創造のハジメと破壊の光輝   作:スカイハーツ・D・キングダム

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はい。最後の大迷宮の試練のトリを飾るのは本作女性キャラでも高い人気を誇る八重樫雫です。

果たして彼女はどう乗り越えるのでしょうか!!


第五十七話 少女の想い

 

虚像の雫「もう、立ち上がらなくていいのよ? 貴女が苦しまなくても誰かがクリアしてくれるわ。そうすれば家に帰れる。大丈夫よ。そのまま諦めても命は取らないから。そのまま寝ていれば、目を覚ました時には全て終わっているから」

 

雫 「なに、を……」

 

ハジメと光輝が試練を突破した時を同じくして…雫は己の虚像に追い詰められていた

 

身体を何度も斬られ、口や身体から血を流し地に伏していた

 

そんな苦しむ雫に虚像の雫は甘く囁いた。優しい声音で、口元を三日月のように裂きながら、まるで悪魔のように

 

虚像の雫「ただの選択よ。……もちろん、諦めないなら殺すわ。容赦なく切り刻んで上げる」

 

ニッコリと怖気を震うような笑みを浮かべる虚像の雫

その手に持つ抜き身の白刀には、スノーホワイトが雪に垂らした血の如く、雫を刻んだ証がベットリと付着していた

 

虚像の雫「ねぇ、貴女。あの時は嬉しかったわよね?」

 

雫「え?」

 

いきなりの質問に雫が呆けた表情で声を漏らした

 

虚像の雫 「光輝とハジメ君が助けに来てくれた時よ。分かっているでしょう? 貴女私の人生で一番劇的だったあの瞬間を忘れるわけがないわ」

 

雫「何を言って……」

 

虚像の雫「絶体絶命のピンチ……いえ。あの時、貴女私は確かに諦めた。全て諦めて理不尽な死を受け入れようとした。でも…そんな貴女を彼は……何も言わず颯爽と貴女を助け、守った……そしてハジメ君と圧倒的な強さで敵を殲滅した………小さい頃からずっと見ていていつの間にか大きくなった背中、敵を決して貴女私に近づけず守り抜いたその姿……そうね………まるでいじめられていた貴女私を助けた時のようだったわね……そんな彼だからこそ貴女私は彼のことを」

 

雫「ち、ちがっ………」

 

決して認めたくない、認めるわけにはいかない何かを言われるような気がして、咄嗟に雫は否定の言葉を叫ぼうとする。だが、そんな抵抗は無駄だとでも言うように、虚像の雫は容赦なく言葉を解き放った

 

虚像の雫「貴女私…本当になにも変わってないわね……子供の頃もそう…あの時もそう……そして今も変わらず弱くて惨めで情けなく…こうして地に伏して……またそうやって彼の……貴女私の救世主様に助けを求めるの?よくもまあそんな事を思えるわね…彼の夢も奪って親兄弟だけじゃなく大勢の人を嫌い、孤独になるきっかけを生んでおいて…そんな彼に抱いてはいけない淡い想いを抱いてしまって…」

 

虚像の自身がそう冷たく…それでいてゴミでも見るかのような瞳を向けられ…思わず後退りするとそこへ虚像の雫が斬撃を飛ばしてきた

 

雫「ヒッ!」

 

虚像の雫「…そんなに我が身が大事なの?……そんなに自分の負と弱さから目をそらしたいのね?…そう…やっぱり止めだわ…貴女私はここで殺すわ」

 

雫「!」

 

そう言うと雫を蹴り飛ばし壁に叩きつけ、追い込んだ雫に刀を向けた

 

虚像の雫「最後に何か言い残すことはあるかしら? 氷壁にでも刻んでおいてあげる。ここはそれぞれの空間と繋がっているから、運がよければ自分の試練を突破した誰かがやって来て遺言を見つけるかもしれないわよ?」

 

雫「……」

 

雫は答えない

いや…答えられなかった

その頬に涙の雫が流れ落ちた

 

ただ静かに、光りの粒がはらはらと頬を伝い、ポタリポタリと膝の上に染みを作っていく

 

雫自身にも何故涙が溢れ出るのか判然としなかった。己の死を悟ったが故の恐怖からか、未来を失ったことへの絶望か、言われっぱなしで降された悔しさからか、大切な人達ともう会えない悲しさか……あるいは、その全てか。 それを無言で見つめながら、虚像の雫は抜き身の刀をグッと後方へ引き絞った

 

刀身が向かう先は、雫の頭部だ

 

虚像の雫「最初はもう少し抗うことを期待してたけど…ここまで精神的にまでズタボロになった上無様に生き急ぐ姿見せられたら……生かす気も失せたわ……もうこれで最後になるから最後にこの言葉を送るわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

己の弱さで彼を追い詰め孤独にし、傷つけた貴女私に生きる資格なんかないわ……さようなら……醜く脆弱で哀れな貴女私

 

その言葉とともに刀を振り下ろされた

 

振り下ろされる刹那

 

雫には周りの時が遅くなったかのような錯覚を覚えた

刀身に映る涙を流す無力な己の顔

 

そんな己の姿を見て更に涙を流したくなった

 

雫「(…悔しい!!悔しい!!私は…弱いまま!!強くなった気でいたのに…弱すぎる!!…なにも言い返せなかった!)」

 

その言葉は、ただひたすら己の不甲斐なさを呪う言葉

 

まだ、死にたくない。会いたいのだ

 

親友に、仲間に、家族に、そして、彼に。もう一度。 でも、もう一人では立てないから。身も心も疲れきってしまったから。 だから……

 

雫「た、すけ、て……だれ、か……たす、け、て…よぉ……」

 

その白き刀身が雫の身体を切り裂く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カズマ『雫ってさ…自分のことが嫌いだろ』

 

雫『へ?』

 

カズマとの訓練を受け、その休憩中にカズマが漏らしたその一言に雫は驚く

 

雫『嫌いって…急にどうしたの…?』

 

カズマ『いやな…俺一応お前らの数倍の人生生きてきたからさ…人を見たらある程度の事がわかるんだよな…例えばめぐみんは自分のことが好き。ハジメは好きでも嫌いでもなく普通って感じだな………けどお前と光輝は自分のことが…そこらの悪人よりも嫌いなんだって見ていて感じた』

 

雫『!』

 

カズマのその言葉に思わずつばを飲み込む

 

カズマ『……初めて会ったあの時からずっと感じてた……けど……悪い……王国でお前がユエにお前自身と光輝の過去を聞かせていた時……ハジメと一緒に部屋の外から盗み聞きしてた…』

 

雫『!……そう…』

 

聞かれていたことにも驚いたが、それ以上に己の心情を察せられていた事に驚いた

 

それからポツリと語りだした

 

雫『ええ……カズマ君の言うとおりよ…私は……私が嫌い……大嫌い……』

 

そうまるでなにかを思い出すかのような、嫌悪と負が混じり合った表情を浮かべた

 

雫『…私は……今も昔も弱いまま……いざという時…泣いてることしかできない私が……目の前で大切なものが砕かれそうになっている時も……私が傷ついている時も…命に瀕している時も…なにもできないでいる私を……いつも何も言わず守ってくれている光輝に…なにもしてあげられないそんな私が……弱い私が大嫌い』

 

カズマ『……そうか…』

 

そう自己嫌悪を吐く雫の拳は強く握っており、今にも手を傷つけ血が出そうになるほどだった

それほど雫は己が嫌いだということを物語っていた

 

カズマ『つまり…雫は自分が許せないんだな?』

 

雫『……ええ…』

 

カズマ『なあ雫……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別に弱くてもいいだろ?』

 

雫『……へ?』

 

カズマ『確かに弱ければなにもできない……大切なものを守ることも…自分の信念も守ることもできない……でもさ…誰もが最初から強かったわけじゃない……強くなったやつはみんなその弱さを悔いて、挫折して…一旦立ち止まって……そして弱さを受け入れて強くなったんだよ……ハジメは奈落の底での無力さに………光輝は何も知らなかった己の無知と人の善悪に…香織は想いだけでは届かない、ライバルとの力の差に……みんな…自分の弱さに一度はうちのめされ…最後には自分の弱さを受け入れ、立ち上がった奴らだ……弱い自分は…これから強くなる自分のための通過点に過ぎねえんだよ』

 

雫『……それじゃあ…カズマ君も…?』

 

カズマ『…まあね…でも俺は以外と立ち直るのが早かったな……あいつらが居てくれたから』

 

そう言うとカズマは奥でボードゲームをして遊んでいる嫁たちを見た

 

カズマ『あいつらさ…俺が落ち込んでたり弱ってるといつもなにも何も言わずそばに居てくれるんだよ……励ましの言葉を送ることもなく…気分を変えるよう行動もしない…けどな…居てくれるだけで…安心する……心を落ち着かせる…弱さを受け入れ立ち上がる勇気を与えてくれるんだ』

 

雫『!』

 

カズマ『だからさ雫……弱くてもいい…挫折して一度立ち止まっても良い……大事なのは自分の弱さを自覚し受け入れ、それでもなお立ち上がろうとする心だ……』

 

雫『カズマ君…』

 

カズマ『今はまだ…弱いが……お前なら必ず自分の弱さを…乗り越えられるって信じている………最後には一人で立ち上がらなきゃいけないが、俺達が背中を押して手助けしてやるよ……なんてったって俺達は一人じゃないからさ……そして…いつの日か……弱い自分自身を許してやれ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雫「(そう…そうだったわ……私は弱い……けど一人じゃない……一人で抱え込む必要なんかない……背中を押してくれる人たちがいる……香織やカズマ君達に背中を押してもらえた……後は……私自身が立ち上がるだけ……!)」

 

虚像の雫「!」

 

虚像の己のトドメを寸前で回避する雫に虚像の雫は驚きの表情を浮かべた

 

虚像の雫「あら……さっきまでの弱りきっていたはずの貴女私とは思えない表情ね…この期に及んで生きたくなったかしら?」

 

雫「……ええ…そうよ……貴女の言う通り……私は自分の弱さで光輝を追い詰め傷つけた……どうにかしたいと思っても彼の心を癒やすこともできないでいた………傷ついて欲しくなかった……彼のあんな表情を見たくなかった……凄く痛かった………彼を傷つけた自分の弱さが許せなかった……でもだからこそ……ここで終われない…!」

 

雫は白金を握る手とは別に、腰のホルダーからクナイを取り出し投げつけた

 

意外にもクナイが手に馴染むと感じた雫は光輝だけでなく自身もカズマに制作を頼んでいたのだった

 

しかし投げつけたクナイは虚像の己には通じず全て剣先で弾かれた

 

虚像の雫「こんな小細工が私に通じるとでも?……良い加減無駄な足掻きはやめてさっさと斬られて楽になりなさい!!」

 

そう言いながら虚像の雫が放つ斬撃を全てよけ、白金で弾く雫はクナイをまた取り出し構えた

 

虚像の雫「……またそればかり……何度やっても無駄なことよ…貴女私が何度光輝の傷ついた心を癒そうと…孤独にしたくない想いから近づいても無駄だったようにね……良い加減諦めなさい……結局貴女私には彼の心を救うことはできないのよ」

 

虚像の己の言葉を聞く雫だったがその表情には一切の迷いはなかった

 

雫「言いたいことはそれだけかしら?……悪いけど……もうこっちは吹っ切れたのよ……自分の弱さも認める……そして……諦めるつもりはないわ」

 

虚像の雫「は?」

 

雫「…この世界に来る前から…決めているのよ………何度彼に拒絶されても!何度彼が孤独に突き進もうとしても!……私が孤独にさせない!!そして傷ついたその心も私が必ず癒やしてみせる!!

 

先程のように心を折ろうと吐いた言葉は雫には通じず、それどころか強くなってきている雫の気迫に押されそうになった虚像の雫は苛立ちの表情を浮かべながら

 

虚像の雫「!!何度やっても一緒だって言ったでしょ!!いい加減に諦めなさい!!」

 

刀に魔力を集中させ、これまでとは比べ物にならないほどの速度で雫に斬りかかる

 

対する雫は白金を握りながらクナイを複数個投げ、こちらも白金に魔力を集中させ虚像の己を斬りかかる

 

このまま行けば3秒後には互いの刀が相手に届く

どちらが相手よりも先に斬るかで決着がつく

 

雫「……貴女の方こそ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間雫の姿が消え

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雫「私が諦めるのを!諦めなさい!!

 

虚像の雫「!?」

 

刹那…虚像の雫は一瞬姿を消し、いつの間にか己の目の前に姿を現した雫に

 

雫「飛雷神斬(ひらいしんぎ)り!

 

 

すれ違いざまに斬られたのだった

 

 




この虚像の雫が他の虚像よりも厳しめなのは己を許せないでいる雫自身の心が強く反映されてるからです。

最近THE LASTナルト・ザ・ムービーを見て感動しました。特にラストのナルトとヒナタのやり取りや月の下のキスシーンに結婚式は涙が出そうになりました。
ずっと一人ぼっちだった主人公が最後は自分の家族ができるまでの流れを綺麗に描かれたのはジャンプ作品の中でもNARUTOが一番だと思いました。

本作の投稿が四十話を超えました。これから出す原作改変キャラクターの中で誰が好きですか?

  • 友達と優しさを持つハジメ
  • 闇を抱えた孤独の光輝
  • 物凄く動いてまわってるカズマ
  • カズマを支える相棒兼正妻のアクア
  • 影薄だけど友達思いの浩介
  • 原作と違い闇を感じない恵里
  • 原作と違い救済され闇を祓われた幸利
  • ティオに惚れられた心優しきウィル
  • 光輝を孤独にさせない一途な雫
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