ゾンビゲー転生サバイバル百合モノ   作:バルロjp

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食事

「な”……で……っ!」

 

ロシュアは地面に突き倒された状態でナイフを生やしていない右目を私に剥き、最後の力を絞るような悲鳴を上げていたが、やがて静かになった。抵抗するように私の腕に絡みつかせていた両手がだらりと落ちる。

 

うんうん。静かに死んでくれて助かるよ。私の腕に血を付けるのは止めて欲しかったけど。

 

私はナイフを引っこ抜くと、そのままロシュアのジャンパーを脱がせて腕とナイフの血を拭った。とりあえずの応急処置だ。

 

「おねーちゃん、ころしちゃダメって言ってなかった?」

 

私の手招きで近くに、そして至近距離で私の殺人を見ていたクーがそんな疑問をぶつけてくる。まぁ確かにクーには殺人がいけない事だと教え、勝手に襲うなーと約束させた。がしかし。

 

「いけない事とは言いました。つまり時と場合によっては許されます」

 

そういう事です。クーはこいつを殺してもいいか判別付かないけど、私には付く。それだけだ。

なおこの場合の殺していいかの判別は倫理観ではなくその後の面倒。

 

そもそも。NZWに置いてNPCの殺人、プレイヤーキルなんて、プレイスタイルじゃない。ただのゲームプレイだ。むしろ不殺の方がプレイスタイルなんだよね。

そりゃぁ極論を言うなら、皆仲良く協力共闘すれば一番いい結果になる。警戒、防衛に余計なリソースを吐かなくていい分、プレイヤーの強化は普通とは比べ物にならないレベルになるだろう。NPCだって、ちゃんと教育すれば準プレイヤーレベルにはなるのだから。

 

だけどそれは理想論だ。この醜い世界で、醜い人間を再現したNPCと、醜い人間しかしていない公式鯖のプレイヤーで協力なんかできるわけがない。必ずいつか裏切りが入る。

 

ロシュアは善良なNPCぽかった。だがそれだけだ。クーほど優秀という感じはしない。さっさと殺して身を剥いで自身を強化し、自分一人が未来の脅威に少しでも抵抗できるようになった方がよほど効率がいい。

 

囚人のジレンマ、と言うとちょっと違うが、まー結局は自分の事を第一に考えるのが一番安心なのだ。

 

それに、ロシュアを殺したのは自身の強化(銃が欲しかった)とはまた別の目的がありまして。

 

「クー、お腹空いてる?」

「! この人たべていーの!?」

「この先こっそり調達、調理、食事しないといけないからね。今の内に食べようか」

「やったー!」

 

私は食べないからわかんないけど、巨乳って柔らかいお肉が食べれるんじゃないかなって。

 

「よっ、ぉっと。道路だと目立つから中で食べようか。扉開けてー」

「はい、どうぞー」

 

ロシュアの死体をお姫様抱っこして、クーに扉を開けてもらいショッピングセンター内へ。あー背負うよりマシとは言え血が付くー。

 

うーん、持てなくはないけど流石に重い。クーより重いぞ。やはり胸の分か。

 

柵内に入って少し。重さでちょっとふらふらしながら、何とか植木や石像で多少カモフラージュが入っている場所に到着し、どさっとロシュアを放り投げる。衝撃でロシュアの巨乳が揺れ、首から鮮血が噴出し、近くでお肉に目を輝かしていたクーに掛かりかけ「わわっ!」っとクーがバックステップした。

 

「おっとごめん」

「当たらなかったからだいじょーぶ」

 

疲れた腕をぶらぶら振りながらの謝罪。というか(メシ)を避けるって発想があったんだね。

 

さーて、どう処理しよーかなー。とりあえずこの銃は貰うねー……CHG-ws-03か。まぁ一般NPCならそうよね。ホルスターごともらおー。えーと他には……。

 

ぬがしぬがし。がさごそ。はぎはぎ。

 

私がそんな調子でロシュアを辱めていると、おねーちゃんとクーから声がかかる。はいはい、もうちょっと我慢してね。

 

「ううん、ちがうくて。匂いで、かな? ゾンビがこっちにきてるけど、どうするの?」

「あ? 無警戒昼間状態のゾンビなんて嗅覚索敵範囲は……風向きか」

 

ふえぇ。いくら20XX年のリアリティ重視なゲームでも、ゴルフじゃないのに風向き要素なんて無かったよぉ……。

 

舌打ち一つ。どうするか考える。私もゾンビ共に意識を向けてみたが、あいつらは血の匂いで反応したから今は半警戒覚醒状態だ。クーと逃げるのは簡単だけど、そうなるとロシュアを置いて行くことになっちゃうなぁ。新鮮な死体だとゾンビは見つけ次第食うし、食いかけをクーに食べさせたくは無い。さてどうしようか……。

 

あぁ、頭やるか。

 

「クー、ロシュアの首、ここらへん真っ二つにして」

「ん? いーよ。ここらへん?」

「そそ」

 

NZWはR17ゲーでしたが、やりたいゾンビモノをやった結果R17になったわけで、残酷性で売っていたタイトルではありません。よってそんなボールを放り投げて気を惹こうなんてハームフルな事は当然できません(イベントシーンではやってるNPCいたけど)。でもここはリアルなのでそんな人道に反した事もできます。

 

人間の頭部は7kgだっけ? まぁ何にせよさっきのロシュアの体全部を持つよりは軽いに決まってる。私はボールを力いっぱいに奥の方に投げ、ボールは切断部から血を飛ばしながら50m先ぐらいのテントに大きな音を立てつつ落ちた。

 

当然、ゾンビは音に反応し、覚醒して歩いてった。まぁボール見てちょっと食べたら覚醒も終わるだろう。

 

「おー、とんでった」

「うーん倫理観。今更か」

 

というか瞼を閉じさせなかったから、ぶん投げた後目があって怖かった。私幽霊とか信じるタイプなんだよなぁ。

 

脅威は去ったので漁りを再開。クーが涎を垂らさんとこっち見てるから早くしないと。ロシュアだけじゃなくて私も食べられちゃう。

 

まだ柔らかい体を動かしシャツを脱がす───ボタン面倒なので切り裂く。ブラも真ん中を切れば、とりあえず上半身は十分でしょ。

 

「上はもう食べていーよ。フォークで食べる? 切り取ろうか?」

「やった! ううん、お肉はねー、わんちゃんたちもたべたがるから、フォークは使わないの」

「そ。じゃあマントだけ取ろうか」

 

クーは犬食い……ゾンビ食い? をご所望らしい。汚れないようにマントだけ首留めを外し預かり、ついでに長い白髪もポニテで留めてやる。血が付くからフォークで食べて欲しかった(本音)。

 

というかワンちゃん達と食べるって何ですか? えマジで知らん。『降霊術』? だとしてもアレは人間しか降りないはずなんだけど。『二重人格』か? 表現力わんこのクーに聞いても混乱深まりそうだから詳しくは聞かないけどさ。

 

わかりやすく食べやすそうな胸から齧りついたクーを放って、ロシュアのカバンとジャンパーのチェック。ショッピングセンター帰りだから多少は期待できるはず。

 

バックの中身は……まず水。ペットボトルの1Lね。エコじゃないなぁ。現在進行形で汚れてるクーに使うか。ws-03の代えマガ一個。板チョコ一枚。緊急用かな? 私も好きだよ。缶詰缶詰缶詰。麻薬(葉っぱ)。ウィルス検査キット1ダース。治療薬2個。

 

ははっ割と当たりじゃーん。もー最高ロシュア。また会ったらちゃんとありがとうって言わないとねー。

缶詰も麻薬も助かるけど、治療薬は本当に大当たりだ。これで死な安(死ななきゃ安い)もやりやすくなるってもんよ。検査キットはゴミ。

 

治療薬はその名の通り、体を治療してくれる注射タイプのお薬だ。

こいつは何が凄いって、ナノマシーン配合! R社開発自然界に存在しないTm元素を使用! お値段一般人のお給料3年分! ただし何でも治します。

 

何でも治すはその通り、使用者が望んだ状態までは治してくれる。腕が捥げても、脳が抉れても、心臓が潰れても、生きてさえいるのならば、その人にとっての健康体の状態にまで治してくれる。よってゾンビウィルスは当然治すが、義体やインプラントなどはそのままだ。望んだ結果が得られる正に完成された治療薬。ゲーム的に言うのならばHP全回復バットステータス全解除。

 

ちなみにウィルス系統とは相性が悪いので(ウィルス変異は健康体ではないため)、クーに使うと大変な事になる。多分右腕が拒絶反応起こして腐り落ちるんじゃないかな。

 

まぁウィルスビルドじゃなければ、とってもお世話になるアイテムなのだ。

 

「こんないいものを二個もくれるなんて……ありがとうロシュア。君の事は忘れないよ」

 

私は初めて上辺だけの感謝じゃなく、姿勢を正しての心からの感謝を告げた。食事に夢中になっていたクーも私に気付きそれに倣って、口を真っ赤に染め血を口元から零しながら「ありがとう」と感謝を述べた。

 

 

じゃあ下も剥ぐか。太ももも美味しいんじゃないかな知らんけど。

 

 

 

ズボンのポッケもジャンパーのポッケもシケていたが、ブーツの中には投げナイフがあった。刃物、それも特化したものは便利なので貰っておく。

 

クーはまだ食事を続けているので、近くの従業員用建物に転がっていたシャベルを拝借して穴を掘る。後ろ姿から見るとクー、マジでゾンビが生存者食ってる光景と変わんなくてウケる。

 

人間一人丸まって入れる深さになったら、車から半分くらいの食料やガソリンなどの物資を袋に包み、タイムカプセルの如く埋め込んだ。植木よりに穴掘ったし、ここらへんは芝生もないから土を被せればすぐわからなくなった。

 

……もうちょっと分かりづらい場所に保存しときたかった感はあるが、あんまり使う予定もない保険だからいいか。

 

ふーっとシャベルを担いで息を吐くと。ちょうどクーが食事を終えた所だった。口元と手、そして垂れた血で胸元付近まで血を付けながら、にっこり笑顔で「ごちそうさまでした!」。凄惨な光景だ……。

 

何かもう、白と赤と黒で私ですら目を逸らしたくなる姿になってしまったロシュアをなるべく視界に入れないようにしながら、水とタオルを取り出してクーの後始末をする。この後大学グループ行くのにこんな姿で向かったら余計警戒されちゃうよ。

 

「どう? おいしかった? 私も味までは知らないんだよね。知りたいとも思わんけど」

「おいしーよ! おむねはちょっとあきちゃうけどやわらかくたべやすくてー、おなかは色んな味がしてたのしくてー、お尻とか足は味がこくてかみごたえがあるの!」

「ははっ。意外とレポれてて笑える」

「でもおねーちゃんの血ほどじゃないけどね!」

「ははっ。笑えない」

 

本人の前で「あなたより美味しい人がいます!」なんて言うんじゃありません。失礼でしょうが。

 

ともあれクーの血を粗方拭い終わり、口もぐちゅぐちゅぺーさせたので見た目は普通になっただろう。これで『食人癖』タイマーもリセットだ。

ロシュアの死体は……ま放っとくか。もうゾンビに食われないレベルにクーが荒らしちゃったので、明らか裸で辱められた跡が残る事になるけど勘弁してくれ。ほら、ちゃんとパンツは残してあげたから……。

 

「じゃ、改めて行こうか。いくらなんでも血の匂いが酷くて吐きそうだし。よくゾンビ来なかったな」

「おねーちゃん吐きそうなの? ……いける!」

「止めて」

 

止めて。




CHG-ws-03
死肉『carrion』
Carri社
caryyと掛けたかった。
CHG ws-03(wide spread(広く普及しろの意) 3代目)

適当HG

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