不知火カヤ と 連邦 作:村中 ゆい
同・連邦軍クーデター実行部隊、輸送車両内
D.U.管轄の大通りである二号線は、官庁街、すなわち連邦生徒会施設へ通じる一号線の隣に並走している道路である。
そしてその二号線の路肩に8トントラックが数台止まっていた。通行人や一般車の運転手たちはあまり見ない光景に訝しんでいた。
さらにトラックのうち一台は一般的な銀色の荷台でなく、スーパーアンビュランスのように明らかに特殊であり、アンテナやキューポラがついており、加えてキューポラにはM2ブローニングがついている。
その特殊車輌の中では通信が行われていた。
……こちら13、第三小隊車輌の器具固定、完了』
「指揮車、了解、もう一度確認せよ」
『COCより作戦指揮車、輸送第七ヘリ小隊、まもなく現着、指揮権委譲する』
「指揮車了解、指揮車からA01,02、川森駅上空ホールディングエリアK2に待機、維持せよ」
『A01,02、了解、待機する、VTOLでよろし?』
「指揮車より、A01,02、よろし、フェーズ2まで高度は下限4000ft、注意せよ」
『了解、通信終わり』
「指揮車より全車、以降は作戦通り……
訓練を思い出せ、キヴォトスの運命は我々にかかっている、通信終わり」
通信をしていた人員は一息つく。
「いよいよですね」
「長かった」
「開始まであと1分です」
隊員たちの腕時計の表示が同時に刻一刻と時を進める。そして18:55;00を示したとき頷き合い。
「開始だ」
「あぁ」
銀の荷台を背負うトラック達はゆったりと動き始めた。
同・入場ゲート
ヴァルキューレの警備員は周辺道路のカメラ映像を監視していた。
「ん?なんだ?8トントラックが6台も??
……本部、本部、こちら駐車場入り口監視、大型トラック6台が猛スピードで二号線を爆走中、繰り返す、不審車両が官邸に接近している、警戒されたし」
『本部、了解、こちらのモニターでも確認し……
まて……内2台が真っ直ぐそっち、地下駐車場入り口に向かってる!止めろ!!シャッターを閉めるんだ!
正面にも来るぞ!各員G事案だ!!厳重警戒!』
一気に騒がしくなる警備員たち。地下駐車場の警備員は赤色の緊急ボタンを押す。甲高い警報音と赤色のランプが地下駐車場を支配する。
「シャッターを閉めるぞ!全閉鎖だ!!」
「了解、シャッターの内側にバリケードを設置し──」
刹那、閉まりかけていたシャッターが爆発し、大穴が空いた。あたりに煙が充満する。
『ゲホッ、今のはロケランです!外に誰かがいま……』
バリケードを設置していた警備員が無線で報告しようとした時、乾いた音が連発しその報告は遮られる。
『ウワッ、相手はアサルトライフル!しかもAR社製だとっ…?!』
『イッ!!…正当防衛!射撃します!!』
先程の音より少し軽い音が響く。
「バリケードへ増員だ、急げ!」
慌ただしく十人程の警備員たちが地下駐車場の詰め所から出ていく。もちろん全員だ。
ヴァルキューレの主な装備はサブマシンガンとハンドガンだ。室内とはいえ半分屋外ではアサルトライフルに対して不利、さらに駐輪場入り口は直線でアサルトライフルにはとても有利だ。また襲撃者の後ろにはトラックが迫っている。
つまり彼らには荷が重すぎた。
ふと外からの銃撃が止む。
「止んだ?」
「…いや、トラックが来るぞ!!撃て、撃ちまくれ!」
その言葉の後、外から一発のグレードランチャーが打ち込まれ、直後にトラックが突っ込んで来た。8トントラックの全力疾走はかなりのエネルギーを持つ。轟音と共に、いとも簡単にバリケードは破られる。
そして2台のトラックは停車し、左右の扉が開き、50人ほどの黒の軍装をした兵士─連邦軍特殊部隊が次々と降りてくる。また、入り口側からも10人ほどが近づいてくる。
「クソッタレ!まるっきり正規軍みたいじゃないか?!」
崩れたバリケードに身を隠し射撃する警備員たち。
連邦軍側の兵士が何かを投げた。数個の黒い物体が舞う。床に落ちると同時に爆発し、警備員15人を吹き飛ばした。
「グレn──」
なおも応戦する残った3人の警備員。
「どうしますか!?もう奴らは階段へ向かってます。いくら撃っても無駄です!!」
「……ハハッ、降伏した後に殺されたくはないな…」
撃つのをやめる警備員たち。
「…殺されはしないでしょう。多分気絶させ──」
「おい??はぁ…ヘッドショットで気絶したか」
「降参…ッスネ」
同・正面入り口
こちらでは3台のトラックが門を破り、入り口前に停車していた。対して警備員たちはデスクやカウンターに身を潜め敵が出てくるのを待っていた。
「地下駐車場は交戦中です…多少は持ちこたえられるでしょう」
「奴らは、いったいどこの所属なんだ」
数十秒の時間が経った時、空からプロペラの音が聞こえてきた。
「なんだ?」
地響きのような低いローター音。MV22オスプレイだった。
「オスプレイ?……いや、なんか腹に付いてねぇか?」
「オイ、オイオイオイオイ!!あれはミニガンだ!撃て!!撃ち落とせ!!」
警備員たちは一斉に撃ち始めるがオスプレイまでは距離があった。そこでオスプレイはホバリングした。
「不味いっ、来るぞぉ!伏せろ!!」
全ての音がオスプレイの音になる。普通の銃とは比べ物とにならない速さで弾が飛び込んでくる。フロントのガラスはほとんど割れ、警備員が身を隠していたデスクやカウンターが穴だらけになり、そのまま警備員が吹っ飛ぶ。
数秒間の射撃の後、銃弾の雨は止んだ。
「終わったか?」
柱を盾にしていた一人が顔を出す。
そこに待っていたのは荷台の右側が空いたトラックと、そこにあるM2ブローニング2つだった。
「は?」
先ほどのオスプレイに勝るとも劣らない音が響く。12.7㎜の弾丸が飛んでいくのは柱と壁だ。
「冗談じゃない!!」「ギャッ!」
柱や壁は蜂の巣にされ、後ろに隠れていた隊員は致命傷を負う。15秒間の射撃が止み、かわりに入ってきたのは連邦軍特殊部隊だった。まだ気がある警備員を気絶させる。
「お、おい、待て待て!ウワッ!」
こうして地下と正面は連邦軍特殊部隊の手に渡った。
「正面入り口、クリア」
小隊長の一人がそう告げる。
『こちらIB(諜報部)、時計が間もなく頂点を指す。準備は良いか?』
「こちらディレクション、踊る準備はできている」
『では、予定通りに…』
巡回中のヴァルキューレの生徒が二人歩いている。
「クソッ、下に行くには少し遅いか?
……おい、あれ。なんだあの箱?」
「こんなのありましたっけ?」
「い、昼にはここにはなにも──」
ヴァルキューレの生徒がその後の言葉を紡ごうとしたその瞬間、廊下は白く染まり、轟音が響き、窓ガラスは割れ、部屋への扉はひしゃげて壊れた。生徒二人は吹き飛ばされ壁に激突する。
「…う"っ……うぅ…」
「せ、先輩…生きて……ます、か…?」
吹き飛ばされた二人は生きてはいる…がヘイローは消える寸前、そして血まみれだった。
こちらではエレベーター待ちの連邦生徒会職員が二名いた。
「早くこい、早くこい……なんだ、今の爆音は?!」
「爆発…?いや、まさか、こんなとこ──」
エレベーターが到着する。しかし二人を待っていたのは爆発だった。
この他にも二箇所で爆発があり、その影響で火災が発生していた。
───作戦第一段階終了、第二段階へ』
連邦軍特殊部隊は、既に階段を駆け上がり主要な部屋の前に待機していた。代わりに廊下のヴァルキューレ生徒は気絶している。
ハンドサインを出し、扉を少し開け、手榴弾を投げ込み数多の部屋に突入する。
「何事?」
「ゲマトリアの攻撃か?!」
「それにしては早すぎるぞ!!」
役員たちは混乱する。するとそこへ
「5階警備の者です!
現在正面入り口と地下駐車場、ヘリポートから正体不明の部隊に侵入されました!!
廊下で食い止めますので、隣の控室へ!!」
役員たちの混乱はさらに広がるのだった。
───直ちにバリケードを設置する!役員達を守るぞ!!」
5階の警備主任が声を上げる。机や椅子、自販機など使えるものは何でも使う。
「相手はアサルトライフルだ室内ではこっちが有利!!」
「いや、防戦だと、不利じゃ…」
「幹部を守る、幹部を守る、幹部は守る、幹部は…」
「それだと一般役員と秘書は放置になっちゃうよ…」
18人の警備員が襲撃に備える。これに追加して増援で来れたのは8人。総勢26人だ。
「でも、なんか相手の手際良すぎない?特殊部隊??」
「特殊部隊って、あの、窓をシュルルって紐で降りてくような、ヤバい人たち、ですよね?」
「ラペリング降下ね…」
「………とすると、窓からも来そう?」
警備員の一人が訝しむ。
すると同時に5階西のエレベーターホールが爆発する。それと同時に爆発以外のスモークが起きる。
さらに数発の5.56㎜弾の飛来。
「もう来たのか?!!
スモークに隠れてる!撃て、撃ちまくれぇい!!」
「出てこい、くそったれぇ…」
一方で、会議室前の廊下で撃ちまくる警備員を他所に窓側を警戒する数人の警備員たち。
班長が言う。
「こうやって構えてるのはまるで案☆山☆子だな
おい!誰か窓から顔を出して確認してくれないか?
……見てこい、カルロ!」
カルロと呼ばれた青い髪の警備員は窓を開け上を見上げようとして、
鈍器で殴られた音とともに窓縁にぶら下がった。
それと同時に突入してくる5、6人ほどの影。それは一回だけでなく、会議室に侵入してきたのは全員で18人
「来たぞぉ!来たぞぉ!!」
「動くものは全て敵だ、撃ち殺せぇ!!」
窓に向かって、乱射する警備員たち。
それを華麗に交わし警備員たちに特殊部隊員は近づき銃を奪ったり、乱闘する。
しかし一人の警備員は、殴り合いでは異常に強かった。
ヘルメットとその他の装備を剥ぎ取られ、吹き飛ばされながらも、拳で二人を倒していた。
そこでさらに一人の特殊部隊員と対峙する。
「へへっ……怖いか、クソッタレ。当然だぜ、元K.S.P.D.特殊部隊の俺に勝てるもんか…」
すると特殊部隊員はおもむろにヘルメットと覆面を取り
「…試してみるか、俺だって連邦軍特殊部隊だ」
「「フンッ!」」
二人の顔に鈍い音が響く。何度も何度も殴り合う。
「なかなか、やるじゃねぇか…」
「貴様こそ…」
だが二人の乱闘は終わりを告げる。会議室内の警備員がこの人物を除いて全員倒され、廊下側も銃声が止んだ。
「さぁ、どうする?」
「…降参だよ、仲間がやられちゃどうしようもねぇや」
両手を上げて跪く。
「良かったら最後に名前を聞きたい?いいか?」
「…………コック、料理が得意なんだ。だからそう言われてる。あんたは?」
「……ジョン、部隊内ではジョンと呼ばれている
だが、すまないな、今は少し眠ってくれ」
麻酔銃を向けてコックを撃つ。
「会議室の控え室へ侵入する
3.2.1.GO!GO!Go!!」
蹴りで突入する特殊部隊員たち。
すると一人の役員が叫ぶ。
「君たちは何者だ!!誰の許可でこんなこ…と……」
有無を言わさず銃口を向ける。会議室にいる連邦生徒会員は基本丸腰だ。
一応護衛のヴァルキューレの生徒も数人いるがヴァルキューレ長官麾下の生徒のためクーデターのこと知っており、もはや守る気などなかった。
「我々は連邦軍です。
直ちにすべての権限を明け渡してください。承諾しない場合は即座にヘイローを破壊し射殺します」
「…クソッ、それは君たちのボスであろう、不知火防衛室長の指示かい?」
室長の一人が言う。
「ええ、その通りです。自分で言うのもなんですが、これはクーデターです。我々には時間がありません。直ちに要求に従うことが先決かと思います」
「一つ質問良いかな?
連邦…軍といったな、規模はどのくらいなんだ?規模によっては対応が変わるぞ。
なんと言っても、先生がいないんだからね」
さらに行政室の役員が言う
「……詳細は話せませんが陸海空合計18万人程で、現在作戦行動中なのは13万人です」
「18万っ…!!」
「ちゃんと正規軍規模だな…」
七神リンがついに口を開く。
「………今回のクーデター、実に非民主的、そしてとてもナンセンスです。不知火カヤの評価は今を以て地に落ちました……が、ゲマトリアとの戦争が控えています。
今は平時ではありません。有事には有事の専門家がいます。私はキヴォトスにはいないと思っていましたが、見たところあなたたちは有事の専門家のようですね…
……いいでしょう、私達の権限を一時、明け渡しましょう。ただし、そして脅威が去ったら直ちに返還してください。そして以降の連邦生徒会職員の身の安全は保証してください」
特殊部隊員の一人がタブレットをリンの前に差し出す。リンは無言でサインをした。
「ヒエロニムスが何十体来ようとも、身の安全は保証しますよ、それが我々の使命ですから…
非常に申し訳ありませんがここにいる幹部含め役員の皆さんはこのあと軟禁状態には置かれます」
そこでリンが口を開く。
「それは良いのです。
あと、これは少し個人的ですがね、今後あなた達、連邦軍が行うであろう作戦を見たいのです」
「ズルいぞ!リンだけ見るとか!!」
「抜け駆けはなしだ、七神!!」
「ご安心ください。
我々はこれからあなた方をヘリで輸送します。
その後におそらく連れて行かれる場所は統合作戦本部の中央司令室後方にある幹部円卓です。中央司令室の大モニターで見れると思いますよ?」
意外と呑気なものだなと思う中隊長であった。
「こちらディレクション、第二段階終了、第三段階へ。
お客さんを屋上へ送るから乗せるヘリをくれ」
『こちらIB、了解した。2機の特装チヌークがそちらに向かっている。駐機中の2機のオスプレイは三号線ホールディングエリアにてホバリングで待機せよ、ガス欠になりそうなら言えよ』
『ガス欠の心配はない。常に節約してるさ』
低いローター音と共にオスプレイが飛び上がる音がする。
「幹部、役員の皆さん、決して快適とは言い切れませんがこれから空輸で皆さんのことを運びます。
西エレベーターホールへお急ぎください。どうしても陸路が良い方は言ってくださいね」
「こちら中隊長、各員へ、各階の負傷したヴァルキューレの生徒を救命する。重症者はヘリポートへ、軽症者は正面入り口へ運べ、以上。行動開始」
かくして連邦軍によるクーデターは終わった。
奇襲開始から20分、19:15のことであった。
続き読みたい人います?(ちなみに続きはまだ作ってないので投稿は1から2ヶ月後です)
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