ゾンビゲー転生サバイバル百合モノ   作:バルロjp

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道中

稼働音があまり響かないように低速で車を走らせていく。『都会』ってのは道の掃除が行き届いていて運転しやすいぜ。あ、ここでの掃除とはゾンビの事だ。廃車とか死体とかよくわからんゴミとかは普通に落ちている。中世英国か?

 

なお何で掃除が行き届いているかって言うと、NPCの皆さんも「昼間だったら……」と移動時に道中のゾンビは処理してくれるからである。建物内まではカバーしてくれないけど、それでも十分だ。

 

「車は徴収されても仕方がないとしても、半分ぐらいの物資は隠しておきたいなー。バレなさそうなとこ……クーに穴掘ってもらえばいいのか?」

「穴をほるの? やり方何となくだけどわかるよ?」

「へぇ、犬タイプの影響かね? まーバレなきゃ隠す方法は何でもいいんだけど……ここら辺は入口近いから止めとくとして、ショッピングセンター過ぎた辺りで探そうかな。というかショッピングセンター見えてきたし」

「あれがショッピングセンター? こうえんみたいだね」

「奥にある建物含めてのショッピングセンターだよ。ここの広場は……イベントスペース?」

「はっ! プラスウォッチでおぼえたのだ! やがいはんばいってやつでしょ!」

「あ、うん。そう」

 

私の教育方針は放任主義。そういうことにしておこう。屋台跡とかあるからあながち間違っちゃいないし。

 

私達は順調に進み、ショッピングセンター前まで来ていた。ここを通り過ぎて右に曲がりちょっと進めば、めでたく目的地の工業大学だ。

そんな中間地点なショッピングセンターは、こっちは広場側らしく、「Welcome add your life!」のアーチ状の看板や遊具やテントに小さな建物がいくつか。後は全て芝生や花壇だ。正直結構な大きさだと思うんだけど、これ以上の公園がマップによるとあるんだよね。まショッピングセンターの本体は奥に見えるクソデカ建物なんだけど。

 

ショッピングセンター敷居は柵で囲まれていて、出入りに一定の知識(クー以上ゾンビ以下)がいるからか、中は処理されていない。つまりはそこらでゾンビがうろうろしてるってこと。あ、気づいたゾンビが近づいてきた。君じゃあそこの柵壊せないよーん。

 

「……けんきゅーじょにいたときも、ゾンビがああいうのしてた」

「クーには反応しないから私に反応してるんだけどね。と……?」

 

クーが窓から餌を与えないでくださいゾンビにそうぽつりと呟いたので、拾って反応してあげる。もうすぐグループ内に入って黙っててもらう事が多くなるので、会話するなら今の内なのだ。

 

が、そこで少し違和感。『気配察知』が反応したワケじゃないしクーも何も言ってきていないが、何となく勘が疼いた。

 

違和感と同時にブレーキを踏み込み、車を静止させる。クーが「どうしたの?」と尋ねてきたが、ジェスチャーでちょっと静かにしてもらうよう伝える。

 

………………なーんかいるなぁ。

 

柵の奥。テントや装飾で見づらく、ゾンビがゆらゆらと揺れている。風の音。草花がわさわさとさざめいている。ゾンビが呻る声、歩く音。遠くから聞こえる銃声。エンジン音にクーの呼吸。

 

その中に混じって、ショッピングセンター方面から不規則な足音が聞こえる。音をなるべく消しているようだけど、一度気づくともう見失わない。

 

「……移動してるだけ。ソロ。足音からして隠密中か。こっちに来てる感じだけど、偶然かな。距離的にエンジン音聞こえないと思うし。もう喋っていいよクー」

「おねーちゃんは足おときこえたの? くーわかんなかったよ?」

「練度が違うぜ。ヘッドフォンでもリアルでも、聞き取り方は変わんないからね。さて、対処どうしようかな……。あ、クー一旦車から降りようか。左側からね」

「ん」

 

とりあえずエンジンを切る。右ハンドルなので普通に降りるとショッピングセンター側になっちゃうので、助手席を跨いでの降車だ。ついでに助手席に置いといたバックもひっつかんで背負う。

 

横を見ると、意図を理解してくれたらしいクーは姿勢を低くしながら右腕を座席に引っ掛けないように降りて来てる所だった。

 

大丈夫そうなので意識を足音の進む方向に。

……あぁ、あそこ従業員か知らんけど、正面の馬鹿デカい入り口とは別のがあるのか。確かに柵は登るには適さないから、植えられている樹木でカモフラージュかかってるあそこが狙い目なのか。

 

まぁ相手のゴールが分かってるならやりやすくて楽だ。

 

「ドアは閉めなくていいよクー。……クー、プラスウォッチを……ここ押して、この項目の下スクロール……『忍耐強化』押して。でそうはいの方。同じように『精神強化』も……うん、おっけ」

「おねーちゃんこれは?」

「保険。もしもの時のためって奴」

 

基本的に、ソロではなくパーティー運用を前提とするなら、スキル・ステータス構成なんて極振り一択だ。火力役は全部STR関連に振れ! とまでは言わなくとも、火力に関連するSTR、AGI、DEX辺りが強化する選択肢になるだろう。何でもできる万能な奴はそりゃぁ便利だけど、特化した人間の方が練度も時間も効率が良くなる。

 

クーはファイター寄りにするつもりだった。なので、『忍耐強化』、『精神強化』といったオフタンク寄りな構成は正直よろしくない。

けど元々クーは現時点でオバースペックな『クッキングケミカリー』を持っており、火力としては十分、火力職の役目は果たせる。

ならばリアル化の影響があり何が起こるかわからないこの世界。保険代わりに少し防御を上げといてもいいだろう。

 

……もしクーが痛みとか襲い来る『人間』でメンタル崩して暴れたりしたら、それこそどうしようもなくなっちゃうしな。クーはまだ推定10才の子供なんだから。『忍耐強化』で痛みを軽減させ、『精神強化』で恐怖に立ち向かえるメンタルを得て欲しい。フレーバーテキスト的にもそんな効果あるだろうし。

 

「じゃクー。なるべく静かについて来て」

「わかった。……もうお口チャックしとくね?」

「ん、助かる」

 

クーは息を大きく吸い込み頬を膨らましてサムズアップした。息止めろってワケじゃないんだけどなぁ……。

 

私は柵の内側に植栽されているモノより姿勢を低くして、柵に張り付き従業員入口に近づく。後ろにクーが私の真似をしながら近づいてきているのを感じながら、従業員入口の傍へ。

 

鍵は……かかってるけど見せかけだな。ゾンビは無理だが人間なら直ぐ開けられる。こっから先はすぐそばに装飾の石像か、身を隠せるから最高。

 

音を立てないようにそれなりに時間をかけたが、それでもゾンビがいる中隠密している相手よりは早かったらしい。

日中のゾンビなんて全員始末しちまえよと思わなくもないけど、この場所だと抱えきれない数いそうだし騒ぐと別の生存者が来るやもしれないしなぁ。NPC君もそこらへんのルーチンは仕込まれている。

 

……というか見つかんないな。方向は大体わかるんだけど、今は動いてないから足音無いし柵、植木、像などで視界も妨害される。動いてる物体が! と思ったらゾンビだし。ほんと邪魔だなゾンビ。死ねよ。死んでたわ(定番ギャグ)。

 

そんなくだらない事を考えてると、デニムが引っ張られる感覚。なになにと張本人であるクーを見てみると「ん! ん!」と表情に浮かべながら柵内を指さしていた。

 

顔をクーの指に近づけ指された所を見てみると、風でビニールが靡いている中、一部分だけ靡きが小さいテントが。

 

……あーそれだと思って見るとわかるね、潜伏場所あそこだ。人間大の影あるし。

 

とりあえずクーに頷いて返事をし、ご褒美代わりに頭を撫でながら考える。

クーの時と同じく、選択肢としては排除か逃亡かだ。今回は相手がこんな動きをしている時点で弱そうなので排除方面に予定しているが、接触の仕方はどうしよう。

 

公式鯖だからな~多分銃持ってるんだよなぁ~。今の私だと正面切るのは流石に厳しいぞー? かと言ってクーも銃弾に耐えうるのは右腕だけだし、野生の勘がなんとかしてくれると賭けるにはリスクが高すぎる。やっぱ私が出ないとだけど……。

 

まぁ取り敢えず接触するか。私一人なら会話も何とかなるし、クーはここで待機させて様子見てもらおう。こっちは出入り口抑えてるんだから、ロックしっかり掛けて大音出せばゾンビを援軍召喚できる。

 

「クー、ここで……もうちょいあっちで見てて。もし道路から誰か来たらこっちに走ってきてね」

 

私はクーに少し離れた場所にいるように指示する。クーはこくんと頷いて、私のお腹に頭をぐりぐりと擦り付けてからしゃがんで移動し始めた。……何か時間と共に犬っぽくなってるなクー。

 

「さて、と」

 

私は小声で呟きながら、ナイフの位置、そしてホルスターから直ぐ抜けるかを確認する。

よし、問題なし。できればどこのグループにも所属してない人がいいなー。

 

足音の主は、ようやく移動するタイミングを掴めたらしい。時々立ち止まってゾンビの出方を伺いながら、こっちに向かってくる音がする。

 

接触方法は簡単だ。こんな場所でこっちから声をかけると「すわっ貴様さてはさっきから隠密していた我を監視していたな!」と思われる。けど私が見つかるようにして、向こうに主導権を渡すとスルーされる可能性がある。よって安定としては───

 

「ふぅ……やっと出口にこれたって誰っ!?」

「うわっ!?え、何!?」

 

こうして偶然を装う事なんですね。

 

私を見て慌てたように声を上げ、さっと近くの石像に身を隠したのは女性だった。しかも一瞬しか見えなかったけどかなり巨乳の人だった。いいねぇ巨乳。

 

とりあえず、直ぐに石像に隠れたのは合格点だ。その後響いた音からしてこれ銃も用意したな、流石公式鯖NPC。

 

「所属を言いなさい! 私もここで銃を撃ちたくはないわ」

「しょ、所属? どこにも入ってないと思うけど……強いて言うなら、ネスト、かな? そこから逃げてきたし……」

 

おどおどした気弱な感じで。声に焦りと震えを加え、状況がわかっていない生存者を演じる。

ネストはNZWのど真ん中にある、固定生成される国の名前だ。人類が最も繁栄した土地であり、真っ先にゾンビウィルスが蔓延した衰退の土地でもある。

 

私の解答に件の女性は少しの間沈黙していたが、やがて少しだけ顔を石像から出し、様子を伺ってきた。

 

「……あなた、見かけない顔ね? それに反応も素人のそれだったわ。最近ここに来たのかしら?」

「う、うん……さっき防壁超えて、入ってきたとこだけど……」

「一人で?」

「いや、あっちで見て来てる子と一緒に……」

 

私がクーがいる方向を指さすと、女性はちらりとクーの方向を見て「そう……」と呟いた。私もクーの方を見てみると、まるで睨みつけるように女性を見ていた。こらこらそういう顔しないのー。ちなみに植木の高さの都合上、クーは肩から下が隠れている。彼女にはクーがただの可愛い少女に見えるだろう。

 

「オーケー。とりあえず信じるわ。今は避難地を探してる感じなの?」

「そう、だね。私一人ならともかく、あの子……クーはまだ子供だから」

 

とりあえずの信用を得ました。わーい。女子供アバターって相手の警戒度下げやすいから楽なんだよね。

 

とりあえずの信用さんは銃の安全装置を戻しながら出てきた。さっき言った通りの巨乳で、Yシャツを歪ませてその大きさを主張している。ゴツ目のブーツにジーンズ、黒のジャンパーには私と同じようにカバンを背負っている。声は元気系だったが、顔は金髪をポニテにしたキレ目なクール系だった。

 

「なら、私達のグループに案内するわ。私はロシュア。ハウス所属のサバイバーよ」

 

銃を腿のホルスターに戻し、ロシュアさんはそうキメた。

 

「えっと、さっきから話してる、その所属とかグループって?」

 

まぁ大体は予想が付く。ハウス陣営は初めて聞いたが、それ以外だとそれぞれの施設に準拠したグループだろう。

 

ロシュアさんは後方のゾンビが自身に注意を向けていないか周囲を確認しながら、質問に答えてくれる。

 

「このマートラはね、生存者グループで対立があるのよ。それぞれ理想や信念、生き方によって分かれているわ。物資の奪い合いもあるし……。とりあえず、イカれ野郎共の研究所付近には近づかない事をオススメするわ。西側にヤツラはいるから」

「あ、うん」

 

ロシュアさんは軽蔑を全面的に表情に浮かべながらそう言った。余程嫌悪しているのだろうか。ともあれ周囲警戒ヨシをしたロシュアさんは静かにこちらに走り寄ってきた。

 

「開けるからちょっと離れて。ここはゾンビが沢山いるから長居しない方がいいわ。あの子も……私に警戒してるから距離を空けているのかしら」

「あー、ちょっと難しい子だから……クー、こっちにおいで」

 

私は扉から離れて、クーを手招きをする。クーはいいの? と軽く驚いてから、ゆっくりと歩いてきた。

 

ロシュアさんが音を立てないように扉を開けて、ゆっくりと出てくる。そしてクーを見て───

 

「それじゃあハウスに───!? なにあ───」

「うんお疲れ」

「う”っっっ!?」

 

ざしゅっ。

 

悲鳴を上げると同時に、私が振るったナイフで頸動脈を切り裂かれた。

 

私を見て理解ができないと驚愕の表情をするロシュア。ふらつきながらも一歩下がり、両手を首に持っていき、傷を抑えようとして。

 

私はいつもゾンビにするように、無防備になったロシュアの左目にナイフを突き入れた。




『忍耐強化』……「お前は俺と同じ傷を負っているのに、どうしてそう平気なんだ?」「悲鳴なんて後でいくらでも上げられるし、傷だって治る。明日を生きれるんならこの程度屁でもねぇよ」

『精神強化』……「自分の弱い部分を押し込めろ」
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