次に写った光景は、幼い頃の雫と俺自身だった
幼い雫「ねえ光輝君、私…どうすれば良いかな…?」
このときの事は良く覚えていた
幼い頃……俺とアイツ…勇輝は雫の実家で開かれていた剣道場で八重樫流を習っていた
雫はその道場の一人娘で、当時はあんなにも強い女が居る事に驚いた
俺とアイツが剣道を始めたきっかけは、今亡き祖父が弁護士として多くの人を救っていた話を幼い時から聞かされていた事だった
祖父の話を聞いた俺とアイツは、いつか誰かを助けるヒーローになりたい
その為に強くなりたいと思うようになり、その強さを求め、八重樫流道場に入門した
そんな俺とアイツの周りには、いつもいろんな奴ら(主に女)が集まってきた
そのうちのふたりが龍太郎と香織だった
そして今だからこそわかる……あの頃の俺はただひたすらに真っ直ぐで歪みもなく、人の善性のみを信じていた
ただのガキだったとな
ある日…病に伏していた祖父が死ぬ直前
その時、偶然アイツが居なく、俺だけしか居なかったときだった
祖父は死ぬ直前になって俺にあることを伝えた
それは自身がこれまで話していた弁護士としての仕事の話、実は幼い俺とアイツのことを考えて美化しており、弁護士としての綺麗な部分だけを強調していたと…その話を聞いたとき、俺の中で何かが壊れそうになった
それでもそれをこらえ、祖父の言葉を最後まで聞いた
そして
祖父「いいか光輝……この世は決して綺麗事ばかりではない……生きていれば否が応でもどうしても汚いものも見てしまう……だが…これだけは言っておく……正義は決して一つだけじゃない…正義はあっても正解というものはないんだよ……人の数だけ考えも夢も価値観も無限に存在する………決して自分の考えこそが正しいと思うなよ……光輝」
その言葉を最後に…祖父は息絶えた
祖父が亡くなったあと
一人で考える時間が増えた
祖父の言っていた言葉の意味を
結局幼い自分にはわからないままだった
だが…祖父の言葉を聞いて以来
俺の目には周りの人々…特に俺達に近づいてくる奴らの殆どが汚く醜く見えてきてしまっていた
幼い雫「……光輝君?」
幼い光輝「え?ああいや、何でもないよ」
確かこのときの俺は雫から自身が受けているいじめの相談を聞かされ、つい祖父の言葉を思い出していたんだった
幼い光輝「ええっとそうだな……とりあえず先生に頼るのがいいかな…出来れば信用のおける大人、例えばお父さんやお母さんとか」
幼い雫「え…で、でも私…」
幼い光輝「多分雫はお母さんとかに話して迷惑が掛かるかも知らないって思っているからこうして俺に相談すると思うんだ……確かにその気持ちはわかるけど、一人で解決しようとするのはどうかと思うんだ……どうかな?」
幼い雫「う、うん…」
もしかしたらこのとき、祖父の言葉を聞いてなかったら、このときの俺は人の善性を疑わないガキで、雫のいじめにも真面目に取り合わず、いじめられている事自体信用してなかったかもしれない
幼い光輝「(大人に任せよう……こういうのは子供の俺がしゃしゃり出るのは辞めたほうがいいと思う)」
そう俺は判断した
幼い光輝「は?」
それから数日、雫からいじめの相談を受けることがなかった為、俺は解決したと思っていた
だが
俺の目の前で雫がいじめられていた
複数人の女子に髪を掴まれて、罵声を浴びせられていた
雫は泣いていた
周りでは他のクラスメイト達も見ていたにも関わらず、誰も助けなかった
何だこれ?
これが、こんなにも醜くいモノが同じ人間なのか?
この日、俺は人の醜さと愚かしさをその目に焼き付けた
気が付けば俺は雫をいじめていた女子共を殴りとばしていた
俺は雫に聞いた
なぜこんなことになったのかを
雫は話した
その訳を
なんと雫は俺との話の後に勇輝にも話しており、その時アイツは「きっと悪気はなかった」「みんな、いい子達だよ?」「話せばわかる」などと言い、その言葉通り雫に対するいじめについて勇輝が女の子達に話し合いにいった
その結果いじめが余計酷くなり、雫を傷つけた
俺は内心自身の兄のやったことを馬鹿なのかと思った
だが、よくよく考えればあの兄は祖父の最後の言葉を聞かなかったことで今も人の善性を信じている
そう考え、俺は祖父の最後の言葉を放課後、道場で伝えることにした
なんで…
幼い勇輝「光輝!なぜ彼女たちをいじめた!!謝れ!」
幼い光輝「ち、違う勇輝!聞いてよ!あいつら雫をいじめていたんだ!勇輝が話し合いをしたあとも」
幼い勇輝「嘘をつくな!俺が話し合ったのにそんなことをする奴は居ない!」
なんで…
幼い勇輝「それより聞いたぞ彼女たちから!!お前が彼女たちを脅して雫をいじめさせていたって事を!なんてやつだ!まさかお前が黒幕だったんだな!」
なんで…
幼い光輝「それはあいつらが勇輝を騙すために嘘をついたんだ!本当にいじめていたのはあいつらの方だって!」
幼い勇輝「言い訳なんか聞きたくない!俺と一緒にヒーローになると誓いあった兄弟がまさかこんな悪者に成り下がるなんて失望したよ!!」
なんで…
弟の言葉を信じないの
《ハジメ視点》
ハジメ「はぁ…はぁ…ユエ、もう少しだ。やれるな?」
ユエ「ん…問題ない」
あれから色々あり、正気に戻すことに成功したユエとともにヒュドラに再び挑んだ
現在ヒュドラの頭は殆ど潰し、残すは後一つの頭だけ
アイツとの戦いで片目を失い、かなり魔力を消耗したがなんとか勝てそうだ
それにしても天之河め、未だに目覚めやしねえ
人様がこれだけボロボロになってまで戦っているときによくもまあすやすやと眠れるな
そう内心苛立たせながらも俺は最後の閃光手榴弾を投げつけ空きを作った
ユエ「『蒼天』!」
そこへユエのドドメが叩き落され、ヒュドラが地に付した
これでもう終わりだと安心し地面へ倒れた俺とユエ
そう油断していたのがまずかったんだろうな
ヒュドラは最後の力を振り絞り起き上がると近くで倒れている俺達…ではなく天之河に向かって首を伸ばす
ハジメ「やばい!」
俺はすぐにドンナーを持ち撃とうとしたが間に合わない
ハジメ「起きろ!天之河!!いつまでも眠ってんじゃねえ!!」
そして天之河をその口で喰らいつこうとした
幼い勇輝『謝れよ!!傷つけた彼女達に謝ってよ!』
黙れ
幼い勇輝『雫にも謝れ!!傷つけてごめんなさいって!!』
黙れ
幼い勇輝『そして二度と雫に近づくな!道場もやめろ!!』
黙れ
幼い勇輝『二度とヒーローを目指そうとするなよ!!お前なんかヒーロー失格の唯の
偽善者なんだ!』
光輝「黙れ!!」
その瞬間突如天之河の身体から巨大な紫色のオーラを纏った骸骨のような腕が飛びだしヒュドラの首を掴む
いや、あれは化身とかそういう物に近いんだろうな
こんなものを見るのは初めてだ
ハジメ「なんだ…あれは」
ユエ「!…ハジメ!……光輝の瞳が…」
そう言われ天之河の目を見るとその両目が写輪眼とは違う物に変わっていた
これまでのあいつの写輪眼は三つ巴の勾玉だったが今のあいつの瞳は六芒星になっていた
ハジメ「変わってやがる……それと心なしか魔力も上がってないか?」
ユエ「あの腕……膨大かつ高密度の魔力が集まって形成している……多分あの目の能力だと思う」
あのヒュドラに幻術を掛けられた後に何があったんだ…
そう思っていると天之河がヒュドラに向かって目をカッ!と開き一言呟く
光輝「『
その瞬間ヒュドラの身体から黒い炎が発生しヒュドラを燃やし尽くす
「グゥルアアアア!!!」
それに苦しむヒュドラ
残った首から氷を吐き冷却しようとしたが全く消えることはなかった
ハジメ「あ、あのヒュドラの氷でも消せないほど高火力なのかあの炎は」
ユエ「……消えない炎」
そして最後には全身を黒い炎で覆い続け、ヒュドラは動かなくなった
それを確認した天之河はあの腕を引っ込め瞳を閉じた
すると黒炎が消え去った
光輝「ぐっ!」
突然天之河が苦しみだし倒れ込んだ
よく見るとあの目から血が流れていた
ユエ「……多分あの腕を出すのはかなりの負担があると思う…それとあの瞳も……」
ハジメ「……ああ、恐らくあの瞳から睨んだ先に黒炎を放ち、瞳を閉じない限り消えないんだろうな……なんて身体への負担の激しい技を連発しやがる」
そうつぶやき、今度こそヒュドラの死を確信した俺はそのまま倒れ意識を失った