「今日はシアねぇを好きに着せ替え人形にしても良いと聞きました」
「おねーちゃんとクーをおそろいにできるようになると聞きました!」
「カルシアちゃんに可愛い洋服を着せれると聞きました!」
「言ってねぇし聞いてねぇ……」
作戦終了から与えられた共同部屋に戻りぐーすかぴーぐーすかぴーして、抱き枕にしていたクーがどこか行っても寝続け、ワニから与えられるご飯を寝転がりながら食べて。そんなクッソ自堕落な時間を過ごしていたら、ついぞ午後3時になっていた。
やっべ流石に寝すぎたかと思ったけど、私は一応昨日獅子奮迅な活躍をしたわけで。仕事割り振られていたわけでもないし、まま今日ぐらいいいやろと勝手に納得した。
目をぐしぐしとこすりながら時計を確認し終わった私は、んぉおおおと声を出しながら体を伸ばす。そのまま軽い柔軟を行って、睡眠を享受しまくった脳を起こす。
「あぁ……めっちゃ寝たな……久しぶりにこんな寝た……」
ペットボトルから水を補給して周囲を見る。こんな時間では当然クーもワニも起きているはずなのでここにはいない。……クーが私を離れるかぁ? いや、クーはプトラちゃんを信用できるリストに入れてたはずだし、ままプトラちゃんかワニに連れられたんでしょう。
「んー……とりあえず顔洗お」
飲み切った空のペットボトルを放り投げ、少し肌寒いので置いてあった作業服を羽織る。ここはマンションではなく大学であり、流石に全教室に水道が通っているわけじゃないので、顔を洗うのなら多少歩かなければいけない。
私は下着で寝る派なので、今の恰好は無地の白パン白ブラにさっき羽織った作業服だけだが……まあここは女子階なので、誰かに出会っても問題ないだろう。
ガムテープで仮で仕分けられた玄関からサンダルを取り、壁に掛けられている鍵を見る。ん……まぁ盗られて困るモンも無いし、プトラちゃんの『言質』あるし、鍵は掛けていかなくていいでしょう。そもそも顔洗うだけだからそんな空けんし。
私はトントンとサンダルで地面を叩き、踵を落として(サンダルなので踵を落とすとかない。ただの癖)から片手作業服のポッケにドアを開ける。
そして廊下に向けた私の視線に入ったのは、冒頭のセリフを向けてきた、ワニ、クー、プトラちゃんの三人の笑顔だった。
洗顔歯磨き髪梳きを終えた私が引っ張られて連れてこられた先は、前もクーがお世話になった『服共有場』の、奥にある教室。その扉を開けると、私達を出迎える服、服、服。奥に帽子やらアクセサリーやらが少し見えるが、基本的には辺り一面全てが様々な種類の服で埋め尽くされている。
まるでお店のように綺麗に畳まれ整頓された状態で、ハンガーに掛けられた状態で、マネキンに着せられた状態で。ともかく色んな方法で保管されていた。
「ここは真・服共有場……別名、ご自由にお着飾りなさい! 布にもガーゼにも雑巾にも困らない物資を蓄えた今、戦う非日常と化した今だってオシャレを楽しみたい女性戦闘班の皆様によってできた教室だよ!」
「こんなに、服、いる?」
「ちなみに特別優遇税措置が取られているから、
「わーお」
「さぁ! カルシアちゃん! そしてついでにクーちゃんもワニちゃんも! いっぱいオシャレして楽しもうね!」
ぐっとプトラちゃんが天に拳を突き上げる。プトラちゃんの目は燃えていた。
「……学生服のプトラちゃんがオシャレについて何か言ってる。帰っていい?」
「ダメ。シアねぇが主役なんだから1抜けは許されない」
「というかおねーちゃん、クーよりすごいかっこう今してるんだよ?」
私は自分を見下ろす。
作業服(上)に下着姿だった。何も言えねぇ……。
「それではルールを説明します! 各人はそれぞれ1時間以内に、カルシアちゃんに
「試着させてあげてねって言葉、
というか、1時間て。いっつもお母さんが買って来てくれて、自分が買うなんてほぼしなかったから、そんなに時間かかるものなのか疑問なんだが……。
「あー、確かにカルシアちゃん服とか興味なさそうだもんね。そんなに可愛いのに……」
「
「ん……。正直、僕もそんなに服を選ぶとかしてこなかったから、自分の服が適当でもいいやって気持ちはわかる」
「ほら。これが民意ってことよ」
「でも、
「こいつ……」
お前未成年だろうが。
あーもうダメだ。私の味方は服という文化すら最近知らなかった私全肯定クーだけなんだ。
そしてそんなクーは、先に着せ替え人形にされたのかそれとも渡されたものをとりあえず着たのか。古代ローマ人が来てたような、左肩で留める白布に、上下カバーする紺のオーバーオールを着ていた。この娘のファッションもいい加減どうにかした方がいいんじゃないですかね。
「あ、クーちゃんにはカルシアちゃんが寝てる間に色々とお喋りして、
「ごはんには付け合わせがあるって学んだよ!」
「何を学習したか一切わからないコメントをありがとう」
服選ぶって時に何で付け合わせの話をするんだよ。着飾らせることで私の味が上昇するってか?
「じゃあ、皆カルシアちゃんへのコーディネート選び~~~……開始!」
「「おー!」」
「おぉん……」
もうどうとでもなれ……。
三々五々に散っていった(と、言っても大教室一個分の広さなので目視できるが)三人を見届けた。
回れ右して帰ってやろうかと思わなくもないが、楽しんでる3人をがっかりさせるのも忍びない。私は諦めて現状を受け入れる事にした。
となれば、適当に冷やかしに行くか。試着されろってプトラちゃんにも言われたし。私はとりあえず一番近くで座り服を物色していたクーの元へ向かう。
クーは服を破かないように左手で慎重に選んでいた。ちょっと前屈みになっているからか、前髪が目にかかって邪魔そうだ。後で留める道具でも見繕ってきてやろう、こんな部屋だしあるでしょ。
「hi、クー。クーはどういう服選ぼうとしてるの?」
「あ、見て見て! 青色の服! まえのクーとおそろい! しちゃくしてみて!」
私の声に反応し、笑顔で元気な声を張り上げクーが手を私に突き出してくる。
その手に握られているのは、青色の(マイクロ)ビキニだった。
そっかぁ、これが因果応報かぁ……。
「マントもあるよ!」
「………………選んでくれて、ありがと」
これ、着るのか? 私が?
その一言は、クーの善意100%の瞳に負け出てこなかった。
「……ッスゥ……これ、多分サイズ合わないから、もう一個大きいの選ぶね(逃げ)」
「あ、ついクーに合うサイズで探してちゃった」
クーのサイズでもマイクロである事には違いないと思うんですけど。
私は水着エリアからまともな青色ビキニを取る。他にも転がっていたアダルト系の水着は見なかった事にした。アダルト系というかエロ系だわ。なんでこんなもん置いてるんだよ。これでオシャレを楽しむって、正気か?
ともあれ、試着しろと言われたからにはせねばならない。まぁ、
同性しかいないし、そもそもお風呂共にしてるし、私は裸見られて気にするタイプじゃないしでこの場で着替えてもいいのだが、教室の隅にカーテンの仕切りで更衣室っぽいものが設置されていたので利用させてもらう。
羽織っている作業服を脱ぎ、無地の下着も脱いで、代わりにビキニ上下を身に着け、黄色基調のコートを羽織る。
備え付けられた鏡を見ると、そこにはビーチにいたらさぞ似合うだろう恰好をした
ここまでやって気づきましたが、実はさっきまでと服装大して変わってないです。
「着替えたよー、クー。どう? クーの想定通り?」
「わー! 前までのクーとおそろいの恰好だね!」
カーテンの仕切りを取り、クーs'コーディネートを見せる。素肌にコート生地って、やっぱ肌着と素材が違うからゾクゾクするタイプの違和感あるよね。
「……そうなんだよ。クーは服装変わったのに何で
「えと……クーの今の服、プトラちゃんがオーダーメイドしてくれたやつだから、同じものないって言われたの」
「なるほどね」
やはり全ての元凶はプトラちゃんか。
私は教室の反対側で物色しているプトラちゃんに目をやる。彼女は床に服を並べ色々とイメージしているようだった。うんうんと唸っている様子がここからでもわかる。次はこっちに向かうとしますか。
また着替え直すのも面倒なので、このクーセットは着たまんまでいいや、対して露出面積とか変わってないし。
さっき脱いだ下着と作業服を更衣室の端に追いやり、ついでにそこらにあった麦わら帽子を手に取りクーに被せる。
うにゅ? と左手で鍔を抑えながら見上げたクーはオーバーオールを着用してるからか、田舎の少女感が満載で、ロリなクーにはマッチしていた。
「うんうん、似合ってるよ。それじゃ、私は次プトラちゃんとこ行ってるから」
「ん、ありがと! クーはまだまだおねーちゃんに合いそーなの考えてるからね、行ってらっしゃーい!」
「うーん、ここは思い切ってゴスロリ服を着せるべきか、それとも野性味を活かしたおねーさんスタイルでいかせるべきか……」
「どっちもご遠慮願いたいねー」
「あ、カルシアちゃん、ちょうどいいところに!」
悩んでいたプトラちゃんが振り向く。床には白のふりふりレースが至る所に装飾された黒いゴスロリセットと、革ジャケにタンクトップ、そしてホットパンツのセットがあった。
クーとは別方向の衝撃に体が固まる。やっぱり、これも着ないといけないのか? 私が? お前ら露出多くないか?
「あ……先にクーちゃんの方行ってたのかな? 着替え……たんだよね?」
「2Pカラーになっただけに見えるかもだけど、これはクーのコーディネートだよ。あんま変わってないけど」
この場合悪かったのは私のコーディネートかクーのコーディネートか。どっちもダメだと思うんだけど。ははっ。
「まーカルシアちゃんはそういうのも似合うけどね。この場合は、カルシアちゃんが美人だからじゃなくて性格上似合うって感じだけど」
「つまり私はこんな格好しててもおかしくない性格してる、とプトラちゃんに思われてるってこと……!?」
「え、うん」
「素で肯定された」
「いやだって、カルシアちゃんさっきまでの恰好今と同じだったじゃん」
「………………」
『無言は肯定。死人は無効票』。プラフォンに言われた言葉です。
「んっんん! まあまあそのことは置いといて! プトラちゃんが選んだ服見ていこうぜ、もう私の好みじゃないことはわかってるけど」
「いやいや、確かにカルシアちゃんの好みじゃないかもだけど、それでもカルシアちゃんには絶対似合ってるんだって! いい?」
そこでプトラちゃんは私に体ごと向き直すと、一呼吸して語り始める。
※まともに読まなくていいです。
「いい? まず
「ストップ! もういい、もう十分聞いたから大丈夫!」
若干憔悴した私に喋るのを止められたプトラちゃんが、え、そぅお? といった表情でこちらを見る。
びっくりした。まさか急にこんな早口オタク(失礼)されると思わなかった。や、別に早口だったわけじゃないんだけど、急にとんでもないセリフ量になったから恐怖まで感じた。しかもあんだけ喋ってたのにこの娘息切れ一つ起こしてねぇ。こわい。
「ま、まあ、私がいかにこのゴスロリ服似合ってて、プトラちゃんがいかに情熱を持っておすすめしてるかはわかったよ」
「でしょ? 私もどっちかっていうとこのゴスロリ服の方がおすすめなんだよね~!」
「じゃあ
「なんで!?」
いや、どっちかっていうとまだこっちの方が許容範囲内なので……。あんな……あんな可愛い可愛いした服なんて今更着れるかって気持ちが、どうしてもね?
ぜぇったい可愛いのにーというプトラちゃんの若干拗ねた声から逃げるように、アウトローセットを取って更衣室へ。
ちゃっちゃと脱いで、ノーパンなまま着るわけにはいかないのでパンツを履き直しホットパンツ、タンクトップと革ジャケを着こみ。総評は……まぁ、
「はい、着てみたけど……どう?」
「わー! うんやっぱりすっごく似合ってるー! んーこっちもこっちでカルシアちゃんの野性味を強調してていいねいいね!」
そう興奮しながらコメントするプトラちゃんを温かい目で見ながら、自分の服装を改めて見てみる。
まず上半身は黄色の幾何学模様で装飾されている白地のタンクトップ。当然肩出し腋見せだ。おへそは隠れてる。革ジャケ羽織ってるからある程度は隠してるけど……これはこれで、ちらりちらりと見えるのがえっちなカルシアに仕上がってしまった。
下はカーキー色の丈が短しホットパンツ。ワニが着てる奴より短くないか? これ。皆生足好きだねぇ。……そういえばワニは昨日の集中砲火で服を失ったはずだが、いつの間にか同じものを着ていた。ホットパンツにはシルバーに輝くベルトも巻いてちょっとアウトローっぽさを助長させていて、下は当然ブーツ。これは動きやすくて好きな方。
フったゴスロリにあったアクセサリーの類はこちらにはほぼほぼなく、代わりといっちゃなんだけど、ジャケと一緒で革でできた、仕事人とかが付けてるタイプのピッチリした黒の手袋がオプションで付いていた。
脚を惜しげもなく晒したこのファッション、私は裸族ってわけじゃないけど、結構好みではある。この格好でも初期装備よりは露出減ってるんだけどね。
「こんな都市部より砂漠とかもっと荒廃したところにいそうなギャングっぽくて最高!」
「褒められてるのか? それ」
「もっっっちろん! あぁ~私は雰囲気が合わなかったから着なかったけどカルシアちゃんは服に着られる事ないから色々試せそう! 次は何にしようかな~!? どうせならスーツとか
「いや、私はそんなコスプレ系統よりは実用性を……プトラちゃん? プトラちゃ~ん? ダメだ、ラリってる」
私の試着姿を見て大興奮で感想を残したプトラちゃんは、そのまま自分の世界に戻ってしまった。ここで肩に手を置いて振り向かせても面倒になる予感しかしないので、もういいや、ほうっとこう。
私はプトラちゃんを後にし、ワニの元へ向かった。
ワニ。
こいつはNZWに来る前からのフレであり、こういった日常シーンではリアルではなくゲームとしての視点で遊んでくる奴である。
つまりネット特有の"お遊び"をしてきかねない人物ということで……。
「やっほワニ。服決まった?」
「僕には……僕にはシアねぇが嫌がるようなコスプレ服とかを着せるなんてできない! あ、ということで服は選ばないからシアねぇ裸ね。これが僕の欲望、ふへへ」
「せめて歯には衣着せろよ」
こういうことをやるのである。
やはりこいつ教育の仕方間違ってんだろ。いや教育で言えば私達全員そうなんだけど、それでもしっかり再教育しとけよ
「お兄ちゃんには家族には何してもいいと教わった」
「どこもかしこも歪んでやがる……」
甘やかしてるんじゃなくて教師が歪んだ価値観持ってるだけだった。いや、教師がダメという点では一緒か……?
「まあまあ、じゃあ一緒に服選ぼうよシアねぇ。ここ凄いよ、レア程度までならMOD含む大体の服類が揃ってる」
「へぇ、ここそんなにあったんだ。私あんまりカルシアのファッション気にしなかったからなぁ」
「もったいない。ほら、太ももベルトでしょ、トレンカでしょ、指抜き長手袋でしょ」
「あ、中指で留めるタイプの手袋じゃん、エルフとかが着ける奴。実物で見るのは初めてだわ」
ワニが次々と取り出す性癖ブッツのオンパレードについつい目移りしてしまう。
ここには着たいとは思わなくても、着せたいと思わせたい服が大量だ。だから私は試着させられてるんですけどね。
ちなみに今ワニが挙げた奴を説明してくと、太ももベルトは太もも用のベルト(?)。多分ナイフとかホールドするためのモノなんだろうけど、それ用のホルスターに類似するものが一切見えないので、マジで太ももの肉を強調させるためだけのものになっている。
トレンカはニーハイの一種のようなもので、まずこれまた太ももの位置に食い込む事で太ももの肉を強調させる。で下は下で、トレンカは土踏まず部分で固定しそれ以外、つまり踵とつま先は覆わないため、足裏をの良さを得れる一品だ。
指抜き長手袋はそのまんまで、先端にリングが付いていて、それを中指を通し固定することで手袋となる奴だ。手袋って名前の割に、手の平は覆ってないし手の甲だって殆ど覆ってない。しかも肘先までしかないので当然肩出し。
「この他にも色々と性癖ファッションあるから楽しめるよ」
「この後着なきゃいけないと思うと素直に楽しめないんだよねぇ……」
その後も三人を代わる代わる回って既定の時間。
結局、私はワニが選んだコーディネイトを選んだ。
理由は単純。他の選択肢が白
それに比べれば、まぁ、ミニスカぐらいは許容してやるよ。パンツ見えるの気にしなきゃ動きやすい部類だし。
ワニ'sコーディネイト。
灰色のミニスカート、当然生足で靴はカルシアの好みに合わせられた茶色の戦闘靴。上は青のシャツに白色のベストで、デザインで赤の縦ラインが入ってるし、そのラインにに沿って胸元に何故か切り込みがあって胸の盛り上がりが見える。ワニの趣味。その上に黒のポンチョを羽織っているので肩は見えないが腋は見える。ワニの趣味。また、アウトローセットから黒の革手袋を貰ってきた。これはカルシアの趣味。