ゾンビゲー転生サバイバル百合モノ   作:バルロjp

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二回目

「あ、ああああああぁぁあぁああがああっっっ!?!?!?」

 

「おー、ガチ瀕じゃん。リアルになってもプレイヤーはこの仕様残ってるんだねー」

『ノボルくん、びくびくしてるー』

『これ撃ち込まれた弾丸そのまま残ってるのかな。目が治ってないから、残ってるにしろ残ってないにしろ、痛みはそのままダウンしてるっぽい』

 

軽く宣言して撃ち込んだ弾丸は、狙い通りノボル君の目に吸い込まれた。

まともに強化していなかっただろう初期の体は当然耐えられるはずもなく、ノボル君は口をぽかんとしたまま倒れ、そして悲鳴を上げながらガチ瀕状態に陥った。

 

ガチ瀕状態は、プレイヤーがHP0になった時に訪れる状態異常の一種で、まぁ所謂蘇生可能時間だ。この時間に味方による蘇生や自身の保険を使えよっていうやつだね。もちろん、この状態で攻撃を受けるとガチで死ぬ。

 

いやぁ、リアルになったこの世界でも起きるもんなんだなぁ、これ。致命傷でも即死しないってどういう原理なんだろ。チェーンソーとかで切ってHP0にしたらどうなるんだろ。半分ちぎれた状態でダウンするのかな。

 

「てめえぇぇぇえええ!」

「おっと」

 

そんな益体もない事を考えていると、今までずっと抑えて抑えて抑えて我慢していたオメガ君がついにキレた。

 

今までにぎにぎしてるだけだったJames(アサルトライフル)をこちらに向け発砲───を流石に受けるわけにはいかないので、接近して手に持つws-03(ハンドガン)で銃身を弾き射線を逸らす。

 

「こんっの!」

 

銃が抑えられるのを嫌ったのか、オメガ君はそのまま銃で私を押しのけ距離を取る。そして銃を反対に向けたまま、ストックで殴ろうとしてきた。

 

私はその攻撃を避けようと思えば避けれたが、あえて顔面で受ける事を選択。

憎悪で歪んでいるオメガ君の表情を映す視界が、黒いストックで埋め尽くされ結構な衝撃と痛みで火花が散るが、もちろん避けなかった分、私の行動にリソースが余っている。弾かれていたハンドガンを戻して射撃した弾丸は、オメガ君の右肩を打ち抜いていた。

 

「ぐっ!」

「った~!」

 

悲鳴を上げつつも相手の攻撃の手は止まらない。

 

流れで襲ってきた左肘を避け、足癖悪く飛んできた回し蹴りは受け止める。残ったオメガ君の一本足を引っかけようとすると、戻ってきた左フックが顔面に当たるラインだったので『体幹』に任せバク転。

 

これでお互い仕切り直し。双方よろめきながら距離を取る。

額が切れて垂れてくる血を拭いながらオメガ君を見ると、右肩を左手で抑えながらも、右手に持つ銃は離していなかった。彼、死にたくないって感情より、ノボル君にしたことに対する怒りの執念で私を睨んでいるよ、凄いね!

 

「カルシアァ……てめぇも絶対ノボルと同じ目に合わせてやるよ……!」

「おぉ怖い! そのノボル君まだ生きてるけど助けなくて大丈夫そ?」

 

私は前髪を掻き分け、口元まで来た血をペロリと舐めながら、未だ後ろで目を抑え蹲りながら絶叫しているノボル君の事を見る。オメガ君がこんなに怒るなんてきっとリアルでは相当仲が良かったのだろう。正直言って、私に殴りかかるより、死にかけのセミみたいに時折ビクビクしてるノボル君の蘇生に走ると思っていた。

 

私はそういった考えの元、オメガ君に喋ったのだが……。

 

「近くにお前()がいるのに蘇生なんかできるか!」

 

あぁ、私がいるからか。まそりゃそうか。公式鯖じゃ、というより多くのゲームで敵が目の前にいるのに蘇生とか自殺行為だわ。あんだけ怒ってても、ちゃんと感情より理性が強くて抑えられている。

 

が。

 

「まま、安心しなよ。私別に蘇生妨害する気ないからさ。ノボル君を殺したいわけじゃなかったし」

 

オメガ君は、私の言葉を聞いてびっくり……いや、なんかこう、お前はそういう奴だよなイカれてやがるぜこのクソ野郎が死ね見たいな顔をしていた。

 

しかしこれは私の本心だ。ノボル君は「そういやガチ瀕ってあるのかなー」と思って頭撃っただけで、殺したかったわけじゃない。もちろん、ノボル君を撃てばオメガ君が怒り狂って素敵なことになるだろうなーという思いが大半だったけど……逆に言えばノボル君を殺すことが目的じゃなかったからね。

 

私がホールドアップして笑顔を見せると、オメガ君は一瞬苦々し気な顔をした後、「ぐゅ、ごゃ、ぢゅぁ、づぅ……!」と、人間がギリギリ発音できそうなラインの悲鳴を漏らしていたノボル君の元に駆け寄り、注射器(回復薬)をぶっ刺した。

途端にノボル君の体全身にナノマシンの光が周り、目が再構築された。へぇ、ほんと一瞬。凄いぞNZW世界の技術!

 

痛みが引いたからだろう。ノボル君の悲鳴は無くなり、代わりに気絶していた。

 

そんな友の姿を前に安堵した表情を受かべるオメガ君を見て、私は無性にもう一度ノボル君に弾丸撃ち込んで殺したくなってきたが流石に止めておく。メインディッシュはまだまだ育てれるからね。今餌を一個使いきるのはもったいない。

 

さてと。場も落ち着いたし、いいものも見れて、次回への仕込みも終わった。

 

「じゃ、顔合わせも済んだし、私は帰るよ。人質回収に来させるから、5分以内に遠くへ行っといてね」

 

私はじゃれあいで落ちたシルクハットを拾い、ぽんぽんと埃を叩き落とす。あー、今被ったら血が付くな……まそれも味ってもんか。

 

「ノボルを殺しかけといて、よくそんな飄々と顔合わせとほざけるなてめぇ……!」

「覚悟が足りない方が悪いと思うけどね」

 

オメガ君がそう怒気を漏らしながら言ってくる。

 

彼は、現実をしっかり把握して覚悟が決まっていた。危機管理、状況判断、損得勘定。全てが公式鯖プレイヤー基準だ。身内鯖のぬるーい温度じゃなく、公式鯖の熱湯をちゃんと想像できていた。

しかし彼の仲間であるリーダー君も鉄丸君も遊び気分で、ノボル君は覚悟が足りなかった。中途半端な味方は全体を危うくする。道具として使えればまだ良いが、彼はそれができなかった。

 

何度だって言うが、NZWの公式鯖はプレイヤー同士の争いがメインコンテンツの半分を占める。ゾンビ、動物、異世界生物、NPC。生物に準ずる敵は色々といるが、必要なのはそいつらと対峙できる勇気じゃない。同じ(プレイヤー)と戦う覚悟だ。

 

それにしても、オメガ君は覚悟決まるの早いと思うけどね。これでWikiしか見てないって嘘でしょ、きっと一人で隠れて公式鯖してた口だ。

 

「ッチ! てめぇと同じ空間にいると気分が悪くなる、お前の仲間が来る前に逃げるが……撃つなよ」

「撃たないよ、意味ないし。にしても私そんな嫌われることしたっけなー」

「……一度、お前の親の顔を見てみたいもんだな。どういった教育をしたんだか」

「中国式の煽り? 育ちも経歴もびっくりするほど普通だよ。私も親の顔は見たいけどね」

 

いやぁ、ほんとにね。普通に育っちゃったから私ができちゃったんだけどね。

 

「……俺は今まで一度、公式鯖でてめぇと同じ鯖になったことがあるが……今ほど、あの時殺す練習をしておけばと思ったことはない」

 

そう言って、オメガ君はノボル君を背負って出て行った。なんだ、やっぱり公式鯖上がりじゃん。

 

 

 

「よし! 楽しく会話できたな!」

『………………? ワニちゃん、たのしくかいわってどういういみ?』

『少なくともアレではない』

 

無線をスルーして人質の元へ。3人の女性達は、性的な奴隷と素材的な資源として誘拐されていたっぽいが、軽く見た感じ外傷も服装も傷がないので、お楽しみはまだだったようだ。良かったね。

 

もうちょっとしたらルーピシュに回収頼も~と思いながら拘束されていた縄を切っていく。

 

「お? この人あれじゃん、ネームドの……」

『アネカリア』

「そうそれ」

 

作業中、人質の一人は見覚えがあったので、ワニと答え合わせをする。

編み込んだ薄い青っぽい髪に褐色肌。ツリ目な強気そうな整った顔。平均的な身長で、機械化されている左手。瞳を開ければ左目も機械だろう工業大学幹部な女性キャラクターさんだ。

 

「やっぱネームドキャラはかーわーいーいー。こいつ殺して剥いだら『体内除細動器(ICD)』と『人熱感知角膜(TSC)』辺りは絶対落とすってマジぃ?」

『証拠隠滅ができないから止めといた方がいいと思う』

『さっきの人がやったってみんなおもわないの? 体がのこるのがダメならクーがたべるよ?』

『剥いだモノを隠せないのが問題』

『そうなんだ』

 

そうなんだよねぇ。ま、そこまで欲しいわけじゃないし、今回は見逃してあげよう。そもそも私たちで使う人いないからね。プラフォンも合流する時にはある程度出来上がってるだろうし。

 

慈悲深い私はそう結論付け、腰のポーチにあった回復薬をパチるだけにしといた。あ、中身だけ取られてちゃ怪しまれるからポーチもスっとこ。

 

周りをもう一回見て、オメガ君達が残したものに有益な物がない事、人質達がいいものを持ってない事を確認。私は回線を切り替え、ルーピシュに連絡を取った。

 

『もしもし? こっち終わったよー。え? 車? あーうんうん、撃たなくて正解正解。で今私がいるところ人質がいるんだけど……そ、回収に来てくれると嬉しい───

 

ゾクリ。

開けっ放しのドアから吹き込んでくる風が背筋を通り髪を揺らす。どこからかジジジッと電球が切れた時のような音が耳障り悪く響いている。そんな、いつもの光景と言えばいつもの光景だけど。

 

……何か嫌な予感がする。

 

髪を弄りながら、私はゆっくりと漏れの無いように周囲を見渡していく。

 

『……カルシア? どうかしたのか?』

「っし、ちょっと静かにして」

 

勘っていうのは、人間の本能から送られる警告だ。視界、嗅覚、聴覚。脳に送られ私が処理した情報で、見逃してしまったモノを本能が拾ってくれる。

 

『シアねぇ。オメガグループの車、完全に射程外。……念のため援護に向かう。行くよ、クー』

『うっうん』

 

その勘が危険があると訴えている。ゲーム内外問わず、私は常にそれを信頼している。なんたって自分の勘だからだ。愛されない私をせめて私だけでも愛そうと決めた時、自分だけは無条件に信じるとまた誓ったから。

 

ドア。小石。死体。隙間。棚。鉄屑。瓦礫。一つ一つチェックする。

 

向かいの建物は……反射するガラス。ぷらぷら揺れてる紐。風で転がる紙くず。斜める陶器。垂れる血。……あ? あそこの陶器なんで斜めってるんだ?

 

 

そう頭が思った時には、既に体が回避行動をしていた。

 

 

パンッ!

 

体を前に傾けて前転。最後に見えた、陶器の地面の隙間。恐らく地下室に繋がっているだろう空間からは、丸い筒のような金属(多分サプレッサー)と瞳が見えた。

 

『シアねぇ!』

 

一瞬、時間が何倍にも引き延ばされる感覚と共に、右肩に衝撃が走る。想定外の危機に自然と口元が笑みを浮かべてしまう。

 

「ふっへへ。大丈夫だよ頭当たんなかったし。っとと、あーここか。オメガ君に撃たれたんなら交換なんだけどなー」

 

前転、というよりは転がり込むような動きになってしまった体を起こし、焦ってるワニの言葉に笑いながら返事する。壁を背にしながら右肩を見ると、本当にちょーどオメガ君に撃った辺りから血が滲んでいた。いやぁ、これは相手のエイムが悪いのかいいのかわかんないなぁ。

 

にしてもやっぱ何かいたかー。うんうん、こっちに来ても私の勘は絶好調っぽくて良かった。

 

じくじく主張する痛みと盛り上がってきた展開でテンション爆上げ。上機嫌になりながら、痛みを誤魔化すように私は声を張り上げる。

 

「へーい! 私より全てにおいて下だから下にいるのはいいけどさぁ、パンツ覗こうとするのは感心しないなぁ! 顔ぐらいは見せてくんなーい? それにドックタグなんて持ってないだろうし、墓に刻む名前ぐらいは聞いときたいんだけどー!?」

 

初手適当に煽り。初心者は何か言われたら日本語上手いねと返すのがオススメだ。総HP的には2割も削れていないとは思うが、今後を考え人質から奪った回復薬を首元に撃ち込む。

薬液というか、ナノマシンが私の全身に駆け巡り、切れていた額も撃たれた右肩も細かな手足の傷も治していった。おいこれ右肩内に残ってた弾丸も消えてるぞ凄いなナノマシン。

 

果たして煽りに釣られたか、それとも逃げ込んだ私を単に脅威じゃないと判断したか。ガコンっという音と共に、何かが出てくる気配がした。

 

「ハァイ、化け物……5時間振りくらいかしら?」

 

……は? この声……ロシュア?

 

一瞬思考が止る。ロシュアは確実に殺した。なんならクーが食べたし頭は投げた。『体内除細動器(ICD)』でなんとかできる範囲じゃないし化けて出るには早すぎだ。となるとまた厄介なイベント持ちか異能力持ちか───

 

 

そこまで考えて、とりあえず私は左手で飛び出し撃ちした。過程がどうあろうと、ロシュアとはもう敵対している。工業大学の人達と違って生かす価値がない。

 

「! やっぱり容赦なく撃ってきたわね……。あなた、やっぱり研究者と同じくらいイカれてるわよ」

「こんな世界だからね!」

 

が、防がれた。前の不意打ちから学習してちゃぁんと盾を持って来ていた。しかもあれ、ノボル君のライオットシールドの3段くらい上位互換のエネルギーシールドだった。えー奪いたーい。

 

『あ、ロシュアさんだ! おいしかったなぁ』

『やだ隣のロリ怖い……』

 

こっちは真剣にやってるっていうのに、援軍に来てるらしい向こうはまるで緊張感がない。

けど珍しく純粋に怯えているワニの声音を聞いたな、その表情を想像すると笑える。

 

「ふふっ……。で、どーして生きてるのかなぁロシュア。あ、持ってたものは有効活用させてもらってるよ、ありがとね」

「……どういたしまして。言っておくけど、私は借りたものはキッチリ返すし、貸したものはキッチリ返させるタイプよ。どうして生きてるかは……あなたの殺し方が足りなかったからよ」

「やーん。答える気ないってことー? ちなみにロシュアの死体は首投げて服ひん剥いて肉はゾンビに食べさしたから、殺し方が足りないって事はないと思うよ」

「………………。やはり、あなたは生きてちゃいけない存在ね。人類に産まれるべきではなかったわ」

「まーそれは私も思うけどっ!」

 

呼吸も落ち着いてきたので、遮蔽物から身を乗り出ししっかり狙って撃つ。もちろん、私の最弱ハンドガン(ロシュアの遺品)ではエネルギーシールドを貫けはしないが、撃った弾丸は狙い違わずロシュアの額の位置に吸い込まれていた。

エネルギーシールドで阻まれ、落ちた弾丸がかんっと音を鳴らす。

 

「かと言って、こんな性格()。人類以外じゃ造られないものなので」

 

 

『あら、〇〇。もう自分のお名前が書けるようなったの? 賢い子ね~!』『〇〇! か、母さん、見てくれ! 〇〇が立ったぞ!』『〇〇が何でそんな事したのか、お母さんにはわからないけどね。お母さんは〇〇が正しい事をしたって信じてるからね』『おぉ、この子だこの子! ほれ見てくれ! あぁ何と愛おしい赤ん坊なんだ! 我が娘よ!』

 

海馬の片隅にしまい込まれていた記憶が薄っすらと蘇る。

私を愛して欲しいという本能的で子供な欲求と、私を愛するなという理性的で大人な思考が脳を支配していたあの頃の記憶だ。……だから私が嫌なんだ。カルシアに逃げたって、私は相変わらず愛を求めたがる。

 

 

さっきの言葉は挑発的に笑いながら言ったつもりだったけど、最初はともかく最後は空虚な笑いみたいになってしまった。んーダメだ。やっぱ自己分析とか嫌いだな。

 

そして、若干の精神面の自傷を負ったというのに、薄い青色に輝くシールド越しのロシュアの顔は厳しいものだった。

 

「……あなたが何かワケアリそうっていうのはわかったわ。口を出していい事かわからないけど、きっと親御さん関連ね。けどだからって、人類にとってもあなたは許していいものじゃないわ。あのクーちゃんはまだ分からないからともかく、人類のより良い今後の為にあなたには死んでもらう。歪みきってしまった者はもう戻せないの」

 

……へぇ。いいね。

 

「なんだぁ、ロシュアも素敵な性格してるじゃぁん。……もーほんっとに好き最高。あ、私カルシアね、是非名前で呼んで?」

 

『は? 何で僕以外の女に名前呼びさせようとしてるの?』

『ワニちゃんが怖い……』

 

前にも言ったけど、私は人としてダメでイカれててゴミみたいな性格尖がってる人が大好きで、それと同じくらい自分がしっかりしているヤツも大好き。リーダーは後者だったけど、ロシュアは性格の尖り具合が私を好きにさせた。

 

「名前は憶えてあげるけど、呼ぶのは遠慮するわレイヴライン(狂ったお嬢さん)。それに、どうせここであなたは死ぬもの」

「ははっ、殺すってどうやって? 流石に今のロシュアにやられる程私は軟弱じゃないよ~」

 

銃をクルクル遊ばせながら私は笑う。確かに今の私は、途中で死んじゃった前世のカルシアよりも弱いけれど、それでもロシュアにやられる程やわじゃない。ロシュアのスキルや武力じゃなくて、エネルギーシールドレートのアイテムで殺しに来るかもしれないけど、それでも対処できる自信があった。

PVEは好きだけど、私が得意なのはPVPだ。

 

「えぇ、そんなのわかってるわよ。この体はまともに強化をしていない自然体。道具に頼るにしても、きっとかなりの質じゃないとあなたは殺せない」

 

その事はロシュアも重々承知らしい。盾とは逆の手で持っていた狙撃銃を、顔まで上げてからパッと離し、自分は無力だという事をアピールする。がたっがたんと銃が落ちる。

 

そしてひらひらと手を振り、腰まで下ろすと───

 

「だから、道具の数に頼る事にするわ」

 

リモコンのような物を取り出して、指を押し込んだ。

ピッ、という電子音がここまで響く。

 

そして途端に感じる……これは、振動?

 

「……あー、聞いてもいい? そのスイッチは?」

「このスイッチ自体は何てことないわ。ただの扉の開閉器よ」

 

振動の音がどんどん大きくなる。振動は足元……いや、周囲のあちこちで発生しているようだ。奥に見える建物内に、ロシュアが今いる地下通路のドアのようなものが開くのが見える。

 

「このスイッチの意味は直ぐにわかるわ。それじゃあ巻き込まれたくないし私は退散するわ。また会わない事を祈ってる」

 

周囲を確認している間に、ロシュアは元の地下室へと戻ってしまった。それはいい。それはいいんだけど……この状況はマズい気がする。

 

何故なら……地下の振動が。ドアの開閉だけじゃない……唸り声のようなものが大量に聞こえ始めた。

この振動は、機械が動く音じゃない。人型の生物が、一斉に移動しているが故の振動。

 

『おい……マズい。何故かはわからんが、お前を囲む用に、大量のゾンビが地面から湧き出している』

 

ルーピシュからの緊急コールで確信した。

 

ロシュアが言っていた道具の質で潰すとは、大量のゾンビで押しつぶす事だったんだ。

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