創造のハジメと破壊の光輝   作:スカイハーツ・D・キングダム

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皆さんこんにちは作者です。

そろそろ大学の後期が始まろうとしてますので進めるうちに進めていきたいです。

そして今回結構長いです。


第六十四話 奪われたモノ

 

ハジメ「ユエを返しやがれー!!」

 

ハジメは持てる全てのアーティファクトや魔法、技能を持ち入りユエの肉体を乗っ取っているエヒトに攻撃したが、どれも通じなかった

これが万全ならともかく、今のハジメは腹を貫かれ、無理やり傷を防ぎつつも痛みで意識を失いかけるのにも耐えている状態だ

そんな状態ではエヒトに通じるわけがなかった

しかもエヒトはユエの肉体に宿ることでユエの持つ魔法の才能+神である自身の力を上乗せし、ハジメ達に猛威を振るう

 

それだけではなく

 

エヒト「エヒトの名において命ずる――〝平伏せ〟」

 

エヒトが神言と呼ぶそれは、聞いたもの全ての行動を支配するものであり、ハジメは辛うじて足掻こうとするが、足掻こうとするたび無理やり塞いだ傷が開きかけるなど、これまでにないほど追い込まれていた

挙句の果てにはハジメが宝物庫を起動しようとしたその瞬間、エヒトが、どこか優雅さすら感じさせる所作でパチンと指を鳴らした。 すると、ハジメの指に嵌っていた宝物庫の指輪がフッと消えて、次の瞬間にはエヒトの掌へと転移してしまった。しかもハジメの宝物庫だけでなく、エヒトの周囲にドンナー・シュラークやドリュッケン、白金など、ハジメやカズマが手掛けたアーティファクトの数々が転移してクルクルと回りながら浮かんだ

 

エヒト「よいアーティファクトだ。この中に収められているアーティファクトの数々も、中々に興味深かった。イレギュラーの世界は、それなりに愉快な場所のようだ。ふふ、この世界での戯れにも飽いていたところ。魂だけの存在では、異世界への転移は難行であったが……我の器も手に入れた……これでようやく停滞していた我が目的(・・)も果たせようぞ……今度はイレギュラーの世界で遊んでみようか」

 

クツクツとユエでは絶対しないような邪悪な笑みを浮かべて宝物庫を弄ぶエヒトは、おもむろに手を握り締めた。そして、僅かに掌中から光を漏らしたあと開かれた手の中には宝物庫は消滅していった

それに続く形で他のアーティファクトも消滅させていった

 

エヒト「おっと、忘れるところであった」

 

絶対に忘れていなかったと確信できる笑みを浮かべながら、エヒトの視線がハジメの義手に向く。そして、他のアーティファクトにそうしたように魔力を放ちながらパチンッと指を鳴らした。 それだけで、ハジメの義手がゴバッと音を立てて崩壊する。ハジメの義手は、魔力による擬似的な神経が通っており触感も温度も感知できる。当然、痛みも、だ。調整は出来るとはいえ、いきなり左腕を粉砕され激痛に苛まれたハジメは怒り混じりの咆哮を上げた

 

ハジメ「くそったれがぁああああ!!」

 

エヒト「よく足掻くものだな。もう中身がぐちゃぐちゃであろうに。お前を器とするのも良かったかもしれんな。三百年前に失ったはずの我が器が、生存していたことに心が逸ってしまったか……いや、魔法の才が比較にならんか」

 

エヒトを睨みつけるハジメにエヒト特に気にした様子もなくユエ自身の体をじっくりと観察しながら思案顔をする。ハジメの足掻きなど取るに足りないと思っているようだ。 それを見たハジメは……直後、その紅い魔力を脈動させた。ドクンッドクンッと波打ち、限界突破の魔力が更に際限なく上昇していく。直後、噴火したかのように紅の魔力が噴き上がった。螺旋を描きながら天を衝く紅い魔力の奔流――〝限界突破〟の最終派生〝覇潰〟だ

 

少し離れた場所でエヒトの降臨に恍惚の表情を浮かべながら涙していたアルヴが、ハッと我に返り戦慄の表情を浮かべた。それは、ハジメの発する力の奔流が、ディンリードという優秀な男に憑依して現界した、神格を持つ自分に匹敵していたからだ。自分の力はエヒトには遠く及ばないとは言え、驚愕せずにはいられない

 

アルヴ「我が主!」

 

エヒト「よい、アルヴヘイト。所詮、羽虫の足掻きだ。エヒトルジュエの名において命ずる――〝鎮まれ〟」

 

先程と名が違う。いや、更に付け足された。その効果は、ハジメに対し絶大な力を以て作用した。それこそ、先程の〝動くな〟という命令よりも遥かに。 うねりを上げていた魔力光が徐々にその輝きを収めていく。まるで、ハジメ自身がエヒトの命令に従ったように、自分の意思で覇潰を解除しようとしているのだ

 

ハジメ「ぁああああっ!!」

 

ハジメが再度絶叫を上げた。それを見て、エヒトは、ユエの顔を邪悪に歪めた。心底、面白い余興を見たとでもいうように。あるいは、必死の足掻きを嗤うように

 

エヒト「ほぅ、まさか我が真名を用いた神言にすら抗うとはな。……中々、楽しませてくれる。仲間は倒れ、最愛の恋人は奪われ、頼みのアーティファクトも潰えた。これでもまだ、絶望が足りないというか」

 

ハジメ「……当たり、前だ。てめぇは……殺すっ。ユエは……取り戻すっ……それで終わりだっ」

 

エヒト「クックックッ、そうかそうか。威勢がいいが残念ながら、貴様たちでは我を倒すことは不可能だ……我を倒せる者が居るとすれば……貴様達に紛れている異世界の転生者とやらだな……そろそろ仕上げと行こうか。一思いに殲滅しなかった理由を披露できて我も嬉しい限りだ」

 

血反吐を吐きながら殺意を溢れさせるハジメに、エヒトは満面の笑みを浮かべた。そして、敢えて、ユエが作り上げたオリジナル魔法を発動する

 

エヒト「――五天龍……中々に気品のある魔法だ。我は気に入ったぞ」

 

ユエオリジナル魔法にして五属性込みの魔法で生まれた五体の魔龍だが、その威容はユエが行使していたときのそれを遥かに越える。存在の密度が桁違いなのだ。 五属性の魔龍は鎌首をもたげ、その眼光をそれぞれの標的に向ける。シア、ティオ、香織、雫、そしてハジメだ

 

何をする気なのかは明白。ハジメの目の前で、シア達を魔龍達に喰らわせながらハジメを葬ろうとしていると

 

ハジメ「ユエッ! 目を覚ませ!」

 

エヒト「ふふ、遂に恋人頼りか? 無駄なこと。これは既に我のものだ。ここまで抗ったことは褒めてやる……だが、所詮は矮小な人間よ」

 

ハジメ「ユエッ! 俺の声が聞こえるはずだっ。ユエッ!やめろー!!」

 

ハジメの殺意に当てられて近場にいた魔物の数体が意識を喪失し倒れるが、エヒトは心地よいそよ風でも受けたように目を細めると、愉悦と共に、身動き取れない者達へ、ユエ自身が研鑽を積んできた魔法の牙を剥こうとした。 見せつけるように掲げられたたおやかな指が、命脈を断つように振り下ろされ、五天龍が降り注ぐ

 

絶望に染まる面々達に愉悦の笑みを浮かべるエヒト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメ「やめろって言ってんだろうがぁぁぁぁ!!

 

その瞬間、ハジメからこれまでとは違う質の魔力が溢れ出したかと思えばハジメのいる地面から木で出来た巨大な木の龍……木龍が飛び出し五天龍を喰らう

 

シア/ティオ/香織/雫「「「「!?」」」」

 

突然の出来事に驚く一同だったが、一番驚いていたのはエヒト本人だった

 

エヒト「!?ば…馬鹿な……この魔力(・・)は…そして…この能力(・・)は……まさか!?貴様(・・)は!!」

 

それまで余裕の表情を浮かべていたエヒトが始めてその表情が崩れた

そしてそれだけでは終わらなかった

 

エヒト「ッ!? 何だ……魔力が……体が……まさかっ、有り得んっ」

 

突然、エヒトが大きく目を見開き、その身を震わせた。まるで体の自由が利かないとでもいうように動揺する

 

シア達も絶体絶命の窮地において、エヒトが苦しみ出したことに瞠目する。 そこへ、声が響いた

 

――させない

 

念話のように謁見の間に響いたそれは、苛立たしげに悪態を吐くエヒトと同じ声音

されど、ハジメ達からすれば、ずっと可憐で愛らしい声音だ

 

ハジメ「ユエっ!」

 

シア「ユエさん!」

 

ハジメとシアが声に喜色を乗せて叫ぶ。香織達も口々にユエの名を叫んだ。 ハジメが、既に致死量に近い出血をしているにもかかわらず活力を取り戻したかのように肉体と魔力を唸らせる。シア達も気合いの雄叫びを上げて立ち上がろうとする

 

しかし

 

エヒト「くっ、図に乗るな、人如きが。エヒトルジュエの名において命ずる! ――〝苦しめ〟!」

 

脂汗を流しながらも、エヒトは真名による強力な神言を放った。それにより、体全体に凄まじい激痛が奔り、シア達は苦悶に満ちた表情を晒し、悲鳴を上げて身悶えする

 

エヒト「……アルヴヘイト。我は一度、【神域】へ戻る。お前の騙りで揺らいだ精神の隙を突いたつもりだったが……やはり開心している場合に比べれば、万全とはいかなかったようだ。我を相手に、信じられんことだが抵抗している。調整が必要だ」

 

アルヴ「わ、我が主。申し訳ございません……」

 

アルヴの最初の語らいは、エヒトの憑依を確実にするためのものだった。体と精神の関係は非常に密接なもので、たとえ神であろうと完全に乗っ取るのは難しい。それは、【神域】でなければ十全に力を発揮し得ないという制限故なのだが……とにかく、そのためにユエの心を一瞬でも開かせるために、ディンリードとの思い出を利用したのだ

 

恐縮するアルヴヘイトに、エヒトは軽く手を振って答えた

 

エヒト「よい。三、四日もあれば掌握できよう。この場は任せる」

 

エヒトはどうにかユエの意識を抑え込んだようで、アルヴ達に指示を出すと手を頭上に掲げた

すると、その手から先程降り注いだのと似た光の粒子が今度は舞い上がり、謁見の間の天井の一部を円状に消し去って、直接外へと続く吹き抜けを作り出した。 光の粒子はそのまま天へと登って行き、魔王城の上空で波紋を作りながら巨大な円形のゲートを作り出した。天地を繋ぐ光の粒子で出来た強大な門――まさに神話のような光景だ。おそらく、エヒトの言う【神域】という場所へ行くための門なのだろう

 

エヒトはおもむろに手をはらう仕草をすると目の前に仙鏡のような巨大なスクリーンが投影された

 

エヒト「人間族…並びにこの世界に生きる全ての種族の諸君……我はエヒト……この世界を総べる神なり…我は長年この世界統べる者として君臨し、人々の争いを見てきた……実に愉快だった……我…そして我が配下であるアルヴヘイトの言葉を信じ、諸君ら下等種が我を愉しませるために争い続ける姿はいつ見てもな……しかし…いい加減飽きた………これまでワケあって姿を見せることができなかった……だがしかし…ようやく器を手に入れたことで…こうして下界に顕現することができた………今までご苦労だったな……褒美として…貴様達には……我が完全な存在(・・・・・)へと昇華するための糧としようぞ」

 

恐らく今のはエヒトが世界に向けて飛ばした映像

 

エヒトは、掲げた腕を下ろすとふわりと浮き上がり、天井付近からハジメ達を睥睨した

 

エヒト「イレギュラー諸君。我は、ここで失礼させてもらおう。可愛らしい抵抗をしている魂に、身の程というものを分からせてやらねばならんのでね。それと、三日後にはこの世界に果実(・・)を咲かせようと思う。生命の命で作りし大いなる力の実(・・・・・・・・・・・・・・・)をな。最後の遊戯だ。その後は、是非、異世界で遊んでみようと思っている…」

 

どうやらエヒトは、本気でこの世界を終わらせて、新天地として地球を選ぶ気のようだ

そして、そのタイムリミットが三日。ユエの肉体を掌握するのに必要な時間

 

ハジメ「ま、てっ、ユエを、返せ……」

 

地の底から響くような声でハジメがユエに手を伸ばす。いつの間にか、神言の影響すら跳ね飛ばして起き上がっている

だが、それを使徒達が背後から強襲して組み伏せてしまった。更に、アルヴがなにかしらの術を行使してハジメの体を硬直させる。組み付いた使徒は分解の能力で、纏った魔力や衣服等に仕込まれた錬成の魔法陣を全て霧散させてしまった。 それでも、出血多量で霞む意識を殺意と憎悪で繋ぎ留め、なお足掻きく

それを一瞥したエヒトは口元を歪めて鼻で嗤った

 

エヒト「……生きていれば……神域の奥で待っておくぞ…アシュラ(・・・・)よ」

 

そして、そのまま天に輝くゲートへと上って行った

使徒、魔物も浮かび上がり、その半数程が天へと上っていく。魔王城の外でもおびただしい数の使徒や魔物が天に輝くゲートを目指していき、そのまま溶けるように光の中へゲートともに消えていった

 

ハジメ 「ユエェエエエエエエエエエッ!!!」

 

ハジメの絶叫が虚しく木霊する。 伸ばした手には、何も掴めない。 そこに、いつもの温かく愛しい感触は…… もう、なかった

 

絶叫が木霊する魔王城、謁見の間。 最愛の恋人の名を叫ぶ声音は余りに悲痛で、慟哭のようだった。 その絶叫を上げた本人であるハジメは、使徒数人掛りで押さえ込まれ、今は額を床に擦りつける状態となっている。創世神エヒトの寄り代となって去っていったユエを求めて伸ばしていた片腕も、使徒によって関節を極められて背中に押し付けられていた。 シア達も〝神言〟の影響で身動きが取れずにいる

 

頼みのアーティファクト類も、今はもうない

 

だからこそ、エヒトも、ハジメ達に止めを刺すことより、ユエの抵抗により生じた問題の解決を優先したのだろう。 ユエを求める絶叫を上げたハジメに対して、向けられたエヒトの歪んだ笑みは、〝ハジメの苦しむ姿を存分に見た〟という愉悦と快楽に染まった満足げなものだった。それも、後事を眷属であるアルヴヘイトに任せた理由なのだろう。 十人程の使徒と、三十体程の魔物を残し、幾分閑散とした雰囲気となった謁見の間に、コツコツと足音が響く

 

アルヴ「ククッ。無様なものだな、イレギュラー。最後に些か問題はあったが、エヒト様はあの器に大変満足されたようだ。それもこれも、お前が〝あれ〟を見つけ出し、力を与えて連れて来てくれたおかげだ。礼を言うぞ?」

 

たっぷりの愉悦と嘲笑を含んだ声音で、ヘドロのようにドス黒い悪意の言葉を吐き出すアルヴヘイト。 対するハジメは、反論するどころか顔を伏せたままピクリとも動かない。その身からは、先程使徒達でさえ戦慄させた殺意と憎悪、そして止まることのない力の奔流は微塵も感じられない。その怪我の度合いや出血量から、一見すると既に息絶えてしまっているようにも見えた。 アルヴヘイトもそう思ったのか、首を傾げて、ハジメを拘束している使徒の一人に視線を向けた。使徒は、静かに首を振り、険しい眼差しをハジメの後頭部に向ける。どうやら、まだ、しっかりと生きているらしい

 

アルヴ「ふむ、最初の威勢はどこにいった? と言いたいところだが、さしものお前も限界というわけか。もっとも、腹に穴を空けられ、あれだけ我が主の魔法を受け、更に何度も限界を超えるような力の行使を体に強いたのだ。まだ息があるだけでも驚異的ではあるな。それとも、最愛の恋人を奪われたことが止めとなったか? うん?」

 

シア「……いい加減にしやがれですっ。この三下ァ! 」

 

香織「この悪魔!!」

 

ティオ「こやつらは…こやつらだけは!!」

 

雫「許せない!!許さない!!」

 

嬲るようなアルヴヘイトの言葉に、しかし、ハジメは反応せず、その代わりと言わんばかりにシア達から怒声が上がった

 

アルヴ「無駄だ…エヒト様と比べ格下とはいえ…私もまた神であると忘れたか?。アルヴヘイトの名において命ずる――〝何もするな〟」

 

シア/ティオ/香織/雫「「「 「――ッ」」」」

 

アルヴ「ふむ、どうかね? イレギュラー以外の愚者共も、少しは絶望というものを味わってくれたかね?」

 

どうやら一思いに殺さなかったのは、シア達の心を折るためだったらしい。 アルヴヘイトは、エヒトの器となるべきユエに対して、エヒトが肉体を奪いやすいように心を開かせるか、次善策として動揺させるという役目を負っていた。それが不完全であったために、エヒトは再調整の手間をかけざるを得なくなった。それ故、敬愛する己の主から与えられた命めいを完遂できなかったばかりか、その手を煩わせてしまったことに精神を波打たせていたのだ。 つまり、シア達に対する反抗の許容と、その後の鎮圧は、彼女達に絶望を叩きつけて愉悦に浸ろうという、八つ当たりじみた発想から来ているのである

 

アルヴヘイトは、己に楯突く不遜な輩共を更なる絶望へ叩き落とし、失意の内に果てさせるべく、嘲りをたっぷりと含んだ表情で口を開いた

 

アルヴ「だが、神に不遜を働いた罰としては、少々、軽すぎるというものだろう。故に、とても素敵なことを教えてやろうではないか……エヒト様も仰られていたように、この世界は、もう間もなく終わる。【神域】より使徒の軍勢を召喚して、この世界の生き物を皆殺しにするのだ。最初の標的はハイリヒ王国。【神山】は【神域】へと通じる【神門】を作り易いのでな」

 

香織「!!酷い…」

 

アルヴ「酷いかね? むしろ栄誉だろう? 信じて疑わない神が遣わした使徒達に、終わりをもたらして貰えるのだ。揃って首を差し出すべきではないのかね? くっくっくっ」

 

悲痛さと怒りを滲ませた声音でアルヴヘイトを罵る香織。それを心地よさそうに受け止めるアルヴヘイトは、その視線を異世界からの来訪者達へと巡らせた

 

アルヴ「お前達の故郷は、エヒト様の新たな遊技場となる。光栄に思うがいい。エヒト様の駒として召喚され、その故郷も捧げることが出来るのだ。この場で果てるとしても、誉ほまれと共に逝けることだろう?」

 

雫「ふざけっ、ないでっ!」

 

魔法はないものの、遥かに危険な兵器の類も、国も、宗教も、人口も多い地球でエヒトが暗躍すれば、一体どれほどの犠牲が出るのか…… 想像もしたくない

そうなれば、家族も友も故郷も…何もかもが壊されていく

 

アルヴ「イレギュラー。いつまでそうしている? エヒト様のご遊戯を色々と邪魔しただけでなく、私に恥までかかせた罪、その程度の絶望で贖えると思っているのかね? そんなわけがなかろう? さぁ、顔を上げるのだ。そして、お前の仲間達の頭が弾け飛ぶ光景を目に焼き付けろ。飛び散った脳髄と血潮に濡れて、泣き叫べ! さぁ!」

 

アルヴはそう言うと手から巨大な火球弾を出現させそれをシア達に向ける

 

愉悦に浸るアルヴ 悔しそうに睨みつけるシア達

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…静かだった。 ユエを奪われたことがショックだったのか、それで心が折れてしまったのか……

 

顔すら上げないハジメに痺れを切らしたアルヴヘイトが、使徒に目配せをした。 使徒は、何故か、ハジメを拘束したときから全く崩さない険しさを感じさせる眼差しでハジメの後頭部を一瞥する。そして、驚いたことに、僅かに躊躇うような素振りを見せた後、意を決するといった雰囲気で慎重に髪を掴み……その顔を強制的に上げさせた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、アルヴヘイトは自分でも自覚できないままに一歩、後退った。何故か、突き出した自分の手がカタカタと小刻みに震えているのだ。 アルヴヘイトの背後に控えていた魔物も、頭を垂れるようにしてジリジリと後退っていく。見る者が見れば、本来は赤黒く凶悪な眼光を放っている魔物の瞳が、小波のように揺れていることに気がついただろう

 

――怯え。 魔物、それも神代魔法による強化を受けた怪物級の魔物には全く似つかわしくない、その感情。彼等の瞳に奔る波は、明らかに、それだった。アルヴヘイトの震えもまた、同じ

 

その原因は一つ。 深淵だ。 目の前に広がる深淵が、根源的で本能的な恐怖を呼び起こしているのだ。 闇よりなお暗く、奈落よりもなお深い。神の身でありながら、そのまま呑み込まれ〝無〟となって消えてしまうのではと錯覚してしまいそうなほどの圧倒的な虚無をたたえる

 

――瞳  ハジメの隻眼

 

アルヴ「ッ――こ、ころ――」

 

一刻も早く始末してしまいたい、一瞬でも早く消し去ってしまいたい。 感情などあるはずがないのに、アルヴヘイトの呂律の回っていない不完全な命令を、餌のお預けを食らっていた忠犬の如く実行しようとしている彼女達の姿は、まるでそんな感情をあらわにしているかのようだった。 使徒達の手刀が、銀色の光を帯びる。分解能力を以て、眼前の満身創痍の男を完全に消滅させる! が、その行動は少し、否、致命的に遅かったようだ。 アルヴヘイト達は、ハジメに時間を与えすぎた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、ハジメを組み伏せていた三人の使徒の身体から鋭い枝が複数本生え串刺しになった

 

そして、その直後には、身体を埋め尽くすほどの鋭い枝が生え刺さりまくり僅か数秒で使徒は見る影も無くなっていた

 

誰もが絶句し、大きく目を見開いたまま動けずにいる中、轟ッと魔力が噴き上がった。 いつの間にかハジメの片眼は白眼を開眼していた

 

ハジメ「……」

 

アルヴ「こ、殺せ!!奴を殺せー!!」

 

アルヴは必死になり使徒達に命令する

その命令を受けた使徒や魔物達はハジメを殺しに掛かった

 

今までの静かさが嘘のように、ハジメから怖気を震うような鬼気が溢れ出す。全てを呑み込むが如く血のように赤い・・魔力がぬるりと広がっていった。それはさながら、地獄の釜の蓋が開いたかのよう。 そうして、遂に発せられたハジメの声音もまた、地獄の底から響いて来たと錯覚させられるもの。その意味も、ただひたすら煮詰めたような暗く重い……言うなれば、〝呪言〟だった

 

ハジメ「――認めるか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何 も か も 消 え ち ま え(ユエの存在しない世界を認めない)

 

その瞬間、世界を否定する概念が解き放たれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルヴは困惑していた

 

――なぜこうなった!?

 

最初は優勢だったはずの自身が追い込まれている事実に

 

謎の覚醒を遂げたハジメに僅かな時間で使徒も魔物も皆殺しにされ…抵抗しようとしたアルヴ自身も手足を切断された

 

そして今

 

アルヴ「あ、あっ、ま、待てっ。待ってくれ! の、望みを言えっ。私がどんな望みでも叶えてやる! なんならエヒト様のもとへ取り立ててやってもいい! 私が説得すれば、エヒト様も無下にはしないはずっ。世界だっ。世界だぞ! お前にも世界を好きに出来る権利が分け与えられるのだ! だからっ!」

 

これまでずっと見下していたイレギュラー事ハジメに命乞いをしていた

 

その姿に神としての威厳など微塵も感じられず、そこにいるのは…自分を無敵かなんかだと勘違いしていた神を名乗る敗者の姿があった

 

謎の覚醒を果たしたハジメはアルヴの手足を切断した後、木で生み出した仁王像の姿をした木の巨人……木人にアルヴを捕まえさせている

 

ハジメの片手には、ユエを失った損失から生まれたアーティファクト……それも神を殺し、全てを否定する概念を込めた鎖が握られていた

 

ハジメは木人の手に鎖を巻かせると、木人は少しずつアルヴを握る腕に力を込めていく

身体に鎖が当たるとこれまでに無いほどの痛みと死の気配を感じさせ

 

アルヴ「止せっ、止せと言っているだろう! 神の命令だぞ! 言うことを聞けぇっ。いや、待て、わかった! ならば、お前の、いや、貴方様の下僕になります! ですからっ。あの吸血鬼を取り返すお手伝いもしますからっ。止めっ、止めてくれぇ!」

 

恐怖と絶望に濡れた絶叫が響く

 

ハジメ「……お前…生きたいか?」

 

アルヴ「え、あ?」

 

ハジメ「生きたいかと聞いている」

 

ハジメの質問に呆けていたアルヴヘイトだったが、その意味を理解したのか瞳に僅かな希望が浮かぶ

 

アルヴ「あ、ああ、生きたいっ。頼む! なんでもするっ」

 

それを見届けたハジメは

 

ハジメ「そうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駄目だ

 

アルヴ「え? ひっ、止めっ、ぎぃいいいいい、ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

なんの躊躇もなく、木人に握りつぶさせた

同時に、聞くに耐えない断末魔の悲鳴が謁見の間に響き渡り ……数秒後、絶望と苦痛の果て、この世から一柱、神が消え去った

 

ハジメは、アルヴヘイトの末路を見届けると、城のベランダの方へ出る

 

外ではエヒトの流した演説と言う名の世界の滅亡に魔人族達がパニックを起こし慌てふためいている

 

香織「……酷い…」

 

雫「あんなもの流されたらそうなるわ……」

 

ティオ「じゃがこれで目的の一つだったアルヴは倒せた……じゃが…ユエが…」

 

シア「ま、まずはカズマさん達と合流しまってハジメさん!?」

 

外の光景を一望し今後の事を話しているシア達をよそにハジメは足に魔力を集中させベランダから魔王城の外へ飛び出し、空中に出た

 

そして手には、ユエの居ない世界の全てを否定する鎖が握られており、そこには切れかけていたはずの魔力が込まれていた。よく見るとハジメはその鎖を魔王城の下にある城下町に振り下ろそうとしていた

 

シア「なにを!?」

 

ティオ「!!ま、まさか…ハジメは…」

 

そこでシア達は最悪のシナリオが脳裏を巡った

 

今のハジメは…ユエを失ったハジメはユエの居ない世界を否定する存在なのだ

 

今のハジメにとって、少なくとも本人が意識するところでは、この世界のものは全て等しく価値がない。捕虜にする意味どころか、その存在そのものが無価値であり、むしろ、いるだけで目障りなのだ

だからこそ

 

ユエの居ない世界に意味はない(・・・・・・・・・・・・・・)

 

だからこそ全てを消し去る(・・・・・・・・・・・・)

 

その意思だけで動いており、今振り下ろそうとしている鎖には…効果範囲拡大のための魔力が込められている

 

これが意味することはただ一つ

 

目の前に映る建物も、命も、景色も、全て消す

 

ただそれだけだった

 

香織「やめて!!ハジメ君!(いつもの優しい貴方に戻って!)」

 

雫「目を覚まして!!ハジメ君!(お願い…誰か…誰か彼を止めて!!)」

 

シア「早まっちゃだめです!!(そっちに行っては駄目です!!)」

 

ティオ「止めぬかハジメ!!(クソ!ここからでは間に合わぬ!)」

 

仲間達が口々にハジメのやろうとしていることを止めようと大声で呼びかけるが

 

ハジメ「……」

 

ハジメにその声は届かなかった

 

ただ一言呟いた

 

ハジメ「何もかも消えちまえ

 

その言葉とともに全ての存在を否定する鎖を街に振り下ろした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメ「!」

 

瞬間、黒炎を纏った巨大な矢が鎖を弾いた

 

ハジメは地面に降りると、鎖を弾いた張本人へと目を向けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光輝「少し見ないうちに……変わったな…南雲」

 

ハジメ「……この期に及んで…なにしに来た……天之河」

 

 

もう75話を超えたのでここからは攻略者パーティーメンバーの人気投票のアンケートを取ります。正直出番の少ない恵里がかなり人気なのが驚きでした。そして光輝と雫の人気具合が想像以上でしたww正直作者の中ではもう光輝がハジメを抜いて主人公なのではとすら思いかけてますwww

  • 誰よりも夢に突き進むリーダー カズマ
  • 友達と優しさを持つ主人公 ハジメ
  • 闇と孤独を抱えた主人公 光輝
  • ハジメを愛し光輝を想う優しき吸血鬼 ユエ
  • ハジメを愛するバグ兎 シア
  • ハジメを愛する突撃娘 香織
  • 光輝をただ一途に愛する剣姫 雫
  • ウィルを愛するドM竜人族 ティオ
  • カズマを支える最強の女神(嫁) アクア
  • カズマを支える最強の杖(嫁) めぐみん
  • カズマを支える最強の盾(嫁) ダクネス
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