家の前で倒れてたラスボスが弟子になった 作:堕天使A
「………」
「………」
外に出たら家の前に天使が倒れていた。
現代日本の社会でブラックな労働から過労でそのまま倒れ帰らぬ人となったはずの俺は気がついたら過去にいた。
いたというよりも生まれ変わった。いわゆる転生だ。
周りは猿のような顔をした人間……いや、
さらにこの世界は俺の生きてた世界とは別の世界らしく、天使のような存在がいることも確認できた。
そんな天使とちょっとしたいざこざがあり、とある
つまりはそう俺の年齢は既に数万歳とかいうありえないものになっている。
そして、現在、前世で言うところの古代ギリシアにて居住を持つ俺はある出会いをした。
「………」
目の前で眠る中性的な性別不詳の人物。
大事そうに抱えていた子供を決して手放すまいと抱きしめつつ眠りについている。
まさか外に出たら倒れてるとか思わんよ。
どこから来たのか。なんで家の前に倒れていたのか。気になることは多々あるが今は休ませておいてあげよう。
さて、起きた時に腹に入れるものくらいは用意しておいてやるか。
さて、何を作ろうか。台所に立ち頭をひねる。
この時代は食材が少ないため作れるものが限られてくる。
──と思っていたのか?(ナニィッ!?)
さすがにこう、何万年も生きてると暇すぎてね。前世の知識を使って食料開発をしていたのさ!
記憶が無くなってはいたけど自分周りのことについてだけで覚えた知識は残っててよかったと心底思った。ご都合主義?知らない子ですね。
といっても、作れたのは大豆のようなものを使った発酵食品だけ。
手探りで作ったけど味はそれらしいものを作れた。
味噌に豆腐に醤油に納豆。日本人の魂ですね。
米に関してはまだ研究中だ。まあいずれ誰かが作ってくれるさ。
米の代わりに米状にしたパンに納豆を乗せて食べる。意外とイけるのこれが。
てな訳で海藻と豆腐を使った味噌スープに米(パン)と納豆のご用意。
そうしてると寝ていたかの人物が目を覚ました。
「んん……?」
「おぉ、起きた?ご飯食べれる?」
「………え?」
皿に盛り付けた食事を出すと困惑しながら辺りを見渡し、そして、交互に料理と俺の顔を見てくる。
改めて見てみるときれーな顔立ちだなと思った。
「まあまあまずは食いな?腹減ってんじゃない?」
「……」
そんな俺の言葉におずおずと木製のスプーンを手に取り食べ始める。
小綺麗な髪に端正な顔立ち。お上品に食べ進める姿はどこか裕福な家庭で育ったことをひしひしと感じた。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした、と」
手を合わせて食べ終わったのを確認し食器を下げる。
そのまま洗い場まで持っていきじゃぶじゃぶと洗いながら声をかけた。
「にしたって驚いたよ。家を出たらいきなり倒れてんだもの。何かワケありかい?」
「……あ、その……」
「言いたくないなら大丈夫だ。連れてきていた子供。あれ"死んでる"でしょ?なんかあったんだろうけどそこまで無理に聞くつもりもないよ」
「……よく、気づいたね」
「死んでからだいぶ時間経ってるのは見てわかる。保護液とか何も手を加えてないのに腐食する気配が一切ないのは疑問だけど」
まあ、あらかた予想はつく。
「おたくら、普通の人間じゃないでしょ」
「………」
その質問に返ってくるのは無言。
しかし、その目はしっかりとこちらを見据えていた。
「……私の子供は理不尽に命を奪われた。だからいきかえらせたかったんだ」
「蘇生ね。でもそれって禁忌。タブー中のタブーじゃないの?」
「あぁ。でも諦められなかったんだ。だから隠れて研究してた。でも」
「見つかって逃げてきたわけだ。地上に?」
「……君はどこまでこの世界を知ってる?」
「10割が果たしてどれほどのものか。でも大抵のことならって感じかな」
「……なるほど」
そう言って微笑む顔は不気味な程に綺麗だった。
「
「そうだね。キミも上出身なのかな?」
「いんや。ちょっと上と揉めて呪われちゃった人間だよ」
「……揉めた……もしかして数百万年前の"上の世界を半分壊滅状態まで追い込んだ人間"かな?」
「……数百万、もうそんな昔なのか。よく覚えてるね」
「有名だよ、キミは」
あの時はなりふり構わずやってたからな。
我ながらよく1人であそこまで壊せたと思う。
「もしかして恨んでたりする?」
「まさか。私も連中のことは好きじゃないんだ。だからどちらかと言うと感謝してるよ」
「お、気が合うな」
「そのようだね」
そうして笑い合う俺たち。
「ところでどうやってあそこまで神を追いつめたんだい?」
「んー?まあ、呪術だな。呪いの類は昔からあったし、それを研究しまくって喧嘩仕掛けに行った」
「……それだけであそこまで行くものなの?」
「天使らが使う呪術、と言うよりほぼ魔術、魔法かあれは。あれを解析して俺の呪術に落とし込んで利用した。だから言っちゃえば起動は俺の呪術だけどほぼほぼ自滅に近い形で壊しに行ったな」
「……うわ、えげつないね」
そう言いながらわざとらしく引く動作を見せる。
なんやコイツ。
「それにしてもよく解析なんて出来たね」
「天・才ですから」
ビシッとポーズを決め、僕はキメ顔でそういった。
と言ってもあれはもうほぼ偶然だよ。奇跡が重なってあそこまで行けただけで、今同じ条件でもう1回やれと言われたらさすがに無理だ。
「ちなみに上にはどうやって?」
「襲ってきた天使を返り討ちにした後に仮死状態になって、天使が降りてきた道を逆算して昇って行った感じだな。そんな方法で行ったからなのか呪いかけられちったよ」
「……馬鹿だろキミ」
「バカと天才は紙一重なのさ」
呆れたような顔で言う目の前の人物。
そんな彼を見ながら俺は提案した。
「さてそんな天才的な俺と出会ったのも何かの縁。どうだい?あんたの子供の蘇生、手伝ったろうか?」
「……いいのかい?」
「こちとら暇なもんで」
そう俺は暇人だ。
そりゃ数万年……いや、数百万年生きてりゃ暇になるってもんさ。
暇すぎて発狂したこともあるし、なんなら精神が死にかけたこともある。
5億年ボタンを押したらこんなふうになるのかと悟ったもんだ。
まあその暇つぶしに呪術のことについて研究しまくった結果、最強の人間になったという自負すらある。
「……アテはあるのかな?」
「蘇生の呪術に関しては今まで生き返らせたいと思うほどのやつに出会わなかったこともあって触れてこなかったからアレだけど、俺の知識は貴重だと思うよ?」
「確かに。その道に関してはあの性格の悪い神以上だと私も思うよ」
やったぜ。神超えたぜ俺。
「んじゃまあよろしくってことで。名前は……俺には無いからナナシでいいよ」
「そうか。私は【シカ・マドゥ】。よろしく頼むよ、ナナシ」
そうして俺とマドゥは握手した。
ほっそい指にすべすべとした手触り。
「……あんたって男?女?」
「私に性別はないよ?まあ体の骨格は男のように見えるだろうけど……ちなみにキミは男と女どっちがいい?」
そう言われても困る。
まあ、確かに俺も男だ。
「……女かな?」
「分かった。後で胸に膨らみを作っておこう」
そんなことも出来るんか。しゅごい。
「今日から弟子として世話になるよ、先生」
「……先生?」
「当たり前さ。教えを乞うのだから。だからキミは私の師。先生だよ」
「……人間に弟子入りとかヤじゃない?」
「キミだけは特別さ」
そう言って彼、いや、彼女はウィンクした。
なにそれちょっとキュンとした。
まあ兎にも角にもあれだな。
弟子が出来たらしいな。
モチベが続いたら書くね。