カズマ「うぇ…ゴキブリの死骸まみれじゃねえかよ…」
アクア「ここを歩いていくのは勇気がいるわね」
めぐみん「どうしますか?私の爆裂魔法で滅菌しますか?」
ダクネス「いや、お前の場合は滅菌じゃ済まなくなりそうだ…滅菌っていうより消滅だな」
ハジメ達によりゴキブリは一匹残らず滅ぼされ、魔法の効果を受けていた一同は正気に戻った
ユエ「…ハジメ!!」
ユエがハジメに抱きつき謝った
それに答えるハジメはユエにキスをする
それを見たシアに香織もハジメにキスをせがむ
その横では雫が光輝に申し訳なさそうにしていた
雫「光輝……私…」
光輝「……謝るな……あれはゴキブリ共のせいであってお前の意思じゃないだろ…なら気にするな…」
それだけ言うと光輝は聞こえるか聞こえないかくらいの音程で『すまない』とボヤいた
なお雫にはしっかりと聞こえていた
その時
突然、天井付近の大樹の一部が輝き始めた。
メキメキッと音を響かせながら大きな枝が新たに生え始める。 その枝は、新たな通路となってどんどん長さを伸ばすと、遂にハジメ達がゴキブリに襲われた四本の枝通路が合流するポイントに五本目の枝通路として引っ付いた。上から伸びてきた枝通路なので、枝の節とも相まって天へと伸びる階段のようにも見える。 ハジメ達は顔を見合わせると、休憩もそこそこに先へ進むことにした
ただし、ハジメはユエを抱っこしたまま。ユエが離れようとしなかったし、ハジメが離そうとしなかったのだから仕方がない
むくれたシアと香織が左右から抱きついたのは言うまでもない
そんなハジメ達をカズマ達は『若いなあ』『若いわねえ』『若いですね』『若いな』とボヤき、ティオからは『お主ら年寄りくさいのじゃが?』と言われた
五本目の枝通路を登りきると、そこにはいつものように洞が出来ていた。躊躇いなく進むと、案の定、光が溢れ出し転移陣が起動する。 光が収まったあとハジメ達の目の前に広がっていたのは……庭園だった
空が非常に近く感じられる。 空気はとても澄んでいて、学校の体育館程度の大きさのその場所にはチョロチョロと流れるいくつもの可愛らしい水路と芝生のような地面、あちこちから突き出すように伸びている比較的小さな樹々、小さな白亜の建物があった
そして一番奥には円形の水路で囲まれた小さな島と、その中央に一際大きな樹、その樹の枝が絡みついている石版があった。 ティオがスタスタと歩いて庭園の淵に行き眼下を覗き込む
ティオ「カズマよ。どうやらここは大樹の天辺付近みたいじゃぞ?」
ティオの言葉に、他のメンバーも庭園の端から下を見やる。すると、眼下には広大な雲海と見紛う濃霧の海が広がっていた
アクア「……それじゃあ…ここがゴールってことよね?」
アクアの呟きに香織達がハッとした表情をする。
口々に「ここが……」とか「やっと……」などと呟いている
それらを尻目にハジメは一番奥にある石版のもとへ歩いて行った。 水路で囲まれた円状の小さな島に、ハジメ達が可愛らしいアーチを渡って降り立つ
途端、石版が輝き出し、水路に若草色の魔力が流れ込んだ。水路そのものが魔法陣となっているのだ。ホタルのような燐光がゆらゆらと立ち昇る。 いつもと同じように記憶を精査されるような感覚と、直後の知識を無理やり刻み込まれる感覚
ハジメが流れ込んできた知識から読み取った新たな神代魔法を口にしようとしたその時、おもむろに目の前の石版に絡みついた樹がうねり始めた。 何事かとハジメ達が身構える。そんなハジメ達を尻目に立ち昇る燐光に照らされた樹はぐねぐねと形を変えていき、やがて、その幹の真ん中に人の顔を作り始めた。ググッとせり出てきて、肩から上だけの女性とわかる容姿が出来上がっていく
そうして完全に人型が出来上がると、その女性は閉じていた目を開ける。そして、そっと口を開いた
リューティリス「まずは、おめでとうと言わせてもらうわ。よく、数々の大迷宮とわたくしの、このリューティリス・ハルツィナの用意した試練を乗り越えたわね。あなた達に最大限の敬意を表し、ひどく辛い試練を仕掛けたことを深くお詫び致します」
どうやら樹を媒体にした記録のようだ。オスカーのような映像の代わりということだろう。どこかリリアーナのような王族に通じる気品と威厳があるように感じる。樹の幹から出来ているのではっきりとは分からないが、ストレートの髪を中分けにした美人に見える
と、ここで光輝が万華鏡写輪眼を開眼させたのを見てカズマが『ステイ!光輝ステイ!』と言って止めている
どうやら散々試練で散々な目に合わせたことに苛立ちが募り、本人ではないことはわかっていても八つ裂きにしたいと思っていたそうだった
リューティリス「しかし、これもまた必要なこと。他の大迷宮を乗り越えて来たあなた方ならば、神々と我々の関係、過去の悲劇、そして今、起きている何か……全て把握しているはずね? それ故に、揺るがぬ絆と、揺らぎ得る心というものを知って欲しかったのよ。きっと、ここまでたどり着いたあなた達なら、心の強さというものも、逆に、弱さというものも理解したと思う。それが、この先の未来で、あなた達の力になることを切に願っているわ…あなた達が、どんな目的の為に、私の魔法―― 〝昇華魔法〟を得ようとしたのかは分からない。どう使おうとも、あなた達の自由だわ。でも。どうか力に溺れることだけはなく、そうなりそうな時は絆の標に縋りなさい……昇華魔法は、文字通り全ての〝力〟を昇華させる。それは神代魔法も例外じゃない。生成魔法、重力魔法、魂魄魔法、変成魔法、空間魔法、再生魔法……これらは理の根幹に作用する強大な力。その全てが一段進化し、更に組み合わさることで神代魔法を超える魔法に至る。神の御業とも言うべき魔法――〝概念魔法〟に」
その言葉に一同は息を呑む
リューティリス「概念魔法――そのままの意味よ。あらゆる概念をこの世に顕現・作用させる魔法。ただし、この魔法は全ての神代魔法を手に入れたとしても容易に修得することは出来ないわ。なぜなら、概念魔法は理論ではなく極限の意志によって生み出されるものだから」
ハジメは説明を聞いて眉をしかめる。〝極限の意志〟……何て、ふわっとした説明なんだ、と
リューティリス「わたくし達、解放者のメンバーでも七人掛りで何十年かけても、たった三つの概念魔法しか生み出すことが出来なかったわ。もっとも、わたくし達にはそれで十分ではあったのだけれど……。その内の一つをあなた達に」
リューティリスがそう言った直後、石版の中央がスライドし奥から懐中時計のようなものが出てきた。それを手に取るハジメ。表には半透明の蓋の中に同じ長さの針が一本中央に固定されており、裏側にはリューティリス・ハルツィナの紋様が描かれていた。どうやら攻略の証も兼ねているようだ。ハジメが、手中のそれをしげしげと見つめているとリューティリスが説明を再開した
リューティリス 「名を〝導越の羅針盤〟――込められた概念は〝望んだ場所を指し示す〟……どこでも、何にでも、望めばその場所へと導いてくれるわ。それが隠されたものでもあっても、あるいは――別の世界であっても」
きっと、リューティリスの言っている〝別の世界〟とは神……エヒトのいる世界のことだろう
極限の意志のみによって概念魔法が生み出されるというのなら、解放者達の意志など決まっている
それは当然、神を倒すことだ。 ならば、この羅針盤は神のいる場所を探し出すために作り出されたのだろう。おそらく、オスカー辺りが概念魔法を生成魔法で付与した材料を使って、この羅針盤を作成したに違いない。 だが、別の世界でも、その場所を示して導いてくれるというのなら――それは、故郷でも、日本でも可能なはずだ。 故郷に帰るための一手が手に入った。……ハジメの胸中に、どうしようもない程の歓喜が湧き上がる
それを察したのか、傍らのユエが優しげな眼差しでハジメを見上げながらギュッと手を握り締めた
リューティリス「全ての神代魔法を手に入れ、そこに確かな意志があるのなら、あなた達はどこにでも行ける。自由な意志のもと、あなた達の進む未来に幸多からんことを祈っているわ」
伝えることは最低限伝えたということか、リューティリスはそれを最後の言葉に再び樹の中へと戻っていき、後には唯の石版に絡みついた樹だけが残った
それに光輝が『チッ』っと舌打ちし、苦笑する香織とシア
ハジメ「ユエ、念の為に聞くが……昇華魔法を使えば……空間魔法で………………世界を越えられるか?」
ユエは、その言葉の重みを知っているがために即答は避けて、必死にその可能性を探る。刻み込まれた知識と、間違いなく現代において最高最強の魔法使いとしての知識をフル活用する。 その結果、得た答えは……
ユエ「…………ごめんなさい」
ハジメ「そうか……」
そういうことだ。ただ昇華しただけの空間魔法で世界が越えられるなら、きっと解放者達も苦労しなかったに違いない。 リューティリスは言った。三つの概念魔法を作ったと。一つは〝導越の羅針盤〟に付与した概念。ならば、後の二つは異なる神の世界に行く為の概念と打倒するための概念だろう
つまり、概念魔法の域に達しなければ世界を越えることは至難だということだ。 ハジメの期待に応えられなかったせいか項垂れるユエに、ハジメは優しげな眼差しを向けると、そっとその美しい黄金の髪を指で梳いた。地肌に触れる感触に、ユエはくすぐったそうに首を竦めながら上目遣いでハジメを見つめる
ハジメ「なに、問題ないさ。あわよくばって思っただけだ。必要な神代魔法はあと一つ。それを手に入れればいいだけだからな。なんにせよ、ユエがそんな顔をする必要はねぇよ」
そんな優しそうに言うハジメにユエは頷き抱きしめた
それにまたギャアギャア喚くシアと香織
カズマ「これでいよいよあと一つなんだなハジメ?…」
ハジメ「……まあな……一応現時点で概念魔法を手に入れられる可能性が特に高いのは…俺とユエと天之河だけだ…」
カズマ「……そっか……それじゃ…次で最後なんだナ……お前らと冒険できるのは…」
ハジメ「!!」
その言葉にハジメが反応する
これまで共に居たカズマ達はエヒトを倒すための味方集めと神代魔法集めの為に同行しており、地球へ帰ることを第一に考えているハジメと香織、更に地球へ共に行くことを決めているユエとシアは最後の大迷宮攻略後は離別することになる
雫は恐らく残るだろうが、それ以外の地球組の面々でエヒトと戦いたくないものは皆ハジメ達と一緒に帰ることになるだろう
カズマ「そんじゃ、フェアベルゲンに戻って、ゆっくりと休むことにしますか」
そうしてカズマ達は歩き出すのだった
ハジメ「……そうだったな……」
そんな歩くカズマを見て、ハジメはなんとも言えない気持ちになるのだった
本作の投稿が四十話を超えました。これから出す原作改変キャラクターの中で誰が好きですか?
-
友達と優しさを持つハジメ
-
闇を抱えた孤独の光輝
-
物凄く動いてまわってるカズマ
-
カズマを支える相棒兼正妻のアクア
-
影薄だけど友達思いの浩介
-
原作と違い闇を感じない恵里
-
原作と違い救済され闇を祓われた幸利
-
ティオに惚れられた心優しきウィル
-
光輝を孤独にさせない一途な雫