」

 

なにか、マズい気がする。

私は浮遊で一気に上昇し、空中で止まった。

 

「一人を除いて……後は、近接主体ばかりだよね!?」

 

先輩は私を見てから、その視線を近接メインの残りの半数へ向けた。

 

「何したのかさっぱりわかんねぇ!」

 

「すり抜けるだけでも強いのにワープとか……!」

 

「それってもう無敵じゃないですか!」

 

「よせやい!」

 

無敵……いや、どんな個性にも弱点、欠点はあるはずだ。

 

「何かからくりがあると思うよ!」

 

緑谷が声を上げて、残ったA組は全員緑谷へと視線を向けた。

 

「「すり抜け」の応用でワープしてるのか「ワープ」の応用ですり抜けてるのか……どっちにしろ直接攻撃されてるわけだから、カウンター狙いでいけばこっちも触れられる瞬間があるはず……! 何してるかわからなくてもわかってる範囲から仮説立てて、とにかく勝ち筋を探っていこう!」

 

それを聞いた皆は、お手上げの状態から、まだチャンスはあると、戦意が蘇ったようだった。

 

「探れるものなら、探ってみなよ!」

 

通形先輩が走り出した。何をしてくるかじっくりと見ていると、ズボンを置き去りにして地面の中へ沈んでいった。

沈んだってのも言えるけど、どちらかというと落ちたように見えた気が……。

そして現れた問いには緑谷の、A組の背後の地面から素っ裸で飛び出してきた。

 

「っ!」

 

「(反応じゃない…!? 俺がここに現れるのを、予測した!?)」

 

いち早く、反応…というより、予測していたかのような動きを見せたのは緑谷だった。

緑谷はカウンターで蹴りを入れるけど、そもまますり抜けていった。

 

「だが……必殺!! ブラインドタッチ目潰し!!」

 

「うっ!?」

 

緑谷は目潰しを恐れて思わず目を瞑ってしまい、通形先輩はその隙を狙って、緑谷に腹パンを決めた。

 

「ほとんどがそうやってカウンターを画策するよね。ならば当然それを狩る訓練! するさ!!」

 

「緑谷くん!?」

 

そしてまた地面に沈みながら、残りの皆へ向かい、一人l、また一人と腹パンを決めていった。

強い……だけど。

 

「私で何となく、からくりは分かったかも……」

 

一分も立ってないかな……それほどまでの速さ、瞬間で私と見学の轟以外の全員をノックアウトさせた。

 

「おーい! 君もそろそろ降りてきたらどうかな!? それとも、降参するかい?」

 

「降参なんてしないよ」

 

私は地上へは下りず、足元に虚数空間出して、足場にしてそこに立つ。

 

「君、今では"神秘の象徴"とも呼ばれているキアナ・カスラナさんだよね!? カスラナさんって呼べばいいかな!?」

 

「キアナって呼んでいいけど、好きなように呼んでいいよ」

 

とりあえず威嚇がてら、威圧を放ってみる。

 

「っ!? これ程とは……!」

 

「みてみて天喰くん! 浮いてるけど立ってるようにも見えるよ! でも足元はなにもないよね? なんで!? 不思議!」

 

「そうだね……(なんだあの威圧は…!?)」

 

ある程度観察はしてたけど、まだ確定ってわけじゃない。だから、自分の攻撃での確認も大事だ。

 

「ふぅー……先手必勝! ファイヤ!!

 

真理の境を一瞬で創造し、レーザーを放つ。

だけど、そのレーザーはすり抜けた。次は!!

 

ネコチャーム!!

 

跳躍して、そのままネコチャームで先輩を踏みつける。

ネコチャームを引っこめると、そこにはもういなかった。

 

「くっ…!」

 

だけど、どこから来ても大丈夫なように……。

 

終焉発動。

 

「終焉」を通して、「星」を発動させる。

 

「ここだよね!」

 

半径……5m!!

 

重力倍増!!

 

私を中心に半径5m内の重力が倍増した。

 

「ッ!?」

 

すり抜ける(・・・・・)って言っても、殴るときは実体化しないといけない(・・・・・・・・・・・・・・・・)でしょ?」

 

その答えはあっていた。先輩の右腕が重力の影響で地面に食い込むように落ちた。

 

「マジかよ!? けど、まだまだなんだよね!?」

 

先輩はまた地面に沈んだ。

そして半径外の所で出て来た。

 

「…解除」

 

「星」を解除して、重力を元に戻す。

 

「……なぁ、キアナってあんな技あったっけ?」

 

「いや、重力系って初めて見たんだけど…キアナの個性謎過ぎないやっぱり」

 

「驚いたんだよね!? まさか、重力を操作するなんて!」

 

……虚数空間。

先輩の背後に虚数空間を展開。そしてブロック状に変える。

 

「それじゃあ、今度はこっちから行くんだ―――」

 

「残念♪」

 

通形先輩は次の瞬間、背後に展開していた虚数空間ブロック状によって吹き飛ばされ、私の横を横切って壁に激突した。

 

「ミリオ!?」

 

「え!? 通形急に吹き飛んだよ!? なんでなんで!?」

 

「(通形ミリオでも、キアナの個性の前にはさすがに無理だったか……)」

 

私は振り返り、先輩のほうをジッと見続ける。

 

「まだ続ける?」

 

亜空の矛を四つ出して、いつでも放てるよう構える。

煙が晴れると、通形先輩はいつの間に持っていたのか、ズボンを履いて笑っていた。

 

「いやぁー! まさか急に自分が吹き飛ぶなんて思ってもいなかったんだよね! アッハッハッハ!! さすが神秘の象徴ってだけあるね!」

 

「……ふぅ、そりゃあ、私は最強だからね!」

 

とりあえず、私の勝利ってことでいいってことだよね。

 

 

――

―――

 

 

「いやーまさか一年生に土を付けられるとは! 俺強いでしょって話の流れに持っていこうと思ってたのに台無しだよね!」

 

体操着をちゃんと着た先輩は、そう言ってるけど、嫌味は感じない。

 

「訳も分からず全員、腹パンされただけなんですが……」

 

「攻撃あたんないしワープだし……」

 

「轟やキアナみたいなハイブリット個性かよ……」

 

私と見学していた轟以外の全員がお腹を押さえてる。

 

「そうだね……せっかくだし、見事勝利したキアナさんに聞いてみようか! キアナさん、俺の個性についてわかったことを話してみてくれよ!」

 

えぇ、そんないきなり?

 

「えっと……正直言うと、ワープってのはないかなって思いました。私もワープは使えるけど、ワープする素振りがなかったし……それに、最初の服が落ちるの。落ちるというより、先輩の実態がそこから消えたって感じ……かな? 眼では見えるけど実体はない。葉隠の実態の見えないと触れるの逆バージョン的な? んで、それを応用して攻撃もすり抜けさせたり、地面に落ちたり……それは、ゲームのバク的な感じ……?」

 

自分で言ってるけど、よくわかんない……アハハ。

 

「うん! 大体あってるんだよね! キアナさんの言う通り、俺の個性は一つ! 「透過」なんだよね! 君たちが言っていたワープは、その応用さ!」

 

「どういう原理でワープを?」

 

「全身個性発動すると俺の身体はあらゆるものをすり抜ける! あらゆる! すなわち地面もさ!!」

 

「あっ、じゃああれ……落っこちてたってこと…!?」

 

透過……そういうの透過って言うんだ~はじめって知った。

 

「あらゆる……とっても"強い個性"ね」

 

「いや、"強い個性にした"んだよね」

 

「"した"?」

 

「俺の「透過」は、発動中は肺が酸素を取り込めない。吸っても透過しているからね。同様に鼓膜は振動を、網膜は光を透過する。あらゆる物がすり抜ける。それは何も感じる事ができず、ただただ質量を持ったまま落下の感覚だけがある…ということなんだ」

 

それって、結構やばいんじゃ……落下の感覚だけってなんかいやだな……。

 

「扱いの難しい個性! この個性で上に行くには後れを取れない! だから俺には"予測"が必要不可欠で、正しく素早い予測には"経験"が何より必要だった!!」

 

予測か……てことは、私の虚数空間は予想外。まあ、私以外は私が言わない認識どころか存在そのものがわからないからね。

 

「長くなったけどこれが手合わせの理由! 言葉よりも"経験"で伝えたかった! インターンにおいて我々は"お客"ではなくサイドキック! プロと同列として扱われるんだよね! それはとても恐ろしいよ。時には人の死にも立ち会う……! けれど怖い思いも辛い思いも全てが学校じゃ手に入らない一線級の"経験"! 俺はインターンで得た経験を力に変えてトップを掴んだ! ので! 怖くてもやるべきだと思うよ一年生!」

 

通形先輩がそう締めくくると、皆一斉に拍手した。

 

「話し方もプロっぽい……」

 

「"お客"か。確かに職場体験はそんな感じだったな」

 

「危ないことはさせないようにしてたよね」

 

確かに、どちらかというと見学とか、そういう感じでもあった……まあ、ヒーロー殺しの時のは完全にその外なんだけどね……。

 

「キアナさんの個性についてもいろいろ聞きたいけど、それは今度にするよ!」

 

そう言って、三年の先輩三人は体育館γを後にした。

 

「結局キアナだけか食いついたのは~……」

 

「悔しいけど、納得はいくんだよな~」

 

「予測って言ってたけど、キアナちゃんのは予測しても予想外の攻撃ができるからね~」

 

みんなが私の個性のことでも話してる。

一応、メイ博士が私の個性についていろいろとまとめた資料を雄英教師にも配ってあるって言ってたから、先生から何か聞かされるってことはないと思う……多分。

 

 

 

 

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