IS-irregular-   作:背筋悪太郎

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最後のプロローグです。
クロスオーバーが顕著です。


プロローグ4 幻想急接近

 一夏が白玉楼に住むようになって1年が経った。

 一夏は、新しく名乗るための名を、幽々子から受け取っていた。

 その名も、「西行寺妖夏」。

 幽々子から苗字を、そして師匠たる妖夢から一文字、それぞれもらったものである。

 まぁ、それは置いといて。ちなみに、以降は一夏のことを妖夏と表記する。

 

「いーっくん、遊びにきちゃった。てへぺろ☆」

「どうやってここに来たんですか束さん!?」

 束が、白玉楼に直接アクセスしてきた。

 

 第2回モンド・グロッソ当時、束は、いろいろな機械を小型化して持ち歩いていた。その一つ、周波数測定器で、幽々子の世界の、一瞬の歪みから発生した周波数を、自動で瞬時に測定し、それを解析、ブラックホール・ホワイトホールの理論(過去に束が提唱、しかし本人曰く中二病の黒歴史ノート)を応用し、1年かけて次元移動装置「パラレル移動する君」を完成させたのである。

 それを聞いた幽々子は、

「ふぅん、あなた、ものすごく頭いいのね。なら、ちょっと紹介したい人たちがいるのよ」

 と、束を連れていった。行き先は、妖怪の山である。

 

***

 

 フランス・オルコット家

 

「咲夜さん、今日の分は終わりましたよー」

「ご苦労様、チェルシー。じゃあ、明日の献立を、考えておきましょう」

「はい!」

 ナイフのように冷たい、けれど暖炉のような暖かさを持つ、咲夜と呼ばれたメイド長が、チェルシーと呼ばれた10代くらいのメイドの報告を受ける。

 チェルシーは、咲夜の指示を受けて、厨房へ向かった。

「さて、と」

 咲夜は、スカートの埃を払い、立ち上がる。

 そして、現在のこの家の長──セシリアの元へ向かうのであった。

 

***

 

 中国奥地

 

 一人の少女が、英雄故事を歌いながら、拳を、脚を勢いよく突き出す。

 その名は、鳳鈴音。

 弱冠15歳にして、中国国家代表候補生となった、天才肌な努力家である。

 ちなみに、ISに関わるようになったのは、14歳の頃──一夏が死亡した後のことである。つまり、彼女は、1年足らずで代表候補となる実力を得た、というわけだ。普通に天才だろこいつ。

 それはさておき、彼女は我流ではない。

 ならば、誰に教わっているのか。

「よし、だいぶ気の流れを探れるようになりましたね、鈴」

「よしてよ、まだアンタの足元にも及びはしない──師匠・美鈴(マスター・メイリン)」

 紅魔館門番・紅美鈴であった。

 

***

 

 ドイツ軍

 

「ドイツの科学は〜?」

「世界一ィィィイイイイッッッ!!!!!」

 ドイツ軍にある意味似つかわしい叫び声が、今日も元気に響き渡る。

 このシュプレヒコールの問いかけの部分は、副官、クラリッサ・ハルフォーフである。

 そして、それに応えたのが、合法ロリたる我らが黒兎隊隊長、ラウラ・ボーデウィッヒである。

 原作ではそれなりの堅物(ただしポンコツ)として描かれている(らしい)ラウラだが、本作では、こんな風に、かーなーりノリの良い人物となっている。

 その原因は、クラリッサにある。

 

 配属当時、ラウラは、ある理由から塞ぎ込んでいた。

 面倒見のよいクラリッサは、何かラウラに対してできることはないか、自分なりに考えたのである。

 そこで、あるものに思い当たる。

 彼女は、日本のサブカルチャーが大好きである。特に、漫画に関しては、自分で同人二次創作を描くくらいには情熱がある。そして、彼女はオタクだ。

 諸君らは、オタクの習性を知っているだろうか?

 例えば、同じ本を「観賞用、保存用、布教用」に3冊購入する、「推しからしか摂取できない栄養素がある」と言い出す(そしてそれが、脳内物質を駆け巡らせる)、とにかく好きなものに己の全てを捧げる、などである(無論、これらは全て作者の偏見である)。

 そして、クラリッサは、当時心を塞いでいたラウラに、あることを行う。

 そう、布教である。

 何を思ったのかクラリッサは、当時のラウラに、「ジョジョの奇妙な冒険」を1〜6部まで、「シャーマンキング(集英社版)」全巻、「ウルトラマン超闘士激伝」を新章も併せて全巻、貸し与えたのである。ちなみに、全て日本語で書かれている。

 ラウラは、言われるがままに、漫画を読む。自由時間が許す限り、ひたすら読んだ。

 初めは、本当に「読んでと言われたから読む」程度であった。

 だが、ある時期から、具体的には、ジョジョ3部を読み終えたあたりから、彼女は変わった。

 自分の意思で、ページを捲るようになったのだ。

 辞書を片手に、わからない単語を調べながら読む。

 紙の上の登場人物に、時には憤り、時には共感し、時には感動する。

 いつしかラウラは、心を開き、そして、憧れを持つようになったのだ。

 テレビの向こうの、現実に存在する《世界最強》に対する憧れを上回り、漫画に登場する漢たちに、憧れるようになったのだ!

 

***

 

 フランス・デュノア社

 

──嗚呼、鬱陶しい鬱陶しい。何だって私がこんなところに居なければならないのよ。

 女は、憤っていた。

 名は、水橋パルスィ。通称橋姫。

 ある理由から幻想郷を出て、デュノア社に潜入しているのだが、

──鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい。いつもは妬みが強くなるのに、むしろ鬱陶しい。

 ・・・と、常にこの調子で、いつか必ず、脳の血管が切れ、胃に穴が開くレベルのストレスを感じている。

 一応言っておくと、彼女自身は、かなりおとなしい性格をしている。が、どうにも妬みやすいのが、玉に瑕であった。そこら辺は、さとりカウンセリング&こいしセラピーによって改善されたが。

 そんな、妬み体質が改善された彼女がなぜ、こんなにもストレスを溜め込んでいるのか。

 その理由は、大きく分けて2つ。

 1つ目は、デュノア夫人の横暴である。

 デュノア夫人、本名デルフィーヌ・デュノア。創設者にして現社長、アンドレ・デュノアの夫人である。

 このデルフィーヌという女は、とにかくプライドが高く、所謂ニューリーダー病に罹っている。

 そして、浪費癖があり、常に自分がトップでないと気が済まない。アンドレのことは、自分に箔をつける道具としか見ていおらず、所謂政略結婚で縁組した。愛情など欠片も無い。

 パルスィの通称、橋姫。その名で有名なのは、「宇治の橋姫」の伝承である。そして、自身にもその遺伝子が存在することを知っていた。だからこそ、怒りを隠せないのだ。

 そして、2つ目。アンドレ・デュノアの娘、シャルロット・デュノアである。娘と言っても、デルフィーヌのものではない。世間的には愛人と称され、アンドレが生涯を捧げようと決意した女性、ジャンヌとの娘である。

 パルスィは、彼女に同情、そして行き場のない怒りを抱えていた。いや、むしろ周りの環境、というべきか。

 彼女──シャルロットは、自己主張をしない。

 ジャンヌは、シャル(以降、シャルロットのことはこう表記する)を産んで少し経った後、亡くなった。

 その後、デルフィーヌに引き取られた。

 それからが、地獄だった。

 徹底した管理教育。自分の意見などお構いなしである。その上、外界の情報も遮断されているため、シャルは、自分が異常であることに気づけなかった。

人並みの感情、恋愛、そしてそれ以上の妬みを経験したパルスィにとって、これは受け入れられるわけがない。自分のように、愛した人を殺すような人には当然、なって欲しくない。だが、だからと言って無感情に育って欲しいわけでもない。一応、幻想郷には、「こころ」という無表情の少女がいるが、あくまで表情筋が動かないだけで、感情は存在する。しかし、シャルは、それすらも希薄なのだ。

 パルスィは、シャルのことを、勝手に娘のように思っている。アンドレにも、そのことで相談したことは何度もある。しかし、その度にデルフィーヌに邪魔をされ、シャルを外に連れ出す事が出来ず仕舞いなのである。

 ちなみに、アンドレは、シャルに近づくことすら不可能な状態にある。

 そう、パルスィにとって、もどかしい事この上ない状況だったのだ。

 

 しかし、現在のデュノア社は───

 

 アンドレが社長として返り咲き、パルスィもそこそこいいポジションに収まっている。

 そして。

「お義母さん!」

 パルスィは、現在、「パルスィ・M・デュノア」として、アンドレの夫人となっていた。つまり、シャルの義理の母でもある。

「・・・・・・どうしてこうなったのよ」

 こっちが聞きたい。

 

***

 

 日本・更識家

 

「えー、じゃあ、取材はダメですかどうしても!?」

「ダメなものはダメです。お引き取りください」

「ソリャナイレショ⁉︎ 私はただ、現ロシア代表・更識家17代目当主たる更識楯無さんと、その妹たる更識簪さんに同時取材と、できれば対談をして欲しいだけなのに!」

 オンドゥル語で叫び、抗議するのは、少し浮世離れした、その癖俗世の動きを誰よりも早く察知することのできる、しがない新聞記者だ。名を、射命丸文という。

 現在、彼女は、更識家門前にて、楯無の従者である布仏虚と、押し問答を繰り広げていた。

「無理です。帰ってください、射命丸さん」

「そこをなんとか! 姉妹の片割れだけでも!」

「お嬢様──楯無様は現在ロシアにおられます。簪さまも、現在は倉持技研に出向いておられます故、お引き取りください」

 すると、その答えを聞いた文は、ポンと手を打つ。

「なんだ、だったら初めからそう言ってくれればいいのに」

「ええ、私も、なぜこれをもっと早く言わなかったのかと後悔しています」

 虚が苦笑いをしたその時。

 

アーホー  アーホー   アーホー

 

 鴉の鳴き声が聞こえた。

 懐中時計を見ると、すでに夕方5時を回って、6時になろうとしていた。

「えー、と。いつの間にか、かなり話し込んでいたみたいですね。じゃあまた後日!」

 文がそう言って立ち去ろうとすると、

「お待ちください」

 虚が引き留めた。

「あやや? どうしたんです? まさか、私に一目惚れ、とかですか?」

「違います。少なくとも現在は、私が誰かとお付き合いするなど考えておりません」

 しかし、2年後、まさか虚に彼氏が誕生するとは、この時夢にも思っていなかった。

 話を戻して。

「あなた、フリーランスですよね? しかも、宿も取ってない」

「あ、あはは・・・」

 文は、力無く笑う。図星を突かれたのだ。

 そもそも、文は、この取材を本日中に終わらせる計算だった。ところが、土地勘がないため更識家にたどり着いたのが午後4時。そして、虚と押し問答をして現在夕方。日帰り前提な計画のため、宿など取っていないのだ。

「と、いうわけで。泊まっていきませんか?」

「ゑ?」

「安心してください、事後承諾で大丈夫ですよ、お嬢様は」

「それはそれで不安ですね・・・」

「問題ありません。ああ見えて、ポンコツですから。・・・オフレコでお願いしますね?」

 そう言って、虚は、静かに圧をかける。

「りょ、了解です・・・」

 流石の、幻想郷一の(かなり)怖いもの知らず(実際には恐れるもの多数)な新聞記者・射命丸文でも、この圧には耐えられなかったようだ。

 後に、文は、当時を振り返ってこう語る。

「あれは、圧というより、所謂『殺意』と『覇気』を足して2で割って、そこに『慈愛』をかけたような、得体の知れない何かでしたね。人間って、怖いんですね・・・」

 と。

 

 

                                    続く




いかがでしたか?
デュノア夫妻に関しては、原作での名前を知らなかったので、オリジナルで設定させていただきました。
そして、前書きにも書いた通り、プロローグはこれで最後です。
次回より、本編が始まります。
ストックは、昨年書いたものなので、文章や論理がおかしい点も多々ありますが、大目に見てください。
感想を、お願いします。
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