ゾンビゲー転生サバイバル百合モノ   作:バルロjp

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閑話とか1

「……おねーちゃん、いいの?」

「いいって、何が?」

 

第二駐車場を出て、自室へと戻ろうとする帰り道。拳銃に消費した弾丸を込め直しながら歩いていると飛んできた、背後のクーからの質問。

 

「あの人、ころさなくて。おねーちゃん、さいしょすっごい怖いかんじしてたから、ころすんだと思ったの」

「うーん、殺せるんなら殺しときたくはあるんだけどねー」

 

マガジンを挿し、セーフティーが外れているのを確認してからホルスターへ。ああ、そういえば弾丸補充しとかないとなぁ。

 

「現状の火力じゃあちょっと落とせない。クーが協力してもね。幸い敵対しないらしいし、様子見でいいかな」

 

ヴゥヂヅの声が聞こえた時、私は咄嗟にドリンクホルダーに突っ込んでいた銃を取り発砲した。

発射された弾丸は挨拶の途中だったヴヂヅの額に当たり───弾丸は弾かれ、ブジヅはのけぞり少しうめき声を上げた程度に終わった。

 

「いきなり酷いな!」と文句を言うブヂズの額には少し黒ずみが残り、またその黒ずみも周りの肌色の皮膚が少しずつ浸食するかのように肌色に染めていった。

 

「あれはね、機械化(サイボーグ)ビルドなんだよね」

「さいぼーぐ? リーダーたちみたいなの? でもリーダーたちみたいにきかいの手してなかったよ?」

「リーダー達は義手だけど、あれは全身。……機械化ビルドって、初動が早いの。特に準備(転生ポイント)があって土台がしっかりしてれば、換装するだけでもいいから」

 

『合金骨格』『NaC代替血液』『AO-TypeO』、そして『生体皮膚』。機械ビルドでNZWを始めるハッピーセットだ。そこまでポイントが高くもなく、デメリットも見当たらず、そしてビルド更新にも使える。スタートダッシュに申し分ない内容量。

ウチのバカはプレデターが好きで、最初っからステルスに振っているのでお目にかからないが、まぁ転生ポイント使い方のテンプレの一つだ。

 

というかウチでテンプレの振り方するの私だけだからね。間違ってもワニみたいにガチャ+弓特化とかしない方がいい。汎用性は序盤の生存率に比例するのだ。

 

ヴヂズ君はプレイヤーだ。それは間違いない。そして軽く話してわかったが、私の目的にはならない。なら、邪魔にもならないし、無視で構わない。

 

「見たことない(プレイヤー)だったし……ま、問題無いでしょ」

「あんまりわかんないけど、おねーちゃんがそう言うなら」

「ダメそうだったらその時対処するさ。さ、晩御飯までにワニを迎えに行こうか。戦利品がいっぱいだからちょっと持って欲しいってさ」

「ん、わかった!」

 

 

 

「そういえば、クーってタイムリミット大丈夫なの?」

「あー?」

 

ワニの戦利品(ほとんど矢)を自室に運び入れ、いい頃合いになったので食堂へ。

配給されたシチューを啜って(シチューを食べる表現にこれが正しいかはわからない)いると、隣で人参を別皿に分け終わったクーがそんな疑問を投げかけてきた。私食わないからな、その人参。

 

ワニが聞いているクーのタイムリミットとは、まぁ『食人癖』の事でしょう。皆さんご存知の通り、『食人癖』は普通に生活していれば理性がおでかけして人を襲うエリートゾンビになってしまう。

理性がおでかけしないためには、定期的にエサ(人肉)を与えないといけないのだが、そのタイムリミットは個人差アリ。3日持たない奴がいれば、2週間平気って奴もいる。

クーが最後に人肉を食べたのは……屋上耐久戦でも口には入ってそうだけど、ガッツリとした食事はロシュアかな? 同日だけどね。で、それが3日前だから、クーがせっかちだともーそろ危ないんだけど……。

 

プトラちゃんに食事マナーを教わりながら食べているクーに目を向ける。

手の震え、問題無し。瞳孔、問題無し、表情、良し。

 

「全然問題なさそー。初期症状すら出てないし」

「ならいいけど」

 

私のそんな気の抜けた回答を聞くと、ワニは肩を竦めて人参を箸でぶっ刺していく。こいつも食事マナー受けた方がいいんじゃねぇかなぁ。

 

あ、大体常に一緒に遊んでて同じくNZWベテランなワニが、何で私に大丈夫なのかと聞いたのかって言うと、答えは単純。私は『食人癖』で遊んだことがあるが、ワニはないからだ。

 

私は何回か実際に試しているのでクーの事もある程度分かるが、ワニはNZWで遊ぶビルドが弓と異能力固定のために自分で『食人癖』を体験したことが一切ない。

わかりにくいがワニはクーをそれなりに気に入っているので、妹分の体が少し気になったのだろう。

 

「大丈夫大丈夫。暴走する前には適当におでかけして、どっち(生存者かゾンビ)か食べさせるから」

「人の方が回復量高いんだっけ」

「微々たるものかな。ゾンビでも新鮮であれば、って感じ」

 

ワニは人参串を焼き鳥のように食べるのかと思いきや、トウモロコシを齧るように箸を寝かして食べ始めた。(ドック)はこの食べ方を家庭で注意しなかったのだろうか。

 

「あ、外の様子どうだった? ゾンビのポップは?」

「減ってた、と、いうより実験所に集まってた。ゾンビの数自体は増え気味? ランプは青だったから『共命』は大丈夫。けど、傭兵がいた」

傭兵組(人体強化)が? なんで?」

「わからない。けど、明らかに実験所付近を調べてる感じだった。とりあえず安全マージン取った距離から射的したけど、ヤりはできなかった。強化段階はLv1っぽい」

「ふーむ……」

 

傭兵は、様子見でもしにきたのかなぁ。大体プレイヤーの手により真っ先に滅ぼされるからね傭兵、私もあんまりあいつらの仕様はわかっていない。

 

考えながらパンをシチューに浸けて口に入れる。私はパンを小さく千切らずそのまま浸けて食べるタイプだ。

 

次に予定されている作戦の、実験所の鎮圧で懸念される点は前みたいなイレギュラーに対応できるかどうかだ。

リーダーたちにとっては初めての「ドキドキ☆皆で鎮圧大作戦!」かもしれないが、私達にとっては何十回とこなしてきた中規模イベントだ。手順も道のりも、そして敵戦力だって把握済み。

そして、だからこそ怖い。

ぶっちゃけ、私とワニはイレギュラーは確実に起こると思っている。三日前にあーんな大量のゾンビと宣戦布告をしておいたロシュアが、このまま何もしてこないわけがない。

ロシュアの所属……あー、『ハウス』だっけ? それ自体がゲームにはなかったイレギュラーで、ゾンビを操っていたということは確実にR社が絡んでいる。このゲームでR社が絡むとロクな事無いんだ基本。

 

ちょっと話脱線したな。えーと何が言いたかったんだっけ……あーそうそう。要は、何が起きてもイレギュラーなリーダーたちと、何か起きたらイレギュラーな私達だと、根本的な対処にズレがあってしまうということだ。

 

何かを失敗するときはこういった小さな認識の違いから崩壊していく。備えておくならばそこから考えていけばいいんだけど……面倒なんだよな。うん、すっごい面倒。プレイヤーじゃなくてNPCとはいえリアルになったNPC()と、そこまで完璧を求めるでもないのに話を詰めなくもよくない?

 

……うん、そこまで深く考えなくていいか。

 

「傭兵とかロシュアとか来ても、なんとかなるでしょ、多分」

「負ける気しない地元だし」

 

三日前イレギュラーで死にかけたとは思えない慢心さと適当さで、私達はそう結論付けた。

 

 

 

「と、いうわけで以上が作戦だ。校長先生のながーい話を聞いてくれてありがとよ。当日の様子によっちゃあ多少変わるかもしれんが、大本はさっき説明した通りだ。質問はあるか? ほい、マキシマム」

「今回の防衛の場合、俺よりルーピシュの方が適任ではないか?」

「お前のそれはクーちゃんが心配で付いていきたいからゴネているだけだろうが、一応答えてやろう。撤退を考えると視野が広いルーピシュの方が外の安全を確保できるからだ。次、ルーピシュ」

「俺の武装指定がAP弾(たま)となっているのは、何故だ?」

「ゾンビの数がかなりのものだと予想されるからだ。次、カルシア。……先に言っておくと、バナナはおやつに含まれない」

「え、あー、ニラ饅頭は?」

「質問がないなら、作戦説明は以上だ。五日後、よろしく頼むぜ」

「了解した」「わかった」「ほーい」

 

 

プトラちゃんが見守る中、クーとワニと鬼ごっこ(模擬戦闘)していたある日、リーダーから呼び出しがかかった。

日程決まったのかなーと思いつつ向かうと(ワニとクーは続けて遊びたそうだったので置いていった)案の定作戦説明のお呼び出し。30分ぐらいの説明をされた後、私は資料片手に開放された。

 

作戦は勿論、ゾンビが湧きだしてくるR社実験施設の制圧について。決行日はさっき言ってた通り五日後。メンバーは私達と、プトラちゃんと防衛用のマキシマム除く幹部メンバー3人+精鋭5人で、途中撤退も織り込んだものだった。

で、肝心の鎮圧手順としては───

 

「適当にそれっぽいもの探し出して、機能停止させるなり、破壊するなりだって。ちょっと調査不足感じる作戦目標だね」

「R社のセキリュティは固いからしょうがないよ。現地調査も、外のゾンビが多すぎてダメだったらしい。それも鑑みて撤退を考慮した作戦なんでしょ?」

 

隣に座るプトラちゃんが苦笑しながら調査をした人を庇う。

いやぁ、工業大学って『ハッキング』もできる面子が揃ってるはずなんだけどなぁ。Lv5と言わずともLv3ぐらいあれば破れる内容だし。もう死んでるんだろうか。

ま、だからといって私が持ってる情報出すのは、「どこで知ったんだ」ってなるのでだんまりだけどね。今はまだ「戦闘狂のクレイジー野郎」ぐらいの評価だが、それが「何でも知ってる怪しい超絶美少女」の評価になると動きづらいのだ。

 

「まぁ、私としては、前回のように三途の川を渡りかけるような無茶をしないで、撤退第一だと安心できるかな」

「ごめんて」

 

ぷくーと頬を膨らませながらプトラちゃんが怒ってますよアピールするので、誤りながらプトラちゃんの膝に寝っ転がって怒りを逸らしておく。ぐへへ、プトラちゃんの膝枕だぁ。……寝心地悪いな(失礼)。

 

「ま前回のは補給が足りなかったのも一因にあったし……今回は補給ラインもあって、最初からだいぶ余裕を持って突入する気だから大丈夫だよ」

「なら、いいんだけど……うぅ、今度はリーダーたちが付いてるとはいえ、また無茶しそうで不安だよ~……」

「そんな信頼ない? 私」

「信頼してるから不安なの!」

「あぉおん……」

 

つまり絶対なんかやらかす方向に信頼されてるってことですか。遺憾の意ですね。

 

膝に寝転がって見える、私より少しちょっとミリ大きい双丘にスンッっとなったので顔を横に向ける。プトラちゃんは甘やかしたがるので、スッと私の頭を撫で始めたがまぁ気にしない。横に広がる視界では、未だにクーとワニが鬼ごっこで遊んでいた。後で二人にも作戦説明しなきゃ……いやフィーリングでいいかあいつらは……。

 

「プトラちゃんはあそこの鬼ごっこ混ざらんの?」

「たまーに二人ともアクション映画みたいな動きするから私はついていけないかなー……。クーちゃんも楽しそうだから加減できるかちょっと怪しいし」

「そうかなぁ。言うてたかが鬼ごっこよ?」

 

クーがリーチが長い右手をぶんぶんと振り回してたり、ワニが「タッチはされていない」という言い訳を使ってクーの右手に乗ってクーの頭上を飛び越えて逃げたりしていても、鬼ごっこは鬼ごっこだ。というか私が呼び出し喰らう前からクーが鬼だったけど、ワニずっと逃げ延びてるのか、流石だな。

 

「たまにね、私もあのぐらい動ければいいなーって思うんだけどねー。そうすれば私もちょっとは戦闘班のお手伝いできるのに、役に立てるのにって」

「貢献って意味では、異能力で十分してると思うけどね」

「降って湧いた力だもん、私の力じゃないよ。それに綺麗ごとだっていうのはわかってるけど、人と人が信じあって、協力して生きていくなら、こんな能力必要ないでしょ?」

「まぁそりゃね。少なくとも私はプトラちゃんとなら言質なんていらない関係だとは思ってるよ」

「えへへ、ありがと。えーっとなんだっけ……あそうそう、戦闘班についてだ。リーダーとか、マキシマムさんとかアネカリアさんの幹部立場の人達って、皆戦闘班なの。幹部で戦闘班じゃないのは私だけ」

「仲間外れでいやって事?」

「ううん。流石にそこまで子供じゃないよー! ……けどまぁ、皆からしたら子供だからね。女で子供ともなると、相当な覚悟がないと戦闘班は入らせてくれないし。私は優しすぎるからだめだーって」

「まー貴重な異能力持ちを不慮の事故で失いたくないだろうしねぇ」

「失っちゃいけないのは、リーダーたちもそうだし、戦闘班の人みーんなだよ! ……けど、やっぱり私は特別なんだって。リーダーが、厳しい事言うが、お前が死んだら工業大学というコミュニティが崩壊しかねないって。俺たちは変わりが効くが、お前は死んだら異能力がどうなるか分からないからだって」

「あはは、さっすがリーダー。ちゃんとリーダーという立場として、人的資源の視点で向き合ってくれてるじゃん」

「ふふ、うん、そこで下手にお前という個人が大切だから~とか言わないのちゃんとしてるよね。私が、私個人より皆の生活を守りたいって性格なのを把握してるんだろうね」

 

プトラちゃんはクーたちを暖かい目で見ている。

 

「あーあ。『言質』が私が死んだ後も続く能力だったら、皆ともっと傍にいられて、危険を分かち合えるのになー」

「危ない考えだねぇ。私は自己中個人特化だから、大衆のためにってのは共感できないかな」

「自分のために生きられるのこそ、私は凄いと思うけどなぁ」

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