ゾンビゲー転生サバイバル百合モノ   作:バルロjp

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帰還

ぐちゃり。プロペラが主張する風切り音に混じり、着陸時にゾンビ達を踏みつぶした音が聞こえた。にしても結構着地場所絞られてるっていうのに、着地技術凄いな。

 

「よぉ、イカしたファッションしてんな。おじさんの俺には理解できんが、それが所謂若者の流行か? 背景もバッチリ決めててソシャゲの一枚目見たいだぞ」

 

そんなヘリから降りてきたのは我らがリーダーだった。下手したらゾンビとの大規模抗争が予想されたからか、部下に任せず自分が出てきてくれたらしい。銃を担ぎ、左手の義体は戦闘用のイカつい奴だった。

 

「重役出勤過ぎるよリーダー。もう皆解散しちゃった」

「そいつは失礼。正直会議には間に合わないと思っていたが……なんらか予想外の事が起こったっぽいな? まぁいい。ほれ、新しい制服だ。とりあえず着とけ」

「おーん?」

 

一度引っ込んだリーダーが、ヘリコプター内から何か黒い物を渡してくる。何だと思って受け取るとそれは布の塊で、広げるとモッズコートだった。

 

「着とけ。お前血で分かりづらいが上半身すっ裸だぞ。……あぁ、ワニもか。もう一着もう一着……クーちゃんは……サイズ合わないけど用意するか」

 

リーダーに言われて自分の体を改めて見てみると、着ていたTシャツはぼろっぼろを通り越して無くなっていた。下着だって当然紛失。リアルはバトル漫画のように、女性キャラの局部だけ守るように服が残る、なんてない事が証明された。ショートデニムは……ギリ、ダメージジーンズだって言い張れるレベルかな? まぁ大学帰ったら新しい服探しますか。

 

同じくモッズコートを受け取ってる二人を見ると、クーは水着以外が失われていた。よって水着マントロリから水着コートロリとして生まれ変わっていた。右手が入らず着崩しているのが何かいい感じにキャラを醸し出している。

ワニは上半身の、比較的防御力高めな作業服だけ無事、後は私同様ぼろぼろだ。破けたストッキングは黒から赤に染まっている。あ、ワニお前作業服の上からモッズコート着るってマジ? 脱げばいいのに。

 

見てたら最後になったので、私もモッズコートの裾に手を通し、中二病の発作としてフードを被る。そしてポケットに手を突っ込めば完璧だ。今私血まみれだから多分洗濯大変だろうなぁ。

 

「ほれ、乗り込め。このヘリだって供給以上の燃料消費だからそう長く動かしたくねぇんだ、さっさと帰るぞ」

「今この重たい体と戦ってるんだよ。おんぶしてくれもいいよ?」

「ンな血だらけの体おぶりたくねーよ」

「おねーちゃんつかれてるならクーがはこぼうか?」

「いや流石にそれは良心が訴えるのでいいです」

 

ダルい体に鞭打って、勢いつけて立ち上がる。治療薬のおかげで身体的には全回復してるわけだが、それでも精神的な疲労は落とせない。未来のお薬もそこまで万能じゃないのだ。……副作用考えなきゃあるけど。

 

私、クー、ワニと三人が乗り込み、リーダーが少し外を確認してからヘリのドアを閉める。そして操縦席に座り、スイッチをガチャガチャをいじる。

 

「よぉし、飛ぶぞ。大学までお前らが耐えたぐらいだ。ゆっくりしときな」

「あいよー」

「はーい」

「おけ」

 

返事をしながらも、私はイス……はあるが、血だらけだし座る気にはならなかったので床に寝っ転がる。ワニは頭上でイスに座らず背を預ける形で座り込み、クーは窓から外を見るのにご熱心だ。

 

そんな搭乗者達に、リーダーは苦笑しながらヘリを動かす。

 

「自由なこって……。まぁいい。お帰り。よくやってくれたな、お前ら」

 

 

 

人類の数は有限だ。ならばゾンビ化した人達だって有限なはずである。

一日一体だろうと、ゆっくりゆっくりゾンビを処理していけば、いつかは生存者だけの世界が訪れると、私は幼い頃ゾンビ映画を見ながら思っていた。

 

そんな考えに対して、NZW君はキチンと答えを用意している。

 

それは───

 

 

「クローン施設鎮圧作戦ねぇ」

「ああ。お前らはまー十分つーか十分過ぎるな武力と戦果を示したからな。俺たちも少女と見るのを止めて、カルシアと見なければならない。すると、現状一番力を注ぎたい作戦への参加要請をしたくなったってワケだ」

 

ふぅんと独り言ちながら、内心笑みを浮かべる。薄々予想はしていたけど、やっぱりここ、マートラには『R社実験派出所』があるようだ。

 

あの後。私達はヘリで帰宅し、屋上で出待ちしていた、人質だったアネカリアと恋人関係だったらしいルーピシュに土下座で感謝された。

なお出撃人数は私達含まず43名。その内死者数は18名で帰還者は40名だ。凄いぞ『復元細胞(リス)』と『体内除細動器(ICD)』。

 

で、確かに労いの言葉を受けたはずの私達が、なーんで帰還して直ぐ会議室へ連れてこられたのは何でなんですかね?

 

怪我の確認とかしたいんですけどー! お風呂というか着替えも休憩もしたいんですけどー! ほら見て、私頭から血が流れてる!(自分のではない) おいせめてイスぐらい用意しろよ。何でリーダーは座ってんのに私は立たされてんだよ。私は悪い事して教師に立たされてる小学生か? ここ大学だったわ。

ちなみにセットで連れてこられたワニは普通に座って弓をみょんみょんしてるし、クーに至ってはマキシマムからお菓子を貰っていた。は?

 

「ここに住んでいた俺らも知らなかったんだが、どうもR社の施設があるらしくてな。男女の交わりを超えて赤ん坊ができるべきと考えている俺にゃー倫理的に許されるモンじゃないと思ってるが、そこでクローン関係の実験を行っていたらしい。ま、ゾンビなんて非現実的な物を蔓延させたR社の施設だからな。そういうのがあってもおかしくないってこった」

「鎮圧、って事は、それが何か悪さしてると?」

「そうだ。今回のゾンビの襲来も元を辿れば南西からだからな。調査の結果、どうもあそこは定期的にゾンビを排出している。……誰かが操作してんのか、勝手に暴走してんのかはわからんが、俺らにとっても他の生存者にとっても喜ばしいことじゃないからな。前々から鎮圧は計画していた。……わかってなさそうなクーちゃんはともかく、お前らほんと落ち着いてんな、ここの連中でも顔をしかめる奴らが大半だったぞ。本当に子供か?」

「マキシマムー。私とワニって子供だよねー?」

「この場に子供はクーしかおらんぞ」

「このロリセンサー壊れてるな」

 

私の暴言もなんのその。マキシマムはその筋肉を揺らしながら、新しいお菓子を取り出しクーにあげていた。あんまりウチの子を甘やかさないでください。

お前、お菓子で釣りつつ、唯一体質的に回復薬とかぶっ刺せないクーの傷を見るのはいいけど、『クッキングケミカリー』効果でヘリ降りる頃にはクーの傷全部癒えてるからな。さっきそう伝えたろ。それでも触診するってやっぱただのロリコンだろお前。

 

「んんー」

 

視線を後ろから天井に移して悩み声。

正面ではリーダーが腕を組みながらこちらをじっと見ている。リーダーは参加要請と言った。つまりこれは強制されない、自由参加枠だということ。まぁ十中八九クローン施設に何かしら問題というか、危険が大きいからかな。R社施設だし。

多分リーダー的には凄く参加して欲しいだろうねぇ。ゾンビを定期的に吐き出す施設だなんて、個人的にも立場的にも障害でしかない。じゃあ鎮圧のための戦力を集めないと……ってとこに私たちがきたって所かな。

 

ま行きますけどね。

 

「おっけおっけ。参加する。R社で欲しいものもあるしね。ワニたちもそれでいいよね?」

 

「プラフォンはこう言ってた。二兎を追う者のみ三兎を得よ」

「おねーちゃんたちが行くならついてくー」

 

「だって」

「あー……本当に大丈夫なのか? かなり危険だぞ?」

「自主性が著しく低いクーの事は私もヤバいと思ってる」

 

多分聞かれた事の本懐とは違うとこだけど、そう真面目な顔して顔して返すとリーダーは懐疑的に潜めていた眉を緩ませて苦笑した。

 

「っくく。薄々分かってきたが、お前も分かってて言ってるんだよな。ま、それならよろしく頼むぜ。今回の作戦は流れの傭兵じゃなくて俺らのチームって(てい)でな」

「そう扱ったのはリーダーじゃーん」

「入って直ぐの新人それも子供に、戦闘班と同じ働きなんて求めれないんだわ。マキシマムテストを抜けていたとしてもな」

 

そりゃそうか。重要なクエスト・イベントは有効度に応じて解放されてくもんだからね。

 

「よし、これで話は終わりだ。今回の作戦報告は───後でプトラにでもやってくれ。拘束してすまなかったな、風呂でも入って来い」

「あーい。またクローン施設について作戦会議するとき呼んでねー」

「立て直しもあるし暫くはねぇよ。今回のでクローンゾンビ排出も猶予できたしな。まぁゆっくりしてろ」

 

リーダーに背を向けぷらぷらと手を振りながら、行くよーと声を掛けマキシマムからクーを回収する。

っふ、どんだけ餌付けしようと私には勝てないぞマキシマム。なんたって身を切って(偽り無し)クーの世話をしてるからな!

 

柔らかい仏頂面から能面な仏頂面になったマキシマムを横目に、弓を背負い直したワニ、クーと共に廊下へ。

部屋から出る直前、後ろから「仲間を助けてくれて感謝するぜ」と薄っすら声が聞こえた。

 

 

「やっぱりクローン施設だったね、シアねぇ」

「んね。安定した保険だし早々に見つかったのはツイてる。今回は運がいいね~」

 

薄っすらと月明かりが降り注ぐようになってきた廊下。最上階だからか、幹部の会議室だからか。人は周囲に見えず、窓から見えるグラウンドも子供が消え、荷物を運ぶ大人がちらほら見れるくらいだ。

 

顔を触ると、乾いてきた血が粉となってぽろぽろと落ちる。うーん、戦ってる時はそんなだったけど、やっぱアドレナリン切れちゃうとファントムペインで普通にきゅいきゅい(痛みの擬音語)するな。

……こっちみんなクー。ワニもだぞ。急に後ろからマキシマムが出てくる可能性だってあるんだから、大学構内では我慢してください。というかこれ私の血じゃないんだって。

 

「うぅ……はーい。あ、そのクローンしせつっていいものなの?」

「よしいい子だ。クローン施設は……あ~。ワニ、前に何かの説明で飛車角金銀とかわかりにくい説明した汚名返上だ。説明して」

「クローン施設は、いわばシステムキッチン」

「なんも正しくない例え来たな……」

 

窓に背を向け、上半身を外に出し空を見ながらため息をつく。すると横にワニが肘杖付きながら同じく身を乗り出してきて、クーもそれを真似して窓から顔を出すと、左手をぶんぶんさせ始めた。

 

「えっとね、クローン施設はたまーに生成される施設で、制圧するまではただの定期的にゾンビを補充してくる迷惑な施設。と、いうか制圧してもゾンビ補充は止まないから迷惑なのは変わりないけどね。けど制圧するとご褒美があってぇ……」

 

ちなみに前言った、身内鯖じゃ発動しない『共命』イベはこの施設絡みだ。どんなイベントか一言で言うと過剰供給です。

 

「クローンが作れるんだよね、自分の。登録した時の自分が反映された状態で、自分の残機が作られる。要は死亡保険よ、死んだときこの施設からリスタートできるっていう。あ、ちなみに装備は保険適応外ですので、登録時持っていた装備はダメでーす。モジュールは全部装備扱いだから、サイボークビルドはこの保険もってしても悲しい思いをするよん」

 

なお、このクローン施設は全人類のクローンを順次作っているという設定の都合上、一度自分のクローンが消費されると三ヶ月再使用が不可となる。やっすい保険だからね。

 

まぁ、この世界じゃどうかは知らんが、ゲーム的に言えば中間フラッグだ。分類上は『体内除細動器(ICD)』と同じようなもの。

あ、死んだら終わりゲーじゃないかいって思ったそこのあなた、安心して欲しい。後半になるとこの程度のレアリティが低いやっすい保険なんて、施設丸ごと吹っ飛ばされて使用不可になる。そもそも、これもまたチームとかが占拠する争いの種だからね。

 

「えと……クーが二人? 一人がそのばしょでまってるの? でもクーは一人しかいないし……」

 

あ、クーが混乱してる。いや私もこんな噛み砕かず適当に流した説明で理解させられるとは思えないけどさ。

さてどう追加で説明しようかと思ってると、隣のワニが話しかけてきた。なになに、いい説明思いついた? 汚名返上もう一回する?

 

「こういう時さ」

「うん」

「おら! 理解(わか)れ! 催眠! ってできたらいいよね」

「草」

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