こんな現地民と転生者   作:ハードスーツ

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いつもこれぐらいで収めたい。

あと弦ちゃんの言葉遣いこれでいいのか?


何かのために

 ガイア連合の「地方防衛部」と札が書かれた会議室。そこは十数人の転生者が地方霊能組織の覚醒者の不才さや各地にて次々と増えていく異界。その他、地方の問題について話し合う場所だ。

 彼らは地方転生者の中でも自分の故郷や気に入った現地民がいる地方を守護するため定期的にこういった会合を開き情報の情報のすり合わせを行っている集団である。

 

「では今回の会合を終了する。解散」

 

 会合の終了が地方防衛部の取締役によって宣言される。

 各々が帰宅の準備やせっかくだからと久しぶりのガイア連合の食堂に向かう中着物に木刀を佩いた天然パーマの男、坂田銀時が「全国の地方霊能組織の平均レベルについて」と書かれた書類を読みふけっていた。

 

(大赦が全国的に見て特別平均レベルが低いと思っていたがこりゃひでぇな。大体の霊能組織の平均レベルが10レベルも行ってない。友奈から修行修行って言われていたが本当に修行が必要になってくるかもしれねぇが……)

 

「どうやったらわからねぇんだよなぁ。なにより面倒臭いし」

 

 銀時が1人そうぼやく。地方防衛部の部員が増え全国の地方霊能組織のデータが集まり始めたが、データが集まっても出される結論は結成当時と変わらず「地方霊能組織は弱い」。

 それに加えて地方転生者が現地民を強くする方法などおおよそ装備やアイテムを渡すことぐらい。才能とレベルで押し切っていたり、銀時のように我流の武術で戦っている転生者が多いので神主のように覚醒者として教育できる人材が乏しいのだ。

 どうするか悩んでいるところにもう1人着物をきた男に声をかけられる。

 

「銀時よ、悩みごとか?」

 

「ん?うおっ、お前弦一郎か?」

 

 葦名弦一郎。その男はガイア連合の中でも有名な男だった。厳格で几帳面、それでいて神主に仕えている四鬼たちが舌を巻くほどの弓の名手。

 理由は様々だろうが一番の原因は「SEKIRO」というゲームに登場する人物だからだろう。

 「SEKIRO」それは滅びかけの国、葦名で狼という忍者が竜胤の御子、九郎を助け出すニンジャアクションゲームであり転生者の中でもプレイ経験があるものも多くいた。そんな所に葦名弦一郎という名前の転生者が出てきた時はガイア連合を巻き込んだちょっとした騒ぎとなった。

 なにせ同姓同名、顔も原作の弦一郎と同じ整った顔立ち、弓やジオ系に適性があり、故郷を守るためにガイア連合を奔走しているということも拍車をかけたのだろう。

 ガイア連合では「ここはアトラス世界ではなくフロム世界」なのではという言葉も上がったほどだ。

 だが時間が経つにつれて「マグネタイトや様々な形をした悪魔が出てくるのはアトラスぐらいだろう」という結論に至りこの騒動は鳴りを潜めた。しかし葦名弦一郎というゲームに登場するそっくりな人物がいるのは事実であり葦名弦一郎は転生者達から「弦ちゃん」と呼ばれていた。

 

 そんなガイア連合では知らぬ人はほぼいないといった葦名弦一郎は地方霊能組織そして地方転生者の現状を変えるためにとある計画を立案していた。

 

「地方転生者教育者育成計画?」

 

「そうだ、神主殿の許可も頂いておる。」

 

 弦一郎は日替わり定食を銀時はハニートーストを食べながらガイア連合の食堂で神主の容認の印がされている「地方転生者教育者育成計画」と書かれた計画書について説明していた。

 地方転生者教育者育成計画。読んで字のごとく転生者の教育者を育成するためにプロジェクトである。

 内容はいたってシンプルなもので弦一郎のような元々武術や指南に長けている人物が転生者に教育者として育てるという講習会のようなものだ。

 

「各々だけが強くなっても周りが弱ければその分が回りまわって自らが守った地の滅亡の要因となりえる。我が故郷を守るためもこの謀事は必要なのだ」

 

 銀時はこの計画について少し難色を示していた。理由はシンプルに面倒だったからだ。

 最近は弟子が出来たせいで少しは努力するようになったが性根は怠惰な人間と銀時は自分をそう評価していた。

 

(面倒だし、こんなことするぐらいなら自宅で適当にスイーツでも食ってダラダラ過ごしたいが……)

 

 ふと銀時の脳裏に友奈の顔がよぎった。自分を弟子と呼び慕っている少し重めな子供(ガキ)

 だがそんな子供に約束したのだ師匠としてずっとそばに居続けると。お前は幸せになる権利があると言ったのだ。

 

(師匠として弟子のために一肌ぐらいは脱がねぇとな)

 

 師匠として、弟子の幸せを守るために銀時はその計画を了承する。すると弦一郎は手元の受講者と書かれた紙に坂田銀時の名を書き込む。

 

「相判った。その剣術は特殊なれど少し手を加えればすぐ人に教えられるようになろう。」

 

「あーあ。キャラじゃねぇことやってしまったな。自分で受けといてなんだが少し後悔してきたな。今からキャンセルできない?」

 

「できぬ。そう簡単にやめられてはかなわぬ」

 

 弦一郎と銀時という珍しい組み合わせに物珍しさかそこへパーカーをきた紫色の少女、結月ゆかりがカレーうどんを盆に載せてやってくる。

 

「おっ、弦ちゃんと銀さんじゃないですか意外な組み合わせですね。何話していたんですか?」

 

「ゆかりか、丁度いい。たしか貴殿は地方に覚醒済みの親族がいるな」

 

「ええ、いますけどそれが?」

 

「地方転生者にこのようなことを……」

 

 弦一郎が銀時に話したことを一通り説明するとゆかりはしばらく悩んだ様子を見せた後計画を受けることにした。

 

「最近神崎さんにあかりちゃんのデモニカスーツを強くして貰ったはいいんですけどそのせいで前より先輩面がしにくくなったんですよね」

 

「動機が不純すぎるだろ。本当に大丈夫なのか?」

 

 先ほどの紙に結月ゆかりと書きしたためながら弦一郎は銀時の言葉に対して「案ずるな」と返す。

 

「先ほども言ったであろう簡単にやめられてはたまったものではないと。それに俺の指南なら7日で終わる」

 

「えっ、たった7日で終わるんですか。そんな短い時間で何をするんですか?」

 

 ゆかりが弦一郎からでた予想外の日数に疑問を浮かべる。実際には学校や塾に教えるのに半年かかる科目を1月や2月で詰め込む勉強法があるがそれは要点だけを教えたり、勉学を効率よく行ったりして初めて成立するものだ。

 今回の講習は人に教えることを指南するのでその分時間がかかるはずなのだ。それに加えて間接的にだがそれぞれの大事な人間の生死がかかっているのだ。なあなあでは済まされない。

 

「案ずるな、と言ったはずだ。如何にもこの指南は7日で終了する。現世での話だが」

 

 

 神主が直接管理している電脳異界というものがある。そこでは仮想空間を利用して食料や安全な土地を創造する計画が進められている。だが半終末ということもあってか未だそのような段階には至っていなかった。

 それどころか高位悪魔やメシア教が入ってきた危険性や様々な悪魔が発生していることを鑑みて神主が直接管理しなければならないほどに不安定だった。

 そこで弦一郎たちは衣料品を準備するコボルトたちに囲まれながら草原を歩いていた。

 

「なんかコボルトちゃんたちが用意する医療品の量多すぎません?多めに用意しているだけですよね?」

 

「貴殿らがうまくやれば使わずに済む。それとコボルト(犬人)衆よこの辺りでよい」

 

「了解ですタイショー!」

 

 弦一郎の言葉にコボルトたちは大きな声で返答し荷物を降ろす。それをしばらく弦一郎が見届けた後、銀時とゆかりの方へ振り返り大太刀をすらりと抜刀する。

 

「うわ、何も言わずに構えていますよ銀さん。……えっ、もう始まるんですか?」

 

「おい、ゆかり構えろ。こいつ頭サイヤ人だ」

 

 銀時とゆかりが何も言わずに抜刀した弦一郎に軽く恐怖を覚えながら各々の武器を構える。構えたまま動かない3人をコボルトたちは遠巻きに格闘技決定戦を見るかのように心を躍らせる。

 3人が動かないまま十数秒が経過し1人と2人の間に草原をなでる風が吹く。それと同時に弦一郎が動き出した。

 

「いざ、参る」

 

 弦一郎が朱塗りの大弓を取り出すと素早く矢を番えると3本ゆかりへと放った。ゆかりは1本を何とか弾き飛ばしたがその矢の想定外の威力に手を痺れさせていた。

 続く2射、3射目のダメージを甘んじて受けようとしたが横から銀時が無理矢理木刀で受け流す。

 

「おい、ゆかりあいつの矢を受けようとするな。まともに食らったところがはじけ飛ぶぞ」

 

「死ぬじゃなくて弾け飛ぶですか……」

 

 接近し大太刀を振るう弦一郎の一撃を受け止める銀時。だが先ほどの2射を無理矢理に連続で受け流したせいか手が麻痺しまともに踏ん張ることができなかった。

 2合、3合目で木刀が天高く飛ばされる。

 

「まずっ……!」

 

「御免」

 

 丸腰の銀時に容赦なく大太刀の鋭い突きが刺さる。心の臓を狂いなく貫かれた銀時は血を滝のように吐いた後、胸を抑えながらその場に倒れる。

 

「うおぉっ、マハラギオン!」

 

 銀時の稼いだ時間でゆかりはコンセントレイトを発動しマハラギオンを弦一郎へ放つ。その豪炎は草原の緑草を舐めるように燃やしながら襲い掛かる。ゆかりが放ったマハラギオンは通常の物より火力が上がっておりレベル的に上位者である弦一郎に致命傷を与えるには十分な代物である。

 だがその光景に少しも動揺することはなく冷静に矢を番え先ほどとは違い大きく弓を絞る。

 

ジオダイン(雷光よ)

 

 体から現れた雷が矢を包む。それと同時に矢を放ち矢の軌跡が稲光となって豪炎を貫く。

 

「うわー」

 

 気の抜けた、それでいて諦めたような声を発するゆかりに矢は少しも威力を落とすことなく頭を消し飛ばした。

 弦一郎は矢の行く末を見届け残心を残すとコボルトに声をかける。

 

コボルト(犬人)衆よ、あとは頼む」

 

「ししるいるい。タイショーは相変わらずですな!」

 

───────────────────────────────────────

 

「馬鹿なんですか?!馬鹿なんですね!そうじゃなきゃこんな容赦なく仲間を殺せますか!!」

 

「相手が何を得意とし何を苦手としているかを戦いにて見極めねばならん。されど稽古だけでは見極めることはできぬ。生死を分け三途の一歩前まで行くこのような戦でなければこれらはわからぬ。故に手本を見せるために貴殿らと戦った」

 

「三途って一回死んでるんですよ!限度があるじゃないですか!」

 

 弦一郎が大量に用意した回復アイテムと蘇生アイテムで生き返ったゆかりは開口一番に弦一郎に非難を浴びせる。しかし毅然とした態度で「必要なことだった」と返した。

 ゆかりは「ぐぬぬ」と唸り声を上げた後諦めたかのように大きくため息を吐いた。

 

「分かっていましたがクソ強いですね弦ちゃん。何というか遠近距離に対応して付け入る隙が無い感じですね。あと教育思想はわかりますが現実でそれやったら死にます」

 

「銀時はよく俺の矢に反応できたな。後はその剣術を少しだけ手直しすれば強くなるだろう。ゆかりは銀時の稼いだ時間ですぐコンセントレイト(溜め)て放った判断は良し。後は一点型の術を習得すれば強くなるだろう」

 

 弦一郎がそれぞれにアドバイスを送る。

 所謂地方ガチ勢と言われている部類に入る弦一郎は剣術、弓術も合わさって地方ガチ勢の中では上位に君臨するほど強かった。文字通り矢継ぎ早に繰り出される強弓、その『力』寄りのステータスを使い1メートル半もある大太刀から放たれる近接スキルの数々。

 武士として完成形に近いスタイルがそこにはあった。

 

「あー、電脳異界を練習場にするからショタおじの押し印があの書類にあったのか。けど大丈夫か?安全性が判らないから電脳開発関係者以外は原則入らないようにって話じゃなかったか?」

 

「いや近頃現地者の協力によって安全性が確保されたのだ。凡人ならまだしも俺たちが電脳世界に入ろうとも異常は見られぬとのことだ」

 

 電脳世界での鍛錬法に最初に目を付けたのが地方ガチ勢だった。

 現実世界と比べて時間が24倍に引き伸ばされた世界、砂漠や雪原などの様々な環境、それに加えて悪魔たちのサポートが受けられるのだ。

 鍛錬や学びの場としてこれ以上ない場所だった。

 

「俺はこの修行法を広めるべきだと神主殿に推しているがまだ普遍的なものではないな」

 

「本当に考え方がサイヤ人だな。電脳世界の使い方が完全に精神と時の部屋だよ。なんでそうしてまで急いでいるんだ」

 

「……必要なのだ俺には。我が故郷を守るためには時間が足りぬ」

 

 銀時の言葉に対して弦一郎は刀を取りながら返答する。

 

「知識が必要だ。民が必要だ。土地が必要だ。されどどうやっても終末までの時間が足りぬ。故に貴殿らが強くなり各々が戦人を育てるようにならねばならない」

 

 その言葉はどこかずっと昔から覚悟を決めたような確固たる意志が存在していた。

 葦名弦一郎という人物を知らない人間でもこの言葉が生半なものではないと感じることできるだろう。

 己が愛する故郷のためなら命を投げ打つこの男の意地をすべての人間か理解するだろう。

 

「……ふー、よしっじゃあもう一回やるか。ほらあかり立てよ」

 

「んぁああ!やってやろうじゃないですか!」

 

「むっ、意外だな。あれだけ根を挙げていたとは思えぬな」

 

 弦一郎は驚嘆していた。あれだけ自分を非難していたあかりが急にやる気を出してきたのだ。何かの術かと訝しんでいたが銀時が否定する。

 

「それだけお前の圧勝が気に食わないんだろうよ。ほら来いよまだやる気だったんだろ?」

 

 銀時からの挑発に、さっきから出ている叫びに近いあかりからのやけくそ気味な気合に弦一郎は少し頬を綻ばせる

 

「無論」

 

 まだ講習会は始まったばかりだ。




葦名弦一郎
 俺が故郷を生かす。

坂田銀時
 この講習会の後レベルが上がりスキルが生えた。今は友奈に師匠として色々教えている。

結月ゆかり
 火力が特にあがった。今はあかりちゃんに色々教えて先輩面している。

コボルト
 古風な言い回し、闘うときはいつも甲冑を着ているので弦ちゃんをタイショーと呼んでいる
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