襲ってきた亜人共を威圧し鎮圧したハジメと光輝はその後、連中の集落まで案内させ
フェアベルゲンの長老のひとり、アルフレリックの前に立ちここへ来た目的やこの世界の真実を話す
するとアルフレリックは『この世界は亜人族に優しくはない、今更だ』と返してきた
神が狂っていようがいまいが、亜人族の現状は変わらないということらしい
それと大樹の周囲は特に霧が濃く、亜人族でも方角を見失うため一定周期で、霧が弱まるタイミングでのみ大樹の下へ行くことができ、次に行けるようになるのが十日後と言われた
このときアルフレリックは亜人ならば誰でも知っているはずなのだと言われたが、シアを始めとしたハウリア族全体はそれを忘れていたらしく
ユエに全員お仕置きされた
初めてシアに会ったときから
物凄くうざく絡まれていてハジメやユエはシアの事をウザ兎と呼び、シアの家族のハウリア族は初めて会ったときから残念感を醸し出し、ハジメからは残念兎と呼んでいた
またシアやハウリア族、それとハジメやユエ、光輝に敵対心剥き出しの熊の亜人が襲ってきた
が、なぜかハジメ達のいる方向とは見当違いな場所に飛びかかり目に見えないなにかを攻撃していた
この瞬間、ハジメとユエは光輝が写輪眼で幻術にかけたのだと分かった
熊の亜人「はぁ…はぁ…おかしい…なぜ攻撃が当たる瞬間消える!」
アルフレリック「南雲ハジメ。……あやつがさっきから見当違いな場所に攻撃をしているがあれは…」
ハジメ「天之河の奴が幻術に掛けてやったんだよ……幻術を解かない限りあの熊はあのままだ」
アルフレリック「なんと!?」
ユエ「……珍しい……今度は実力行使しないんだ」
光輝「あいつはさっきまで俺の言っていた嫌いな奴らとは違うからな……それに万華鏡写輪眼を使うほどでもなかったからな…」
そうしてハジメ達は各亜人の長老達の集会所に集まり大樹への案内を話しだしたが
虎人族のゼルが
ゼル「ならば、我々は、大樹の下への案内を拒否させてもらう。口伝にも気に入らない相手を案内する必要はないとあるからな」
と言われ、拒否した
更に
ゼル「ハウリア族に案内してもらえるとは思わないことだ。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」
ゼルの言葉に、シアは泣きそうな表情で震え、カム達は一様に諦めたような表情をしている。この期に及んで、誰もシアを責めないのだから情の深さは折紙付きだ
ゼル「そういうわけだ。これで、貴様が大樹に行く方法は途絶えたわけだが? どうする? 運良くたどり着く可能性に賭けてみるか?」
他の族長達も口には出さないがゼルと同意見であると示し、また案内をして欲しければこちらの要求を飲めと言いたそうな態度をとる
がしかし
ハジメ「俺はお前らの事情なんて知らねえんだよ。俺からこいつらを奪うってことは、俺の行く道を阻んでいるのと変わらないだろうが……つまりお前ら全員……俺の敵ってことでいいんだな?」
ハジメは長老衆を睥睨しながら、スっと伸ばした手を泣き崩れているシアの頭に乗せた
ピクッと体を震わせ、ハジメを見上げるシア
ハジメ「俺から、こいつらを奪おうってんなら……覚悟を決めろ」
シア「ハジメさん……」
アルフレリック「本気かね?」
ハジメ「当然だ」
アルフレリック「フェアベルゲンから案内を出すと言っても?」
ハジメ「何度も言わせるな。俺の案内人はハウリアだ」
アルフレリック「なぜ、彼等にこだわる。大樹に行きたいだけなら案内人は誰でもよかろう」
アルフレリックの言葉にハジメは面倒そうな表情を浮かべつつ、シアをチラリと見た。先程から、ずっとハジメを見ていたシアはその視線に気がつき、一瞬目が合う
すると僅かに心臓が跳ねたのを感じた。視線は直ぐに逸れたが、シアの鼓動だけは高まり続ける
ハジメ「約束したからな。案内と引き換えに助けてやるって」
アルフレリック「……約束か。それならもう果たしたと考えてもいいのではないか? 峡谷の魔物からも、帝国兵からも守ったのだろう? なら、あとは報酬として案内を受けるだけだ。報酬を渡す者が変わるだけで問題なかろう」
ハジメ「問題大ありだ。案内するまで身の安全を確保するってのが約束なんだよ。途中でいい条件が出てきたからって、ポイ捨てして鞍替えなんざ…………カッコ悪いだろ?……なあ、それでいいだろ天之河?」
ハジメはここでこれまで会話に入らずに黙って聞いていた光輝に声をかけた
光輝「………俺としては案内してくれるなら誰でも構わない……」
シア「!」
光輝「が……貴様ら亜人は俺達に対し敵意、疑心、悪意を持ち合わせている……そんな奴らに案内させられてもな……馬鹿でも面倒でも、ハウリアのほうがマシだ」
シア「!光輝さん…」
しばらく、静寂が辺りを包み、やがてアルフレリックがどこか疲れた表情で提案した
アルフレリック「ならば、お前さんの奴隷ということにでもしておこう。フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰ってこなかった者、奴隷として捕まったことが確定した者は、死んだものとして扱う。樹海の深い霧の中なら我らにも勝機はあるが、外では魔法を扱う者に勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬように死亡と見なして後追いを禁じているのだ。……既に死亡と見なしたものを処刑はできまい」
ゼル「アルフレリック! それでは!」
完全に屁理屈である。当然、他の長老衆がギョッとした表情を向ける。ゼルに到っては思わず身を乗り出して抗議の声を上げた
そこからは長老同士の言い合い合戦となりオロオロするシア
が、そこへ
ハジメ「俺も、シアと同じように、魔力の直接操作ができるし、固有魔法も使える。次いでに言えばこっちのユエや天之河もな。あんた達のいう化物ってことだ。だが、口伝ではそれがどのような者であれ敵対するなってあるんだろ? 掟に従うなら、いずれにしろあんた達は化物を見逃さなくちゃならないんだ。シア一人見逃すくらい今更だと思わないか?」
しばらく硬直していた長老衆だが、やがて顔を見合わせヒソヒソと話し始めた。そして、結論が出たのか、代表してアルフレリックが、それはもう深々と溜息を吐きながら長老会議の決定を告げる
アルフレリック「ハウリア族は忌み子シア・ハウリアを筆頭に、同じく忌み子である南雲ハジメの身内と見なす。そして、資格者南雲ハジメに対しては、敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁ずる。以降、南雲ハジメの一族に手を出した場合は全て自己責任とする……以上だ。何かあるか?」
ハジメ「いや、何度も言うが俺は大樹に行ければいいんだ。こいつらの案内でな。文句はねぇよ」
アルフレリック「……そうか。ならば、早々に立ち去ってくれるか。ようやく現れた口伝の資格者を歓迎できないのは心苦しいが……」
ハジメ「気にしないでくれ。全部譲れないこととは言え、相当無茶言ってる自覚はあるんだ。むしろ理性的な判断をしてくれて有り難いくらいだよ」
こうしてハウリア族の処刑は免れ、ハウリアの面々は驚きのあまり呆然とし、シアは涙を流したのだった
△△△△
ハジメ「おらあ!!どうした!!その程度で生き延びられると思ってんのか!!」
ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!
ハジメはドンナーを持ち、容赦なくハウリア達を撃った
あれから数日、どうにか命が助かったハウリア族だったが
それはあくまでハジメ達がいる間のみの一時的なもの
ただでさえ亜人の中でも弱小である彼らがハジメ達が居なくなったあと生き延びられるわけがなく
ハジメは彼らを鍛えることにした
だがその道のりは険しく
ただでさえ戦闘能力が弱いだけに飽き足らずかなり性格が甘すぎて命を刈り取ることにも抵抗があり、結果ハジメを怒らせることになり、ハジメは手加減なしで地獄のようなトレーニングを積ませることにしている
また別のところでは光輝が一部のハウリアを引き連れ鍛えている
実はこの二人、初日のうちに鍛えることの方針と考えの違いから喧嘩し10日後の出発までにどちらが『育手』として向いているのかを勝負することになった
ハジメはとにかく向かってくるものには手加減せず、仕留めることだけ考え奪われる前に奪えの方針で鍛え、一方の光輝は概ねはハジメと同じだがハジメと違い肉体的よりも精神面的な部分を鍛えることに赴いていた
その結果10日後にはハウリア達は見違えるどころかもはや『お前誰だ』と言われてしまうレベルで豹変
口調や態度まで変わっており、ハジメに鍛えられたカムを含むハウリアはハジメをボスと呼び
光輝に鍛えられたハウリアは光輝をリーダーと呼んだ
その後互いのハウリア族同士で自分達を始末しに来た熊の亜人族の一団が襲ってきたがそれを圧倒するレベルで力の差を見せつけた
ハジメ「ふぅ…さてと…ユエ、シア…どうだ?どっちのほうが育手として向いているか?」
光輝「……」
ふたりが喧嘩してそれぞれ分かれる前、ハジメはユエとシアに審査役を頼み込み…ふたりはそれぞれのハウリアの事を見ながら数日間戦いあった
どうやらシアはハジメに惚れ、旅に同行したいと言いだし、最初は拒否していたユエだったが、あまりにもしつこかったので自分にかすり傷でもつけられたら許可すると言い…そこから数日間渡り合いのすえ、シアはユエにかすり傷をつけることに成功
ユエ「ん……それじゃあ審査結果発表」
今にもドラムロールが流れそうな空気の中
ふたりが同時に指を指した
ユエ/シア「「光輝(さんですぅ)」」
光輝「フッ…」
ハジメ「なっ!?なんでだ!!俺のどこが間違っていたんだ!!」
シア「間違いだらけですよー!!確かに私の家族を強くしてくれた事には感謝してますしもう弱小なんて馬鹿にされないくらい強くなりましたよー!!でもなんですかこれは!!戦いを……奪うことに楽しみを持ち10日前まで持っていた優しさをなくしたただの蛮族みたいになってしまったじゃないですか!!私の家族返してくださいー!!」
シアが泣きながらうずくまり、それにユエが優しく肩に手を起き撫でながら
ユエ「ん…対して光輝が育てたハウリアは戦闘能力で言えばハジメが教えたハウリア以下だけどその分武器を使った技術力は勝っていて人格面は常人の範囲内で収まらせているから…」
光輝「南雲……お前の育てたハウリア……はっきり言って殺そうかと思った」
ハジメ「!」
光輝「何故かわかるか?お前が育てたハウリアはまるで、奪うことを楽しみ、弱者をいたぶり尽くすことで自分達を強者だと思っていた…あの帝国の兵士共と同じ目をしていたからだ」
ハジメ「……」
ユエ「ん……ああいうのを放っておけばいずれ帝国の兵士みたいになっていたかも知れない……そしたら彼らは今度は帝国の兵士がしていたことをするようになる……」
光輝「理性のない拳なんざ、ただの暴力だ……俺があいつらに教えたのは強くなることだけじゃない……戦う相手に対して…いかに己の心と向かい合い、力の使い方を間違えないように教えてやった……ただそれだけだ」
ハジメ「……はぁ…」
シア「と、というわけで…審査結果により、光輝さんが育手として優れていることが審査されました!!」
ユエ「…これを機にハジメはもう少し理性と力の使い方を間違えない事を心掛けよう」
ハジメ「クソ…人嫌いの奴に人格面の形成で負けた」