偽神転生 作:お日様ポカポカ
転生チート
「えー。すみません。もう一度詳しく説明をお願いします」
先程説明されたことがあまりに信じ難いことであったため、混乱でうまく情報が整理できない。
そもそもここはどこなんだ。
上、下、右、左。どこを見回しても何も見当たらない。
ただ、真っ白な空間がどこまでも際限なく続いている。
目の前には髭の長い白髪の老人、
「うむ。いいじゃろう。まずお主は死んだ。死因はトラックに激突が原因で即死じゃ」
「はい」
「なんだかんだ理由があって別世界に転生することになったんじゃ。分かったか?」
「いや、説明になってないだろ!」
こっちは、なんだかんだで省略した部分の話が聞きたいんだよ。
転生ものなら理由の説明くらいあるでしょう。
神様の不注意が原因とか、他の人の死ぬ運命に巻き込まれたとかさ。
「そこまで、細かく拘らんでも構わんだろう。問題はお主の次の生についての話じゃ」
神は傲慢という作り話は、真実だったらしい。
俺の態度を心底煩わしそうにする、この神の物言いに腹は立つが、次の人生という言葉に興味を惹かれたのも事実だ。
後で、問い詰めることにしようと心に決めて、俺は神の言葉に耳を傾ける。
「まず、お主にはこの『ガチャ』を引いてもらう。合計三回。それぞれ『種族』『能力』『世界』を『ガチャ』で決める。ここまではいいか?」
「ああ」
「一度決まったこの三つはその後二度と変えることはできない。つまり、お主はどんな努力をしようとも元の世界には帰ることはできんということじゃ。これを説明せんと、無茶してでも帰ろうとする阿呆がおるんでな」
つまり、神は前世のことはキッパリ忘れて次の世界で生きろ。と言いたいのだろう。
まぁ。帰ろうとする奴もいるよな。
俺だって前世の両親や、友人がどうなったのか気になるし。
もう一度会えるというなら会いに行きたい。
「ちなみに、強引に元の世界に戻った人達は居たんですか?」
「ああ。こうして忠告するようにしてからも何人も、な。お主もバカなことは考えるなよ。契約違反は死じゃからな」
「・・・・!」
ギロリと睨み俺に釘を刺してくる神。
神威とでもいうべきか、神の有無を言わせない圧倒的なオーラを受け俺の体が恐怖で震える。
突然震え出した体をなんとか抑え、必死にコクコクと頭を振り俺は了解の意を示した。
「ふん。ようやく大人しくなったか。
お主はさっきからどうもワシを舐めとるような気を感じたからのう。
ハッハハハハ。いい気味じゃ。」
理解した。神にとって俺の存在は道路の端を歩いているアリのように簡単に潰せる存在なんだということを。
そのことを分からせるために神はわざわざあんなことをしたのだ。
「お主が立場を理解した所で早速『ガチャ』を引いてもらおうかのう」
神が腕を振るうと虚空から『ガチャ』が俺の前に現れた。
スーパーや、田舎の駄菓子屋の横にでも設置されていそうな、見覚えのある装置。
完全に俺の世界にあったガシャポンだ。
もしかして、神はわかりやすいように俺の知っている形に合わせてくれたのだろうか?
なんだ。親切なところもあるじゃないか。
神が怒ったのは俺が不遜な態度をしていたからで、本来は親切な神なのかもしれない。
神様に心の中で謝罪して、目の前にあるレバーを右に回した。
ガッコンと大きな音がなり中から白いカプセルが転がってくる。
まず最初は、『種族』だったか?
できれば、獣人とかエルフみたいなファンタジー生物。最低でも人間に近い身体を持ってる奴がいいなぁ。魔物とかは嫌だし。
種族:神族(偽)
なんか、やべえの引いた。
「おおっ!お主ついとるのお。そいつはガチャの中に入っておる数が少ない珍しい種族。レア種族の一つじゃな。中でも神族(偽)は今まで引いたヤツの中にも一人もおらんかった」
なんでも、神族(偽)とは神様が深夜テンション全開で作った種族らしくガチャの中にも一つしか入れていないらしい。というか、神様にも深夜テンションってあるんだ。
「いや〜。本当は神族を作るつもりじゃったんじゃが、流石に普通の人間をいきなり神にするのは不可能。最終的に神の劣化にしかならんくてのう。じゃがか、捨てるのは勿体無いから神族(偽)にして入れることにしたんじゃ」
「じゃが性能は保証する。劣化といえ神を元に作った種族。基本不老不死で、各種状態異常全て無効。それに加えて美形と弱点なしの最強種族じゃからな」
要するにめちゃくちゃ当たりの種族ということだろう。
幸先のいいスタートを切れたと思った俺はこの良い流れを絶やさぬよう、即ガチャを引いた。
次の転生特典は『能力』
全魔法適正とか、時を止めるみたいなチート能力が欲しいが果たして
能力:強化
うん?これはどういう能力だろう。
自分の身体能力を強化するスキルなのだろうか?
「ほほほ。やっぱりお主はついとるの」
ニコニコとした笑顔を顔に浮かべ神様は呟いた。
神様の反応的に悪くはないのだろう。
先程のガチャ結果を思い出し、ほんの少しの期待を寄せて俺は神様の説明に耳を傾けた。
「この強化という能力はいわばバフじゃな。使った相手の能力全てを向上させる究極のバフ。それに加えてかけた相手の精神に作用して肉体の持つ潜在能力を引き出す効果もある」
めちゃくちゃ強いじゃねえか!
これ、異世界で無双しちゃう?
俺の時代来た?
「まだ、説明は終わっとらん最後まで聞け」
あ。すみません神様。
「全くこれだから人間は。夢を見るのは最後まで説明を聞いてからにせい。・・・・まぁそれも人間の特性か。ワシは好きじゃ。夢を見る人間の顔は」
「神様・・・・!」
やっぱりこの神めっちゃいい神だ。
「話を戻す。強化の能力は確かに強いが強すぎていきなり大量の強化を施せば対象の体が壊れかねん。それはお主の神族(偽)の体も同じじゃ。
神族の体は、神族のみ殺すことができる。種族の説明で基本不老不死と言った理由はそれじゃ。他にも神殺しなんて武器もあったりするが今は関係ないので置いておく。
とにかく、強化の能力は強すぎて一度に多くの力を与えることはできん」
なるほど、強化の能力は神様が与えてくれた能力だもんな。
強すぎて普通の人間の体では能力についていけず、寧ろ体を壊してしまう。
七つの大罪の『傲慢』なキャラが似たような状況になっていたはず。
「・・・・なるほど、だから肉体の潜在能力を引き出す効果が強化の能力には付いているわけですね」
「その通りじゃ。折角の能力で自分の身体が壊れては溜まったもんじゃないからのう。
時間をかけて体を能力に馴染ませるための能力じゃ」
神様の詳しい説明を聞いて俺は納得した。
確かにいきなり強くなれる能力ではないが時間をかけて強くなる分、その期間に技術を磨いたり、戦闘経験を積むことができるのは利点だ。
チート持ちは最初から能力が強い分、技術を身につけることや、地道に経験を積むことが難しい。
そのため、基礎のしっかりした強者や、経験豊富な老人キャラなどに弱点を突かれて負けることも少なくない。
強化の能力は時間はかかるがうまくいけば能力、技術、経験、全てに隙がない本当の最強になれる能力だ。
「さあ、三回目のガチャを回すんじゃ。最後は『世界』。剣と魔法の世界、アニメの世界、元いた世界とそっくりな世界など、盛りだくさんじゃ」
三回目のガチャだ。平和な世界も捨てがたいが、ここまで来たならファンタジーな世界に行きたい。
緊張で手が震える中、ゆっくりとレバーに手をかけて一度深呼吸。
そして、一気にレバーを回した。
落ちてきた白いカプセルを手に取り。目を閉じ。カプセルを上下二つに開いた。
「ほう」
低いしわがれた神様の声が聞こえた。
何が「ほう」なの!?
その二文字にどんな感情が込められてるの!?
「ほら、何をビビっておる?さっさと目を開けんかい」
神様に促されビビりながらもそっと片目を開ける。今までの二つより何倍も長い文が目に飛び込んでくる。
世界: ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
あ〜。ダンまちか・・・・。悪くはない。ヒロインも全員善人だし美人だし。フレイヤ?あいつはヒロインじゃないから。
望んだ通りファンタジー世界だし。
あまり詳しくないが読んだこともあるし。
全く知らない世界に行くよりはマシかな・・・・
ただ、ダンまちの世界なら一つだけ頼みがあるんだが。
「すみません。神様。転生する時間は指定できます?」
「時間?まぁ、指定が有れば可能じゃが・・・・何か希望があるのか?」
「原作20年前にお願いします」
ダンまちの主人公は確か成長チートを持っている。
原作開始時期に転生しても話の流れに置いていかれるだけだ。
別に積極的に原作に介入したいわけではないが、ダンまちの世界は自分の身は自分で守れないと生きていけない過酷な世界だ。
暗黒期を過ごすのは不安もあるが、確か暗黒期は原作15年前に当時の二大ファミリアが厄災?に敗北したことが原因だったはず。
強化の能力を5年体に馴染ませて、「神の恩恵」を受ければある程度は戦える力をつけることもできるはずだ。
神様は顔の下に手を置いて少し考える素振りをしたが、すぐに視線をこちらに向けてニコッと笑った。
「いいじゃろう。お主が希望する時間に転生させよう」
「本当ですか!?」
「ああ、本当じゃ」
「ありがとうございます!」
「それくらいはサービスしてやっても良い。ハッハハハハ」
この時の俺は希望に満ちていた。最強の種族に、ポテンシャルの塊の様な能力を持ち、輝かしい異世界ライフをダンまちの世界で送ることができると夢見ていた。
「さて」
「お主は何を差し出すんじゃ?」
「え?」
差し出す?なにを?いや、そもそも俺はもらうほうじゃないのか?
頭が追い付かず、先ほど神様が言った言葉がぐるぐると頭の中を回っている。
神様は俺が神族(偽)を引いた時と何ら変わらない笑顔を浮かべていた。
ニコニコと笑う神様の笑顔がまるで能面のように薄っぺらく見えて、
「い、いやだな。神様何かの冗談ですよね」
こう質問するしかなかった。白々しいが、「そうだ」と返してほしい一心で返した質問に対し、神様の返答は残酷だった。
「いかんなあ。現実から目をそらすのは。目をそらしたところで事態が好転するわけじゃない。人間の悪い癖じゃな」
どうして?何がこうなって?というより神様の正体は?たくさんの疑問が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。
コツコツと、近づいてきた神様は心の底から上機嫌だと分かる声で
「ワシは悪魔じゃ」
スン。と頭の中が空っぽになった。
神、いや悪魔は生気の抜けた俺の姿を見て歪んだ笑みを浮かべた。
歪んだ笑みは今までの
「ハッハハハ。最高じゃお主の顔。その顔を見れただけであんな面倒くさい演技をやった甲斐があったわい。お主は本当に運がいい、何回か同じ方法を試してきたが今日ほど楽しい時は今世紀で初めてじゃ!」
悪魔はその後、俺がさっきまでどんな顔をしていたのかを正確に伝え。その時どんなことを考えていたのかを全て的中させた。
「お主は二回目のガチャを引く直前、『よし幸先の良いスタートだ、この流れのままいい能力を引けば俺は異世界で最高にいい思いができる』と考えていたじゃろう」
ああ‥‥
「お主は二回目のガチャを引き調子に乗っているお主を諫めたとき『この神本当はいい神なんだ』と思っていたじゃろう」
ああああ‥‥
「お主は三回目のガチャを引く直前『この能力があれば、技術、経験、能力どれも隙がない最強の男になれる』と思ったじゃろう」
ああああああ‥‥
「お主は三回目のガチャを引いた直後『原作のかわいいヒロインと仲良くなれるかも』
なんて想像しておったじゃろう」
あああああああ‥‥
「甘い、甘い、甘い、甘すぎルゥーーーーー!!!!」
「いいか?ワシは優しいからのう。阿呆なお主にもう一度同じ言葉を贈ってやろう」
「夢を見るのは最後まで説明を聞いてからにせい、な?」
あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”あ”あ”!”!”!”!”
愉悦に満ちた顔で嗤う悪魔、その前でうなだれる俺。
悪魔はガチャに出た項目すべてを叶え、その上で踏みにじった。
不老不死、全状態異常無効の最強の身体は、決して治ることのない不治の病に蝕まれることになった。
悪魔は言った「お主の身体は素が強いからのう。少々重めの病でも大丈夫じゃろう。心配はいらん死ぬことはない」
どれだけ才能のない体でも時間さえあれば強くなれる最高の能力は、自分にかけることが不可能となった。
悪魔は言った「お主は病人じゃ。病人が無理して戦おうとするのはやはり止めねばならんなぁ」
神族(偽)は美形だし原作ヒロインと仲良くなってあわよくば、なんて欲望さえ読み取ったあいつは、俺の息子も消した。
悪魔は言った「邪な感情を向けるなら、向けられる覚悟を持たねばならん。知っておるか?結核にかかった女性はそれはもう絵画のモデルにされるほど美しいそうじゃ」
ダンまちの世界の神族が他の種族の嘘を見抜くことができるとことを知った悪魔は嘘をつくことを禁じた
悪魔は言った「この世界の神は
もうやめてくれ。少し前まで見えていた希望に満ちた未来が崩れ先の見えない真っ黒の絶望へと塗り替えられてゆく。
「悪魔!能力は返そう、何もいらない。能力も種族だって変える必要はない。そのままでいいから‥‥
「駄目じゃ。契約はもう成っておる。契約違反は死。お主にはもう伝えたじゃろう‥‥ああ、そうじゃもう一つ契約があったな」
そう言って悪魔は片方の口角を上げチラリと俺を一瞥し口を開いた
「お主、確か転生する時間を決めておったな」
「‥‥!ヤメロ!それだけはやめてくれ」
俺は必死に懇願した。当然だ。今の状態でどれほどのハンデを背負っていると思っている!?
原作のオラリオでも死にかねないのに暗黒期なんてとてもじゃないが生き延びられるわけがない。
だが、現実は無常で、悪魔は外道だ。
「駄目じゃ。契約じゃと言っとるじゃろう。お主は本当に物分かりが悪いのう」
俺の姿が悪魔にどう映ったのかは分からない。あの時の俺は自分を冷静に顧みることすらできない状態だった。
「ふざけるな!何が契約だ!そんなものどうやって証明するんだ!?」
馬鹿なことをした。どれだけ汚い言葉で相手を罵ろうが自分の立場が悪くなるしかないことなど少し考えればわかっただろうに。
あの言葉は奴に
俺の言葉で悪魔はほんの少しだけ不愉快そうに顔をしかめた。
もしかして、うまくいったか?そうだよな。契約にはあいての了承が必要だよな。などと訳の分からない支離滅裂な結論を出し勝手に納得しようとした俺に向かって
「お主のことをどう転生させようか考えておったが今決めた。実は神族(偽)は種族としての影響故か赤ん坊の身体に戻すことができなくてのう。どうするか悩んでおったがいい方法を思いついた」
「
血の気が引き青くなった俺の顔を睨み悪魔は苛立ちを隠さずにいる。
「舐めるなよ。この下等生物が。この俺がわざわざ契約という形をとっているのは面白いからだ。いわば趣味。立場を弁えん小僧を地獄に落とすぐらい造作もない。だが、お前は俺を楽しませてくれたからな、それを加味してこの程度にしといてやる。わかったらさっさと行け」
パンッと俺は肩を押され後ろに倒れこむ眼だけ下に向けるとそこには床がなく大きな穴があった。
「ここから先は自由だ。どこへでも行きたいところへ行け。まあ、その体でまともに動けるならな」
落ちていく。落ちていく。先の見えない穴の底へどこまでも。
俺の頭はどこまでも冷静だった。人間あまりにも絶望すると、かえって冷静になり余裕が出てくる生き物らしい。いやもう人間ではないか。
思へばあいつは一度も嘘は言っていなかった。
神を名乗ったことはなかったし。転生についての話をするときも逐一俺に確認していた気がする。
種族、能力についても一度もやるとは言っていなかった。
あいつはただ、契約というルールに則って物事を進めていただけだった。
ルールから外すきっかけを与え最後の最後にとどめを刺したのは自分自身だったわけだ。
‥‥ああ。俺は本当に悪魔の手のひらで踊っていた道化だったらしい。
そろそろオラリオにつくだろうか?あの世界で俺は冒険者ではなく神として生きていくこととなるだろう。
神の世界は文字通りの神算鬼謀がはびこる魔境だ。それだけでは無く俺は多くの欠点を抱えている
今回のようなことをしていれば瞬く間に食い破られ本えの髄までしゃぶりつくされることだろう。
失敗は次の成功のためにある。だが、次が回ってこないことだってあるんだ。
その事を身をもって知れたことは幸福だったと考えることにしよう。
暫く経つと床へ頭から激突した。ゴンッと大きな音が鳴る。
あの野郎こうなること分かったうえで落としたな。
ぐるぐると揺れる視界が落ち着くと自分がいる場所がどこか見えてきた。
そこは小さな一軒家だった。南と東の窓から光が差し込み明るく部屋を照らしている。
窓を覗くとドワーフ、ノーム、獣人など前世では本の中でしか見ることのできなかった架空の生き物たちが大通りを練り歩き少し先の広場にはひと際大きな党が天高くそびえたっている。。
ここが迷宮都市オラリオ、数多の冒険者の夢と野望が集う世界の中心地。この日俺、いや私はダンまちの世界に降り立った
悪魔「全ては人間貴方の理想を実現するためです……」
(唇を噛み締めるメデ○ック)
(歓喜の表情と共にダイビングジャンプ)
悪魔「その顔が見たかったァ……!
私に憎悪するそ・の・顔がぁ!ヒャハハハハハハ!!ヴエァハハハハハハハハ ハハァァ!!」