創造のハジメと破壊の光輝   作:スカイハーツ・D・キングダム

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第三十六話 狂信の向かう先

 

雫「光輝……これって」

 

光輝「廃船……船の墓場とやらか」

 

クリオネからの逃亡の為地面に穴を開け、下の空間へと流れた光輝と雫がたどり着いたのは、大量の廃船ひしめく船の墓場とおぼしき場所だ

 

周りを見渡しても他に流れ着いた者が居なかったため、この場所には光輝と雫しか辿り着けなかったということ

 

船の墓場の中にある廃船に移動したその瞬間

突然、大勢の人間の雄叫びが聞こえたかと思うと、周囲の風景がぐにゃりと歪み始めた。驚いて足を止めた光輝達が何事かと周囲を見渡すが、そうしている間にも風景の歪みは一層激しくなり――気が付けば、光輝達は大海原の上に浮かぶ船の甲板に立っていた

そして、周囲に視線を巡らせば、そこには船の墓場などなく、何百隻という帆船が二組に分かれて相対し、その上で武器を手に雄叫びを上げる人々の姿があった

 

「全ては神の御為にぃ!」

 

「エヒト様ぁ! 万歳ぃ!」

「異教徒めぇ! 我が神の為に死ねぇ!」

 

雫「なに…これ…」

 

光輝「これは幻術か?…!」

 

光輝は、なぜいきなり戦場に紛れ込んだのか? などと疑問で頭の中を埋め尽くしながらも、自分たちにも飛んできた炎弾を迎撃すべく豪火球を撃ち放った

 

その傍らでは雫が炎弾を刀で斬ろうとした

 

しかし、全く予想外なことに炎弾を斬るどころか直撃したにも関わらず、そのまますり抜けて空の彼方へと消えていってしまった

 

雫「ええ!?」

 

光輝「!」

 

それを見た光輝は何を思ったのか刀を取り出し雫と同じように飛んできた炎弾を斬る

 

すると雫と違って斬ることができた

 

光輝「……そういうことか……魔力の篭ってない攻撃はすり抜けるが、籠もった攻撃なら効果があるとみた…」

 

それを聞いた雫も魔力の籠もった攻撃をしながら魔法弾、更には襲ってきた大勢の人々を斬って行った

 

しかし斬った人々は手応えこそあれど淡い光となって霧散してしまった

 

雫「…本物……じゃないわよね?」

 

光輝「さあな……実像のある幻術…攻撃した感触も体感もある…俺の月読に近いものだ……」

 

雫「でもこんなに攻撃してもきりがないわ……さっきから無限湧きしてる気が…」

 

光輝「……止むを得ん……全て焼き尽くすか」

 

そう言うと光輝は一度目を瞑り、もう一度開く

両眼共に万華鏡写輪眼になり呟く

 

光輝「『天照』!!」

 

その瞬間光輝の視界に映る全ての船や人々が焼き尽くされていく

 

大勢の人々が悲鳴と苦痛に満ちた声をあげており、雫はこの地獄絵図に動揺しつつも光輝の方を見た

 

雫「!!光輝!……貴方…眼から血が…」

 

光輝「…気にするな……これはこの瞳術を使ったときの副作用だ…ぐっ!」

 

しかし、光輝は流血した方の眼を抑えながら苦しむ

 

光輝「(流石に……あの量を焼き尽くすのは、魔力と眼への負担が大きいな……)」

 

雫「光輝!!」

 

光輝「……問題ない…だがこれではっきりした……この大迷宮のコンセプトが」

 

雫「コンセプト?」

 

光輝「大迷宮にはそれぞれ解放者達が用意したコンセプトがある……お前はこの世界の真実や解放者の事を佐藤から聞いたか?」

 

雫「う、うん…丁度香織と一緒に聞いてきたわ……まさか…私達をこの世界に呼んだ神様が黒幕だったなんて…」

 

光輝「……ここで俺達が目にしたものは…実際にあった、かつての戦争を幻術か何かで再現したものだろうな……………この迷宮のコンセプトはおそらく…」

 

雫「……狂った神がもたらすものの悲惨さを知れ……ってこと…よね?」

 

光輝「……恐らくな…」

 

そう話す光輝と雫は廃船の中でも特に巨大な船に乗り込む

すると、周囲の空間が歪み始める

また何か見たくもない光景を目にするのかと雫は警戒する

 

気がつくと今度は、海上に浮かぶ豪華客船の上にいた 時刻は夜で、満月が夜天に輝いている。豪華客船は光に溢れキラキラと輝き、甲板には様々な飾り付けと立食式の料理が所狭しと並んでいて、多くの人々が豪華な料理を片手に楽しげに談笑をしていた

 

予想したような凄惨な光景とは程遠く肩透かしを喰ったような気になりながら、その煌びやかな光景を、光輝と雫はおそらく船員用の一際高い場所にあるテラスから、巨大な甲板を見下ろす形で眺めていた

 

すると、ふたりの背後の扉が開いて船員が数名現れ、少し離れたところで一服しながら談笑を始めた。休憩にでも来たのだろう

その彼等の話に聞き耳を立ててみたところ、どうやら、この海上パーティーは、終戦を祝う為のものらしい。長年続いていた戦争が、敵国の殲滅や侵略という形ではなく、和平条約を結ぶという形で終わらせることが出来たのだという。船員達も嬉しそうだ。よく見れば、甲板にいるのは人間族だけでなく、魔人族や亜人族も多くいる。その誰もが、種族の区別なく談笑をしていた

 

雫「……少し前に…カズマ君の夢を聞いたわ………争いのない…いがみ合いもない平和な世界を………これはカズマ君の望む光景なのよね?…」

 

光輝「……」

 

雫「終戦のために奔走した人達の偉業ね……終戦からどれくらい経っているのか分からないけど………全てのわだかまりが消えたわけでもないのに……あれだけ笑い合えるなんて……」

 

光輝「………」

 

雫が目の前の光景を嬉しそうに話しているにも関わらず、光輝の表情はあまり良くなかった……否…光輝はその楽しそうな光景とは別の所を見ていた

 

甲板に用意されていた壇上に初老の男が立っており、周囲に手を振り始めた

それに気がついた人々が、即座におしゃべりを止めて男に注目する。彼等の目には一様に敬意のようなものが含まれていた。 初老の男の傍には側近らしき男と何故かフードをかぶった人物が控えている

時と場合を考えれば失礼に当たると思うのだが……しかし、誰もフードについては注意しないようだ。 やがて、全ての人々が静まり注目が集まると、初老の男の演説が始まった

 

「諸君、平和を願い、そのために身命を賭して戦乱を駆け抜けた勇猛なる諸君、平和の使者達よ。今日、この場所で、一同に会す事が出来たことを誠に嬉しく思う。この長きに渡る戦争を、私の代で、しかも和平を結ぶという形で終わらせる事が出来たこと、そして、この夢のような光景を目に出来たこと……私の心は震えるばかりだ」

 

そう言って始まった演説を誰もが身じろぎ一つせず聞き入る。演説は進み、和平への足がかりとなった事件や、すれ違い、疑心暗鬼、それを覆すためにした無茶の数々、そして、道半ばで散っていった友……演説が進むに連れて、皆が遠い目をしたり、懐かしんだり、目頭を抑えて涙するのを堪えたりしている。 どうやら初老の男は、人間族のとある国の王らしい

人間族の中でも、相当初期から和平のために裏で動いていたようだ。人々が敬意を示すのも頷ける

 

演説も遂に終盤のようだ。どこか熱に浮かされたように盛り上がる国王

場の雰囲気も盛り上がる。しかし、この時点で雫はそんな国王の表情を何処かで見たことがあるような気がして、途端に嫌な予感に襲われた

 

「――こうして和平条約を結び終え、一年経って思うのだ………………実に、愚かだったと」

 

国王の言葉に、一瞬、その場にいた人々が頭上に?を浮かべる。聞き間違いかと、隣にいる者同士で顔を見合わせる。その間も、国王の熱に浮かされた演説は続く

 

「そう、実に愚かだった。獣風情と杯を交わすことも、異教徒共と未来を語ることも……愚かの極みだった。わかるかね、諸君。そう、君達のことだ」

 

「い、一体、何を言っているのだ! アレイストよ! 一体、どうしたと言うッがはっ!?」

 

国王アレイストの豹変に、一人の魔人族が動揺したような声音で前に進み出た。そして、アレイスト王に問い詰めようとして……結果、胸から剣を生やすことになった。

 

刺された魔人族の男は、肩越しに振り返り、そこにいた人間族を見て驚愕に表情を歪めた

その表情を見れば、彼等が浅はかならぬ関係であることが分かる。本当に、信じられないと言った表情で魔人族の男は崩れ落ちた

場が騒然とする「陛下ぁ!」と悲鳴が上がり、倒れた魔人族の男に数人の男女が駆け寄った

 

「さて、諸君、最初に言った通り、私は、諸君が一同に会してくれ本当に嬉しい。我が神から見放された悪しき種族ごときが国を作り、我ら人間と対等のつもりでいるという耐え難い状況も、創世神にして唯一神たる〝エヒト様〟に背を向け、下らぬ異教の神を崇める愚か者共を放置せねばならん苦痛も、今日この日に終わる! 全てを滅ぼす以外に平和などありえんのだ! それ故に、各国の重鎮を一度に片付けられる今日この日が、私は、堪らなく嬉しいのだよ! さぁ、神の忠実な下僕達よ! 獣共と異教徒共に裁きの鉄槌を下せぇ! ああ、エヒト様! 見ておられますかぁ!!!」

 

そこから先の光景は、一方的な虐殺だった

パーティー会場である甲板を完全に包囲する形で船員に扮した兵士達が現れ、一斉に魔法が撃ち込まれ抵抗虚しく次々と倒れていった

何とか、船内に逃げ込んだ者達もいるようだが、ほとんどの者達が息絶え、甲板は一瞬で血の海に様変わりした。ほんの数分前までの煌びやかさが嘘のようだ。海に飛び込んだ者もいるようだが、そこにも小舟に乗った船員が無数に控えており、やはり直ぐに殺されて海が鮮血に染まっていく

 

その光景に雫は思わず吐きかけたがどうにかこらえた

 

光輝はというと

 

光輝「……」

 

いつの間にか両眼ともに写輪眼を開眼させていた

この胸糞の悪い惨劇に光輝も内心では言いようのない苛立ちが立っていた

 

そして気がつくとまわりは元の光景へと変わっていた

 

雫「ねえ…光輝……もしかして光輝があの楽しそうな雰囲気を見ても表情が険しかったのは…」

 

光輝「……あの王の眼……あのタヌキ教皇と同じような眼をしていた……相当な狂信者の眼だった……あの眼を見た時点でこのあと何が起こるのか予想ができた」

 

雫「……そうね…、たしかにあの眼はイシュタルさんと同じような眼をしていたわね……」

 

光輝「おそらく…あの光景は、見せることそのものが目的だったのだろうな……神の凄惨さを記憶に焼き付けて、その上でこの船を探索させる……この世界の連中は信仰心を持っている者だらけだから余計に効くな」

 

雫「……そう考えたら……中々キツイ試練ね……でもさっきの光景……終戦したのに、あの王様が裏切ったっていうことなのかしら?…」

 

光輝「そうも考えられる……が、まわりからは敬意と親愛の篭った眼差しを向けられていた……こうは考えられないか?あの王は本当に他種族との和解を求めていた……しかし」

 

雫「……終戦して一年の間に何かがあって豹変した……と考えるのが妥当かも……問題は何があったのかということだけど」

 

光輝「考えるまでもない……十中八九神関連だろうな…」

 

雫「うん、イシュタルさんみたいだった……見ていて気持ち悪かったし怖かった…」

 

光輝「『全てを滅ぼす以外に平和などありえんのだ』…か……なら、佐藤の平和の為の方法は最も難しいものと言えるな」

 

雫「うん……でも、それが最も望ましい方法だと思うわ」

 

その後船内を進むふたり

途中まるでホラー映画とかに出てきそうな幽霊モドキや貞子モドキが襲ってきて、雫は怯えていたが

 

光輝「『天照』!」

 

光輝はそれを容赦なく燃やし尽くした

お陰で怖さが薄れた雫だったが

 

雫「……(問答無用で容赦なく燃やせる光輝の方が怖い)」

 

と内心思ったのだった

 

そうして進んでいると今度は武装した兵士の幽霊モドキがふたりを遅い、それぞれ分断された

 

光輝は向かってきた兵士の幽霊モドキを全て始末した後、雫の方を向く

 

雫は汗を流しながらも兵士を全て倒したあとだった

 

雫「も、もうやだ…お家帰りたい…」

 

雫がそんな弱気な事を言いながら光輝の方へと近づき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グサッ

 

光輝に刀を突き刺した

 

光輝「!!」

 

それに驚く光輝だったが、刺された箇所が急所であった為、そのまま倒れた

 

雫?「はは…ははは…はははははは!!ついに!ついに身体を手に入れたわ!!……!?」

 

雫の声で雫とは思えない振る舞いをする雫?が笑いながら地面に倒れている光輝を見た

 

が、地面に倒れている者の姿を見て驚く

地面に倒れていたのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

己自身だったのだから

 

その瞬間、周りの景色が変わり、雫?は光輝の須佐能乎によって拘束されていた

 

光輝「……精神的に疲弊していた雫の心の隙間を狙うとは……随分と姑息だな」

 

雫?「な、なにをするの!?…まさか、このまま私を殺るつもりなの!?アンタこの女の身体がどうなってもいいの!?アンタの女なんだろ!?いいっていうの!?」

 

光輝「……『月読』」

 

光輝がそうつぶやくと周りの景色が再び変わり、雫の肉体を乗っ取っている者は全身を鎖で縛られていた

 

光輝「貴様に言っておくことがある……こいつは俺の女じゃない……別に俺はこいつに好意を抱いているわけじゃない……だがな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴様ごときが好きにしていい女じゃない!!」

 

その言葉とともに雫の肉体を乗っ取っている者が黒炎に包まれた

 

苦しみの声を上げながら、そのまま消失したのだった





今回ふたりが居る場所は原作でハジメと香織が通るはずだった場所です。

ふたりは別のルートを通ってますがやり取り自体は原作通りです。

本作の投稿が四十話を超えました。これから出す原作改変キャラクターの中で誰が好きですか?

  • 友達と優しさを持つハジメ
  • 闇を抱えた孤独の光輝
  • 物凄く動いてまわってるカズマ
  • カズマを支える相棒兼正妻のアクア
  • 影薄だけど友達思いの浩介
  • 原作と違い闇を感じない恵里
  • 原作と違い救済され闇を祓われた幸利
  • ティオに惚れられた心優しきウィル
  • 光輝を孤独にさせない一途な雫
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