ゾンビゲー転生サバイバル百合モノ   作:バルロjp

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ワニ2

異能力分類、『吸血鬼』。

効果。対象の血肉を吸収し、ステータスとスキルの一部を一定時間得る。この時、噛みつこうが死体の山にダイブしようが感染することはない。つまり"能動的"であれば、ゾンビにも噛みつけるって事。操るキャラじゃなく自分でやりたいかは別だろうけど。

 

まぁつまり、私のカラダ目当てが一人増えやがったって事だ。

 

「よりよって食人系統当てやがってワニお前……それこそキャラ被ってんじゃん……」

「これでお兄ちゃんとかプラフォンが食人系統持ってたら面白いね。プラフォンはどうせサイボークビルドだろうし『人肉分解炉』とか所持してないかな」

「その時はさっさと『有機物融解炉』にアプグレさせる。無理やりでもさせる……」

 

いやでも素材重いなぁ……別のエネルギー補給系統を選んでる事を祈ろう。

 

「僕はいつも通り弓プラス異能の予定だけど、シアねぇはビルドどうするの? 僕は振り切ってるけど、

どうせポイント余ってるでしょ」

「あー……どうしよっかな……」

 

ビルド。ビルド。ビルド。

要は方向性だ。目的に合わせてビルドは決めるべきであり、私は最初振るとき合流も織り込んでいたのでスキルポイントはまだ全部は振り切っていない。

 

NZWにおいてスキルポイントは、経験値次第でどんどん貰えて、最大100まで得ることができる。

そしてこれは設定にも関わる話なのだが、NZWの世界において、スキルポイントとは「体や脳の経験を通して、無理をさせることができる値」という扱いなのだ。

僕は少ししかホラーを見てないです。なら1のホラーは耐えれるな。

俺はかなりホラーを見ているぜ。なら10のホラーも耐えられるだろう。

自分の今までの経験に対して改造を行うことができる。人間の本来使われていなかった部分を使える部分に引き出せるのがスキルポイントという数値なのだ。だから自分が成長すると、無茶できる値=最大スキルポイントが増える。

そしてこのスキルポイントだが、取得したスキルを完全にモノにすると帰ってくる。体がスキルを完全にモノにしてしまえば、脳がこれは負担が掛かっていないと判断し、新たな無理をさせることができるのだ。

まー熟練度MAXってだいぶ面倒だけどね。一番使ってる近接格闘も1%行ってない。そう簡単にスキルポイントは返ってこないってこった。

最終的には全部のスキルを取ることができても、取ったスキルを熟練度MAXにするなんてそうそうできないし、そもそも最大の100まで経験値を積むこともキツい。私だって最高92までだ。そこで世界が滅んだ。

 

さて、説明はこれくらいにして。いやこの後も説明っちゃ説明なんだけど、どっちかっつーと私の思考の整理だ。

 

ビルドの方向性。目的の進路。

自己強化をするんなら、手段は大別して二つ。己の体を強くする、装備品を強くする、実に単純だね。

それ以外だったらチームメイトの強化だったり、ペット(クーではない)を使役したり、環境を整えたりだけど、趣旨とは外れるか。

 

とりあえず自分を手段、そして今回は道具じゃなく自分を強化する方法について、真面目に将来を見据え考えてみよう。わかってる奴(ワニ)もいることだし。

道具の数には到底及ばないが、それでも身体を強化する手段は色々とある。

クーの『ウィルス変異』

リーダーの『サイボーク』

プトラやワニの『異能力』

それに『改造手術(脳移植)』

傭兵会社の『人体強化』

後はまぁ、特殊だが『進化』辺りか。『寄生虫』……いやあれはちょっと。進化と一緒みたいなもんだし。

 

でだ。私は今回ビルドを決めるにあたり、とりあえず『サイボーク』は縛らなければいけない。なんたってアレ、最終的には血肉なくなるからね。クーの事を考えるとパスせざるを得ない。いや身内に自分の血肉分け与える(誇張無し)ってヤバいと思うんだけど……。

その上で、ビルドが被るのもよろしくない。面白くないというどうでもいい大事な理由があるが、切実な問題として各ビルドを成長させるレアアイテムが奪い合いになってしまうのだ。私達も流石に身内でアイテム奪うために殺し合いなぞしたくないので、避けれるトラブルは避けておこうという魂胆だ。

よって『ウィルス変異』、『異能力』もパス。残るは『改造手術』に『人体強化』に『進化』……。

 

比較的まともなのが『人体強化』しかないじゃねぇか! いやだぞ私。『改造手術』も『進化』も人間の姿からだいぶかけ離れていくタイプだ。見る分にはへーとしかならないけど、自分がそうなるために体いじくりたくない。いや『人体強化』も体いじくるけど! あれはまだ骨密度とか筋肉密度とかだから! まだセーフ! まだ心の防衛ラインがもってくれる!

 

『人体強化』。なんかこう、特殊性はなくて他と比べたら見劣りするけど、別に弱いわけじゃないからね。そこらへんのバランスは運営がちゃんとしてた。

でもありふれてるよねっていうのも素直な感想としては出ちゃうよね。どこかつまんないというか。

やった経験はあるけどさ、まー順当に強くなってくのよ、『人体強化』って。できることがちょっとずつ、性能もちょっとずつってね。そーれがあんま面白くないって感想になっちゃったんだよなー私。一番人気で一番無難だから、強化素材の争奪戦が激しくてダレちゃうってのもあったけど。

 

まぁ、要領よくはあるのだ。要領は。私のメンタルも異形モノにしたらどうなるかわかんないし、無難な選択肢として受け入れましょう。

 

以上、カルシアちゃんの脳内会議(ソロ)でした。所要時間3秒!

 

「『人体改造』かな。被らないだろうし。『不動の感情(プライド)』とか取っとくかな」

「うん、いいと思う」

 

私は確認を取るようにワニに視線を向け好きにやれ系統の返事をもらった。なんせ身内は全員自分勝手だから、いつだって何言っても肯定しか返ってないのだ。身内の中で合わせるタイプが私だけの弊害を見た気分だった。

 

「じゃあ次は……何話す?」

「今後の方針? ここに居座るのか、お兄ちゃんたちを探しに行くかとか。僕はここに居座っていいと思うけど」

 

ビルド決定したらちょっと満足しちゃった。

私はいい加減負担がヤバくなってきた膝からクーを下ろし、さっきまで私が座ってたイスに代わりに座らせる。ぐぐぐーっと腰を伸ばすと、腰より太ももに負担が来た。しびれてる、いてぇ。

 

「私としても同意かなぁ。焦って探す必要はないかな。はいクーは? ここらへんで生活するか、外で私のお友達を探すか」

「クーは……どっちもさがすと、すれちがっちゃうかもだから、ここにいていいと思うよ?」

「一理ある」

 

びりびり来てる腿を無視しながら歩いて、端に放っといたバックへ。中にあるロシュアから(勝手に)受け継いだ板チョコを取り出し三等分。

 

リアルじゃ大量に一口チョコ買って常備してたけど、ここじゃ貴重なお菓子なんだろうなぁ。

 

「ほい。全員一致で工業大学に厄介になるって事で」

「ありがとうシアねぇ。そのうち合流できるだろうし、僕たちも強化しとこう」

「おねーちゃんありがと。……これ何?」

「甘い肉。かぶりついていいよ」

「わかった!」

 

チョコを知らなかったらしいクーは、私の言葉を素直に信じて大口開けて咀嚼した。すぐさま美味しいけど食感がコレじゃない感って思いを表すように目がぐるぐるしだす。

 

「……シアねぇ、ちょっと適当過ぎじゃない?」

「親は私だ。私の好きに育てる」

「虐待親だ……。いや、服からしてそのケはあったか」

「あー……」

 

指についた甘いお肉(チョコ)を舐めとるクー。毛布を外したその姿は、相変わらず上半身水着マントだ。

白い肌(比喩)に真っ赤なビキニがよく映える。もう私これ下半身も水着にしていいんじゃないかと思ってるんだけどどう?

 

「でもワニも外部MODで自キャラ裸にひん剥いてたじゃん。リスコード(リスペクトコード。ゲーマーのための音声チャットツール)に履歴残ってるぞ」

「自分に対する虐待はただのドMだから……」

「せやろか」

 

まぁそこは追及してやらないであげておいて。

私はワニを改めて見る。さっきは容姿を見たが、今回は服装だ。

 

ワニは上半身に白地にポップな英字がプリントされたシャツを着ており、その上にここでもらったものなのか、水色のゴツい作業服を羽織っていた。作業服は左側だけ半袖に切り落とされており、これは弓を引く邪魔にならないようにだろうか。首にはワンポイントで黒のチョーカーが付けられている。

下は黒のストッキングにファーが付いている灰色のショートパンツに、編み上げ式のコンバットブーツ。癖みたいな服装をしてやがった。

 

「明らかに初期装備じゃないねぇワニ」

「ルーピシュだっけ? 助けた男性NPCと血だらけでここに来たら、プトラから無理やり渡された。これでも自分の羞恥心を守れる部分は抑えた。スカートとかヤだし」

「草。いーじゃんスカートでも。NZW中だったら普通にスカートどころかもっと際どいの着せてたじゃん。それと一緒よ」

「プトラが「もうちょっと身長あれば似合うと思うんだけどなー」って諦めてた、ゴスロリ系統の服がここにあったよ。多分シアねぇに似合う」

「各々好きな恰好をすればいいと思う」

 

からかい交じりにワニにスカートを履いてみてはと提案するととんでもねぇカウンターを喰らったので即保身に走る。

『カルシア』には似合っても『私』には似合わない、つーか耐えられない……。

 

「お、そうだ」

 

ゴスロリ服を着る(カルシア)を想像し羞恥を楽しんでいると、ワニがぴょんと擬音が聞こえそうなほど軽々イスから飛び降り、首元からその黒いチョーカーを外した。

 

外してどうすんだと思ってたら、そのまま大人しくイスに座ってたクーにぱちりと付けた。クーはされるがままだ。私がワニは大丈夫つったからだろうけどもうちょっと警戒してもいいぞ。

 

「うむ、継承。やはり犬には首輪がなければ」

「やめれ、とは言いたいけど普通に似合ってるな……」

 

はにゃ? と首元を触りながら疑問符を浮かべているクーは、確かにその白髪と対極の黒いチョーカーが良く似合っていた。……肌色面積が多いのと無垢な瞳のせいで変な気を催しそうだ。あんまじっと見るのは止めよう。

 

「クー、別に息苦しかったら外していいからね?」

「ううん。ワニちゃんからもらったものだからうれしい! つけとく!」

「ねぇワニちゃんって僕の呼び方? シアねぇこの子距離感バグってない?」

「早々首輪付けるワニもだぞ」

 

ワニ、クーが抵抗しないとわかってやってるから非難されるならお前の方だぞ。

 

大事な話というか、しとくべき話はまぁその程度だったので、その後はたわいない話をしていく。借りてきた猫……というにはちょっと違うが、あんまり喋らなかったクーも段々と会話に参加するようになってきた。

 

私とクーの出会い。ワニのループシュ救助からここまで。NZWの思い出。リアルの体ではないが実質顔を突き合わせてのオフ会は楽しいものだ。

 

私達はそのまま1時間くらい話し、そしてまだまだ話のネタは尽きないぜと口を開き合い───

 

『あーあー、お前らのリーダーオシヴァルだ。臨時校内放送をお届けするぜぇ。ルーピシュの野郎から、南方面からかなりのお客さん(ゾンビ)が来てると報告だ。連日となっちまうが、動ける奴らはヘイワークに来てくれ。繰り返す───』

 

会話は頭上のスピーカーによって奪われた。

 

私とワニは目を組み交わし、頷く。

どうやら、お仕事の時間のようだ。


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