最強騎士に憧れて体現しようとしてるTS転生主人公君︎︎ ♀はお嫌いですか   作:H-13

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魔法について色々感想で書かれていましたので、簡単に設定や制限的なものを公開します。

・指定範囲内における空間把握と空間操作の「複合設置型魔法」
・空間破壊等の空間自体を傷付ける行為は不可能。空間を仕切る行為は可能。
・併用しての【グラム】の使用不可(対魔には自身の魔法も引っかかるため、グラムが発動した瞬間に【クル・パキア】が崩壊する。)
・結界の維持の為に魔力と共に精神力を消費する。これは頭痛や魔力が削られる感覚として既に発現している。(ダンまちでは魔力=精神力の様な描写が見受けられる。マインド・ダウンがいい例。シグリーヴァのこの魔法についてはそれ以外にも何かを消費して発動しているという解釈で問題無い。)
・レベル7の魔力量でも長時間維持が難しい魔力喰いの為連続発動困難

今回はデメリット寄りのことを中心に記載しました。シグリーヴァが求めたのがジャイアントキリングを前提としたものなので小回りが効きませんね。発展アビリティの魔導を取得すればこれらのデメリットが軽減される可能性があります。シグリーヴァ君の今後の頑張りを期待しましょう。



聖地巡礼ならぬ原作イベント巡礼

 

「やぁ、少年。精が出るね。」

 

防具も無く、安い短剣一本で必死にモンスターと戦う白い兎。白い髪が自分の血と土で汚しながら戦うその姿。レベル1、それも駆け出し。瞳の奥に灯る激情は黙って見守るには熱すぎた。

 

故につい、声が出た。

 

兎君がビクッとして此方を振り向いたのを見て、可愛いなぁ、と庇護欲が膨らんだのは秘密である。

 

さて、どうしてそんな事になっているのであろうか。ベル君にはアイズが居れば、シルやリューが居ればそれで良いだろうに。

 

 

 

 

オッタルとの組み手というレベル4以下の子達に見せる為の見世物が終わった後、お腹ぺこぺこ丸なシグリーヴァちゃんの手にはパンとスムージーが握られていた。

 

昼前から部屋に篭もり、出てきたと思えばステータス更新を強請る。そうして終わったら腹ぺこなのを無視してオッタルの所へと向かった。

 

うーん自業自得。パンもスムージーも美味しいけどこれは空きっ腹を紛らわすものに過ぎない。

 

腰に短剣を提げ、グラムはお留守番。もう夜だし出かけるとしますかー。

 

ランクアップはギルドに報告する義務があるが、そんな所よりも先に報告する場所がある。

 

 

ミア母さんである。

 

 

なんといってもあの人こそシグリーヴァの拳士としての師匠であった。

 

勝手に師匠と呼んでいた時期があっただけだし、技術を教えて貰うとかは一切無かった。だってミア母さん自身が武に秀でた人ではなかったから。

 

圧倒的な腕力による暴力。それがミア母さんである。

 

教わったのは拳の握り方から殴る場所、それから心構え。実際この教えがあったから色々と割り切れた部分もあり、感謝しかないのだ。

 

剣しか振ってなかったレベル2時代。あれ?もしや、このまま行くとシグルドじゃない道に進む事になる…?と。

 

一抹の不安を抱いた自分が起こした行動とはそう、神フレイヤに泣き付くことであった。

 

情けないと思うだろうか。今では似非マジカル☆八極拳を使っている身が誰かに師事しようとしていたのは。

 

神フレイヤの思う最強の腕力として紹介されたのがミアであった。そりゃそうだ、元フレイヤ・ファミリア団長だもん。

 

フレイヤ本人すらぶん殴る暴君。神フレイヤの紹介は間違っていなかった。

 

だって、もっと自由で良いと気が付いたのだから。型破り型無しとはまた違う、ひとつの形。

 

もっと我儘で、もっと自由であれ。目指すところが定まっているならば「恩恵」は確りと応えてくれるから、と。

 

今思えばレベル4の時も相談すれば良かったかな。行き詰まって我武者羅に何でもやってたし。

 

あー、うん。やめやめ。感謝を込めてお酒でも買ってこう。魔導書分が浮いたしね。

 

どの世界でも酒の値段はピンキリである。法外な値段で取引される様なものは持っていかないけれど、ミア母さんのコレクションに入る様な。…大体50万ヴァリスのこれ良さそう!はーい店員さん、これこれ。ちゃんと数えてねー!包装?サービス?よし来たお願いしやーす!

 

もう夜。空には星が煌めき居酒屋はわいのわいのと煩いくらいに繁盛している。

 

豊穣の女主人は、っと。お、今日は団体さん入りか。忙しそうだねぇ。

 

コソコソっと気配薄めて入れば、カウンターが1席空いてるじゃないか!

 

リューちゃん、エール1杯とおつまみ2皿くーださい。あとミア母さん呼んでもらっても?

 

丁度通り掛かったウェイターはエルフのリューちゃん。いきなり現れたように見えたのだろう。びっくりしてる顔が可愛かった。

 

「なんだい、忙しいんだから後にしな!」

 

ちょいちょいっと飲んだら帰るからね。はい、日頃の感謝。コレクションに入るくらいのやつだよ。……ミア母さん、ランクアップしたよ。レベル7になった。ギルドより先に教えたかった。それだけ。久しぶりに色々話したいから、明日の午前中にでも時間作ってくれたら有難いな?

 

「気が利くじゃないかい。こんなもん貰っちゃ時間作らないわけにもいかないね。…そうかい、上がったかい。満足して無さそうだね」

 

いーのいーの。漸くミア母さんを抜けたけど、頭は上がらないからね。…うん。通過点だよ。私はこんな所で止まれない。

 

背後でロキ・ファミリアがどんちゃん騒ぎをおこしてリヴェリアのおっぱいを賭けてなんちゃらと聞こえてくる。そんな中での数回のやり取りであったが、本当の母親との会話の様に身体に染み渡る。

 

一時の嬉しさと一緒にエールで喉を洗う。今日のおつまみは…と。

 

カリカリに焼かれたバゲットにアボカドやら生ハムやら乗っけてあるやつか。オシャレだねぇ。小さいから数が多くて助かるや。

 

こっちは、ローストポークかな?絶妙な火入れが最高の赤身肉。塩と胡椒、粒マスタードのソースが美味いんだこれ。

 

軽く飲んで帰るの言葉を忘れてエールお代わり!って言ってしまうのは不可抗力だろう。

 

 

「…ああ、アイズ聞かせてやれよ。あのトマト野郎の話」

 

 

二杯目グビっと行こうとした時、通りの良い声でそう聞こえてしまえば…空気が下がった。

 

あー、今日なのか。今日だったか。浮かれて忘れてたよ。

 

当事者間で解決してないようなコトを酒の肴にしようとしているのは悪質だ。

 

さらに言葉を重ね、酒の勢いで告白紛いの言葉を吐き出している姿にはくすりと笑ってしまった。

 

「男の俺」と「女の私」が居る感性だ。狼君の気持ちも分かるし、あんな男と番になるのは御免だね~とちょっと気分が悪い私も共存しているのだ

 

うん、複雑。兎君が飛び出して行っちゃったし…神ヘスティアのご飯代だと思って払っておこうかな。

 

アーニャ、兎君分は私が持つよ。うん、うん。じゃぁコレを。あとちょっと小言だけ言って帰るからそれだけ宜しくね?

 

「にゃー。ミア母さんに殴られないようにしにゃ~?」

 

分かってる、わかってる。さて、───神ロキ。

 

 

酒場から音が消える。レベル7の存在感、抑えていたそれを解放し器用にもロキ・ファミリアだけに殺気混じりの闘志をぶつけているだけである。

 

大きな声では無い。ミア母さんには迷惑は掛けたくないのだ。

 

「なんや、居たんかシグリーヴァ」

 

居たとも。少しミア母さんに報告と贈り物があってね。少し飲んで帰ろうとした所でコレか。……ミア母さんの店じゃ無きゃ見逃してたけど、弱い者虐めしてお酒が飲めるファミリアは此処には通って欲しくないなぁ?

 

「なんやて?…喧嘩売っとるんか」

 

喧嘩買いたかったらいいけど。君達とは違うから言葉で諭してるだけだよ。こんな話を今後もするなら今すぐ二次会に行って欲しいんだけど。

 

やっても良いんだよ?昨日か一昨日のミノタウロスの件。十分ギルドからのペナルティ案件だしギルドに私と被害者の会でロキ・ファミリアにペナルティをってノイマンに圧力かけるの。

 

__剣王とロキ・ファミリア!?____

 

___なんだなんだ___

 

____やれ!やっちまえ!___

 

周囲もこの対立構造にザワザワと騒ぎ出してしまった。さっさと終わらせないとね

 

「シグリーヴァ・ヘリア」

 

なぁに?レベル5程度の幹部も御しきれない人工勇者君?

 

「ほんま喧嘩買ってやろうか?」

 

「ロキ、買ったら終わりだよ。…言う通りだ。僕が確りと手綱を握れてなかったせいだ。謝罪する。」

 

まぁ安牌な対応だね。私に謝罪するんじゃない、ミア母さんに謝って。…あと、確り調教するんだね。モンスター・フィリアでもガネーシャ・ファミリアがやってただろう?

 

「忠告を噛み締めるとするよ。」

 

「テメェ聞いてりゃ───ッ!」

 

はいはい。ヨイショッとぉ!!!

 

ベートの上段蹴りを余裕を持って避けながら鳩尾に肘。流れる様に金的ぃ!外にしゅートぅ!!レベル差が2つあればこんなものである。うん、破損無し、怪我人なし。上出来だね!

 

「なぁにが上出来だこのアホンダラ!!!」

 

バッチコーン!と漫画の様な音がシグリーヴァの頭から響きミアの不意打ちの拳に撃沈させられた。解せぬ()

 

ちゃんと迷惑料金も払って、そそくさと店を出てダンジョンへ向かったシグリーヴァであった。

 

 

 

「フィン、良かったんか?あれだけ啖呵を切られた相手にそんなんで。」

 

「未確認のモンスターと対峙した時以上に親指が痛かった。それだけだよ。…丸腰同然で酒も入ってるんだ、勝ち目は無かった。」

 

「そんなにか?」

 

「新しいスキルか、…最悪レベル7だ。前は見えてた勝ち筋が勝ち筋に見えなくなってる。」

 

「マジかぁ…フレイヤの奴にまた突き放されたやんけ」

 

「嘆いてても仕方ない。僕達も成長している。遠征からも帰って来て恩恵を更新しただろ?」

 

「そうやね」

 

シグリーヴァよりも迷惑料を多く支払ったロキとフィンの会話であった。





長くなったので分割です。作者的にロキ・ファミリア好きな部類なんだけどここだけはちょっと無理だなって思ってるので態度強めです。謝罪よりも先に煽りや酒の肴のネタに使うのは無理。


18巻読み切りました。わちゃわちゃしてる部分もある為あと2回位は読み返したりしますが、大きな節目が1つ終わったのでは無いでしょうか。シグリーヴァがあの場に居たらどう動くんでしょうね。あそこまで書けたら良いなぁ(まだ隣に居るモチベ餅をなでなで)

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