それでは…デザイアグランプリ、スタートです!
延空木。
10年前に起きた大規模事件『電波塔事件』で破壊された旧電波塔に代わり建設された、日本の新たなる平和の象徴。
だが、今やこの象徴も倒壊の危機を迎えていた。
「………行くの…?」
赤い制服を着た少女を抱えていたのは、紺色のジャケットを着て大きなベルトを装着した少年。
「…ああ。ちょっと世界を救ってくるよ」
心配させまいと笑う少年は、銃のリボルバーとグリップを組み合わせたようなアイテムをベルトに装填。
《SET》
少年の背後に『MAGNUM』という文字が浮かび、少年は叫ぶ。
「変身!」
ベルトに差し込んだアイテムのリボルバーを回転させ、引き金を引く。
するとベルトから六発の赤いエネルギーが飛び、白いアーマーへ変化して…
《MAGNUM!》
そこにいたのは少年ではなく、一人のヒーロー。
白いボディに猟犬のようなマスクをして、その手にはアーマーと同じ色の銃を握っていた。
「さあ…ハンティングの始まりだな」
そう宣言するとヒーローは走り出した…
これは、ある少年が命を懸けて世界を救うゲームに挑んだ…小さな記録。
幾度となく繰り返されてきた、終わりのない理想を叶えるゲームの一幕である。
ーーーーー
「おめでとうございます!厳正なる審査の結果、貴方は選ばれました!」
雨が降りしきる町中で少年、『藤木柳斗』の前に不思議な女性が現れる。
「今日から貴方は仮面ライダーです!」
そう言って謎の女性『ツムリ』は黄色い箱『ミッションボックス』を手渡すと、すぐに消えた。
「…仮面…ライダー?」
一体、何が起きたのだろう。
偶然にもバイト先の喫茶店で現実とは思えないことを聞いて、無我夢中でお店を飛び出し…
(何なんだよ…何かの冗談だろ?)
今のバイトを紹介してくれた少女、『錦木千束』。
天真爛漫を絵に描いたような彼女の寿命は、彼女が成人を迎えるか迎えないかで尽きるなど誰が想像できようか。
『…ごめんね。今まで黙ってて…』
『何だよそれ…心臓って…どうにかならないのかよ!?』
思いがけず知った真実を問い詰め、千束に辛そうな顔をさせてしまったことを悔やむ。
そんな会話を思い出し、柳斗は雨に濡れた頭を拭うことさえせず自宅のベッドに倒れこむ。
「………俺に、何ができるんだよ」
千束には死んでほしくない。
それは単純に友達だからではなく、もっと別の理由があるから。
それでも、あの会話を聞いた限りとうの昔に千束は自分の運命を受け入れている。
『もう決めたんだ…私の時間はこれしかないなら、その全部でやりたいことをするって。だから、私は今を限界まで楽しむんだ!』
「………っ!」
千束を助けたい。そう願っても、単なる学生に過ぎない自分には彼女を助けられるような医療の知識も技術も無いのだ。
そんな中、柳斗の視界にあの黄色い箱が目に入る。
「…仮面ライダーって、なんだ?」
箱を開けると、中に入っていたのは黒いベルトのような道具と動物の顔らしきものが描かれた丸いチップのようなパーツが入っており、招待状のような手紙が同封されていた。
「デザイアグランプリ…え!?」
招待状を開いた柳斗は思わず叫ぶ。
そこに書いてあったのは、『最後まで勝ち残った者は理想の世界を叶えられる』とあったからだ。
「理想の世界…そんなことが?」
さらに読み進め、柳斗はベルト…『デザイアドライバー』を腰に当てると自動的にバンドが腰に巻かれ、固定される。
「ベルトを装着…次は、『IDコア』をソケットに差し込んで…」
招待状にあった通り、犬を模したパーツ『ハウドゥコアID』をドライバーにセットする。
《Entry》
すると柳斗の視界が真っ白に塗りつぶされ…
ーーーーー
気がつくと柳斗は自室ではなく、どこかの神殿のような場所にいた。
周囲を見ると自分だけでなく、デザイアドライバーを着けた人が30人近くいる。
「ここって…?」
周囲を見渡すと、中央にあの女性、ツムリが現れる。
「皆さん、こんにちは!私はゲームナビゲーターのツムリです!」
「ようこそ、デザイアグランプリへ!」
ーーーーー
「今、私達の世界は『ジャマト』の脅威に晒されています。どこから来るのか、何が目的なのかもわからない…ジャマトから町の平和を守るため誕生したのが…このデザイアグランプリなのです!」
ツムリは集まった参加者達にこのゲームについて説明を始める。
だが困惑している参加者達にツムリは苦笑いしながら話を続ける。
「皆さん、『何それ?』って顔してますね…知らないのも無理はありません。ジャマトの脅威が世間に知られないように、ゲーム毎にジャマトの記憶は人々からリセットされるようになっています。思い出せるのは…IDコアを手にした人だけ」
「皆さんは仮面ライダーとなってジャマトと戦うのです。そして最後まで勝ち残った通称『デザ神』は、自分の願った『理想の世界』を叶えられるのです!」
「り、理想の世界…?」
参加者の誰かが復唱する。
「要は、どんな願いも叶うということです」
その言葉を聞いて参加者達の雰囲気がガラッと変わる。
「それでは皆さん、お手元のデザイアカードに願いをご記入ください」
すると柳斗達の手に白いカードと羽ペンが現れる。
(理想の世界…叶えたい願い…そんなの、決まってる)
柳斗はデザイアカードにペンを走らせ…
ーーーーー
柳斗達は私服からデザイアグランプリの参加者が着るユニフォームに袖を通した状態である山の中に送り込まれる。
『ではこれより一回戦、山賊狩りゲームを始めます!』
ユニフォームと共に支給されたゲーム専用スマートフォン『スパイダーフォン』からツムリの声が聞こえる。
『山の中にアジトを作った『山賊ジャマト』がいますので、近くのメンバーと5人もしくは6人チームを作り、山賊ジャマトを壊滅してください!ジャマトのアジトは計5箇所あります』
柳斗が周囲を見回すと、同じ参加者が近くに四人いた。
『また、制限時間以内に倒せなかった場合はジャマトは姿を消します。そうなった場合、次の第2ウェーブまでに倒してください。もし第2ウェーブでも倒しきれなかった場合………ジャマトは町に現れ、破壊活動を行います』
ツムリの言葉に息を飲む柳斗達だが、突然目の前にピンクの箱が現れる。
『皆さんには一つずつアイテムをプレゼントします。どうぞ攻略に役立ててください』
柳斗と他の四人は箱を開け、中に入っていたアイテム…『レイズバックル』を取り出す。
「これは…ハンマー?」
柳斗が手に入れたのはピンク色のハンマーをモチーフにした『ハンマーレイズバックル』。
「ねえ、あんたはどんなアイテム…って、あああ!!」
後ろから声をかけられたと思いきや変な声をあげる参加者。
柳斗が振り向くと、そこには見知った顔がいた。
「あんた、藤木!?」
「え…渡辺さん?」
ーーーーー
渡辺 由奈
柳斗と同じクラスの生徒で、社交的な印象の強い女子。
「なんだ藤木もこのゲーム参加してたんだ!良かった~、知り合いとかいなかったからどうしようって思ってたし!」
同級生と会えた安堵からか、由奈は嬉しそうに語る。
「えっと…とりあえず、僕達の間で自己紹介しましょうか。僕は藤木柳斗。変身するのは仮面ライダー…ハウドゥですね。あと、持ってるアイテムはこのハンマーです」
柳斗はスパイダーフォンに表記された自分の名前を確認する。
「じゃあ次は私だね。私は渡辺由奈。仮面ライダーサンドでーす!アイテムはえっと…弓?」
由奈はライトグリーンの『アローレイズバックル』を見せる。
「次は僕か。僕は大山塔野。仮面ライダーピッグだね。持ってるアイテムは…鉄球かな?これ」
少し大柄な男性が自己紹介をし、オレンジの『チェーンアレイレイズバックル』を取り出す。
「なら次は私ですか。私は須東優。仮面ライダー…グシャップ…?ですね。アイテムは…爪です」
オールバックの髪型をした少し年のいった男性が自身の持つライトイエローの『クローレイズバックル』を見せる。
「最後はアタシか…アタシは水無瀬三波。仮面ライダージェリーよ。持ってるアイテムは…蛇口?ね」
ゴスロリファッションの女性が青のバックル『ウォーターレイズバックル』を見せてきた。
お互いに自己紹介を終えると、木の枝等を重ねたような粗雑なアジトの周囲を歩き回る不気味な怪物を見つける。
「あれがジャマト…」
「さぁて、さっさと倒して私達が一位になるよ!」
気合いをいれて拳を強く握る由奈。
しかし…
「あの…あんな怪物にどうやって戦うんです?そもそもこのアイテムってどうやって使うのか…」
「「「「………あ」」」」
塔野の言葉に全員が気づいてしまう。
するとジャマト達がこちらに気づいたようで…
『ビテウ!ビテウ!』
『トトキスワスル!』
カタールなどの武器を持ちながら20体近いジャマトが一斉に襲いかかってきた。
「「「「「う、うわあああ!?」」」」」
ーーーーー
「ほう…今回は思ったより骨のある参加者ばかりだな」
デザイアグランプリの休憩所であるサロンで怪しげな仮面を被った男、ゲームマスターはゲームの進行度合いをモニターしていた。
ゲーム開始から既に10分。
27人いた参加者のうち、4人がジャマトの攻撃により死亡…『退場』していた。
そのなかでゲームマスターの目に止まったのは…
ーーーーー
他の参加者がジャマトに襲われ混乱するなか、その少年は自分の持つアイテムとドライバーを見ることで使い方を察する。
「…なるほど。使い方は理解した」
迫り来るジャマトを殴り飛ばし、少年は持っていた『シールドレイズバックル』をデザイアドライバーの自分から見て右のスロットに装填。
《SET》
ベルトから待機音声が流れ、少年はバックルのエンブレムを押し込む。
「変身」
《ARMED SHIELD》
すると少年の外見が大きく変化し、全身が黒いスーツ姿に変化。
さらに頭部には鷲を模したマスクが装備され、上半身は簡易的なアーマー。左腕には青い小型の盾が装着される。
「なるほど…これが仮面ライダーってやつか」
納得したように少年…『仮面ライダーイーグラップ』は頷くとジャマト目掛けて走り出した。
ーーーーー
一方、柳斗達は…
「運営!使い方くらい教えてくれてもいいじゃんかよ!」
ジャマトの攻撃を拾った木の棒でガードしながら思わずぼやく柳斗。
その中で三波はバックルの形状、そしてバックルに描かれた矢印から気がつく。
「ねえ!これってもしかしてベルトに着けるやつじゃないの!?」
三波の言葉に優がハッと気がつく。
「確かに…このベルトの形状なら、十分あり得る!」
《SET》
待機音声がベルトからなり、優は三波の考えが当たっていたと確信。
「あとはきっとこれを…」
装填したクローバックルの爪部分を引っ張る。
《ARMED CLAW》
優の外見が黒いスーツに包まれ、頭部は蟹を模したマスクが装着。
イーグラップと色違いのアーマーが装着され、両腕に黄色いクローが装備される。
「なるほど!だったら…」
《SET》
《SET》
《SET》
続けて三波、塔野、由奈も自身の持つバックルをドライバーに装填。
「変身!」
「へ、変身!」
「へ~ん、身!」
三波はウォーターバックルの蛇口を回転させる。
塔野は慌てながらチェーンアレイバックルの鉄球パーツを軽く引っ張る。
由奈は落ち着いたのか、他のメンバーとは少し異なるポーズをとりアローバックルの弓を引いて変身。
《ARMED WATER》
三波はクラゲを模したマスクを装着し、消防車の梯子のような水色の水鉄砲を装備。
《ARMED CHAIN ARRAY》
塔野はオーク鬼を思わせるような豚のマスクを装着し、オレンジ色の鎖鉄球を装備。
《ARMED ARROW》
由奈はハムスターを模した少し可愛らしいマスクを装着し、緑色のクロスボウを装備。
「…よし」
柳斗もまた、持っていたハンマーバックルを装填。
《SET》
待機音声が流れると柳斗は叫んだ。
「………変身!」
《ARMED HAMMER》
猟犬を思わせるマスクに、ピンク色のアーマー。
そして現れたのは、ピンク色の片手用の小槌。
「…うおおおおお!!」
ハンマーを装備した柳斗…否、仮面ライダーハウドゥは走り出した。
DGPルール
ドライバーとIDコアが届いたら、それは仮面ライダーへの片道切符。
もう、後戻りはできない
次回、愛情のハウンド!
「これより、第3ウェーブを開始します」
泥沼の戦いとなるデザイアグランプリ一回戦!
「渡辺さんの願いって何?」
「私は…あいつが笑顔になってくれればいいんだ」
生き残るライダーは誰だ…?
「あーあ…ここでサヨナラか」
「世界を変えるには、戦うしかないだろ」
第2話 開花Ⅱ:願いのために