IS-irregular-   作:背筋悪太郎

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第1話です。
今回、主張が矛盾している部分がいくつかあるかと思われますが、温かい目で見てやってください。


1学期編
第1話 クラス代表は誰の手に


IS学園・1年1組 

 

「みなさん、初めまして。私が、このクラスの副担任を務める、山田真耶です。よろしくお願いします」

 真耶が自己紹介するが、 

「よろしくお願いします」

 反応は一つだけだった。

 なぜこうなったかというと、それは、言うのも何だが、彼女に問題があるからだ。

 山田真耶は、所謂童顔というやつである。その癖に巨乳なので、そのギャップに呆気に取られ、反応できなかったのだ。

「あー、そして、副担その2の水鏡京秋です。この学園の教師で唯一の男ですが、色眼鏡をk『『キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!』』喧しいッ!」

 続いて自己紹介した水鏡だったが、「イケメンだわ! 嫌いじゃないわ!」だの「鋭い目! でもそれがいい!」だのなんだの喧しくなった。なので、黒板を殴りつつ怒鳴って黙らせた。

「入学初日でこの有様か、えぇ? わしがわれらぐらいの時は、そがいなこたぁ無かったでぇ。それともアレ? われら、この学校に入った程度で抜けきっとんじゃあ無いんじゃの?」

 その問いかけには、誰も返さない。

 それを受け、さらに水鏡は捲し立てる。

「他のクラスは、こがいに情けないこたぁ無いで。われらだけじゃぞ、こがいに猿みたいなんは。こがいな有様で、げにISなんざ使えるんか、先が思いやられるわ。なんならわれら全員退学したって構わんぞ?」

 すると、一人の男が口を開いた。

 織斑黒駒である。

「水鏡先生、でしたっけ? なんかそういうデータとかあるんすか?」

「心構えの問題じゃ」

「そりゃまたなんでです? あなたの感想でしょ?」

「ええか? ISというなぁ、兵器なんじゃ。誰がなん言おうと、兵器じゃ。ミサイルだのビットだの剣だの、どれもこれも、一歩間違えりゃ人が死ぬる。そがいな危険なもんを、こがいな莫迦共に使わしてもええのかということじゃ。まぁ、それを自覚しとるんならええし、ISでものを決めるいうこともあるじゃろうがの」

「え、でm「煩いぞ。いい加減に座れ」げぇっ、関羽「誰が三国志の登場人物の一人にして劉備玄徳の義兄弟、死後に壮穆公に封じられた美髯公、清代に賜った称号が『忠義神武霊佑仁遊勇威顕護国保民誠綏靖賛宣徳関聖帝君』となった武将だ。そして学校では織斑先生だ」

「よくもまあ噛まずに一息で、しかも何も見ずに言えたなオイ」

 突如として、黒駒の頭が視界から消えた。遅れて到着した千冬が、黒駒の頭を出席簿で叩いたのだ。そして、家での呼び方をすると、訂正の意も込めて、再び出席簿を食らったのである。

 ちなみに、『』内の読み方は、『ちゅうぎしんぶれいゆうじんゆうゆういけんごこくほみんせいすいせいさんせんとくかんせいていくん』である。ついでに言うと、「壮穆公」は「そうぼくこう」、「美髯公」は「びぜんこう」と読む。ぶっちゃけ、作者は紙を見ながらでないと言えない。というか、大多数の人が言えないと思う。

「今、何がありました?」

 千冬の問いに、

「こいつらが莫迦みたいにおらんどった。じゃけぇ怒鳴った。で、説教をしとったら、そこな弟? が訳のわからんことを言い出した。以上」

 と、淀みなく水鏡が答えた。

「ふむ。まぁ、入学初日だし、ここは、大目に見ておいた方がいいんじゃないでしょうか?」

「それもそうじゃのぉ。わしも、ちいと言いすぎた部分はあったじゃろうけぇな」

 さて、と、千冬が空気を変える。

「少し遅れたが、私が貴様らの担任、織斑千冬だ。よろしくたn「キャアアア! 千冬様よ!」「ホンモノ! ホンモノ!」静かにしろ!「怒ったのも素敵!」「むしろ甘やかされたい!」「でも時々つけあがらないように躾けて!」静かにしろというのがわからんか!」

 千冬の自己紹介でも、案の定黄色い声が飛び交った。それは、二度目の怒鳴りで治ったが。

「ハァ、水鏡先生の言ったことが何となくわかりましたよ」

「でしょう?」

「なぜ、私のクラスには、こういう莫迦どもが集まってくるんだ・・・」

「わからんですな。ワシは、去年まではおらんかったけんようわからんですが、もしかすると陰謀かもしれませんな」

「事実だとしたら、ものすごく嫌ですね・・・」

「違いない。さて、と」

 水鏡は、生徒たちに向き直る。

「ま、とりあえず、ワシらは、お前らを、この1年の間に、ISパイロットとして恥ずかしくないような人材となるよう教育する」

「そして、ISとは危険なものだ。扱い方、禁止事項、その他諸々を効率よく叩き込むためにも、我ら教員の指示にはイエスかはいで答えるように。わかったな!」

「「「「「はい!」」」」」

 ここで、一拍置いて真耶が、口を開いた。

「それでは、みなさん、自己紹介をしてください」

 この学校では、出席番号を、アイウエオ順で割り振っている。まぁ、大体の高校がそうではないだろうか。作者の場合は、男女別のアイウエオ順であったが、似たようなものだ。

 で、自己紹介はつつがなく進み、黒駒の番である。

「えー、織斑黒駒です。偶然ISを動かしましたが、ま、俺、凡人とは違うんで。そこんとこ弁えて」

 これに対する反応は、前者2つ(水鏡と千冬)とは全く異なるものだった。

「うわー、何あれ」

「俺様系とか、天道総司だけで十分」

「あー、厨二病拗らせちゃってるよ」

 というものである。

 彼の印象は、「厨二病のえげつなく痛い奴」で確定した。だが、本人は気づいていない。

 そして、少し進んで。

「私は、西行寺妖夏です。えと、剣と、拳と、あと家事が得意です。よろしくお願いします」 

 妖夏──その正体は一夏だが、それを知る者は、千冬だけである。

 その次の生徒は、篠ノ之箒であった。

 

***

 

休憩時間

 

「西行寺、と言ったか。少し、来てくれないか?」

「ほ・・・篠ノ之さん。うん、わかった」

 妖夏と箒は、屋上に上がった。

「さて、と」

 箒は、妖夏の目を、穴が開くくらいじっと見つめながら、口を開く。

「西行寺。お前、一夏だろ」

「!!!」

 妖夏が面食らったのも無理はない。箒とは、6年ぶりの再会である。しかも、ニュースでも、一夏の死は流れているはずだ。性別だって変わっている。

「えーと、なぜそう思ったか聞いていい?」

 その答えは、ある意味では尤もな物だった。

「乙女のカン、というやつだ。それに、千冬さんに似ている人物はそうそういるまい・・・すまん、これは嘘だ」

 前言撤回、尤もではなかった。

「え、じゃあ、どうして・・・」

「姉さんだ。昨日、『箒ちゃん、西行寺妖夏って女の子はいっくんだよ』と、姉さんから矢文でメッセージが送られてきてな」

「何やってんの束さん・・・」

 そして、妖夏は向き直る。

「うん、そうだよ。私─いや、俺が一夏だ。久しぶりだな、箒」

「・・・!! ああ! 久しぶりだな、一夏!」

 それから数分、二人は、6年間のことを語り合った。妖夏は、幻想郷のことを伏せていたが。

 その中で一番衝撃だったのは、箒が、中学の合唱コンクールで歌った課題曲が「勝利者達の挽歌」だったことである。

 ついでに、箒は、剣道で全国1位を獲ったが、まあ、些細なことだ(は?)。

「そうだ、箒。一つ、お願いがあるんだ」

「なんだ? 私にできることなら、なんでも言ってくれ」

「私のことは、妖夏って呼んで。千冬姉は知ってるからいいけど、あの男に知られちゃまずいから」

「あの男──、ああ、織斑黒駒か」

「うん。あいつは、私のことを死んだと思い込んでる。事実だけどね。だから、私がその鼻を明かしたい。完膚なきまで。その時に、明かすことにしてるから」

「そう、か」

 なんだか、二人で黄昏ているその時。

 

キ────ンコ────ンカ──────ンコ───────ン

 

「「げ」」

 

 チャイムが鳴った。

 妖夏と箒は、アイコンタクトで、意思を確認する。

「「急げ!!」」

 その後、二人は見事に遅刻して、出席簿アタックを食らったのは言うまでも無い。

 

***

 

「そういえば、クラス代表を決めてなかったな」

 4時限目、千冬はそう呟いた。

「織斑先生、クラス代表とはなんぞや?」

 水鏡が、そう尋ねる。彼は、変なところで耳ざといのだ。

「足し蟹」

「ってか、クラス代表って何? 学級委員?」

「ウチじゃ自治委員ってあったけど」

「そういえば、あと4つぐらい委員があったような・・・」

 クラス内でも、その呟きによって、ざわめきが走る。

「あー、静かにしろ。クラス代表というのは、まぁ、あれだ。文字通り、クラスの代表を務める生徒だ。クラス別代表戦や、何か行事の際に先陣を切る者、と思ってくれればいい」

「にゃるぺそ」

 この、少しどころかだいぶ変な反応は、水鏡のものである。水鏡だけに、酔狂ってか(寒)。

「んじゃまあ、そういうことだ。自薦でも他薦でも構わんそうだ。誰かやりたい奴はおるか!?」

 水鏡は、声を張った。と言っても、他のクラスの迷惑にならない程度だが。

「あーハイハイ、俺がやりますわ」

 そうやって、気怠そうに手を挙げたのは、織斑黒駒である。

 千冬の顔が、劇画のように渋くなったのは、言うまでもない。

「あー、織斑ね。・・・って、織斑先生、俺が仕切っちゃってますけど、いいんです?」

「ああ、構いませんよ。私は、こういうのは苦手ですから」

「マジか。世界最強でも、できねえことってやっぱ有るんだよな・・・。ま、ストレイツォさんも、永遠に若さを保つことは出来なかったし、当然か」

「? 何の話だ? ストレイツォ・・・?」

「気にしないでください。漫画の話だ」

「そう、か」

 千冬が、水鏡がこの状況を仕切ることにゴーサインを出したところで。

「えー、っと。今んとこ、立候補・・・。あー、自薦っつった方がいいか。自薦は、織斑一人だ。誰か、他にやりたいやつはおらんか? 自薦でも他薦でもいい。『こいついいんじゃね?』とか、『自分やってみたい!』とか、そういう感じだ。若人たちよ、挑戦するがいい!」

 何だか芝居がかった台詞回しである。

 それを受けて、立候補した者が三人。

 一人目は、セシリア・オルコットである。

 彼女の立候補理由は、

「別に、私は、誰が代表でも構いませんわ。ただし! 私よりも実力の低い者には、到底代表など任せられませんッ!」

 とのことである。

 二人目は、西行寺妖夏である。

 彼女の立候補理由は、

「あの男が代表なんて、吐き気がする」

 とのことだ。正体を考えると、気持ちは解らなくもない。

 三人目は、意外や意外、篠ノ之箒である。

 彼女の立候補理由は、

「少しでも強くなって、世界最強を超えたい。これは、その第一歩だ」

 とのことである。ぶっちゃけ、束の力を借りれば、即刻世界最強になれるが、それをしようと考えることすらしないのは、さすがの武士道精神と言えよう。

「ふむ、この四人か。もうちっとおってもええんじゃがな・・・。ま、ええか。んじゃ、もう立候補締め切るで。本当に、これでええんじゃの?」

「「「「はいッ!!!」」」」

 元気の良い返事である。

 しかし、だ。

「参ったな。どうやって決めようか。・・・織斑先生、代表は、いつまでに決めればいいんですかね?」

「確か、2週間後だ」

「なんだ、結構あるじゃん。んじゃ、代表は、各自話し合って決めてくれ」

 しかし、その提案に、待ったをかける者がいる。そう、千冬である。

「いや、話し合いだと、おそらく納得しないだろう」

「そりゃまた一体、どういうことで?」

「オルコットは、『実力の低いものには代表を任せられない』と言っていただろう?」

「ええ、確かに・・・真逆!」

「そう、決闘だよ。一切のしこりを無くす、絶対公正たる手段だ。1週間後に行うこととするが、異論はあるか?」

 その提案は、確かに、絶対の手法である。

 しかし、それをよしとしない者がいる。

「異論大有りですよ、先生」

 黒駒である。

「ふむ、何か変なところでもあるんか? 俺がいうのもなんだが、後悔も禍根も残らない、理想的な方法だと思うが・・・。それに、実力もわからんで、任せようと思う奴もおらんじゃろ。」

「俺らは、文明人なんですよ? それが、決闘とか、野蛮なことして解決って、類人猿ですか?」

「じゃあ話し合って強さを見定めろと? それができりゃあ苦労はせんわい」

 そう言った瞬間。

「あてッ」

 後ろの方から、ものすごいスピードで、何かが黒駒に飛んできた。

「なんだこれ・・・?」

「決闘ですわッ!」

 セシリアが投げた、白い手袋である。

「えー、っと、オルコット=サン? 一体何を・・・? そういう方式は、今日日見ねぇが・・・」

 水鏡が大いに戸惑うが、セシリアはそんなことは気にしない。

「我が祖国・イギリスでは、何か話し合いでは確実に解決できぬ問題があった時には、正々堂々と、真っ向から、真正面から決闘を挑むことになっております。無論、『郷に入っては郷に従え』という諺を知らぬわけではありません。しかし! それ以上に、私、セシリア・オルコットは! 誇りにかけて、代表に相応しいことを証明したい! そのためにこそ、決闘を行うのですッ!!!」

「・・・へぇ。天才の俺に挑むなんて、身の程知らずにも程があるねぇ。いいよ、受けてやる。お前のような凡人、蠅のように叩き殺してやるよ」

 その発言を受け、水鏡は、残りの二人──妖夏と箒に確認を取る。

「えー、んじゃ、お前ら二人も、決闘に参加するってことでええんじゃな?」

「もちろんです」

「大丈夫です」

「そうか、よかった」

 こうして、クラス代表決定戦が、1週間後に行われることとなった。

 ちなみに、この4人の戦力は、以下の通りである。

 西行寺妖夏──専用機「スカーレット・ファントム」

 篠ノ之箒──訓練機「打鉄」

 セシリア・オルコット──専用機「ブルー・ティアーズ」

 織斑黒駒──専用機「白式(未入手)」

 

***

 

 1週間後・アリーナ

 

「大盛況だな、こりゃ」

「そりゃそうだ。今回は、クラス代表決定においては異例の決闘だからな。来るなという方がどうかしてる」

 現在、水鏡、千冬、そして真耶は、アナウンス室にいる。

 そこから見える景色は、壮観である。何せ、1学年の全160名が全員(正確には、156名。4人は、選手控室にいる)いるのだ。全体で見れば少数とはいえ、アリーナの客席の一角を埋めているのだ。迫力に違いない。

 ちなみに、アリーナの客席は、入り口付近を1年生、その左側を2年生、右側を3年生、そしてその対極に来賓席、アナウンス室、教員席、という構造になっている。

 それはさておき。

「果たして、この試合・・・いや、死合、もしくは決闘か。こいつは、どう転ぶかね」

「篠ノ之、西行寺、オルコットは、我々が面倒を見たが、織斑だな、問題は」

「ああ、あの野郎、いっぺんも特訓してねぇぞ。何遍も持ちかけたのに、拒否しやがって。いくら頭が良くても、勉強しなけりゃテストで点は取れねぇんだ。例外はいるだろうがな」

「まあ、負けたら負けたで、あの愚弟の自業自得だ。気にすることはない」

「それもそうやな」

 今回、3教師は、4人の特訓を担当することにした。だが、黒駒が、

「あんたら如きの手を借りるまでもねぇよ」

 と断ったので、3人だ。

 水鏡は、セシリアを。千冬は、箒を。真耶は、妖夏を、それぞれ担当した。

 と言っても、別に贔屓というわけではない。戦術指導のようなものだ。問題点を挙げ、解決する。それを、補助しただけである。また、それに対するアドバイスも、贈っている。

 

「ま、俺としちゃ、教え子たちに勝って欲しい、と思っているがね」

 

***

 

控室A

 

 セシリアは、禅を組んでいた。

 理由は、水鏡の特訓にある。

 水鏡は、セシリアに、

「専門的なことはよく解らんが、お前さん、あれだ。ビットに集中しすぎて、他に気が回らんのよ。アニメを見ろ。特にガンダム。似たような兵器を、格闘しながら使ってる。国家代表になりたいんだろ? なら、これくらいできた方がいいんじゃないか?」

 と言い、逆シャアと、ガンダムシリーズのDVDからサイコミュ、ドラグーンなどの使用シーンを抜粋したものを渡している。本人曰く、イメージトレーニング用とのことだ。

 セシリアは、1週間のうち半分をイメトレに費やした。

 その結果、自身の欠点を、ほんの少しではあるが、克服できたのだ。

 セシリアは、誇りたかき英国貴族の末裔である。この戦い、絶対に負けるわけにはいかないのだ。

 ・・・で、何故、禅を組んでいるのかというと。

 単純に、精神統一の為である。といっても、無意味ではない。

 クリアな思考にすることで、ビットと通常攻撃の両立を図ることができるのだ。

 試合開始まで、後7分。

 

***

 

 今回の試合のルールは、総当たり戦である。その試合順を見てみよう。

 

第1試合 織斑黒駒VSセシリア・オルコット

第2試合 西行寺妖夏VS篠ノ之箒

第3試合 セシリア・オルコットVS篠ノ之箒

第4試合 セシリア・オルコットVS西行寺妖夏

第5試合 篠ノ之箒VS織斑黒駒

第6試合(最終試合) 織斑黒駒VS西行寺妖夏

 

 各試合の間には、休息のため、30分の休憩が存在している。そのため、この日は、授業を全て試合に回した。振替の授業は、次週に行われる予定である。・・・7時限目に。

 生徒たちから悲鳴が上がったのはいうまでもないが、それは致し方ない犠牲、所謂コラテラル・ダメージというやつである。

 それはそれとして。

 試合開始である。

 その音頭は、水鏡がとった。

『では、これより、第1試合を開始いたします。選手入場ッ! 東、織斑黒駒ッ! 西、セシリア・オルコットッ! 両者は所定の位置へッ! それではッ! 決闘(デュエル)開始ィィィイイイッッッ!!!』

 どこぞの海馬コーポレーションの男のような雰囲気はあるが、気にしてはいけない。彼は、元デュエリストなのだ。

 先に動き出したのは、黒駒だった。

 そして、その瞬間に勝負はついた。

 作者が手を抜きたかったから、というのも勿論ある(オイ)。だが、本当にそうなのだ。セシリアがビットを展開する直前に、「ブルー・ティアーズ」のシールドエネルギー(以下SEと表記)が0になったのだ。

 「・・・・・・は?」

 そう零したのは誰か。ひょっとすると、全員かもしれないし、誰か一人かもしれない。それくらい、あっけないものだったのである。

「ヒハハ」 

 黒駒が嗤った。

「所詮、雑魚は雑魚。天才の俺にゃかないっこないんだよ!」

「────あ───、え・・・?」

 その背後では、セシリアが呆然としていた。

 

 アナウンス室にて。

「オーイエイエイエ巫山戯んな。何がどうしてこうなりやがった」

 水鏡は、イラついていた。

 当然だ、教え子が全く動くことさえ叶わなかったのだから。そして、問う。

「山田先生、あの機体は?」

「どちらの・・・って、聞くまでもないですね。織斑君の機体は、白式。昨日届いたばっかりの新品専用機ですね。一応、一次移行は済んでいるみたいですが・・・」

「あれは・・・、あの剣は、あの男に相応しくない・・・!」

 千冬が、黒駒の刀に反応を示した。

「ん? 一体どうしたんです?」

 その刀は。

「あれは、私が現役だった頃に使っていた、雪片。進化系とはいえ、あれでは・・・!」

「えーと、不勉強で申し訳ない。その、雪片ってぇのは、どういうものなんで?」

 それには、真耶が答えた。

「相手のSEを吸収して、攻撃に使うことができるものです。もちろん、己のSEも最低限度を除いて全て使用することになる、諸刃の剣なんですけどね。いつも、先輩のフィニッシュブローはこれでした」

「へぇ、つまり、使いようによっては一撃必殺、と」

「そうですね。でも・・・」

 真耶は、訝しんでいた。

「でも?」

「だからと言って、1発目から飛ばせるような代物ではないんです。フィニッシュブローになるのも、相手のSEが4割を切って、かつ自分のSEが5割以上出ないと放てない、どこぞのガルガンチュア・パニッシャーな仕様なんです」

「だが、あれは、相手のSEが満タンの状態だ。そもそも、あれは、相手の残りSEの4分の3を奪い、それで残り1割を削り切る、というものだ。自身の残りSEのほとんどを上乗せしてな。ところが、今回の場合は、もはやチートだ」

 水鏡も、納得したように頷く。

「しかも、織斑は、昨日の今日、ISを動かした。だったら、稼働時間がモノを言うんだ、オルコットが動けねえとおかしいぜ」

 新たな、当然の疑問を提示して。

 

***

 

 水鏡の口上は飛ばして。

 妖夏と箒の試合である。

「その鮮血の如き紅、こけ脅しか?」

「そんなわけないでしょ!」

 先に動いたのは、箒だ。

 真っ向唐竹割を繰り出してきたので、

「フッ!」

 一振りの剣を取り出して防ぐ。

 その剣は、ある庭師が使っているものを参考に、妖怪が打ち、束がIS用に調整を施すことで完成した、珠玉の逸品。その名も、

「楼観剣・八重」

「それが、お前の剣かッ!」

「その通りッ! でも箒、訓練機とはいえ、それだけじゃないんでしょ!?」

 数秒鍔ぜりあって、その沈黙を破ったのは、妖夏である。

「てやッ! たとえバリアでも、斬れないものはそんなに無いッ!」

「下からだとッ!?」

 言葉通り、下から、もう一振りの剣を振る。その名は、

「黒楼剣ッ!」

「それが全てッ!?」

「口が残ってるッ!」

「そんな無茶なッ!」

 妖夏の戦闘スタイルは、二刀流である。これは、師匠たる妖夢に影響されたものだ。対して、箒は、一刀流。これは、とにかく剣道に打ち込んでいたからこそのものである。

 どちらの戦闘スタイルにも、貴賎は無い。どちらにも、欠点はある。それを、技でカバーするのだ。

「このやり方は想像できまいッ!」

「野球ッ!?」

 箒は、刀を、横に振り抜いた。妖夏は、一瞬、離れざるを得なかった。それが、箒の狙いだ。

「もらったッ!」

 振り抜いてすぐに真っ直ぐに持ち替え、妖夏に向かって突撃する。

 しかし。

「その油断が命取りッ!」

 それを、妖夏は読んでいた。

 刀が接触するか否かというところで、真っ直ぐに、垂直に飛び上がったのだ。

「な!?」

 箒が戸惑うよりも先に、

「悪く思わないで! 嫌なら避けて! SEのほとんどを消費する特大必殺・・・ッ! 魔理沙さん、お借りします! 『恋符・マスタースパーク』ッッッ!!!」

 ミニ八卦路を取り出し、箒に向けて構える。

 そして、マスタースパークをぶっ放した。

「搦手かッ! だったら、私の負けだッ! 千冬さんに鍛えられておきながら、なんと情けないッ!」

 その叫びと共に、箒は、光に飲み込まれた。

 

「試合終了ッ! 勝者、西行寺妖夏ッッッ!!! 観客諸君、二人の健闘を讃えよッ!」

 アナウンス室で、水鏡は、この試合を〆た。

「どうです、お二人の教え子でしょう。立派なものだ」

 すると、真耶がおずおずと手を挙げて答える。

「あのう、実はですね。私、実はほとんど、特訓してないんです」

「「へ?」」

 その事実に、水鏡と千冬は、思わず間抜けな声を出す。

「むしろ、私の方が特訓してもらっていたというか、その、えっと、ゴニョゴニョ・・・」

 声がすぼむ真耶をカバーするように、

「そ、それはそうと! 織斑先生、評価はどうです?」

「うーむ、そうだな。ビームの切り方ぐらいは教えといても良かったか」

「いやあんた何言ってるの? それができるのは、アストレイレッドフレームか、素晴らしきヒィッツカラルドぐらいなんですがそれは」

「気にするな!」

 水鏡のツッコミに、どこぞのチャー研の魔王のように答える千冬。

 さっきとは打って変わって、非常に和やかなものである。

 

***

 

 その後の2試合については、結果だけを記そう。

 セシリアVS箒は、セシリアが勝利した。実力自体、一般人と代表候補生とで開きがあったので、ある意味当然の帰結である。しかしながら、この戦いから、箒は何かを学んだようであった。

 ちなみに、この時、セシリアは、マインドリセットを行なっていた。悔しさ、それもあの理不尽を一旦忘れて、クリアな状態で試合に臨んだのだ。

 余談だが、箒は、この試合の後に、「ビームを斬らねば・・・」と呟いていたという。

 次の、セシリアVS妖夏は、妖夏の勝利。

 妖夏は接近戦が専門なので、かなり不利な試合かと思われたが、妖夏は、ビットから放たれるビームの狙いを察知して、確実に「撃つことができない場所」、すなわち懐に潜り込んで攻撃することによって勝利した。ただ、原作とは違い、セシリアは、ある程度接近戦をこなすことができる。なので、接近戦──ビットを使えない状況でも、白熱した試合を見せてくれた、とだけ記しておこう。

 

 さて、第5試合は、黒駒VS箒である。

 しかし、この試合も、黒駒VSセシリアと同じ結末を辿った。

 試合の後、箒は妖夏に会った。

「どうしたの、箒」

「いや、少し激励をな」

 そう前置きして、箒はいう。

「絶対に勝て。だが、難しい。少なくとも、私には無理だった。あれには、何か絡繰がある。私には解けなかったが、な。それさえ解ければ、勝機はある」

 それは、要約すれば、「仇を打ってくれ」というようなものだ。しかも、DIO戦と違って、何の手がかりもない。無理ゲーもいいところだ。

 だが。

「わかった。修行の成果、見せる時」

 妖夏は、了承した。この戦い、勝算はあるのだろうか。それは、カニの味噌汁・・・じゃなかった、神のみぞ知るというやつだ。

 

***

 

 その頃、黒駒は。

「プッハー、クッソ雑魚じゃねぇか。束に作ってもらった白式、その力は抜群だぜ。キヒヒ、凡人どもに俺の力を思い知らせてやるぜ・・・!」

 そう言って、次の試合相手を見る。

「西行寺妖夏・・・、ハッ、雑魚に勝った程度で調子に乗るなよ。天才と凡人の違いを思い知らせてやるよ。グヒャヒャヒャヒャ」

 しかし、黒駒は、特訓を何一つしていない。

 果たして、彼は、妖夏に勝つことができるのだろうか。

 

***

 

『これより、最終試合を開始いたします。選手入場ッ! 東、織斑黒駒ッ! 西、西行寺妖夏ッ! 両者は所定の位置へッ! それではッ! 決闘(デュエル)開始ィィィイイイッッッ!!!』

 その掛け声とともに、最後の決闘が始まった。

 その結果は、黒駒の瞬殺勝利に・・・

「そういうことか」

 ならなかった。

「なんだと・・・。お前、凡人のくせに何避けてんだよ」

「そうは言われてもね、アンタだけには負けるわけにはいかないんだよ」

「あ? どういうことだよ」

 黒駒は、一瞬訝しむ。だが、

「まぁいいや。どうせまぐれだ。凡人には退場してもらおうかッ!」

 結局、攻撃を仕掛ける。

 その攻撃は、

「楼観剣・八重ッ!」

 防がれた。

 そして。

「見えた、その絡繰・・・!」

「シュワットッ!?」

 黒駒の勝利の秘密が、明らかになった。

 瞬殺した時、相手は動いていなかった。動く暇すらなかった。しかし、自分だけ高速で動けるとしたら? 見えないくらい、相手が動くよりも早く動けたとしたら? それが、答えである。

「やっぱりそっか、そうだったんだ。出処は何処?」

「そんな馬鹿な・・・、束に作ってもらったのに・・・、役に立たないなんて・・・」

『束だとッ!?』

『どうしたね、織斑先生』

 アナウンス室から、声が飛ぶ。「束」という言葉に反応したのだ。

『あいつは、あいつは今、行方知れずの筈だッ! なぜ貴様が束に会えたッ!  それに、貴様は束に嫌われていた筈・・・ッ!』

 それは、事実である。しかし、黒駒は。

「答えるわきゃねえだろッ!」

 そう言って、切り込んだ。

「軽すぎる。千冬姉の剣が、軽すぎる・・・ッ!」

 その攻撃は、手で止められたが。

 そして、その時、不思議なことが起こった。

「! な、何が・・・!」

『光って・・・』

『何も見えませんッ!』

「目がーーー! 目が、何も見えませんわーーーッ!」

「何が起こっているッ!」

 突如、雪片弐型が、眩い光を放った。

 数秒後、その光が収まると、

「え・・・? どうして、私に・・・?」

 雪片弐型は、妖夏の手の中にあった。

「どういうことだ・・・! それは、俺のだぞッ!」

「まさか、だとすれば・・・、そうか! 私を、選んでくれたんだね・・・」

 その声に頷くように、雪片弐型は輝いた。

 そして。

「てやッ!」

 手にした剣を振るう。すると、

「グッギャアアアア!!!」

 なんと、白式の高速移動装置が木っ端微塵になった。

「私もお互い様な気はするけど、そんなに天才でいたいの? 束さんになんて並び立てっこないのに。千冬姉にも。そのために、何の代償もなくチート使って勝つなんて、恥ずかしくないの? リスクを負わない勝利なんてッ!」

「な、なんなんだよお前ッ! 何者なんだッ!? 千冬姉のことといいッ! 何者なんだッ! 西行寺妖夏ッ!」

 黒駒は、冷静さを失っていた。

 それに構わず、妖夏は言い放つ。

「教える義理は無いッ! そして、お前ごときが、その名を呼ぶなッ!」

 そう言って、口に黒楼剣を咥え(正確には、頬の下に伸びているアーマーにマウントし)、右手に雪片弐型を、左手に楼観剣・八重を構える。

「天才も、努力せねば凡人以下ッ! くらえ、憤怒『血河轟轟』ッ!!!」

 某ひとつなぎの大秘宝を追い求める海賊団の剣士の如し三刀流のスタイルとなった妖夏は、まず楼観剣・八重を振り下ろし、右腕のユニットを破壊。次に、黒楼剣で左腕のユニットを切り落とす。さらに、雪片弐型と楼観剣・八重を、旋風の如く振りかざす。目にも止まらぬその連撃は、格ゲーでいえば200コンボを余裕で突破する勢いであった。反撃を許さず、まるで轟轟と血の河が流れ出す。それが、この技なのである。

「うびゃああああああっっっ!!!」

 「ウボアー」よりも情けない断末魔をあげ、黒駒は敗北した。黒駒は、何もできなかった。

『試合終了ッ! 勝者・西行寺妖夏ッ! 彼女の健闘を讃え、大きな拍手をッ! そして、これにて全試合終了ッ! 勝ち星が最も多い者が代表となります故、西行寺妖夏が、我が1年1組の代表となりますが、何か異論はあるかッ!?』

「「「「「ありませんッッッ!!!」」」」」

 こうして、クラス代表は、妖夏に決定した。

 だが、それをよしとしない者が一人。

「認められるかッ!」

 黒駒である。

「こんなのアリかよッ! 俺は天才だぞッ! なんで凡人が代表なn『公正なる決闘の結果に泥を塗る気か、織斑』は・・・?」

 その、訳のわからない理屈は、水鏡によって阻まれた。

『織斑先生、この場は私が持ってよろしいですね?』

『ああ、構わん。本来なら私が言うべきだろうが、なにぶん説得力というものが、な』

 そうやって、千冬に確認をとった上で。

『なんぼ天才といえども、20過ぎりゃあただの人いう言葉があるが、そがいなわけではなさそうじゃのぉ。われ、何戯けたことを言いよる。天才じゃけぇ勝って当然? 他の連中に代表になる資格なし? そがいなわけあるかッ! 資格がないなぁわれの方じゃッ! 再三特訓を提案したにもかかわらず、やったこたぁ遊んでばっかり。それで勝てる思う方がどうかしとる。世界最強でさえ、弛まん努力と鍛錬によってその座を勝ち取った。何もせず、何も成さず、やったこたぁ遊んで煽る。そがいな奴に、誰が代表を任せる思うとるッ! そがいな物好き、いるわけがないじゃろうがッ! ええ加減、自分を弁えろッ! まだあって1週間しか経っとらんが、これだけは言える。われ、いつ退学になってもおかしゅうないでぇ。嫌なら、大人しゅうしとけ』

「納得いくかッ!」

 そう言って、白式で、アナウンス室に飛びかかろうとしたその時。

 

ピン

 

 指が鳴った。水鏡が鳴らしたのだ。

 次の瞬間。

 ズバッ! と、アリーナの床に亀裂が、いや、溝ができた。

 事前の点検では、なんの異常も見られなかった床に、溝ができた。水鏡が指を鳴らした瞬間に、である。

「─────え?」

 全員、絶句した。常識にとらわれないことを知った妖夏でさえも。

 誰が声を出したのかはわからない。もしかしたらそれは、千冬かもしれないし、真耶かもしれない。もしくは、全員か。とにかく、この場に、超常が起こったのだ。

 ところで、「指パッチンと同時に溝ができる」──正確には「切断される」、これ、どこかで見たことはないだろうか。この情報社会、すぐに見つかる。そう、「素晴らしきヒィッツカラルド」の能力である。

 なぜ習得できたのか。それは、プロローグ2をご覧いただきたい。

 そんな沈黙の中、水鏡は、静かに口を開いた。

『大人しゅうしろ、と言うたはずだけど、耳糞でも詰まってるんか?』

 なぜか、近江弁で。本気でキレた時には、却って静かな怒りを見せるのである。

 そして、その一言ともに、代表選出戦に割り当てられていた全日程の終了を告げるチャイムが鳴った。

 結局、黒駒は、水鏡を屈服させることができなかった。

 代表は、妖夏に決定した。

 

                                    続く




いかがでしたか?
オリジナルISである「スカーレット・ファントム」は、真紅の白式に、SDガンダムワールドヒーローズの孫権ガンダムアストレイの頬のパーツに、袴や振袖など、和の要素を加えたものをイメージしております。
今回、決闘を行う者には、教師陣が個別に特訓をつけました。黒駒だけつけられていないのは、作中で示した通り、本人が断ったからです。黒駒の行動を見て、「イヤな奴だ」と思っていただけたならば、幸いです。
かなり投稿期間が空いたように思いますが、これはひとえに、私の力不足です。第4話までは展開をすでに考えてありますし、もうすぐ学校も春休みとなりますので、来年度に入るまでには、第4話まで登校したいと思っております。
ぜひ、感想をよろしくお願いします。

近々、登場人物紹介(現時点で考えている設定のネタバレとまではいかないが、展開を読みやすくするヒントあり)も投稿する予定です。
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