創造のハジメと破壊の光輝   作:スカイハーツ・D・キングダム

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第十八話 清水幸利という男

 

清水幸利という男は一言に言えば普通の少年だ

 

彼にとって、異世界召喚とは、まさに憧れであり夢であった。ありえないと分かっていながら、その手の本、Web小説を読んでは夢想する毎日。夢の中で、何度世界を救い、ヒロインの女の子達とハッピーエンドを迎えたかわからない。清水の部屋は、壁が見えなくなるほどに美少女のポスターで埋め尽くされており、壁の一面にあるガラス製のラックには、お気に入りの美少女フュギュアがあられもない姿で所狭しと並べられている。本棚は、漫画やライトノベル、薄い本やエロゲーの類で埋め尽くされていて、入りきらない分が部屋のあちこちにタワーを築いていた

 

そんな彼が生粋のオタクになったのは中学の頃のいじめによる引きこもりがきっかけである

 

特別親しい友人もおらず、いつも自分の席で大人しく本を読む。話しかけられれば、モソモソと最低限の受け答えはするが自分から話すことはない。元々、性格的に控えめで大人しく、それが原因なのか中学時代はイジメに遭っていた

当然の流れか登校拒否となり自室に引きこもる毎日で、時間を潰すために本やゲームなど創作物の類に手を出すのは必然の流れだった。親はずっと心配していたが、日々、オタクグッズで埋め尽くされていく部屋に、兄や弟は煩わしかったようで、それを態度や言葉で表すようになると、清水自身、家の居心地が悪くなり居場所というものを失いつつあった。鬱屈した環境は、表には出さないが内心では他者を扱き下ろすという陰湿さを清水にもたらした。そして、ますます、創作物や妄想に傾倒していった

 

しかしそんな彼の人生に変化をもたらしたのは高校に入ってしばらくの頃だった

 

いつものように行きつけの本屋で自身のお気に入りのラノベの最新刊を買おうと本に手を伸ばしたときだった

 

過去ハジメ「あれ?君って確か同じクラスの清水君だよね?」

 

偶然同じクラスにいた南雲ハジメと遭遇した

 

彼は自身のクラスの生徒であり自身と同じオタクだった

 

ただ彼との違いは清水は自分がオタクだということを隠しているに対し南雲ハジメは自身がオタクである事を隠さないオープンなオタクだということだ

 

それ故クラスにいる生徒の何名かは彼に対し冷めた目で見てくるが、それを全く気にする素振りは見せない

 

本音を言えば清水も彼と話がしたかったが内気な性格が災いし話しかけられなかった

 

過去ハジメ「え?もしかして、君もこれ買おうとしていたの?」

 

そう言われ思わず頷いてしまった

 

その結果、彼に連れられ近所の喫茶店で彼の好きなラノベやアニメの話し合いが勃発し、最初は少し控え目に話していた清水も気づけば自身の好きなラノベやアニメの話をするようになり、互いに盛りあがった

 

このとき、本音で話せた清水は心から楽しさを感じられた

 

やがて時間が来てハジメが家に帰ろうとした時

 

過去ハジメ「じゃあ清水君。また明日話そう!」

 

過去幸利「!」

 

また明日

 

どうやら彼は清水との交流を今日限りではなく今後も続けて行きたいようだった

 

それに清水は内心なんとも言い難い嬉しさを覚えた

 

それから彼はハジメと、彼の友人であるカズマとアクア…そして恵里とも交流するようになった

 

ある日彼はハジメに聞いた

 

なぜ自分の趣味を隠さず堂々としているのか…周りの目が怖くないのか

 

すると彼はこういった

 

過去ハジメ「たしかに僕らの趣味は世間や周りからすれば理解され難い、根暗っぽく見えるかもしれない……でもさ、別に僕達の趣味が誰かに実害与えるものでもないでしょ?万引きやカツアゲにピンポンダッシュを趣味にしている人達と比べたら僕達はかなりマシじゃん。そもそもさ、自分を隠して生きていくのって、窮屈で溜まっていくでしょ?」

 

過去幸利「!!」

 

過去ハジメ「人間たった一度の人生を生きているんだ。どうせたった一回の人生なら、悔いのない楽しい人生を送ったほうがいいじゃん!」

 

過去幸利「……」

 

過去ハジメ「それにさ、別に周りが僕らの趣味を理解せず冷たく見られても気にしないでよ。そんな奴らの視線なんざ浴びたとしても、僕らの趣味をバカにせず理解する人たちがいるから全然問題ないよ」

 

過去幸利「!!」

 

過去ハジメ「幸利はさあ…今まで友達も居なかったし理解者も居なかったでしょ?……これからはちゃんと君の理解者達がいるんだからさ…もっと堂々としようよ。むしろ僕たちが堂々としていたらもしかしたら他に隠れている僕らの同志が出てくるかもしれないよ?……って言ってもこれはカズマの受け売りだけどね…」

 

ハジメは笑いながら頭をかいた

 

過去ハジメ「……僕もさ……中学の頃は君と一緒で静かに過ごしていた……自分を隠して、人とも最低限しか関わってこなかった……別にそのことに不満はなかったよ……あの頃から趣味に生きていて人との関わりを断っていたから……でもさ…カズマに出会ってから…僕の生き方は変わったんだ……そしてカズマに言われた……『一度しかない人生……もっと堂々と生きたほうが楽しい』って……それから僕は自分の趣味を隠さず、もっと堂々とするようになったし人とも関わるようになったんだ……そしたらさ、今まで一人で過ごしていたときよりずっと楽しくなっちゃってさ…自分でも友達作りたくなったんだ……幸利が僕と同じ趣味を持ってるって知ったときは、なんとしても友達になって同じ趣味を楽しもうって思ったんだ。君はどう?今まで一人で人とも関わらず過ごしていたときと今…どっちが楽しく感じた?」

 

過去幸利「……俺は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメ「おい幸利!!しっかりしろ!」

 

突如放たれた魔法からシアと愛子を庇った幸利は、胸に穴が空きそこから赤黒い血が流れている

 

誰がどう見ても致命傷……助からないと断定できるほど傷が深かった

 

ユエ「!!ハジメ!あれ!」

 

ユエが魔法の飛んできた方向をハジメが白眼で見ると遠くで黒い服を来た耳の尖ったオールバックの男が、大型の鳥のような魔物に乗り込む姿が見えた

 

恐らくあれが幸利に近づいた魔人族で、この機会に愛子を始末するつもりだったのだろう

 

ハジメ「(クソ!油断した…戦いが終わって、気を抜いていたこのタイミングで!!)」

 

ハジメはどうにか傷を塞ごうと躍起になるが、傷は塞がらない

 

愛子「清水君!」

 

園部「清水!!」

 

愛ちゃん護衛隊「「「「清水!!!」」」」

 

ユエ「ハジメ!…神水は…」

 

ハジメ「……あれはもうない……天之河は…」

 

光輝「……生憎全部使ったあとだ…」

 

ハジメ「クソ!」

 

神水はオルクスにこもっていたときに傷の手当に使い切ってしまい、手元には一滴も残っていなかった

 

幸利「はぁ…はぁ…ハ…ジメ……畑山…せんせ…い…は…お前の…連れ…は無事…か?」

 

ハジメ「!!」

 

そこへ幸利が痛みに耐えながら弱々しくもハジメに語り掛けた

 

ハジメ「…ああ…お前が庇ってくれたから…どっちも無事だ」

 

幸利「そう…か……人に迷惑かけた俺の末路がこれ……か……まあ…死にかた…としては…思って…いたよりも…悪く…なかっ…たな…」

 

ハジメ「!何言ってるんだ…お前は…」

 

幸利「ハジメ…お前も……わかっ…てるんだ…ろ?……俺はも…う……ここまで…だ……身体が…スゲェ…いてぇ…」

 

ハジメ「諦めるな!まだ助かる!!俺だってオルクスで転落しても生き延びたんだ!お前だって!!」

 

幸利「………ハジメ…俺は…な……天之河や…カズマ…お前…みたいに…なりたかった……」

 

ハジメ「…へ?」

 

幸利「…俺は……家族からも…周りからも…取るに…ならない存在だ…って…思われていた……それが…嫌で…天之河兄…見てぇな…特別…な奴に…なりたかった……まあ…今…じゃ…あん…な…能力…と…カリスマ…だけ…のやつ…に…なりたく…ないけ…どな…そう…いう…特別な…奴に…劣等感…を感じ…ていた……そんな…時だ…お前と…出会ったのは……」

 

ハジメ「……」

 

幸利「お前に…言われ…た…あの…言葉で……俺は…変わる…ことが…できた………そして…お前達に…憧れ…た………お前…達みたいに……何者に…も流され…ること…もなく……自分の……確固たる…意志と…信念を…持って……生きている……お前たちに……さ」

 

幸利はそう言いながら愛子やシアの方を見た

 

幸利「フッ…まさか…俺が……他人…を庇うなんて……な……昔…の自分では……考えら…れねえな……昔はもっとこう……自分…しか…考え…なか…ったんだけど…な……これも……お前や…カズマと…関わったから…だな……けど…これも…悪く…ねえ……ゴファ!」

 

幸利は血を吐き出し、それに周りが狼狽えた

 

幸利「ハ…ジメ…最後…に…頼みが…ある……お前の……銃で……トドメを…さし…てくれ…」

 

ハジメ「!!」

 

幸利「もう……ほんと…うに…苦しくて…痛くて…な……それ…に…意識…も…」

 

幸利にトドメをさすよう言われ、ハジメのドンナーを握る手が震えた

 

ユエ「ハジメ……」

 

幸利はもう助からない…

なら友人として自身に出来ることがあるとすれば…その苦しみから解放させるために、その生涯を終わらせる事だけ

 

そんなことはわかっているはず……だというのに

 

ハジメ「……」

 

ハジメは………幸利にドンナーを向けた……が……引き金を引けなかった

 

引けるわけがなかった…

 

当然だ

ハジメにとって幸利は地球に居た頃からの友人であり、カズマの次に仲の良かった存在だ

 

その介錯の役割を…自身はできない

 

ハジメ「!!お前…なんのつもりだ!」

 

光輝の方へ思わず目を向けると光輝は剣を抜き今にも幸利にとどめを刺そうとしていた

 

光輝「……お前がやらないなら俺がやる……そう言ったはずだ……そもそも……お前に…そいつは殺せない……」

 

ハジメ「!」

 

そう言われ…最初は止めるつもりだったハジメの腕が力なく項垂れた

 

ハジメだって分かっていた

これ以上幸利を苦しめたくなかった…だが自身では殺せない……

 

幸利「……わる…いな…天之…河……最後に……こんな…面倒事…やらせ…て」

 

光輝「……」

 

幸利「あぁ…それと…ハジ…メ……あの時…お前…言って…いたよな…?『今まで一人で人とも関わらず過ごしていたときと今…どっちが楽しく感じた?』か…」

 

ハジメ「………!!」

 

自身が光輝に斬られる寸前だというのに

幸利は苦しみや無念、痛みに満ちておらず

その表情は

 

幸利「あのとき言えなかった答えだ……俺は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しかったぜ!……お前達と過ごせてよ……

 

一切の後悔も感じない笑みだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「おっと、そこまでだ」

 

ハジメ「!!」

 

光輝「!!」

 

ユエ達「「「「「「!?」」」」」」

 

幸利にトドメを刺そうとした光輝の背後から突如声とともに剣を振ろうとした光輝の腕を掴み、辞めさせた

 

その声に驚き皆が声の主の方を向くと

皆が驚いた

なぜならその声の主はここに居るはずのない人物

 

幸利「!……俺…は…ゆ…めで…も見て…いる…のか……居るはずの…ない…お前達の…姿が…見え…る」

 

???「…酷い傷ね……よくここまで持ちこたえたわ……でももう安心して……私が…ううん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達が来たから!!!」

 

カズマとアクアだったのだから

 

 

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