最強騎士に憧れて体現しようとしてるTS転生主人公君︎︎ ♀はお嫌いですか 作:H-13
無性にファミリアのご飯じゃなくて外のご飯食べたくなる時がある。みんなも無い?家で乾麺茹でてうどん食べるくらいならちょっと自転車で10分位の離れた大衆チェーンに行って600円でも1000円でも払ってうどん1杯食べたい瞬間。私はあった。
丸腰で夕方のオラリオの空を見上げながら一人で散策する。
女が丸腰で出歩くなと言われればその通りなのだが。例え完全武装した同僚の猫やロキ・ファミリアのアマゾネス姉妹が突っかかってきてもボコせる自信があるからに他ならない。
「戦士の王」とは獲物が手元に無ければ敗北するのか。違うだろう。故に我流ではあるが知識の中に根強く残るマジカル☆八極拳を再現してみた。似非であり、体系化すら出来ていないが「禍津・黎明剣」にも使われている寸勁はゴライアスを体内から爆散させ、ウダイオスの肋骨を問答無用で粉砕した実績を持つ。
それに加えて「剣王」としての知名度。オラリオ最強の剣士としての名と容姿は嫌でも有名にならざるを得ない。それは逆に言えば実力の裏付けと抑止に繋がってくれている。
長々とどうでもいいことを脳内で早口で喋ったけど、どこ行くんだって?え、気になるの?
…そうかそうか。ではお答えしよう!私が今夜の夜ご飯を食べるお店!じゃーん!「豊穣の女主人」!早速入ってみましょうね。
頼もー!!!!!
「此処は食事処さね!誰だい道場破りは!」
おっとー?私じゃなきゃ死んでますよその拳。
がっちりと振り下ろされた拳を片手で受け止める。ミアと同等以上に成長した筋力を以ってしてもギリギリだったが無事受け止めきれた様だ。安心。床とか砕いたら請求来そうだしね。
「あんたの掛け声は喧嘩売ってる時のやつだよ全く。何の用だいシグリーヴァ。」
ミア母さんの飯を食べに来たに決まってるでしょーが!それ以外に此処には来ないよ。…来ないからね?
「前の看板が支度中なのが見えなかったかい!…たく、アーニャ!下準備は終わってるかい!?」
「ニャー!!開店前に来るとか巫山戯るにゃこの剣狂い!」
「私が聞いてるのは此奴への文句じゃないよ!」
「ウニャー!終わってる!終わってるニャー!」
うん、騒がしい。でも嫌いじゃない。ニコニコとカウンターに座って彼女達の戯れを眺めて居るシグリーヴァは他人事。アーニャは今度殴ると決意固めた様子。
「それで?何食べるんだい」
そりゃお任せに決まってるでしょう。あ、冷えたエール頂戴。ンー、5000ヴァリスあれば足りるでしょ。酒の肴2.3品とメイン1皿!余ったらチップね!
「はいはい、お残しは厳禁だからね!」
委細承知。ウンウンと頷いて肯定する。美味しいものを残すなんて馬鹿な事はしないよ。
彼女達が慌しく準備している姿を肴にエールがぶ飲みしていれば、一人すすす、と横に寄ってきた。
「シグリーヴァさん、お疲れ様です。」
ああ、シル・フローヴァ。ん~、識っている身だからか彼女との付き合い方も如何せん悩んでしまうと言うもの。だからなんにも言葉に出さずグラスを掲げるだけに留めた。
「ほら、出来たよ。ポセイドン・ファミリアから届いた海老のクリーム焼きとデメテル・ファミリアから卸した野菜と肉のミニミルフィーユ鍋。メインはちょっと待っときな。」
シルが口を開こうとしたタイミングで丁度料理が来たから完全に前向いて食べ始めたけど怖いなー。後ろ向かんとこ。
海老でっか。オマール海老の一回りはデカいぞこれ。ホワイトソースに焦げたチーズが上にかかってるの反則だろ。
ん~、やっぱり日本人には醤油だよな!厳密に言えば醤の上澄みらしいけどここでしか補給出来ないジャパニーズソウルは心の癒し。白菜みたいな野菜に豚肉みたいなお肉。酒、醤、鷹の爪。塩に柚子胡椒とシンプルな材料に関わらず酒の肴として機能しているピリ辛な一人用鍋にはエールが止まんない。
ふたつが綺麗に食べ終わった頃、ドンッと置かれたのは山盛りのナポリタン。これぞ「豊穣の女主人」という一皿。1500ヴァリスする値段に見合うミア母さんのお手製は、周囲の席が賑わってきた頃に完全にシグリーヴァの胃の中に収まっていた。
作者の夕ご飯がミルフィーユ鍋でした。