元褪せ人のスローライフ(願望)   作:Crimson Wizard

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友達と思ってた奴に裏切られ、借金は踏み倒され、仲良かった女の子は変なコミュニティに勧誘してくるわでメンタルに罅が入っております。
今回の話は一応アンケートの結果なので他ファミリア所属が見たかった方はすみません!


第13話

 

さて、今日は久々の休日だ。偶には独りの時間を過ごしたいという事で今日はフィンとリヴェリアの訓練は無しだ。

 

ぶらぶらと商業区を歩いてみたり屋台を冷やかしたりしていたのだがやはり一人だと時間が経過するのが遅く感じる。

今までは独りの時間の方が圧倒的に多かったというのに。そんな事を考えながら歩いていると神ヘスティアがじゃが丸くんを販売している姿を見付けた。

 

「おっ!シルヴィア君じゃないか!良かったら一つどうだい?」

 

ふむ、何気に食べた事がないな。一つ位買っていくか。

 

「ではこのプレーンとやらを一つ。」

 

「毎度ありー!はい、これがプレーンだよ。」

 

私はその場で包みを剥がして口に入れる。……ふむ。美味いが、普通のコロッケだな。

 

「そういえば神ヘスティア、少し話があってな。仕事が終わってからで構わない……少し付き合ってくれないか。」

 

私は加入出来るファミリアを探している。勿論誘われているロキ・ファミリアでもいいのだが、毎回その話をしようとすると邪魔が入るので

一応加入出来そうな探索系のファミリアは全てどんなファミリアか知っておきたい。今回の話はその件についてだ。

 

「ん?まあいいけど。珍しいね、君がそんな事を言うなんて。

じゃあ、ボクのホームは知ってるだろう?そこで待ってておくれ、新しく眷属になった子も居るはずだからさ。」

 

ヘスティアは手馴れた手つきでじゃが丸くんを揚げながらそう返事をする。

 

「了解した。では貴殿のファミリアで待っておくとしよう。」

 

そうして、私はヘスティア・ファミリアのホームへと向かうのだった。

 

 

 

 

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ベル・クラネルはつい最近このオラリオへとやってきた新参冒険者だ。

来てすぐにファミリア探しを始めたもののどのファミリアでも門前払いを受け、失意を抱えている所にヘスティアが手を差し伸べた。

それからベルは自分を助けてくれた神様への恩を返す為、必死に強くなろうとしている。

が、未だその能力はダンジョンの最弱モンスターにすら手こずるレベル。

だがベルは諦めずに今日もダンジョンへと潜った。魔石数個というとても誇れる結果ではないが、未だ恩恵を受けて間も無い未熟なステイタス且つ、

先達の教えも学ぶべき技も知らないこの状況では十分な成果と言えるだろう。

 

「神様早く帰ってこないかなー」

 

今日は少し早めに切り上げたベルは、娯楽も何も無いホームで退屈しながらヘスティアを待っていた。

本来ならばもう少しダンジョンに潜っていたかったのだが、支給された武器が壊れてしまい、仕方なく早めに切り上げて帰ってきたのだ。

と、ベルがそんな事を考えているといきなりホームの中へ誰かが入って来た。

 

「え?……誰ですか?」

 

その人物は見るからに上級冒険者の様な騎士鎧を身に付け、これまた高そうな中盾を持ち、腰には何故か普通のロングソードを携えている。

ヘルムを装着しているのでその表情は窺い知れないが、佇まいは騎士然としていてまるで王族に仕える騎士の様だ。

 

「貴公が、神ヘスティアの新たな眷属か?」

 

そんな人物から唐突に投げられた問いにベルは反射的に答える。

 

「あ、はい。ベル・クラネルです。」

 

「やはりか。今日は神ヘスティアと話があってな、ホームで待っているようにと言われたので此処を訪ねた次第だ。」

 

「あ、すみません!お客さんだったんですね!今飲み物を用意します!」

 

ヘスティアの客人と聞いてあたふたするベルだったがその人物は苦笑しながら落ち着けといった。

 

「飲み物は大丈夫だ、とりあえず貴公も座ってくれ。退屈なのでな、何か話をしよう。」

 

「……へ?話ですか?まあいいですけど、僕は面白い話なんか出来ないですよ?」

 

「構わない、とりあえず、話をするのに顔を隠していては失礼に当たるだろう。」

 

そう言って、その人物はヘルムを取り外した。

 

「……ファッ!?」

 

凛々しい佇まいとその振る舞いから若年の男性だと思っていたベルはヘルムを取り外した人物の顔を見て驚きを隠せない。

 

「じょ、女性の方だったんですか!?」

 

かなり失礼な事を言っているがベルに悪気は無い。単純に驚きすぎて思った事をそのまま口にしているだけだ。

 

「……ああ。顔を晒すと何時も同じ様な反応をされるよ。少し声が低いせいかな?」

 

中性的な声をしているのも理由だと思うが、格好が凡そ若年の女性がする装いでは無い事が一番の理由だろう。

 

「そ、そんな事ありません!その、鎧を着ているのは男の人っていうイメージがあって……」

 

確かに、冒険者であれば部分的に防具を着ける事はあっても全身鎧を身に着けている者はそういない。

それに御伽噺でも女騎士なんてあまり出て来ない。騎士といえば男というイメージが定着しているのはそのせいかもしれない。

特にベルが好んで読んでいた英雄譚に出てくる女性はその多くが魔導師であった。

 

「ほう、私の居た地では性別などあってないようなモノだったからな。この様な反応をされるのは少し新鮮だ。」

 

「性別が……あってないようなもの?それってどういう事ですか?」

 

ベルがそう尋ねると女は姿勢を正しながら語り出した。

 

 

 

 

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何でも、彼女の居た狭間の地というのはこの世界では無く、また別の世界にあるという。

最初はワクワクしながら話を聞いていたベルは、話が進むにつれてそのあまりにも救いの無い内容に酷くショックを受けていた。

ベルは大の英雄譚好きだ。その為御伽噺というものに多少なりとも理想を抱きがちな傾向がある。

 

「で、でもそうしたら何故シルヴィアさんはこのオラリオに居るんでしょう?」

 

「……それは私にも分からないな。外なる神の悪戯か、この世界の神の気紛れか。」

 

「……」

 

楽しい話が聞けると思っていたベルは思っていたよりも少し……いや、かなりヘビーな内容に言葉を失った。

 

「まあ、貴公が英雄という存在に憧れを抱いているのは分かった。子供には少し話が重かったか……そうだな、貴公の好きそうな英雄の話をしてやろう。」

 

その英雄の名は、星砕きのラダーン。

単身で降る星を砕き、敵対するデミゴッド、腐敗のマレニアの軍を相手に互角以上に戦ったという真の英雄。

その血は神の系譜であり、魔術師の頂点であるカーリアの女王たるレナラと、黄金樹の英雄、エルデの王であるラダゴンの血を引いている。

 

彼の逸話は枚挙に暇がない。彼は幼き頃、最初のエルデの王であるゴッドフレイとその宰相の獣、セローシュに出会い、その姿に心を奪われた。

彼は若い頃、愛馬である痩せ馬に負担をかけない様重力の魔術を修めた。

ある時、自身が魔術を学んだサリアという地に降ってきた星に単身で挑み、それを破壊し、更にその星の動きをも封じ込めた。

 

デミゴッド同士の争いである破砕戦争では、自身の配下である赤獅子の戦士達を率いて戦った。

そして破砕戦争の最終盤、ラダーンと同じくデミゴッド最強と呼ばれる腐敗のマレニアと一騎討ちとなる。

 

戦いはラダーン優勢であり、敵対するマレニアは産まれながらに強力な腐敗の呪いに侵されていた。

その為身体の一部は義手や義足であり、ラダーンはその義手を切断する事でマレニアを追い詰めた。

 

だが、戦士としての戦いに水を差すが如く、マレニアは負ける訳にはいかないとその身に宿る腐敗の力を解放した。

それを最後に、ラダーンの伝説は幕を閉じた。

 

 

 

 

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「……なるほど。それでそのラダーンさんは、腐敗の力のせいで狂ってしまったんですね。」

 

「ああ。だが、狂っているとはいえその実力は確かだった。正確無比な重力の矢に、その体躯から繰り出される二つの特大剣による斬撃

その身を隕石とし降ってくる等、その身に染み付いた技は失われなかったらしい。彼の全盛期に戦ってみたかったよ。」

 

そう言いながら、思い浮かんだ私は約束の王となったラダーンの記憶に蓋をする。……あれはミケラの傀儡だからノーカンだ。

 

彼は確かに、ベルの好む英雄そのものだが話に救いが無さすぎる。

ベルの知っている英雄達は最後を幸せに迎えるモノが多い。ハッピーエンドが好きなのだ。

 

それに対し、女の話した内容は全てが妙にリアルで救いが無いところも現実に寄っていると思ってしまう。

 

「……貴女は、そのマレニアって人とも戦った事があるんですか?」

 

ベルがそう問うと女は少し顔を顰めながら言った。

 

「……ああ。奴を倒すまでに何度死んだことか。だが、私は目的の為に邪魔をする者は人だろうが神だろうが全て殺して来た。

そうして、私はエルデの王となったのだ。今、再び奴と相対すれば私は無傷で奴を倒せるだろう。」

 

神をも殺して来たという女の発言にベルは思わず息を呑む。

 

「……でも、その目的は達成出来なかったんですよね。」

 

「そうだ。私がエルデの王となった所で、所詮は延命措置。

それに何故か狭間の地、あの世界は元の姿に戻りたがる。あれは人の手に負えるものでは無い。私が何度エルデの王となっても無駄だった。」

 

……話を聞くに、彼女の行いは正に英雄のそれだ。だがそんな彼女でも世界を救う事は叶わず、

その地は今も壊れかけの律による統治がされており、再び世界が壊れるのを待っているだけだというのだ。

 

「凄く、頑張ったんですね!」

 

「……は?」

 

「僕だったら、途中で投げ出しちゃってたかもしれません。実際にそんな経験をした事は無いので勝手な事は言えませんが、

頼れる人も居ない中、たった一人で何度も世界を救うなんて、きっと凄く頑張ったんだろうなって。」

 

……この話を聞いて、出てくる感想がそれか。

確かに私を労ってくれる者など、ラニ位しか居なかった。……この子にとってはかなり重い話だろうに、本気で、言っているのだろうな。

 

私が、頑張ったか……

 

ふふ、ヘスティアの周りには変わり者しか居ないのか。

 

 

「……ああ。貴公、その在り方を忘れるなよ。それは人として、とても好ましい。」

 

「ん?……何がですか?」

 

「いや、なんでもない。……それに、もうそろそろ、神ヘスティアが戻って来る頃合では無いかな?」

 

私はこの廃教会に向かってとてとてと走ってくる気配を感じてそう口を開く。

 

「バイト終わったよー!ベルくーん!シルヴィアくーん!」

 

「神様!お疲れ様です!」

 

「ああ、神ヘスティア、邪魔しているよ。」

 

「はぁ……走って帰って来たから疲れちゃったよ。それで、シルヴィア君は何の話だっけ?」

 

「そうだな、前にも一度話をしたと思うが、私をファミリアに入れてくれないか?」

 

そういうとヘスティアは驚いた様な顔をして、少し考え込んだ後口を開いた。

 

「……前も言ったけど、ボクから提供出来るものは殆どないよ?キミはとっても強いんだろう?恩恵を受ける意味もあまりあるとは思えない。」

 

「それでもだ、私はダンジョンに潜ってみたいんだ。ファミリアに所属していないと潜れないのでな。

元々ファミリア自体は何処でも良かったのだが、やはり貴殿のファミリアが良いと思ってな。」

 

「……どうしてだい?」

 

「貴殿が神として信用に値するからだよ。私は本来神など視界にも入れたくないが、貴殿の神としての在り方は好ましい。」

 

「ふふん、そう褒められると悪い気はしないね!まあボクは君がそれでいいなら良いんだけど……」

 

「では決定だな、元々は神ロキのファミリアへ入ろうと思っていたが、まあいいだろう。」

 

「げ……キミ、ロキのファミリアと関わりがあるのかい?ふん!確かにロキの所の派閥は大きいよ。でも、ボクはロキの事はあまり好きじゃないんだ。」

 

ふむ、まあ神にも好き嫌いがあるか。

 

「私はあの派閥に弟子がいるからあのファミリアに入ろうと思っていただけだ。他に理由は無い。」

 

「弟子?それって誰だい?」

 

「フィンとリヴェリアだ。」

 

私がそういうとヘスティアと横で話を聞いていたベルが飛び上がって驚いた。

 

「【勇者(ブレイバー)】と【九魔姫(ナイン・ヘル)】だって!?キミそんなに凄い奴だったのかい!?」

 

「それに、今私が働いている所もリヴェリアの紹介だ、それなりに親しくさせて貰っている。」

 

「……キミ、本当にボクのファミリアで良いのかい?」

 

「先程からそう言っている。では早速だが、神の恩恵とやらを刻んでくれないか?」

 

「はぁ……分かったよ、キミも頑固だねぇ。……あ!ベル君は外に出てておくれ!」

 

「あ、はい!」

 

そうして室内に二人きりとなった私と神ヘスティア。

 

「じゃあまずは、その鎧を全部外してくれるかい?」

 

「……これでいいか?」

 

「そうそう、で、服を脱いだままそこにうつ伏せになっておくれ。」

 

私は言われた通りに装備を外して服を脱ぎ、ソファの上でうつ伏せになる。

 

「じゃあ、始めるよ。」

 

ヘスティアは針で自身の指を軽く刺し、自身の血をインクにシルヴィアの背中の上で文字を書くように指を動かす。

 

「……ッ!」

 

「……どうした?」

 

唐突に息を呑むヘスティアに困惑するシルヴィア。

 

「……ごめんね、覚悟してから読んでおくれ。」

 

そう言って、ヘスティアは共通語へと翻訳した紙を私に渡した。

 

「……なるほど。そういう事か。」

 

シルヴィア

 

『Lv.1』

力:I0

耐久:I0

器用:I0

敏捷:I0

魔力∶I0

 

《魔法》

 

なし

 

《スキル》

 

褪せ人の祝福(The tarnished blessing)

 

・祝福を作り出す事が出来る

・祝福間を移動可能

・祝福が存在しない場合は、拠点かその場で蘇る

・不死となる

 

・触媒を使用せずに魔術や祈祷を使用出来るようになる

・任意の武器に一時的な戦技の付与が可能

 

「……ごめんね。」

 

「……いや、恩恵を受けたいと言ったのは私だ。幸い、神に寿命は無い。ヘスティア、死にたくなったら一緒に死んでくれ。」

 

「……そうだね。その時は責任を取ってボクも一緒に死んであげよう。 」

 

ヘスティアは覚悟を決めた様な表情でそう言った。

 

「ふふ、冗談だ。別に狭間の地の様な魔境でなければ自ら死にたくなる様な事はそう無いだろう。だが、貴殿が私の主神で良かったよ。」

 

そう言って笑うとヘスティアは腰に手を当てて頬を膨らませて怒っているアピールをした。

 

「結構な覚悟を決めて言ったんだぞ!今後はそんな冗談は言わないように!」

 

「ははっ……すまない、以後気をつけよう。」

 

そうして、私は正式にヘスティア・ファミリアの所属となったのだった。

 




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