その場に居合わせたカレンチャンの「アイデア」とは・・・?
「アイデア?」
「はい。ちょっとがっつりめな話になるんで、よかったら場所変えませんか?」
カレンチャンの誘いに乗ったシリウスを慕うウマ娘、キタサンブラック、サトノダイヤモンドの四名が学園屋上のテラスに移動した。
「あの、トコトコって言います」
「トコトコ!可愛い名前だね!トコちゃんって呼ぶね」
自己紹介もほどほどに、カレンチャンが語り始めた。
「さっそく本題に入りますね。シリウスさんの生徒会なんですけど、今ちょっとSNSの世界では物議をかもしちゃってるんです。知ってるよね?」
「はい」
トコトコが首肯した。
「私たちも時々見ますね。ちょっとやんちゃしてる子たちがいるって」
サトノダイヤモンドも追って頷いた。
「はい。盛り上がってる投稿も多いんですけど、炎上してる投稿も結構あるんです。まだあまり拡散されてませんけど、都市伝説まで流行り始めてて。ルドルフ会長が突然交代したのはURAと揉めたからだとか、たづなさんの正体を突き止めたからだとか言われてるんです」
「ふふっ」
サトノダイヤモンドが少し笑った。
「ちょっと面白いですよね。でも、ルドルフ会長が戻ることを望む子も増えてきてて・・・あんまり長引くと、シリウスさんへの誹謗中傷とかも出てくるかなあって予想してるんです」
「むう・・・SNSって難しいですね」
キタサンブラックが顔をしかめる。
当然の流れとして、シリウスのような人物が要職につけば賛否は極端に分かれる。
事務処理こそシリウスの能力でこの一ヶ月なんとか持ちこたえていたが、ボロが出始める頃合いでもあった。
「どうしたら?」
「トコトコちゃん、シリウスさんと一緒に撮った写真とかあったりします?」
「はい」
「そういうのを、たくさんあげてみたらどうでしょう。楽しかったころの思い出をみんなで思い出す流れになるといいかなって思うんです」
「なるほど!いいかもしれませんね!」
それから数日――
【生徒会室】
「シリウスーーー!!」
生徒会室で選りすぐりの取り巻きと事務処理をするシリウスが、その声を聞いて眉をひそめる。
勢いよく入ってきたのはトウカイテイオーであった。
「ねー、まだカイチョーと喧嘩してんの?いい加減カイチョーをここに戻してよ!」
「ここに来るのはよせと言ったよな!?これは大人の事情が絡んでる。部外者が首を突っ込む案件じゃねェ」
「そこで一緒に仕事してる子たちも部外者でしょー?」
「こいつらはずっと私と一緒に行動してたヤツだ。信頼できる」
「特別扱いはいけないねぇシリウス君。それにボクは子供じゃないよ~だ」
「ここに来ないって約束で何度はちみードリンクを奢ってやったと思ってる!」
「そりゃあ、飲んでいいって言うんだから飲むよ~!」
取り巻きたちはざわついていた。
まず、シリウスが自分達に直接でないにせよ「信頼している」という言葉を使ったこと、そしてテイオーの胆力への驚嘆である。
「要件はなんだ。冷やかしなら帰れ」
「帰るべきなのは君だよシリウス。SNS見てないの?」
「!」
そういえばここ最近SNSを見る余裕がなかった。
そのことに気づいたとき、「外の世界」で何が起こっているかをシリウスは瞬間的に察知した。
「何かあったか?」
シリウスの返しにひやりとしたのは、取り巻きたちだった。
「シリウスと仲良かった子たちが、最近シリウス先輩に会えないっていう事をSNSでよくしゃべるんだよ!シリウスのいるべきなのは、そういう子たちのところなんじゃないの?シリウスがなんで会長になったのか知らないけど、カイチョーが悪いことしたわけじゃないんでしょ?」
「・・・・・」
シリウスが珍しくテイオー相手に黙った。
取り巻きたちの手も止まった。
「あれ・・・シリウス?」
「おいテイオー。お前ルドルフの居場所知ってるか?」
「それが、カイチョーは授業には出てるらしいんだけど、放課後探しても見つからないんだよ~!まるで隠れてるみたい」
「・・・わかった。ルドルフとはちゃんと話す。お前は帰れ」
「絶対だよ!早くカイチョーを戻してね!」
テイオーが生徒会室を出た後、室内は気まずい空気で充満した。
「し、シリウス先輩・・・すみません」
「なんで謝る」
「その、SNSとかで起こってること・・・もう知ってるかなと思って。何も話してなくて。結構炎上とかもしてて・・・」
「つまんねえことで謝るんじゃねえよ」
シリウスが椅子に深く座り足を組んだ。
「私が会長になった時点でそういう流れになることはわかってただろ。それに私を推薦したのは理事長だ」
「えっ・・・」
「私にチクれって言ったのはお前だったよな?」
「っス」
ショートヘアのウマ娘が首肯した。
「別に責めてねえ。何ならお前は事務処理の才能大アリだ。レースに使う時間があったら事務処理極めたほうがいいとすら思ったぜ?」
「う、うちが店やってたんで・・・」
「レースの夢を諦めろって言ってんじゃねえ。だが私たちには必ずレース以外で食っていかなきゃいけねえ時が来るだろ?見つかったな。就職先」
「まだレースやるっス」
「トレーナーたちからも大文句が来てるがな。だがこの期間が刺激になったやつもいたらしい。結果論だと言われちゃ終いだが」
「さっきテイオーさんに言ってたことはマジなんすか?」
「何を言った?」
「ルドルフ会長と話すって」
「ああ。皇帝サマもこの時をお待ちだろうよ・・・おい、クリスエスを呼んで来い」
シリウスはペンをとり、おもむろにメモを書いて折りたたみ傍のウマ娘に渡した。
「この手紙をクリスエスに渡せ。ヤツが来たらお前らはクリスエスを補佐しろ。私はちょっと出かけてくる」
学園内の人気の少ないところにやってきたシリウスは携帯を開く。
電話の相手は決まっていた。
「もしもし」
「ルドルフ。私だ。今どこにいる?」
「シリウスか。今は外出中だが、時間はとれるぞ」
「どこかで話せるか」
「・・・会う場所はこちらから指定してもいいか」
ルドルフは待っていたかのような返事をした。
「任せる」
「LANEに場所を共有しておく。時間は?」
「午後18時から」
阿吽の呼吸だった。
2人の会長の会談が決まる。シリウスは1人、トレセン学園を発った。