ゾンビゲー転生サバイバル百合モノ   作:バルロjp

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夏休みと7days満喫してたら2ヶ月経ってた。

こんだけ放置してたのに誤字報告とかありがとね……。

あとエターナルリターンってゲーム面白いから皆もやろうね。


検査と発見

「に、してもここのご飯は美味しいね。日本人としては味噌汁とか飲みたくなってきたけど」

「開発に日本人スタッフいたしもしかしたら、って感じ」

 

お昼時。

私とワニは、第一駐車場でバトミントンを遊んでいるクーとプトラちゃんを眺めながら、優雅にお昼ご飯を食べていた。

 

右手が大きくて力持ちなクーは左手でバトンを握り、そして時折ルールを忘れてそのデカい獣の右手をもって羽を撃ち返す。その腕が原因で、子供たちの混乱を防ぐために、しばらくは中央グラウンドへの出入りを規制されてこんな場所に来ているんだけど、本人は全く気にせず楽しそうだ。まぁ規制の理由とか教えていないからなんだけど。

 

そしてお相手、プトラちゃん。昨日の今日でクーと親交をどんどん深め中だ。運動の邪魔だからとまとめ上げられたポニーテイルをゆらゆら揺らし、楽しそうにラケットを振っている。

プトラちゃんは一般校の方でも仕事があるはずなのだが、その合間を縫ってクーの世話を焼きにくるし、我々の世話も焼いてくれる。今食べてるお昼ご飯だってプトラちゃんが作って来てくれたものだ。献身的で健気でいい子だねぇ。

 

しかし、まぁ、冒頭で言った通り、我々は体は変わっても脳は日本人。プトラちゃんのフィッシュバーガーにポテトスープに不満はなくても、どうしても味噌汁や米が食べたくなるワケでして……。

 

正直、味が濃いし油も多いんだよねぇ。エネルギーバーですらそう感じてたし、ここで配給される食事だってそうだ。海外ゲーだからかアメリカ舌が要求される。

まだ一週間もこっちで生活していないので、飢えてるって感じじゃないけど、それでも今後を考えると定期的に味噌とか確保する手段が欲しいなぁ。私はいいもの食べさせてもらって育ってるからな。

 

「有機物変換のレシピに味噌とか追加されてないかな」

「最悪、豆ならあるだろうし育てられるでしょ。僕は味噌作った事あるし、時間かかるけど作れなくはない」

「マジかー」

「宗教育ちなので」

「関係あるか? ……精進料理とか考えたらありそうかも。いやお前西洋宗教だって言ってなかったか?」

「ところで、有機物変換変換で味噌作るって、それはつまり変換元を食べてるって事だよね。今の世で一番手に入って使い道がない有機物ってつまり……」

「食欲失せるから止めろ。今ワニが食ってるのも可能性あるんだからな」

「う”っ……」

 

私とクーが最初に来た時、校門の周りにはゾンビ(有機物)の死体がたくさん転がっていましたが、今朝見ると割と綺麗になってました。きっと掃除したんでしょうね。

 

「~~~えいっ! あっあれ? 羽がどこかに行っちゃった?」

「あははっ! クーちゃん髪に引っ付いてるよ~!」

「え? あ、ほんとだ! ありがとプトラおねーちゃん! いくよー!」

「はーい!」

 

じゅ、るるるるるるる……べこっ。二人がゆるふわに遊んでいるのを見守りながら、リンゴジュースが入った紙パックを飲み干し、食事を終える。

 

「ふー、ごちそうさまでした、と。私、このあと研究室にクー連れてく予定だけど、そっちは?」

「出稼ぎ。矢が足んないから補充してくる予定。ここの購買部、矢の在庫がまるでなかった」

「そりゃぁ、序盤以外じゃ不人気武器ですから」

「雑魚的相手にコスパ最高なのに……」

 

木材一個で木の矢それなりだから、銃と比べればコスパは確かにいいんだけどね。そもそも補充が困難なのよ。ゾンビから弾丸はそれなりに落ちても、弓矢は滅多に落ちない。それが不人気たる理由よ。

 

 

なけなしの弓矢を携えたワニを見送り、仕事に戻るプトラちゃんも見送って、クーと共に研究室へ来た。子供っぽく、または犬っぽく未知の教室に警戒して私の後ろに隠れ気味なクーの頭を撫でながら、『研究室』とプレートが提げられた教室のドアをノックする。

 

「こんにちはー、赤紙貰ったクー連れて来たけどー」

「赤紙? ってあぁ昨日の! 入って入ってー!」

 

許可を得たのでドアを開ける。

教室の中にはよくわからん光る機械にガラスの中に入れられたフラスコ達。白衣やノートにパソコンなどが散らばっており、いかにも研究室ですって感じな内装だった。もうちょっとお片付けならんか?

そして、保健室や機械室などにもあった独特な匂い。何と言うか、様々な匂いを抑え込まんと強力な消臭剤使いましたって感じの、新車みたいな匂いがする。見下ろすとクーが顔をしかめていた。

 

巣窟の中には2人が見えた。といっても片方は、奥でイスを繋げて寝ていて起きそうな気配はないので、今回はカウントしなくてよさそうだが。もう一人は、さっき歓迎してくれた人物だろう、そして言葉の内容からも察せられる。室内を見回すのを止めてその人の目を向けると、昨日かるーく顔を合わせた白衣の男がいた。

 

「やぁやぁ! 俺はイガミ。ここの医療分野と研究分野担当! よろしくな!」

 

短く刈った金髪。伸びた背筋に爽やか笑顔。整った顔に清潔な服装と白衣。そして笑顔でゾンビの顔に突き刺している両手のナイフ。

 

お前、何でこの状況で「入って」って言った?

 

 

「ごめんごめん、今4徹目でさー! 最近忙しいのなんのって! それでも子供に見せる工程じゃなかったから、判断力やっぱ落ちちゃってるなぁ。これ終わったら寝る事にするよ!」

 

私の指摘を受けたイガミは、「おっと」と一言呟いた後、お子様ゾンビセット(国旗代わりのナイフ付き)を机にしまい込み、私達をイスに進めた。そして汚れた手袋をシンクに投げこみ棚からコップを取り出す。

 

「飲み物は何がいい? 変換器あるから何でもいけるよー!」

「ハイボール。この娘にはオレンジジュースで」

「おっけー!」

 

クーを座らせて私も座ると、お盆に乗ったコップが二つ差し出される。取っていいのか迷ってるクーの部分も受け取ってオレンジジュースををクーに渡す。自分の手元に残ったのをもう一度見て、ぐいっと行く。

 

……マジのハイボールじゃん。こいつ未成年にアルコール販売(語弊)しやがった。本当寝た方がいいんじゃない?

 

「で、飲みながらでもいいから聞いてほしいんだけど……。とりあえずの考察とかだから、間違ってたり質問があったら遠慮なく言ってね!」

 

イガミはボードを手に取ると紙をめくる。

 

「クー。10才辺りの女児。R社記録によれば2才時奇病を発症、両親から嘆願を受け治療施設に移行。以後、R社所有の施設にて現在義務教育課程。ま、これはR社による世界の現状見るに、実際のところどうだったかは怪しいけどね。工業大学に来てからの観察としては、精神面では、精神の成熟、教育面に遅れが見られる。人見知りとかも同年代に比べて激しい方かな。大丈夫だよ~クーちゃ~ん! おにさーん怪しい人じゃないからね~! あ、隠れられた。で、身体面。ウィルス系統の浸食が顕著に見られる。大きな変化としては右前腕。肘部分から獣の様な皮膚、体毛、爪、肉球の変化。そして頭部にこれまた獣の様な、耳に似た部位が生えてきている。過去に似た症例の報告は無いが流出したR社の実験記録による、複数種類のZウィルスが競合すると稀に起きる症状と酷似している。R社はこれに『クッキング・ケミカリー』と名付けている。なおこの症例はZウィルス系統を混ぜれば混ぜるほど発症しやすいが、漏れなく三日以内にウィルスの暴走によって被検体は事切れる。……以上が、事前に作られてたカルテだよ!」

「いやそんな、本人いる前で暴走して死ぬなんて言われても……」

「あっごめん!?」

 

しかし、R社は『クッキング・ケミカリー』とかもちゃんと研究してんだな。クーがいた施設とかもそういうのだったんだろうか。流石R社、ろくでもないぜ!

 

ちなみにクーは一切動じていなかった。というか聞いていなかった。美味しそうにオレンジジュースをちびちびと飲んでいる。お前の身体の事なんだぞ。

 

「ま、まぁまぁ本人が聞いていなかったからヨシとして……そもそも俺研究者で医者じゃないから気遣いわからんし……。っと、そうそんなわけだから! 俺にクーちゃんの健康診断させて欲しいんだよね~! もっちろん人体実験とか非道徳的なことはしないよ! 血液唾液毛を採取させて欲しいってだけで! というかそっちがメインで対価に健康診断とかもやっちゃうぜ!」

「そこは嘘でも健康診断メインって言いなよ」

「俺、嘘を付いちゃダメってプトラちゃんに言質取られてるんだよね~過去にちょっとやらかしてさぁ」

 

何やってんだお前。

 

……一抹の不安は残るが、それでも健康診断をしてくれるのはありがたい。『クッキング・ケミカリー』はウィルス変異、つまりバフであってデバフではないので、一応病気などデメリットはないはずなのだが……それでもここはリアルとなったっぽい世界。何が影響を受けて危険なデメリットが出るかわからない。保護者としてクーを引き受けているなら、そこらへんはちゃんと見てあげなきゃね。私の知識なんて所詮ゲームのデータで、実際の医学的なものは私知らんし。

 

「と、いうわけで、クーには検査を受けてもらいます」

「けんさー? あ、う~……あれ、痛いからあんまり好きじゃない」

 

あ、これ実験体として扱われていた時の記憶の名残だな。渋ってるクーなんて割とレアだぞ。

まー過程はどうあれこうなってしまってるクーに行われた検査なんて酷いもんだったと予想は付くが、研究所連中が使う検査と一般人が使う検査は内容にかなり隔たりがあるので。そこら辺ちゃんと説明すれば大丈夫でしょう。

 

「実家《研究所》にいた時のような奴ほど痛い奴じゃないだろうから安心して。この前のゾンビとの戦闘ほど痛くはないからさ。……一応聞くけど、イガミ。検査って何するん?」

「oh、やっぱ相当ワケアリっぽいねクーちゃん! 検査はさっきも言ったけど、健康診断の域を超えるものはしないよ~! せいぜい注射ぐらいかな?」

「だって。ほら、私も隣にいるから」

「ん……」

 

クーは私に対してはイエスとしか言わないけど、こうやって自己表現をするのはいい事だ。子供はやっぱ子供らしく嫌な事は嫌って言わないと。それはそれとしてこれは必要なことなのでやらせるけど。

 

 

「じゃ、夜には結果上がってるだろうから、君たちの部屋に届くようにしとくよー! いやぁ、犬に脳移植されたスコットといい複数のゾンビウィルスの感染体となったクーちゃんといい、ここにいると興味深いものがいっぱいあるねぇ!」

「はい倫理。イガミ、本当に医者にはなれなさそうだよね」

「これでも研究所の連中よりはマシだよー」

 

2時間ほどして検査が終わったクーの手を引き、イガミから見送られながら研究室を出る。身体検査以外に視力や知力検査も行い、頭を使ったからかクーは既におねむだ。目をしょぼしょぼさせている。

かといって私も人の事を言えず、待ち時間でハイボール以外もお酒を飲んでいたので酔いも回り普通に眠い。正直今から別棟最上階にある私たちの部屋まで行くのが面倒なくらいだ。

 

「……普通にギリギリアウトな戦闘だったしな。まーだ休息足りないのかもしれない」

「おねーちゃんもねむいの……?」

「ちょっとね」

 

ちらりと見たプラスウォッチは3時を示し、ちょうどいいお昼寝時間だ。このまま寝ても晩飯までには起きるでしょう。

 

私はあくびを噛み殺すと、正面玄関へと歩みを進めた。

 

 

ダンボールを運ぶ人や見張りの人とすれ違いながら、研究室があった南棟の地下へ。冒頭でクーとプトラちゃんがバトミントンで遊んでいた、武装車両ばっかな第一駐車場から地下に潜ると、一般車両が保管されている第二駐車場がある。私達が乗ってきた車は一般車両なので、当然ここに保管されている。

 

「あ、乗ってきたの……ここにあったんだね」

「そ。まー仮眠するには上等でしょ」

 

そう、今から私はここで昼寝をしようと画策して来たのだ。与えられた私室に行くより近いしね。それになんやかんやこの車は24時間運転してきた奴だから共用スペースよりかは安心して寝れる。そもそも私狭い所好きな方だし。

 

この車を手に入れる時、マスターキー(暴力)で開けたため鍵なんて付いてないドアを開け、クーを後部座席へ。うとうととしていたクーはもう限界だったのか、それとも自分の匂いが付いているところに来たという犬的な安心感からか、横に寝転がりあどけない顔を見せ寝息を立て始めた。

 

微笑みながらクーの頬を手の甲で撫で、置いてあった毛布をお腹に掛けてドアをゆっくり閉める。そのまま回り込んで私は運転席へ。クーの負担にならない程度に座椅子を倒して、環境を整える。別に倒さなくたって寝れるし、なんなら立ったままでも寝れるんだけど、快適であるに越したことはないからね。

 

では、目を閉じて。おやすみなさい。

 

 

換気と音を聞くために少し開けた窓から、コツリコツリ。コンクリートで構成された地下室に足音が響き渡る。アルコールで落ちていた脳が一気に叩き起こされ目が覚める。なーんかこのこのシチュ、後ろの娘とのファーストコンタクトと似てますねー……。

 

しかしここは工業大学内、つまりは安全地帯だ、わっかりやすい外敵はいないはず。

 

私はとりあえずお尻をずりずりと滑らせ足元のスペースへ体を潜り込ませる。クーは横になってるし、覗き込むとかしてこない限り我々の存在はバレないだろう。

 

ミニスカートだというのにあぐらをかいて腕を組み、音に集中する。足音の主はどうやら止った用で、安定しているクーの寝息だけが後ろから聞こえる。

 

そのまま1分、2分と待って……3分過ぎた頃。また足音がコツリコツリと響いた。

 

「わー。ごめんごめん、遅れた」

「お前、遅れンの何度目だよ……ッチ、まあいい。それより誰にも知られてねぇだろうな?」

「そこらへんは抜かりなく、よ。ほい、とりあえず吸ったら?」

 

イラついたような低い男性の声と、飄々とした高めの男性の声。聞いた事ない声だ、モブ声なんだろう。いや今からネームドになりそうだけど。

 

キンッ。シュボッ。

 

「ふぅ……お前と密会していい事なんて、煙草吸えるのだけだぜ。それ以外は全部ストレスだ」

「ひっどい事言うなぁ。こーんなイケメン目の前にしてんのに」

「っは、笑わせる。本当にイケメンだったら俺ァ嫉妬で殺してるよ」

「ひょー怖い怖い。ま、憎まれ口叩かれんのもイケメンの宿命よね」

「けっ、能天気野郎が……」

 

んー、私は工業大学に所属したのは数えるほどだし、内部のイベントだってWikiで読んだのがほとんどなんだけど……。確かイベントのあれだったはずなんだよなぁ、人気の無い場所に男二人、何も起きないはずがなく……って感じの。

 

えーと、なんだっけ、あれだあれ、あー……。

 

「で? 核シェルターの方はどうだったか?」

「地図の座標通りにあったよ、中はお察しだったけど。ちらっと中覗いたら見知った気色わるーいお顔が出迎えてくれた。ほんっと外はゾンビがどこにでもいるなー」

 

そう! 『離反』イベ! しかも核シェルターってこれ、一番難易度高い奴じゃなかった? それと中にゾンビがいたって事は『トロイの木馬』じゃなくて『無知は愚者なり』の方か。まぁ現状だったら『トロイの木馬』よりかはいいか。

 

ふーむ……よりにもよって近いうちに研究所に行こうってこのタイミングかぁ。面倒だな……。

 

「そいつは……まぁ、先住民がいるよかはいいんじゃねぇか。中サイズの核シェルターなら、俺と仲間だけでもいけるだろ。こん時のためにちまちま溜めてた武器もあるしな」

「抜け目ないねー。ここの住み心地も悪いもんじゃないと俺は思うけどなぁ」

「悪ぃんだよ! 俺らみたいな奴等にはな。……最初は挫けちまったが、もう俺らはここの支配下にいるつもりはねぇ。連中は甘ちゃんだからな。もう少し、自由にやらせてもらう」

「さいで」

「ふぅ……吸い終わりだ。密会は終わりでいいか?」

「そっちから追加の依頼がないなら?」

「ねぇよ。……毎度思ってたが、お前のこの、密会は煙草を一本吸い終わるまでってのは、煙草が吸えない奴はどうすんだ?」

「そりゃぁ、俺がありがたーく吸うんだよ」

「けっ……。世話になったな、情報屋ヴゥジヅ。バラすなよ」

「俺からはバラさないよ、信用に関わるんだから!」

 

むむむむ……。あ、悩んでたら会合終わってら。情報屋ブヂズ以外何も聞いてなかったわ。まいいかどうせ依頼者の方は死ぬし。

 

しかし、情報屋、情報屋ねぇ……。そりゃぁこんだけのコミュニティだし、いても不自然ではないんだけど……ゲームの時はいなかったな、そんなの。

 

コツコツと、コンクリートを歩く音が響く。用が終わったから依頼者の方が去っていったのだろう。

 

アポカリプス世界という点を鑑みれば、情報屋というのは別にいても不自然ではない。しかしNZWではその役割は基本的にトレーダーが担っていた。このイベントだって本来は、5回くらいある離反者の会合に偶然出会ってわかるもんだし。(イベントをプレイヤーが見つけれなかったところでイベント自体は勝手に進行する)

新要素という点においてはゲーマーとしては喜ぶべきなんだけど、情報屋ねぇ……面倒な事になりそうな予感。

 

……うーん、というか1、2分経ちそうなんだけど、もう一人分の音が聞こえんなぁ。

と、思っていると。

 

コツコツと、右上から音が響く。窓ガラスを見ると、多分、微笑んでいるであろう、片目サングラスという胡散臭い青年がこちらを覗いていた。

 

ほらね? 面倒な事になりそう。

 

「こんにちはお嬢さん、情報売ってるよー?」

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