IS-irregular-   作:背筋悪太郎

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お待たせしました、第5話です。
前回投稿したのがはや一月前、時の流れは残酷ですね・・・


第5話 豪華二本立て

第5話A 修行の日々

 

 俗に言う無人機襲撃事件の翌日。

「・・・さて、と」

 妖夏、鈴の二人は、屋上にいた(箒は、早速弁償のために工事現場で働いている)。

「これって、どっちの勝ちなのかしら」

「引き分けってことでいいんじゃない? 決着がついてないのは、スッキリしないけど」

 鈴の疑問に、妖夏は答える。当人たちにとって、先日の試合は、不完全燃焼であった。当然だろう、全力で楽しんでいた勝負に水を差され、最終的に中止にされてしまったのだから。

「と言うことは、両方話すってことでいいのね? 箒はいないけど」

「うん、そうだね。箒には、後で私から話すことにする」

「そうね。ちょっと蚊帳の外に置いてる感じはするけど、いつまでも待ってらんないから」

「それで、どっちから話す?」

 それは、互いの過去。どちらも、気になってしょうがないのである。

「そりゃあ、アンタ・・・と言いたいところだけど、後に取っとくわ。先にアタシから話すわね」

「確か、どうやってあんな力を手に入れたのか、どうやってわずかな時間で代表候補生になったのか、だったね」

「そうそう。じゃ、回想スタート」

「そんなシステムあったの・・・?」

「気にしたら負けよ」

 というわけで、鈴の回想スタートである。

 

***

 

 アタシが中国に帰ってから程なくして、とんでもないニュースが舞い込んできたわ。そう、アンタの訃報よ。

 周りの人曰く、「あんなに取り乱すとは、なかなかないことだ。そっとしておこう」って位の状況だったらしいわね。

 で、その日からアタシはもう荒みに荒んで、いろんなところに殴り込んで、たいして力もない癖に喧嘩を売りまくってたのよ。なぜか勝ち続きだったけど。

 でも、ある日、初敗北をしたのよ。

 確か、寺院の前だったかしら。そこで、今どき珍しい華人服・・・いや、華人服というより華人服にチャイナドレスを足して2で割ったような服ね、アレは。兎も角、そんな女がいたのよ。座ったまま眠りこけてた。で、喧嘩を売ってみたら、一瞬で負けちゃったのよ。恐ろしいことに、紅美鈴・・・アタシの師匠なんだけど、全くその場から動いてなかったのよ。

 で、アタシにこう言ったわけ。

「織斑一夏の訃報を信じているんですか? そして、強くなりたいですか?」

 ってね。変な質問でしょ? 全く内容が繋がってない。でも、その時のアタシは、「信じてないし強くなりたい」って返したの。その結果、山籠りの修行が始まったってわけ。

 ホント、あの時のアタシはどうかしてたのかもしれない。けど、後悔もしてないわ。

 修行の内容? そうね、最初に何をやったかから話そっか。

 最初は、目隠しをして師匠の攻撃を避けることから始めたのよ。意味わかんなくない? 本人は、「気です! 気を探れば、簡単に避けられます!」って言ってたけど、到底そうは思わなかったわ。だってそうでしょ? アタシは、喧嘩はできても武道はできなかったんだから。

 ・・・何? 過去形になってる? そりゃそうでしょ。今はできるんだから。

 話を戻すわね。数週間もすれば、自然と避けられるようになってきたわ。次にやったのは、目隠しをして避ける師匠に攻撃を当てることよ。これが本当に難しくてね、デフォルトで気を感知してくるのよ。殺気とかそういうのを、ちゃんと感知するから厄介なのね。これに3ヶ月ほどかかったのよね。

 当てられるようになったら次は、互いに目隠しをして試合をして、アタシが師匠に勝つ。この頃には、アタシも気を練ることができるようになってきたわね。師匠ほどじゃないけど。

 で、免許皆伝したのが、丁度8ヶ月後。そしたら、師匠は、「代表候補生になりなさい。そうすれば、織斑一夏について何かわかるかもしれませんよ」って言ってきたのよ。代表候補生の座、もっと言えば国家代表の座にはアタシも興味があったから、二つ返事で了解したわ。

 で、養成所に入ったら、異例の速さで代表候補生入り。ホント、お偉方も驚いてたわ。なんだったかしら、あのめっちゃ口を開けて目もガン開きのあの顔。ホント、思い出しただけで笑っちゃうわ。

 そんなわけで、アタシは専用機をもらって、今こうしてここにいるってわけ。

 

***

 

「どう、わかった?」

「うーん・・・」

 妖夏は、少し疑問に思う部分があるようだ。

「どうしたのよ」

「いや、どうしてこの時期に転入して来たのかな・・・って」

「あー、あれね。あれは単純に、書類のミスよ。というか、アタシの実力を妬んでる奴らが、これ以上強くなるのを恐れたんでしょうね。郵便局に圧力をかけて、書類が届かないようにしてたのよ。それが発覚して、そいつらはお縄についたけど。で、書類を再発行してもらって、こんなことになったってわけ」

「なるほど」

「納得した?」

「納得した」

「じゃ、次はアンタの番ね」

「わかった」

 と言うわけで次は、妖夏の回想である。しばしお付き合いいただこう。

 

***

 

 今から話すことは、まるで漫画のように思えるかもしれない。だけど、実際に私が経験したことなんだ。

 そう、あれは私がまだ俺だった頃。

 まず、私はあの時──誘拐された時、死んだ。

 ・・・いや、マジなんだって。ホントに死んだの。え? でも今ここにいるだろって? あのねえ、だったらどうして性転換してると思う?

 で、死んだ後、白玉楼っていう冥界の片隅に流ついてきたの。そこで、お世話になることにして、さらに修行もつけてもらうことにしたってわけ。だから、私が使ってる技は師匠の魂魄妖夢さんのものだね。

 ・・・うん、どうして性転換してるのか、そしてなんでこんなに女性的な所作が板についてるのか、疑問に思ってるのはわかってる。それを今から言うね。

 白玉楼の主人の西行寺幽々子様は、紫さんに頼んで、どこかの研究所から千冬姉のクローンをくすねてきたの。で、私の魂がその体に定着して、今のこの体になって。そして、幻想郷の淑女の皆さんに、「女性の体になったんだから女性になりなさい」と言われて、男としての自分を塗り潰されましたとさ、ちゃんちゃん。

 修行の内容についても話そっか。

 修行は、主に剣を扱うもので、二刀流を習得することが目標だったね。ホント、重いったらありゃしない。日本刀ってあれ、金属の塊だからね!? それを片手でぶん回すなんて、最初はできなかった。けど、トレーニングを続けることで、できるようになったの。

 さらに、素早く動くにはどうすればいいか、気を感知するにはどうすればいいか、ってのも教わって、今の私は幻想郷のハイブリット。トドメに、私の専用機の「スカーレット・ファントム」は幻想郷にやってきた束さんが、紅魔館の資金援助を受けて、河童の皆さんと協力して作り上げた代物なんだ。

 ・・・頭がパンクしそう? そりゃそうだよ。

 

***

 

「・・・アンタもアンタで、なかなか濃い人生を送ってたのね」

「うん。でも、気になることが一つあるんだ」

「何?」

「それは、私と鈴のいう『紅美鈴』が同一なのかってこと。確かに、一定の時期紅魔館からいなくなったことはあったけど、その間こっちにいたのなら辻褄は合う。何か聞いてない? 美鈴さんのこと」

 鈴は、左手を地面に水平にし、肘を置き、顎に右手を添えた。

「そーね・・・。確か、『いつもはお嬢様──レミリアお嬢様って言うんですけど、その人にお仕えしてるんですよ。門番として』って言ってたような・・・」

 妖夏は、それを聞いて確信した。

「うん、それ完全に私の知ってる美鈴さんだ」

「え、マジ!? でもまあ、確かに人間じゃないでしょアンタ、って思うことはあったし、そうね、そう考えると納得いくわ。訃報を信じるか、なんて生きてることを知ってるんだから当然よね」

 鈴も、納得した。

 かくして、西行寺妖夏と凰鈴音は、互いの過去を共有した。

 少々短いが、今回はここで筆を置かせてもらうことにしよう。

 それでは、後半もどうぞ。

 

第5話B 水鏡の授業

 

 水鏡京秋は、社会科教師である。

 今回は、彼の授業風景を紹介しよう。

 水鏡が持つ学級は、3年生の1、3組。2年生の2、4組。そして、1年生の1、3組である。それらのクラスで、歴史と公民を教えているのだ。1年生では歴史総合、つまり日本史と世界史をごっちゃにした、本当に初心者向けの、「これさえ覚えておけば基本は大丈夫」な教科である。

 今回紹介するのは、2年2組での、日本史の授業である。

「起立、礼」

 生徒たちが、一斉に水鏡に向けて礼をする。授業の開始の合図である。

「着席」

 その合図とともに、生徒は座る。

「えーと、前回はどこまでやったかの」

「飛鳥文化までです」

「よっしゃ、わかった。じゃ、次のページからじゃの」

 そう言って、水鏡は板書を始める。

『大化の改新が行われたのはなぜか理解する』

 これが、本時の目標である。

「日本の中学に通っとった人らは、まあ誰がやったのかはわかってるかと思う。じゃけど、中学じゃ教えてくれんところを、今回はやってこう」

 そう言うと、ランダムに生徒を指名した。

「じゃ、サファイア。大化の改新は何時代に行われたでしょう?」

 サファイア。フルネームは、フォルテ・サファイア。彼女は、ギリシャの代表候補生である。

 水鏡は、基本的に相手のことを苗字で呼び捨てにする。同じ苗字の人間がいる場合、兄弟なら「〇〇兄」「〇〇妹」のように区別するが、兄弟でない、例えば日本でかなりポピュラーな苗字である「田中」とか「佐藤」と言う人間が他人同士であった場合には、フルネームで呼ぶことにしているのだ。

「え゛!? えーっと・・・。わかんないっス」

「うーむ、前回飛鳥文化をやったじゃろう? まだ、時代は奈良じゃない」

「・・・飛鳥時代、っスか?」

「イグザクトリ、その通り」

 水鏡は、こうやって誘導尋問・・・と言うと語弊があるだろうが、このように答えを導き出させる手法を取る。こうすることで、与えられた情報から自分で答えを導き出すという経験を積ませようという考えなのだ。

「大化の改新は、飛鳥時代に行われた、政変なんじゃの。これがきっかけで、蘇我氏は滅びた。で、それを実行したのが・・・じゃ、清畠。答えてみんさい」

「・・・中大兄皇子と中臣鎌足」

「そう、それが中学で教えられる内容。で、高校ではさらに、蘇我倉山田石川麻呂というのもメンバーに加わることになる」

 黒板に、『実行メンバー』と書き、その下に3名の名を書く。そこから、矢印を引っ張る。

「で、ここでシバかれたのが、蘇我蝦夷、入鹿の一族というわけじゃ」

 すると、生徒の一人が挙手をした。

「どうした、栗尾根」

 その少女は、名を栗尾根(クリオネ)泰美(ヤスミ)という。

「先生、さっき蘇我氏は滅んだ、って言ってましたけど、よく考えたら蘇我倉山田石川麻呂も蘇我氏なのでは・・・?」

「そう思うのも無理はない。実際、わしもそう思った。で、実際、蘇我倉麻呂の子なのよ。蝦夷は伯父で、入鹿は従兄弟。どうやら、政治的に色々あったらしいんよ。まあ、詳しいことはわしは知らんけど」

「ふーむ、なるほど・・・」

 栗尾根は、納得した様子である。

「ちなみに、この出来事は大化の改新の中では、小説で言うところのプロローグみたいなもんじゃ。これを、乙巳の変というけん、覚えときんさい。テストに出るけんの」

 そう言って、黒板にも同様の文字を書き加える。

「で、この後に軽皇子が孝徳天皇として即位、改新の詔が出される。これが、大化の改新と呼ばれる出来事じゃ。大雑把に言えば、乙巳の変から始まった、大規模な改革。ちなみに、これは豆知識なんじゃが、どうも日本で初めて使用された元号はこの大化らしい」

「へぇー」

 多くの生徒が、「へぇー」を言った。その数、なんと120へぇー。この教室には、水鏡を除いて40人の生徒がいる。すなわち、平均して一人3へぇーをしたことになる。

「で、改新の内容は、だ」

 また、黒板に板書する。すでに、実行メンバーは消してある。

「一つ目。豪族の田荘・部曲の廃止。これを以て、公地公民が敷かれることになるわけじゃ。二つ目。地方行政組織・評が置かれる」

 黒板にも、評と書いた。読み方についても注意をする。

「これは、『ヒョウ』じゃなく『コオリ』と読むことに気を付けときんさい。これに限らず、歴史というのはようわからん読みが多いけえ、注意を忘れんさんなよ」

 そして、次の内容を書く。

「三つ目。中央集権化の推進。これは、要するに天皇に権力を集中させることで、豪族が好き勝手できんようにするための方策じゃ。主にこの三つが大化の改新の内容じゃけん、覚えとくように」

 すると、このタイミングでチャイムが鳴った。

「お、もうこんな時間か。早いもんじゃのう、じゃ号令」

 生徒の一人が、起立、礼の号令をかける。

 そして、全員が「ありがとうございました」と言い、授業が終わった。

 これが、水鏡の授業である。




いかがでしたか?
今回のネタは、「へぇー」くらいですかね。元ネタは、みなさんご存知(ですよね?)「トリビアの泉」です。
鈴の過去、当然私が知るはずはないので、九割九部私の創作となっております。
正直、過去変なのにセシリアより短いのは、どうにかするべきだと思います(書いたのは自分なのに)。
続いて、水鏡の授業風景について。
なぜ書いたのかと言いますと、学園ものなのに授業がないのっておかしいじゃないですか。確かに絵面は地味ですけど、文化祭ほど華やかじゃないですけど、だからって書かないのは変でしょう。だから書きました。
最後になりますが、今回の話を執筆するにあたって、山川出版社「詳説日本史」という教科書を参考にさせていただきました。
感想、評価をよろしくお願いします。

第4話「クラス対抗戦+異常発生」は、どうでしたか?

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