元褪せ人のスローライフ(願望)   作:Crimson Wizard

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何か羞恥心が湧いてきたので前書きは削除します。草


第10話

 

私が神ヘファイストスから防具を受け取って一晩経つ。夜中というか、もう日が登りそうな時間になってロキ・ファミリアの団長殿はやって来た。

 

「今日はもう来ないのかと思っていたぞ。」

 

「いや……本当に申し訳ない。ギルドへの提出期限が迫ってる書類があってね。それが明日までだったんだ。」

 

お陰で誰かが起きるところだった。起きたのがミア母さんだったら拳骨モノだ。

 

「まあいい。だが……ここで教えるのは不可能だぞ。回復系の祈祷ならば教えられるが。」

 

私がそういうとフィンは驚愕の表情を浮かべる。

 

「回復までこなせるのかい……?攻撃系のスキルの様なものだと思っていたから驚いたよ。」

 

回復能力(そっち)の方が余程希少だ。そういってフィンは薄く笑った。

 

「基本的にはその認識で間違いない。ただ……私の見立てでは貴公は盲目的に何かを信仰する事が出来ないだろう?」

 

フィンはなまじ頭が良い分、余計な事を考えてしまって純粋な信仰心を抱けない様なタイプだろう。

 

「……駄目なのかい?」

 

「駄目という訳では無い。私も神を心から信仰した事など無いからな。要は何処まで自分を騙せるかだ。」

 

「信仰という位だから、かなり強く思い込まなきゃ駄目って事かな?」

 

正直、祈祷も一応体系化はされているが魔術とは違って信仰という曖昧なものが基準なので、私も詳しくは分からない。

私の場合は気付いたらそもそも使えたしな。

 

「人に教えるのは初めてなのでな、とりあえずは簡単な祈祷から教えよう。」

 

すぐに修得したリヴェリアを見るに、知力や信仰などその魔術や祈祷に必要な能力値にさえ達していれば自ずと使える筈だ。

その後、フィンに一つ一つ祈祷を見せて使えるか試してみる。

 

《性急な回復》《回復》《大回復》《毒の治癒》《魔力防護》《炎防護》《雷防護》

 

これらの祈祷をフィンは何度か見るだけで使えるようになった。一応祈祷書を読ませたが、恐らくフィンのステイタスが必要能力値に達していたのだろう。

それにしても、祈祷書を読むだけでその場で使用出来るレベルとは……リヴェリアといい、流石だな。

 

《黄金樹に誓って》や《雷の槍》等も覚えさせたかったが、これらはまだ使用出来なかった。

 

「まさか一日でここまで手札が増えるなんてね……僕が何年もしてきた努力は何だったんだろうね。」

 

「恐らくだが、その下積みがあったからこそ今この場でこれだけの祈祷が修得出来たのだと思うぞ。言っておくが気休めでは無い。」

 

私がそういうとフィンの顔にあった迷いの表情が消え去った。

 

「……それもそうだね。本当に感謝するよ。《大回復》だったかい?あれは特に重宝するだろう。」

 

フィンが今日覚えた全ての祈祷はダンジョンにおいてはかなり役に立つだろう。私は《炎防護》なんて実戦だと一度も使った事は無いがな。

 

「役に立てたなら良かった……だが不味い。もう日が昇っている。私は仕込みがあるから、また何かあったら来てくれ。」

 

「ああ。本当に、本当に感謝するよ。」

 

「信仰心を伸ばすことも忘れるなよ。」

 

そう言って私は今日の仕込み作業を始めるのだった。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

フィン・ディムナはシルヴィアと名乗る人物と出会ってから何か歯車が大きく動いた様な、そんな感覚がしていた。

 

「まさか、たった一日でこれだけのスキル……祈祷が覚えられるなんて。」

 

僕は昔から、特に暗黒期に入ってからは常に力を求めて戦ってきた。全ては同族たちの、小人族(パルゥム)の再興の為に。

だがある時を境に能力値の上昇がピタッと止まってしまった。

 

いや、元からすぐに上がるものでも無いというのは理解している。それに小人族(パルゥム)は種族的に見てもランクアップが遅い。

小人族(パルゥム)が種族的に不利というのはもはやこの地では常識といってもいい。

だが、ここ数年は単に才能の限界を感じていた。同じレベルであるリヴェリアとガレスも能力値の上昇が微々たるものになっている。

 

こんな事を言いたくは無いが、自分の才能に半ば見切りをつけてしまっていた。勿論鍛錬は欠かしていない。定期的にダンジョンにだって潜っていた。

それに僕は団長という立場上、遠征などがあれば必ず自分が先頭に立たなくてはならない。

リヴェリアやガレスよりは戦う機会も多かった筈だ。だがいつまで経ってもレベルが上がらない所か全くアビリティが上昇していない日なんてのもあった。

 

そんな時、リヴェリアが僕達ファミリアに隠れて誰かと会い始めた。

最初はリヴェリアにも春が来たのかなんて微笑ましく思っていたけど、毎日一人でダンジョンに潜り出してからは余計に怪しく感じるようになった。

ロキとガレスも同意見らしく、リヴェリアが例の誰かと会っている時に話し掛けてみる事にした。

するとどうだろうか。シルヴィアと名乗ったヒューマンの過去はバッドエンドの御伽噺の様な内容でにわかには信じがたいものだった。

だがロキは彼女は嘘を吐いていないと言う。ならば真実なのだろう。

 

そして、リヴェリアが彼女と定期的に会っていた理由も判明した。

どうやら彼女の世界の技術である魔術とやらを修得するべく、彼女に師事していたらしい。

 

リヴェリアとシルヴィアの話に割って入り、とりあえず敵対だけはしない様に話を進めた。

だが彼女は思ったよりも好意的で、僕に祈祷という技術を教えてくれるという。

リヴェリアが実際に魔術という技術を修得している事もあり、未だに半信半疑ながらも多少の期待を胸に彼女の提案に飛びついた。

 

あの時の自分の判断を誉めてあげたい。いや……何もかも彼女のお陰か。

打算や、ファミリアへの損得抜きで心から誰かに感謝をしたのなど何時ぶりだろうか。もしかすると初めてかもしれない。

 

彼女が教えてくれた祈祷というものは、他者への回復すら可能にするという。

リヴェリアの話を聞く限りでは攻撃系のスキルの様な認識だったので、まさか回復が出来るとは思ってもみなかった。

 

昔、新しい魔法を覚えた時は本当に嬉しかった。例えそれが使い所の限られる魔法であったとしても、

新しい事が出来るようになる喜びは確かにあった。

それを、思い出した。そして……そう。純粋な、冒険に対する熱が再びこの身に湧いてきた。

 

初心を、思い出した。

 

昔は今ほど打算的でも臆病でも無かった。いつの間にか忘れてしまっていたらしい。実際、このままでは腐っていくだけだったのかもしれない。

けれどそうはなら無かった。僕はこの日を忘れないだろう。確かにこれはきっかけでしか無かったのかもしれない。

 

だが思い出した。それと同時に今のままでは一族の再興など不可能である事も理解している。

ファミリアの団長でもある以上、これからも何かを切り捨てる判断をしなくてはならないかもしれない。

 

でも、僕は勇者(ブレイバー)だ。今度こそ、一族の再興を。今度こそ、勇者(この名)に恥じぬ英雄になる為に。

僕はもう、昨日までの僕とは違う。僕の中の女神が言っている。

 

小人族(パルゥム)の再興は、僕の手の届く距離にあると。

 

あせんちゅはどのファミリアに加入するか。

  • ロキ・ファミリア
  • ヘスティア・ファミリア
  • ヘルメス・ファミリア
  • フレイヤ・ファミリア
  • ヘファイストス・ファミリア
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