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「…デザイアグランプリ。それは正体不明の怪物『ジャマト』から人々を守るため、仮面ライダーになって戦う、命懸けのゲーム」
「一回戦は27人中12人が突破し…退場者の中には俺のクラスメイトの渡辺由奈さんもいた…」
「はたして俺は最後まで勝ち残れるのか…?」
デザイアグランプリの日々をせめて残そうと日記を書く柳斗。
勿論他人に見せるつもりはなく、これまで目の前で死んだ人のことを忘れないようにと自身への戒めとして書いたものである。
「…学校、行かないとね」
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山賊狩りゲームから一週間。
町に戦いの爪痕はなく、死んでいた筈の人も普段通りの生活を続けている。
ジャマトによる影響はゲームが終わればリセットされるというのは、本当だったらしい。
ただ一つを除いて…
「なあ藤木。由奈の奴、見てねえか?」
「っ…いや、渡辺さん、今日も学校に来てないの?」
朝に芦川伶から声をかけられる柳斗だが、落ち着いて対処する。
「そうなんだよ…なんか先週から帰ってないらしくて。親御さん達も捜索願は出したらしいんだけど…」
心底心配そうに語る伶の姿に、柳斗は何も言えなかった。
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同じ頃、喫茶リコリコ。
お昼時が過ぎ、千束はのんびりと皿の片付けをしていた。
「…なあ千束。前々から気になっていたんだが」
昼休憩の中、金髪の少女『クルミ』が千束に質問をする。
因みに外見は12歳程だが本人いわく「30年は生きている」のだとか…
「ん?どしたのさクルミ」
「いや…
ミズキから聞いたんだが柳斗がこの店でバイトするきっかけって、お前があいつと一緒にいたいがために無理矢理リコリコに引きずり込んだってマジなのか?」
「ちょちょおい!何か色々ひん曲がってる!」
クルミの言葉に赤面しながら大慌てで訂正する千束。
「だって何かあると思うだろ?『リコリス』の隠れ蓑になってるこの店に一般人のあいつがいるんだから」
「むぅ…」
喫茶リコリコ。それは千束達にとって仮の姿でしかない。
国家機関『Direct Atack』通称『DA』に所属する諜報部隊『リコリス』。それが千束とたきなの本来の仕事だった。
と言っても、リコリコは組織から半ば独立したような立ち位置であり基本的にはDAが拾わないような小さな仕事を行うべく千束によって立ち上げられた部署。
他のリコリスと決定的に異なるのは通常のリコリスに許された『殺人の禁止』であり、千束は特殊なゴム弾による制圧を。
たきなは急所を外すことによる制圧をすることでこれらの行動を可能としている。
因みに店長の黒人男性『ミカ』は元々リコリスの戦闘教官であり、先日のデザイアグランプリで柳斗が助けたミズキもかつてはDAの情報部出身。
クルミは世界最強と言われたハッカー『ウォールナット』の正体であり、命を狙われているからかこうしてリコリコに匿われている。
「ボクにミカ、ミズキにたきなとお前はそれぞれ裏の世界にいるのに柳斗だけが違う。はっきり言えばここの中で異物だ。だから気になったんだよ」
千束はそれを聞くと、時計を見る。
「…まあ、ちょっとだけなら話してもいいか」
そう言うと千束は懐かしそうに語り出した。
「柳斗君が来たのは今から1年前…あの日、確かすんごい雨でさ」
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1年前、6月。
買い出しを終えた千束は町中を傘をさしながら歩いていた。
(やっぱ買い出しはいいね~。先生もおやつ買うくらいは許してくれるし)
買い出しの荷物の中にちゃっかり自分のおやつも買っていた千束だったが、これは買い出し担当の役得だと自分に言い聞かせる。
だが、帰り道で偶然にも千束は雨に濡れて項垂れた青年…柳斗と出会うことになる。
「ちょいちょいちょい!君何があった!?」
「あんの時は焦ったな~…死んだ目して雨の中で座り込んでたんだもん。後で聞いたんだけど、当時の柳斗君は昔からやってた野球ができなくなったみたい。それもさ…事故じゃなくて柳斗君を妬んだ先輩の過失で」
幸いにもその日は早めに閉店したため、千束は柳斗をリコリコに連れて詳しい話を聞いた。
「ふーん…でもさ、それってよく聞く話じゃないか?学生の嫉妬から相手に怪我をさせて、選手生命を終わらせるって…まあ確かに、気分はよくないけど」
クルミの言葉に千束は首を降る。
「よく聞く話だけどさ…だからこそ、私の出番って思ったわけ。だって私は、そんな人を助けたくてリコリコにいるわけだしさ」
今でも思い出せる。
あの日、夢を失って絶望した少年の顔を。
だからこそ、彼に前向きになってほしいと願ったのだ。
「…なるほどな。それでリコリコへのバイトを斡旋して、気がついたら惚れたと」
「ハァ!?だから何でそこに持っていくし!」
不意討ちの一言に千束はリンゴのように顔を赤くしながら叫ぶ。
「…いや、皆知ってるぞ?常連の皆も知ってるし、気づいてないのは当の本人だけだ」
「う…嘘でしょ…?」
思ったより周囲に知られていたことに千束は座り込んだ。
「でも、こんな関係がいつまでも続くとは思えないけどな。こないだのたきなの怪我といい、嘘で誤魔化すのも限界だろ。千束は嘘が下手だしな」
それを言われると弱いのか、千束はバツの悪そうな顔になる。
つい先日。ある男性のボディーガードをしていた千束とたきなはとある暗殺者と戦闘になり、たきなが敵の銃弾で足に傷を負う事件があった。
あの時はミカが『釘で足を傷つけてしまった』と嘘の説明をすることで難を逃れたものの、そうそう嘘で逃げることは難しいと薄々思い始めていたのだ。
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夕方。
学校を終えてバイトに向かう柳斗だったが、そこで思いがけない人物と遭遇する。
「よう………ハウドゥ」
「君は…天羽君」
ラフな私服姿だったが、まぎれもなく前回のデザイアグランプリで活躍していた天羽青華はそこにいた。
「聞きたかったんだけどさ…お前、あのリコリコって喫茶店でバイトしてんのか?」
「え?あ、ああ…」
すると青華は柳斗の目を覗きこむ。
「あの店でお前がやってるのはさ…喫茶店の仕事だけか?」
「そ、そうだけど…てか顔近い…」
不振な行動に困惑する柳斗だが、それだけ聞いて青華は顔を離す。
「…悪かったな。近いうちにお店に寄るよ。あの店のコーヒー、旨いって聞くし」
そう言うと青華は町の人混みの中に消えていった…
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「柳斗!これ神谷君達のテーブルに持っていって!」
「はい!」
ミズキから注文の品を受け取った柳斗は座敷にいる高校生カップルに注文の品を運ぶ。
「お疲れ~!」
「ああ、千束もありがとうね」
注文の品を届け、他のテーブルの掃除を終わらせた柳斗に千束が声をかける。
「…ねえ千束。こないだ言いそびれたんだけどさ」
「ん?何かあった?」
一緒に洗い物をするなかで柳斗は先日の戦いの後の事を思い出す。
「こないだはありがとうね、お陰で元気でたよ」
想い人の前で恥ずかしい姿を見せてはしまったが、あの時の千束によって気が楽になったと礼を言う柳斗。
「…ま、まあね~!どういたしまして~!」
少ししどろもどろになっていた千束だが、柳斗は特にそれ以上語ることなく仕事を続けるのだった…
「おい」
「!?」
千束が料理を持って厨房から出たタイミングを見計らったのか、クルミが柳斗に話しかけてくる。
「ちょっと聞きたかったんだけど、柳斗は千束のこと、どう思ってるんだ?」
クルミからの突然の質問に困惑する柳斗。
「どう思ってるか…ね」
皿を拭いて片付けながら、柳斗は口を開く。
「………千束の事は好きだよ。友達とかじゃなく、異性として」
今更恥ずかしがることでもない。
好きだからこそ、自分は命懸けで千束を助けようと決めたのだから。
「好きだからさ…千束の体のことを聞いてショックだったし、割り切れなかったりしたんだ」
「…そうか」
それだけ言うと、クルミはいつも籠もっている押入れに戻っていった。
(…結局、何にも割り切れてないままだな)
由奈のこと。デザグラのこと。
千束の心臓について。
(それでも…戦うしかないんだ。デザ神になって、千束を助けるまで)
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やがて仕事が終わり、各々がレジ閉めや掃除をするなかで柳斗は手早く食器を片付け終わり更衣室に戻る。
「柳斗君!今日この後ボドゲ会やるけど参加する?」
更衣室の扉越しに千束が話しかけてくる。
因みにボドゲ会とは、千束やクルミを中心に常連客達と様々なボードゲームをするというリコリコの恒例行事である。
「あぁ、僕も参加するよ。着替えたら行くから準備よろしくね」
「はいよ~」
千束が立ち去り、柳斗は店の制服でもあった和服を脱ぐといつも通りの学生服に袖を通す。
そしてロッカーの中に入れていたスマホを確認するべく電源を入れると…
『カバンに入れていたもう一つのスマホ』からメール受信音が流れ、柳斗は思わず息を飲む。
「………まさか」
柳斗はもう一つのスマホ…スパイダーフォンを手に取ると、そこにはメールが届いていた。
『藤木柳斗様。明日の午後4時よりデザイア神殿に集合してください。
デザイアグランプリ、第二回戦を開始致します』
「…始まるのか」
生き残りをかけたヒーローゲームが、再び始まろうとしていた。
DGPルール
デザイアグランプリの事は手紙、電話、口頭、SNS等を問わず第三者に伝えてはいけない。
なお、一般人の記憶が消えるジャマーエリア内ではその限りではない。
次回、愛情のハウンド!
「二回戦はゾンビサバイバルゲームです!」
今度のゲームは、命がけのゾンビ狩り!?
「勝つのは私よ!」
「一位は俺が貰った!」
激しく争うなかで…
「へえ…君がニンジャバックルを持ってたんだ」
黒い影が動き出す?
「ゾンビ狩りなら…やっぱこれでしょ」
『MAGNUM!』
ハウドゥ、パワーアップ!?
第4話 開花Ⅳ:ゾンビハンターズ