IS-irregular-   作:背筋悪太郎

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およそ一ヶ月ぶりの更新です。
大変お待たせいたしました。


第3話 再会の鈴

「えーっと、事務室ってどこよ・・・。敷地が広すぎるっての。なんなのよ、250haってッ! 遭難させる気ッ!?」

 ある少女が、事務室へ向かっていた。

 少女の名は、凰鈴音 (通称鈴)。中国の代表候補生に、僅か1年で成り上がった天才肌の努力家である。

 そんな彼女を、妖夏と箒が発見した。

「ん? あのツインテール・・・」

「どうかしたのか?」

「いや、もしかしたら・・・」  

 そう言って、妖夏は、鈴に抜足差し足忍足で寄っていく。

 そして、チョイチョイと、指で肩を突いた。

「? 何よ・・・ってぇ、千冬さんッ!? いや、でも千冬さんはもうちょっと大人なはず・・・」

 そうブツクサ言っていると、妖夏が突如、

「流派・東方不敗はッ!」  

 と叫んだ。

「え?・・・王者の風よッ!」

 一瞬、鈴は面食らった。だが、彼女は何かを感じたのか、即座に、返しを行った。

「全新ッ!」

「系裂ッ!」

「「天破侠乱ッ!!!」」

 そして、拳を合わせ、二人の背後に炎が上がるッ!

「「見よッ! 東方は紅く燃えているッッッッ!!!!!!」」

 二人が「決まった・・・」というような、達成感にあふれた顔をする横で、

「・・・私は一体、何を見せられたんだ?」

 と、箒は呆れた。

「それで? あんた一体誰なのよ?」

 鈴は、訊く。

 当然だ、いくら知り合いに顔が似ていて、流派東方不敗の演舞(というか挨拶)ができたとて、妖夏は知らない人なのだ。そう訊くのが自然と言えよう。

 それに対して、妖夏は、

「酢豚の約束、覚えてるからね。そして、その答えは、まだ出せそうにない」

 それを聞いた鈴は、一気に表情をこわばらせる。

「それは、その約束は、一夏にしか話していない事よ。なぜ、初対面の──少なくともアタシとは初対面なはずのアンタがなんで知ってる訳?」

「って待て待て妖夏、酢豚の約束とはなんだ?」

「それも含めて、後で話すよ」

 どうでもいい事だが、この日は土曜日の休日である。なので、あまり時間を気にする必要がないのだ。

「一応聞かれちゃまずいこともあるから、屋上に行こう」

 事務室に鈴を連れていき、必要な手続きを全て済ませた上で、一行は屋上へ向かった。

 

***

 

屋上

 

「それで? 結局、アンタ何者よ? 一応、ありえない可能性も考えてはいるけど・・・」

「それは?」

 鈴の考えている可能性。それは、妖夏が一夏と何かしらの関わりがある、というものである。ぶっちゃけ、関係があるどころか同一人物なのだが、鈴は、まだそれを知らない。

「アンタ・・・誰だっけ?」

「そういえば。私は、西行寺妖夏。隣にいるのが、箒。篠ノ之箒」

「箒って・・・。ちょ〜と、いや、かなり、親のネーミングセンスを疑うわね・・・、悪いけど」

「言うな、私も、百歩譲って、読みはいいとしても、なぜこの字にしたんだと思っている」

「それで鈴、可能性ってのは?」

 目を細め、鈴は確証を得たかのように言う。

「西行寺って言ったかしら? アンタが、一夏と同一人物ってことよ。もちろん、だったらどうして女になってるのかと言うのには説明がつかないけど、酢豚のことといい、まだ名乗ってもないのに『鈴』なんて呼んだり、東方不敗の構え、これだけの証拠があるのに一夏じゃないなんてこと、逆にあるの? ・・・まぁ、荒唐無稽ではあるけれど」

 その答えを聞くと、妖夏は満足そうに手を叩きながら、口を開いた。

「うん、正解。私──いや、俺が織斑一夏だ。2年前に殺されて、奇跡的にこの体で生き返ることができたんだ」

 嘘は言っていない。幻想に導かれたと言うのは、実際、かなりの奇跡といえよう。

「マジで?」

「マジ」

「本気と書いてマジと読む?」

「本気と書いてマジと読む」

「天地神明に誓って?」

「天地神明に誓ってマジ」

 そんなやりとりの後。

「ぃぃぃぃいいいいいいちかぁぁああああああッッッッッッ!!!」

「ふぅぉああ!?」

 鈴は、妖夏に抱きついた。全力ジャンプで。それこそ、まるで小動物を狩る猛獣のように、妖夏に飛びかかった。

「え、えーと、鈴、ここでは妖夏って呼んでほしいな。あいつにバレると厄介だから」

「あいつって・・・あぁ、あのクソ野郎ね」

 あいつ。そう、織斑黒駒である。一夏を必要以上に目の敵にし、いじめ抜いた自称天才。嫌悪感を抱くのは当然である。

「ちなみに、千冬さんは、このこと知ってるの?」

「もちろんです。姉ですから(ベネット風味)」

 千冬は、束を通じて、この事実を知っている。

 妖夏の体から離れて、鈴は言った。

「それじゃ、これから、改めてよろしくね、妖夏」

「こちらこそ、よろしく。鈴」

 そう言った後、互いに笑顔を見せた。

 そのわずか10秒後。

「で、この女、確か箒だったっけ? こいつとは、どんな関係なのよ?」

「箒はね、鈴と入れ違いの幼馴染なんだ。言うなれば、箒が初代幼馴染、鈴が二代目幼馴染ってやつだね」

「へぇ・・・。ねぇ箒、妖夏とはどこまで行ったの? A? B? それともC?」

 表現が古い。今どき、これで通じるのだろうか。ともかく、鈴のその問いに、

「なななんなんなん何を!?!?!? そんな、寮が同室というだけで、キスだのそれ以上だのは、まだしてない、ぞ・・・」

 箒は狼狽えまくった。顔が、茹で蛸よりも真っ赤に染まっている。

「ふぅん・・・」

 そう納得した様子を見せると、鈴は、箒に指を突きつける。

「いい? アンタと、紳士協定ならぬ乙女協定を結ぶことにするわッ! アンタも妖夏に惚れてたんでしょ? だからこそよ。キスもそれ以上も抜け駆け禁止ッ! 妖夏が求めてくるまで・・・というか、告白するまでNGッ! いいわね?」

 箒は、ほんの一瞬だけ考えるそぶりを見せ、

「・・・あぁ、いいだろう。乙女協定、加入だッ!」

 こうして、箒と鈴の間に、乙女協定が結ばれた。

 しかし、妖夏の目の前でそんなことをしていたので、

「私の目の前でやるかな普通・・・」

 妖夏は複雑な心境であったという。

 

***

 

「えーっと、どうやら2組の方に転校生が来たみたいだな」

 月曜の朝のSHR。水鏡が話している。

「確か、あそこはまだ代表が決まってなかった・・・ですよね?」

「ああ。転校生というより、書類の手違いによる遅刻入学だからな。その辺を配慮し、特例で代表決定を先延ばしにしたということだ」

「らしい。まぁ、わしらの代表たる西行寺は、専用機を持っとるんじゃろ? じゃけど、油断は大敵よ。ジムだって、アムロが乗っとらんガンダムなら、多分倒せるじゃろう。何が言いたいかというと、西行寺。お前は、アムロの乗ったガンダムになれということじゃ。無論、西行寺だけじゃないぞ。来年になりゃあクラスは当然変わる・・・変わりますよね?」

「ええ、もちろん」

「よかった。クラスが変わったら、当然、また代表も変わる。その時、我こそはと名乗り出ることができるくらいの度胸と実力をつけて欲しい。で、行事についてじゃ。来月初めに、早すぎるんじゃないかとは思うんじゃけど、学年別クラス代表トーナメントが行われる。それに向けての準備もせにゃならんので、忙しくなる。以上ッ!」

 水鏡の話が終わり、クラスがざわつき始める。

 

***

 

 水鏡は、教室を出て、授業の教室に向かう。彼の担当は、地歴公民である。その中でも、日本史を得意としている。

 なんの警戒もせず歩いていたその時、事件は起こった。

「死ねクソカス!」

「!」

 なんと、背後から、椅子をぶつけられたのだ。

「いっつぅ・・・。何晒しよんじゃワレ!」

 そう言って振り返ると、そこにいたのは、2年2組の生徒の一人、清畠(きよはた)祖戸根(そとね)であった。

「なんのつもりじゃ。テストの問題を教えい言うんじゃったら無駄じゃ。今回の担当はわしじゃないけんのう」

「そんなわけないじゃないですか、やっぱ男って猿ばっかりなんですね」

「・・・そういうことか。厄介な目にあったもんじゃ」

 水鏡は、ため息をつく。

「何が不満なんじゃ、言うてみぃ」

「全部に決まってるだろうが、お前の! 男風情が神聖なるISを動かして、その上IS学園(ここ)にいる!男如き、この世界には要らないんだよ!」

 水鏡は、呆れた。目をガン開きにし、口を真一文字に閉じた。

 数秒の間をおいて、口を開く。

「おま、ちょ、色々意味がわからんのんじゃが・・・。まず、男が要らん? じゃったら、お前はどうやって生まれてきたんじゃ」

「は? お母さんのお腹の中からに決まってんだろ」

「あー、質問が悪かったか。正確には、お前は誰と誰の子供じゃ」

「それは・・・!」

「お前の親父さんとお袋さんじゃろうが。異性が番わんにゃ、お前は生まれてこんかったんじゃで。そいで、次。神聖なISと、さっき言うたよな?」

「それがどうしたってんだよ!」

「あえて言わしてもらおうかの。どこがじゃ。わしには、ただの金属の塊にしか見えんかったぞ。神話に関する逸話も無い、いわゆる神のご加護もない。あれのどこが神聖なんじゃ」

「黙れ! お前に何がわかるんだ!」

「それはわしのセリフじゃ。ま、わしが知っとるんは、大気圏突破も突入も自由自在、なぜか女性にしか扱えない、絶対防御なるバリア? がある、四次元ポケットのようなものがある、アラスカ条約とやらで軍事転用が禁止されている、くらいかの。で、お前は、わしが今あげた以上のことがわかる、言うんじゃの? 言うてみんさいよ」

「黙れ黙れ黙れ! 男は、黙って死んどきゃいいんだよ!」

 そう言って、清畠は、水鏡に、椅子を全力で投げてきた。

「おっと危ない」

 しかし、水鏡は、椅子を片手でキャッチした。

「は? なんで、どう言うことだよ。男は、どいつもこいつもクソ雑魚じゃねえのかよ、なあ!」

「・・・のう、土木作業をするのはどう言った人間かわかるか?」

 水鏡は、訊く。

「知るわきゃねぇだろ」

「男だよ。生身の男が、重い木材や瓦やなんかを運んで、家にするんじゃ。足場を組み立てて、命綱をつける。絶対防御なんてものはないから、当然、落ちれば最悪死ぬ。確かに、女は恵まれとるんじゃろうよ。ISとかいう、最強の文明の利器が使えるけぇの。じゃが、これだけは言わせてもらおう」

「あ?」

「調子に乗るなよ若造が。ISが使える程度で威張るなや」

 そう言って、清畠に向けて、椅子を投げ返そうとする。

「いいのか? それが当たったらお前、体罰だぜ? 怖くねぇのかよ?」

「体罰上等、処分上等ッ!」

 そう叫び、清畠のわずか数ミリ左を狙って、椅子を片手でぶん投げた。清畠は、気絶した。

 騒ぎを聞きつけてやってきた山田先生によって、清畠は保健室に連れて行かれた。その後、生徒指導室に運ばれる予定である。

 余談だが、この時、すでにチャイムはなっており、水鏡は急いで授業教室に向かった。

「すまん遅れ「「「ギャ──────────────────────!!!!!!!」」」なんだどうした敵襲か!」

 駆け込んだ時、生徒たちは一斉に悲鳴をあげた。理由を聞いてみると、

「あ、頭から血が・・・」

「え? ・・・、あ、ホンマじゃ。ま、授業に支障は「「「大有りです! というか怖い!」」」ええそう・・・」

 結局、この時間は自習となり、水鏡は保健室で手当を受けた。

 

***

 

 黒駒は席を立ち、2組に向かった。

 鈴に会うためである。

 彼は、鈴に惚れている。そして、「天才である自分に惚れられるなんて光栄に思え」なんて高圧的な告白をし、そしてどこからか現れた馬に蹴っ飛ばされた過去がある。懲りない男は嫌われるが、自惚れ屋のこの男には、反省という概念が存在しないのである。

 そして、鈴に話しかけたところ、どこからか現れた馬に、見事に蹴っ飛ばされた。その馬は、蹴り終えると、「ふぅ、楽な仕事だったぜ」と言わんばかりの雰囲気を出し、歩いてどこかへ帰っていった。

 ちなみに、IS学園には馬術部は存在していない。鈴も、馬を召喚することはできないし、水鏡も召喚術は使えない。どこからやってきたのか、それは誰もわからない。いわゆる、神の意志というやつなのだろうか。

 

***

 

 さて、学年別クラス代表トーナメントについて説明しておこう。

 試合の形式は、先のクラス代表決定戦と同じ。全員が全員と当たる方式となっている。

 今回戦うのは、この面子だ(作劇上、1年生のみ記載)。

 

 1組 西行寺妖夏

 2組 鳳鈴音

 3組 苫小牧(とまこまい)葦理馬(あしりば)

 4組 更識簪

 

 である。このうち3名が専用機持ちで、さらにうち2人は国家代表候補生である。そのため、葦理馬は、北海道奥地出身とはいえ、かなり不利な勝負となるが、本人曰く、「ハンデは不要」とのことである。しかしながら、簪の専用機は、未完成状態である(それでも、一般的な量産機の1.5倍の性能を誇る)。むしろ、ハンデがあるのは簪のような気もする。まぁ、些細な問題であろう。何せ彼女は、国家代表候補生なのだから。

 

***

 

 さて、昼休みである。

 本日の妖夏と箒の昼食は、食堂の「おまかせランチ」である。基本、二人は妖夏の弁当を食べている。しかし、毎日作り続けるのはキツい。家事経験者ならわかると思うのだが、マジでキツい。なので、箒の方から、「週に1回ぐらいは休んだらどうだ?」と提案を受け、現在に至るというわけである。

 ちなみに、妖夏の家事スキルは、平均をレベル30であるとするならば、すでに100を超えている。幼少期からの賜物である・・・といえば聞こえはいいが、その実態は、育児放棄のせいだったりする。

 もっとも、両親は少なくとも物心ついたときには存在せず、その影響で千冬は日中は学業を、午後にはバイト、ごく稀に束の発明の実験台と、忙しい事この上ない状態になった。黒駒は、そもそも家事をしない。ついでに言うと、千冬は、家事をしようとするとなぜか暗黒物質を生み出してしまうため、妖夏が一夏だった頃に禁じられてしまっている。なお、現在の千冬の家事力は平均より少し下ぐらいである、と言うことだけは弁明しておこう。

 

***

 

 日付は変わって。

 本日は、いよいよ実習である。と言っても、今回は入門編。簡単な動きのレクチャーである。

「それでは、専用機持ちは前に出ろ」

 千冬の号令を受け、妖夏とセシリアは積極的に、黒駒は気だるそうに前に出る。

「まずは、飛んでみろ。簡単にできるはずだ、自主トレをしているのならな」

「「はいッ!」」

 妖夏とセシリアは、返事をした0.2秒後には、すでに飛んでいた。

「ほー、高いな。成層圏までいけそうだ」

「奴の発明品ですからね。奴は、宇宙を夢見ていた」

「ほう。奴とは、一体誰ですかな?」

「篠ノ之束。我が友だ」

「ゑゑゑ!?」

 水鏡は、驚愕した。まさか、IS開発者と関わりを持つ人物が身近にいたことに、である。そんなことはどうでもいいが。

「おい織斑、お前は飛べんのか」

「あ? うっせぇなおい。人間が、どう足掻いたって飛べるわきゃねぇだろうがッ!」

「一応目上なんだから敬語使え。・・・それは後だ。お前、ドラゴンボールは好きか?」

「・・・? なんだ、それ」

「・・・え?」

 水鏡は、目が点になった。

「え? あの、かめはめ波撃つ・・・」

「カメハメハ大王を撃つ? どうやって?」

「嘘だろオイ、ドラゴンボールを知らないってマジかよお前、えー、そんな・・・」

 この世界において、ドラゴンボールは、世間の風潮の煽りもあり、「知る人ぞ知る」コンテンツとなってしまっている。そのためか、若い世代は、ドラゴンボールを知らないと言う人間も多いのだ。ブロリーMADは未だ健在であるが。

「だとしたら・・・、織斑先生。ちょっと、彼にわかりやすく指導してください。わしにゃあちと教えるんが難しい。こっちが知りたいくらいじゃ」

「引き受けた・・・と言いたいところですが、私も全体を見なければならない。なので、山田先生」

「はい」

「織斑については、頼んでも大丈夫かな?」

「モチのロンです!」

 そう言って、真耶は、黒駒とともに少し離れた場所で、飛行の説明を始めた。水鏡は、教員免許は持っているが、ISについては素人である。一応、空は飛べるのだが、その感覚を言語化することは困難である。千冬も、格闘や剣術に関しては一流レベルなのだが、言語化すると、どうしても抽象的になってしまう。その点、真耶は、具体的に感覚を言語化できるのだ。

 10分後、黒駒も飛翔に成功した。

 それを確認した水鏡は、ある提案をする。

「んじゃ、ちょっとやってみたいことがあるんですが、いいですかね?」

「・・・? いいですが、一体何を?」

「デモンストレイションというやつですかね。これからISを使う人間に、まぁ素人がやっても参考にならんじゃろうけど、イメージの足しに」

 そういうと、水鏡は、飛び上がった。生身で、である。もう一度言おう、生身で、だ。

「・・・ほへ?」

 千冬は、いや、水鏡以外の全員の目が点になった。それくらい、衝撃的だったのである。

「水鏡先生? それは、一体何なんです?」

 遥か天空の水鏡に、そう千冬は訊いた。

 妖夏は、なんとなく察しがついている様子であったが、彼女の場合、「え? この人って、幻想郷の住人じゃないよね? なんで?」という、戸惑いに近いものだったりする。

 水鏡の答えは、これだ。

「舞空術ですよ。ドラゴンボールの」

「ワット?」

「だから、舞空術ですよ」

「・・・なんで、それができるんです?」

「え? 飯食ってアニメ見て眠ったに決まってるじゃないですかヤダー。織斑先生も、訓練すればできるようになりますよ」

「出来るかァッ! そんな、人間辞めたようなことッ!」

「いや、生身でISブレードを持ち上げられる人間にそんなこと言われても・・・」

 真耶が、冷静に千冬に突っ込んだ。

 

 気を取り直して。

「・・・それでは、西行寺、オルコット。降りてこい。無論、高速でだ。目標は、地上10cmッ!」

 それに、水鏡が反応してしまった。

「わしの動きは参考になるかの」

 そう言うと、頭から急降下を始めた。生身で。

 そして、地面スレスレになると腕を出し、二本の指で受身をとり、そのまま宙返りをして着地した。

 この間、わずか6秒。

 この場にいた全員が、呆気に取られた。

「・・・水鏡先生。いくら国家代表候補生といえども、そんな動きができるとお思いですか? それに、指はどうなってるんですか?」

 代表して、千冬が、みんなの疑問を代弁した。黒駒は、「凡人どもが、調子に乗るなよ・・・」と毒づいていた。

 そんなことはどうでも良く。

「・・・えー、では、まずオルコット。降りてこい。目標は、さっきの通りだ」

「・・・織斑先生、水鏡先生のような着地をせよと?」

「そんなわけあるか」

「俺みたいなのはな、経験でできるようになるもんなんだよ。多分、織斑先生ならできるんじゃね「できるかッ!」・・・あぁそう」

「・・・降りて大丈夫なんですわよね?」

「どーぞどーぞ」

 すると、セシリアは、足を地面に向けて急降下した。

「フッ」

 そして、見事地面から10cmぴったりで、着地した。なぜか、ジョナサン・ジョースターのジョジョ立ちを決めていたが。

「そのポーズはなんだ」

 千冬が訊く。

「これですか? 小さい頃に、お父様より教えられた、英国貴族の嗜みですわッ!」

「どっからどう見てもジョジョ立ちじゃねーかオルコット」

「当然ですわ水鏡先生ッ! お父様は、丁度思春期真っ盛りの頃、『ジョジョの奇妙な冒険』の第1部にどハマりしたそうです。その時に、紳士として必要なことは全て学んだと言うことですわッ!」

「ただのジョジョラーじゃねーか。しかも滅茶苦茶コアな」

「そういえば、お父様は、よく座ったままで跳躍をされておりましたわ」

「ツェペリさん!?」

 そんな寸劇が繰り広げられていたが、

「ん゛ん゛ッ!」

 千冬の咳払いによって、あえなく終幕となった。

「よし、では西行寺。降りてこい」

「ハイッ」

 妖夏は、顔面を下に向けて急降下した。

 そして、地面にキスをしてしまうのではないかと言う距離で、地上1mmの高さで静止したのである。

「・・・西行寺。お前、恐怖心とかないのか?」

「・・・? ちょっと何言ってるのかわからない」

「ファッ!?」

 地上1mmといえば、一歩間違えば死ぬ高さである。絶対防御があるとはいえ、その衝撃は打ち消しようがない。普通に、ミンチになっても・・・いや、顔面が陥没、最悪砕けることは間違い無いだろう。

 だが、妖夏の場合、とにかく⑨たちと、強くなるためにも弾幕ごっこをしまくっており、今更その程度の恐怖心などないのだ。・・・それは、常識の範疇外であるが。

「・・・あーっと、お前らは、西行寺みたいにならなくてもいいからな? ただし、これだきゃ覚えとけ。ISは、どう足掻いても兵器だ、今は。平気で他人の、そして一歩間違えば自分の命すら喰らう。屠る。その振るい方には、気をつけろよ。・・・なんて、ISド素人が言えたもんじゃないが」

「さて、織斑。最後はお前だ、降りてこい」

「へいへい」

「返事ははいを一回、もしくは了解だ」

 黒駒の番だ。

 黒駒は、何も考えず急降下し、全身で地面とハグをした。

 その結果、グラウンドは大きく陥没した。

「えー・・・、いや、えー・・・。そんなことある・・・?」

 水鏡は、さすがにドン引きした。もし自分がISを今動かしたとしても、こうはならないだろうと言う自信があった。

「・・・織斑、誰が地面とハグをしろと言った。グラウンドに穴を開けた責任を取り、一人で授業後穴を埋めろ。ISは使っても構わん」

 千冬が、即断で罰を言い渡す。

「は? なんでだよ。グラウンドが柔らかいのがいけないんじゃないかよ」

 と黒駒は難癖をつけたが、無視された。

「それでは、次は武装展開だ。この中で最も長くISを動かしているのは、オルコットか。オルコット、武装を展開しろ」

「了解ですわ。インターセプターッ!」

 そう言って、セシリアは、インターセプター(接近専用のショートブレード)を、天に掲げた。

「ほうカッコいい」

「だが、実戦ではそれが命取りとなる。天に掲げるのはいいが、速やかに攻撃に移れるように工夫しろ。いいな?」

「わかりました。ついでに、これも参りましょう。スターライトmk-Ⅲッ!」

 そう言って、スターライトmk-Ⅲを、左に向けて展開した。

「味方を撃つ気か。せめて前に向けて展開しろ。次は、織斑・・・待て、零落白夜はどうなった?」

「返しても返しても私のとこに戻ってくるのでどうしようもありません」

 妖夏が答えた。

「では、織斑は省略、と。西行寺、武装を展開しろ」

「はい」

 妖夏は、両手を下に向け、音もなく二振りの剣、楼観剣・八重と黒楼剣を出現させた。

「ふむ、文句なしの出来だ」

「ありがとうございます」

 その時、ちょうどチャイムが鳴った。

「お、時間が経つのは早いな」

「ちょうど良い頃合いだな。では、本時はこれにて終了とする。解散ッ!

 千冬が、そう締め括った。

 

 ついでに、専用機持ちのIS展開タイムも記し、今話を終了させていただく。

 

妖夏 0,1秒

セシリア 0,3秒

黒駒 1,7秒

 

                                     

 




いかがでしたか?
社会科教員である水鏡がなぜISの授業に出ていたのかというと、彼は一応教師という扱いですが、ISに関しては政府の意向もあって学ばなければならないからです。・・・本人に学ぶ気は一切ないですが。だって空も飛べるし、指パッチンでなんでも真っ二つにできるし、「兵器としてのIS」ならば学ぶことはないんです。
水鏡としては、「兵器でないIS」を学びたい、という思いが心のどこかにあります。
あと、後半で少し水鏡がふざけた理由としては、作者が「こいつはこんなことができるぞ」と言うことを伝えたかったからです。
ちなみに、箒が「勝利者たちの挽歌」を歌ったということを書いたのは、本話冒頭の妖夏と鈴の挨拶の伏線です(笑)。

次回は、学年別トーナメントです。
・・・「再会の鈴」と言っておきながら、ほぼ序盤にしか鈴が出てこないのは、許していただきたい。
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