ゾンビゲー転生サバイバル百合モノ   作:バルロjp

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歓迎

クーにとっては私に言われたから。

私にとってはただのファッション。

いや最初はこの服装させてていいのかとも思ったけど、本作に置いて一部特殊な服装をしない限りはNPCとの会話に変化が無いのでまぁいいやとスルーした部分だ。

スーツを着ても無線の会話は変わらないし、泡を纏って宇宙を救うわけでもない。

 

しかしロリコンたるマキシマムにとっては許せない部分らしく、その場でタンクトップを脱ぎクーの体を隠そうとし始めた。止めろ。そっちの方が可哀そうだわ。

 

でもだからって上からかけるモンもそうないなぁ。私も露出度で言ったら生足考えればクーと変わらんし、脱いで渡せる服着てないし。

 

とりあえず寝る時の毛布でいいか。服はまた今度考えよう。……あれ? このまた今度考えようって水着着せた時も考えたからこうなってしまった気が……。

 

ドアを開け、クーの左腕を取って引っ張り出しおんぶする。前に屈んで落ちないようにしてから、毛布を拾い掛けてやる。これでクーのマントから覗く脇もデニムパンツでカバーしきれていない鼠径部の食い込みも隠せただろ。文句ないな?

 

マキシマムは手伝ってくれる、というより代わりにおぶろうとしてくれたが、普通に好感より嫌悪の方が勝ったので引き続きクーの世話は私が続行だ。少女に虐められるのが趣味とか言わなきゃ普通に子供に優しいおじさんでいられたのに……。

 

口で毛布が落ちないようにずり上げ、クーの太ももを持って移動準備完了。私の体に向けられているクーの右手が怖いぜ。

 

「車はここのモンに移動させるが……今持っていく荷物はあるか? 変わりに運ぶが」

「じゃあ助手席のバックだけ頼むよ」

「うむ。それ以外の荷物は部屋が決まった後取りに来い。車は借りる事があるが、基本的にお前らの物はお前らの物だ」

「そりゃ親切なこって」

 

来な、と首で合図するマキシマムに付いて校舎内へ。エントランス、廊下、教室、廊下と通り、エレベーターの前へ。

 

ここまでで何人かの人間とすれ違った。遠巻きで見られてもいた。

一般人(避難民)と分けているのは本当なのだろう。ここにいる奴らは殆ど銃を武装をしている人達だった。それに、工業大学ということもあって腕や足、目など、一部が機械化している連中も多い。

 

その人たちが向けてくる視線は、驚愕からの、2割嫌悪、半分憐憫、2割疑問に無関心が1ってところか。

いや、思ったより敵対的な視線が少なくて驚いた。本当に。舌打ち、陰口、嫌がらせは絶対あると思ってたけど、この様子だと大丈夫そうだ。もっともこれがマキシマムが隣にいるからか、クーが可愛いロリだからかはわからないが。

一般人校舎行ったら酷いんだろうなぁ多分。全部嫌悪になるどころか恐怖悲鳴排斥になっても驚かないよ。

 

まま。クーがもうまぢ無理黒棺メンタルしそうな環境じゃなくてよかった。見直したぜ工業大学。

 

エレベーターに乗り込み、巨体のマキシマムが場所を占領しながら最上階の5階へ。チーンと到着音と共に下りて、『戦闘組会議室』と張り紙が張られた教室の前へたどり着いた。

 

「リーダー、入るぞ」

 

コンコンと、マキシマムが巨体に似合わぬノック音をさせドアを開ける。促されたので入る。

 

入室に視界に入ったのは、まず中央に大きなテーブル。8mかける10mぐらいの部屋の半分を占めている。上には書類やコーヒーらしきものが入ったカップ、銃に銃弾ナイフ、よくわからない機械とごちゃごちゃしている。あ、あれ義手じゃん。

部屋の隅にはホワイトボード。どこかの研究室らしき外観の写真と、それに赤ペンで繋げられた様々な写真が貼られている。海外ドラマとか探偵モノでよく見る奴。

ドアとの対面には窓ガラス。こちらに来るとき見えていた教室のようなカーテンは付けられておらず、工業大学中央の、大きなグラウンドとも庭とも言えるような場所を収めていた。ここからでも遊んでいる子供やそれを見守る大人、物資を整理している様子などが見える。

 

そして窓に背を向けて。つまりこちらを真正面に向いて堂々と。リクライニングチェアに深く腰掛け、うっすらと半笑いしている男がいた。

ボサボサの頭髪に無精髭。前髪だって目に掛かるまで伸びているが、髪の合間から覗く瞳はこちらを深く観察している。自身に対して一切手入れをしておらず、来ているジャケットも見える範囲ですら砂埃が付きほつれが目立っている。

 

そして彼の左手は機械だった。それはここに来るまでにすれ違った義手の連中とは違う。完全に機械だ。手としての面影は、長い円柱をしているぐらいだった。それだって、デコボコとした表面をしているので面影と言えるか疑問が残るが。

誰だって、先端にはガトリング式の銃身が見えて関節部がわからなくて肩が外付け拡張パーツを違法建築した右手を見て、「義手だ」とは言わないだろう。海賊の船長のフックの方がまだ義手と思えるわ。

 

「よぉ。お前が新しい戦闘組か。まー座んな。ここは面接会場じゃねーから、俺は一々どうぞお座りくださいとは言わねぇぜ?」

 

挨拶はとても軽かった。というか内容も、声だって軽そうに聞こえる。けど目だけは。流石工業大学という巨大なテリトリー、グループを率いるべき人物というべきか。目だけは重々しく、私から視線を外さない。

 

私が座る前に、とりあえず壁際に置いてあった椅子にクーをそっと座らせる。開けてしまった毛布を閉じ、目にかかる髪を避けてり、うん、これでよし。久々(そこまで久々ではないと思われるが)の人肉をたらふく食べたし丁度お昼時。年齢もあるし、難しい話は私に任せてゆっくりしときな。

 

ぽんぽんとクーの頭を叩いてから、リーダーのお誕生日席の反対側に対峙するように着席する。……お誕生日席の反対側って何て言うんだ? お誕生日じゃない席? ……! 鬼籍(席)か!

 

マキシマムは座らないみたいだ。持ってきてもらったカバンを私に返し、クーとは逆方向の右手に寄ってラーメン屋店主のポーズを取った。

 

私が座ったのを待ってから、リーダーが口を開く。

 

「じゃあまずは自己紹介だな。テンプレってのは物事を滞りなく進める時役に立つ。特に俺みたいなアドリブに弱い奴はなおさらだ。俺はオシヴァル。ここ、工業大学グループのリーダーをやっている。大体の奴はリーダーって呼ぶからお前もそう呼んでくれ」

「分かったよリーダー。私はカルシア、であっちの子はクー。是非カルシア様、クーちゃんと呼んでね。保護を求めてやってきたよ」

「オーケーカルシア。随分と肝が据わっているな。皮肉抜きでいい度胸だ。無線通信通りお前は戦闘組だ。ゾンビに食われて皮も肉も食われねぇ事を祈るぜ」

「こんな小娘にあんな醜いゾンビと戦って来いと? 人の心が無いってよく言われない?」

「適材適所さ。強い奴には弱い奴を守る義務があるとは言わねぇが、できる奴ができる事をやった方が良いのは当然だろ。まーお前は戦闘組としてグループに入れる以上扱いはちったぁ荒くなるが、俺も子供にそこまでの無茶はさせねーよ。あぁ、人の心ならないぞ。俺の心臓はとっくの昔に機械とチェンジしたからな」

 

そういうとリーダーはシャツをずり上げ上半身を見せる。服の外から見えていた左腕、そこから連なって胸の半分くらいまで黒光りする機械が人工皮膚に隠される事なく見えており、それはちょうど体の左半分

を割るように下へと続いていた。テーブルで見えないが、恐らく下半身も機械化しているところがあるのだろう。

 

私はしかめっ面を作り不本意です! という事をアピールしながら椅子にふんぞりかえる。足だって組んじゃうぜ。

 

「……はぁー。わかった。わかりました。わかりましたよーだ。私だってタダで安全な拠点と配給を受けられると思わないし、避難民と混じって拠点内作業よりかはバンバン銃撃ってる方が性に合うし。というわけで銃ちょうだい?」

「馬鹿言うんじゃねぇよ。入ってすぐにはいどうぞって渡すかよ、貴重なんだぞ。警備の連中を除けば銃を渡すのは必要な時だけだ」

 

リーダーはやれやれといった風に肩を竦める。なお表情は半笑いで固定。バカにされてる感じではないけれど、やっぱ少しムカつくな。

 

「へー? 道中で警備っぽくない人達も銃持ってるように見えたけど? というか私も一丁持ってるし。ボディチェックとかしてないけど大丈夫? 新入りをリーダーと直ぐ会わせるような事してて。私が敵意持ってたらどーすんのさ」

「自分の所持していた分に関しては文句言わねぇよ。俺と直ぐ会わせるのは、グループとして迎え入れる以上、リーダーとして相手を見ないとと勝手に思ってるからだ。敵意とかスパイについては、あー、あれだ。俺の方が強いという慢心だ。マキシマムが負けてたら俺も直接会おうとは思わん。……まぁ流石に無強化の少女には負けねぇからな、俺も」

「謙遜するなリーダー。あんたは俺よりも強いだろう」

「何度も言ってるが、そりゃ誤解だってマキシマム」

 

今まで黙っていたマキシマムが急に喋りだしリーダーの強さを言及するが、リーダーは頭をガシガシと掻きながら半笑いで否定する。マキシマムは例を出してあの時も~と語っているが、リーダーは一切認める気は無さそう。

 

……仲良くするのはいいんだけど話進めてもらってもいい?

 

そんな私の想い届かず、リーダーは認めずマキシマムもお前の方が強いと一歩も引かずあぁもうこれ帰っていい───

 

コンコン。

『プトラです。入ってもいいですか?』

 

背後からノック音と、扉越しでくぐもり分かりにくいが女性の声が聞こえた。

 

話を止めて一斉に私(の奥の扉)を見る二人に私が首を軽く傾げ、目線でどうするのと問いかける。

 

「事前に呼んでいた仲間だ。ほら、マキシマム開けてやれ」

「ああ。今開けよう」

 

誰がどういった人が来るのか私も興味があるので、椅子をくるりと回してドアを見る。

 

マキシマムがドアを開けると、そこにいたのは、ピンクの髪を編み込んだヘアスタイルのお姉さんだった。お目目がパッチリとしていて、リーダーの半笑いとは真反対な見ている者に好印象を与える笑み。

全体的に元気でパワフル感溢れる少女で、着ている服装が学生服という事もあって、学校、特にスポーツ系の部活動で後輩から慕われてそうな子だった(私部活やったことないけど)。

 

「初めまして。あなたが新しいメンバーですか? 私はプトラ。ここでは主に子供の面倒を見ています!」

 

そう言ってプトラさんは私に礼をした。こんな足組んで偉そうな姿勢ですみませんね……。あ~、子供たちに人気そうだからお仕事内容解釈一致。保母さんタイプではないけどね。

 

「どうも。カルシアです。あっちの子はクー。今後よろしくお願いします」

「はい! 今後よろしくお願いします! 同年代くらいの女の子が増えるのは私も嬉しいです! ……あの、同年代くらいだと思うので、タメ語でいいですか? 丁寧な言葉遣いって苦手で……」

「こんなご時世に敬語とか気にしてる人、あんまいないと思うけど? なあオシヴァル!」

「おっしゃる通りでございますカルシア様」

「ほら」

「い、いやそんな「ねっ?」って表情されても……。んっんん! じゃあよろしくね、カルシアちゃん!」

 

プトラちゃんは私のリーダーに対する暴挙に一瞬怯んだが、すぐ立ち直ってニッコリ笑顔を向けてきた。ん~いい子で浄化される~。というかリーダーがノってくるとは思わなかったし。

 

「おう、顔合わせはそんぐらいでいいか? 今日はお前に何かさせる気はないし、今後の施設案内もやってもらえ。いいな? プトラ」

「あっ、はい!」

「うし。じゃー歓迎式をやる。つーかそれがプトラを呼んだ理由だ。お前もこんなふわふわな面接だけで、仲間になって我が物顔でここを歩けるとは思えんだろ? 今日出会ったばっかのよくわからん奴が、武装解除も見張りもされずに」

「人間って信じあえるものだからね。まずは相手を信じる事から始めようよ」

「いい言葉だ。俺一人なら乗ってやっていた。プトラは異能力者だ。俺らは『言質』っつってる」

 

きょとんとした顔でプトラちゃんに顔を向けてみる。笑顔でひらひらと手を振られた。

 

「異能力の効果は名の通り、言葉にしたものを履行される能力だな。例えばプトラが焼きそばパン買って来いつって、俺が生返事でも了承を返すと、俺は焼きそばパンをどうにか買ってこなけりゃになる」

「わーお」

「プトラの異能力でお前が俺らに危害を加えないと言質を取れば、俺らは安心、お前も自由って寸法よ。ちなみにこれは事故は防げん。まぁ流石にな。あくまで意識に制限を掛けるものだ。俺は世の全てのゾンビを滅ぼしますつっても、全力で行動するだけで滅ぼせるわけじゃねぇぜ」

 

リーダーがテーブルに肘を乗せ顎を突きながらそう言った。なるほど、『言質』か。ゲームのグループ加入序盤の傭兵扱いみたいのが無くいきなりリーダー部屋に案内されたから、何か変なリアルな影響があったのかと思ったけど、まーこんな契約向きの異能力がいたんならこうなるわな。

 

私が勝手に納得していると、横からマキシマムから補足が入る。

 

「内容は俺たち、工業大学グループメンバー相手に危害を加えない事、情報を他グループに渡さない事だ。それさえ守るのならば、別にお前が他グループからの間者であったとしても構わん。これらが守れないとうならば、悪いがグループには入れられぬ。あぁ、ここで断ったとしても、情報面だけ言質を取って、後は丁寧に送り返す事を約束しよう。……そこで寝ているクーは、後で起こし同じく言質を取る事になる」

 

ふむ、まぁ納得の言質内容、というより緩々だ。これなら問題ないな。

 

「ま、クーはこの後の学校案内の時に起こす予定だったからいいか。えーと、これはプトラに宣言する感じでいいの?」

「おう、それでいけるぜ」

「おkおk」

 

私はイスから立ち、姿勢を正してプトラと相対する。おー、私より身長地味に高い。

私が真剣な顔をするからか、プトラちゃんも真剣な顔になった。

 

「じゃあ、まずここの宣言に嘘は言わないよ」

「はい」

「私はここの工業大学グループで世話になる限り、ここのグループに危害を加える事は一切ないよ。……事故とかで命の危険感じたら反撃するかもだけど。情報に関しても、他グループに漏らす気は全くもってないよ。……これでおっけー?」

「ああ。これでお前も俺達の仲間だ」

「そりゃどーも」

 

いつのまにか近寄ってきていたリーダーに(右)手を差し出されたので、握手を交わす。ここにきてやっとにやにやとした笑みからにやにや感が消えた。

まぁね? 私も良くできたいい子だからね? これから工業大学の皆のために頑張ろうかなって?

 

じゃあ、一ヶ月くらいは仲間としてよろしくね。




見回り君「保護が必要そうな子供が来ました。一人……車にもう一人いるっぽいです。はい、マキシマムさんがもうすぐ案内すると思いま……マキシマムさんが戦闘を仕掛けました。お眼鏡に叶ったようで、戦闘組で案内すると思います」
マキシマム「俺が新たな移住民に襲撃を仕掛けたら、そいつは戦える奴だ。戦闘組として歓迎する」

サイバネをサイボーク表記で統一
傭兵会社の人体改造を人体強化で統一
を、その内する。多分。

え、サイバネってサイボークとほぼ同一として扱っていいよね? 認識間違ってないよね? 間違ってたらしれっとこの文章消して本文も直しとくわ。証拠隠滅ヨシ!

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