ゾンビゲー転生サバイバル百合モノ   作:バルロjp

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当小説はエタることはありません。




R社実験派出所。

貸しコンテナ置き場に隠されたこの中規模ダンジョンは、物資面こそ他のダンジョンに劣るが手軽に手に入る中間地点(ハーフフラッグ)

 

軽い探索や謎解きを挟んで、ゴールである制御室へ行く。で、そこにある緊急停止ボタンを押して終わりである。自身のクローンを作成するのにも特別な手順は必要無く、極論裸一貫であっても攻略できる。

ここを突破できれば初心者卒業ラインだ。

 

なお、破壊可能オブジェクトなため、プレイヤーの手によってよく爆破されるし、後半になると『外なるもの』の手によって異界になる。

 

そしてこれはゲームの時のお話であり、今回はロシュアにコーディネイトされたダンジョンがお出迎えしてくれる。

 

 

『アネカリア班、1A3を頼む』

『1B2、クリア。収穫無し』

『……中央通路は通れそうか?』

『んにゃ、ちょっとガッツリ崩壊しちまってるな。ここを突破しようとしたら日が暮れちまいそうだ。こりゃぁ別ルート探した方がいいな』

 

プラスウォッチの無線からリーダー達の報告が聞こえてくる。どうも今回のダンジョンパターンはAらしい。個人的には『汎用接続回路』があれば最速で抜けれるパターンCが好きなのだが、まぁ文句を言っても仕方がない。

 

今私達はリーダーの指示に従って、各部屋のクリアリングを行っている。これは後ろから奇襲されるのを防ぐためでもあるし、制御室への道探しという面もある。

 

ところで話は変わるんですけど、ここって序盤のダンジョンだから基本普通のゾンビしか沸かないんですよ。

ところで話は変わるんですけど、クーって普通のゾンビからは中立状態なんですよ。

 

「んとね、目の前に2体。……あっ、奥にも1体」

「おけ。じゃクー目の前1体よろしく」

「わかった。さん、にー、いち」

 

クーの合図に合わせて部屋に侵入。反応した手前のゾンビ2体が私に気づき、その内1体がクーの手により壁のシミとなった。中立状態から敵対状態になったクーが、同胞を葬ったより近い敵として残った1体が牙を剝く。が、その時には私も距離を詰め終わっていて、逆手に持ったナイフがいい感じに入(クリティカル)ってゾンビの胴体と首を切り離した。

 

「1d4。ザ・ボーダーオブデス……!」

 

振りぬいた姿勢のまま私が決め台詞で遊んでいる間に、耳に風切り音が届き矢がすれ違い、奥の1体はワニの弓により沈んだ。

 

うーむ、気づかれてから0.2秒以内は奇襲ボーナスが乗るので気持ちがいい。

 

遅れて、ばたばたどしゃと、ゾンビ達が崩れ落ちた音がした。ちなみに先ほどまでいた1E部屋もこんな感じで速攻だった。

普通に戦っても余裕だが、こういった楽しみ方もたまにはいい。暗殺ビルド、やったの何週前だったかなぁ。

 

……そう、つまり我々のチームは、クーがいる時点で通常部屋はヌルゲーとなるのだ。レアスキルである『クッキング・ケミカリー』は一部のシチュエーションに対してガンメタを張る。PvPでもゾンビがいる空間に堂々と潜伏できたので奇襲に凄く向いていた。

 

正真正銘レアスキルであること、後半は無いに等しい特性であるから許されている性能を喰らうがいい! やはりちゃんとコミュニケーションが取れるなら、それなりに『クッキング・ケミカリー』所持者は使いやすいのだ。

 

私は作戦開始直前にクーを起こすとき、クーがプトラちゃんを食べてしまったことをちゃんと自覚して、どこまで錯乱するかが不安だった。

食欲を満たして得た快感が睡眠で落ち着き、目覚めはそれこそ夢と夢心地の終わりを指す。

 

しかし、予想に反してクーは大人しいものだった。

起きた直後は寝起きのようなまどろみ……というよりかは、自分の中の考え事に集中しているような感じでぼーっとしており、声を掛ける私にオール無視をキメてきて悲しい悲しいだったが、今はそんなことなくいつものクー、いやなんかちょっと成長した様子のあるクーVer2だ。

 

となるとプトラちゃんを食べたことは、クーにとって心を揺らがすような事柄じゃないってことらしい。流石に人の心案件では? ボブは訝しんだ。おかしい、道徳・倫理関連はプトラちゃんが率先して教えていたはずなのに……。仲間食っといて平気な顔できるんはプラフォンの分野なんだよなぁ。

 

『カルシア班だよ~。1F1収穫無し。このままF2行くよー』

『了解。随分クリアリングが早いな、漏らさないでくれよ?』

『ちゃんと奥のトイレまで我慢するよ』

『くくっ。まぁゾンビもキーカードも見逃さず迅速に行動してくれるってんなら文句は無いな』

 

なんかこいつ(リーダー)、私のブラックジョークとか下ネタに対してちゃんとノッてくるな。今はプトラちゃんが聞いていないからか? いや、クー(ロリ)に穢れを見せんと守護ってくるマキシマムがいないからかもしれん。

 

まぁどっちゃでもいいんだけどね。

私はプラスウォッチを操作しミュート状態にしてから隣接する1F2へ向かう。

 

「クー。次あっちの部屋ね」

「え? う、うん。……えっと、ここでキーカードを探すんじゃなかったの?」

 

ナイフに付いた血をぴっぴと弾いていると、一切探索をしていないのにいいのかという旨を聞いてくるクー。

おぉ、プトラちゃんよ……君はクーに唯々諾々と従うだけが信頼ではないとお教え下さったのですね。クーの成長を感じる。

 

でもメタ的な話をするとこのパターン、1C2に固定湧きなんだよね。

 

というわけで。

 

「実は私レベルになるとここにキーカードが無いってことがわかる」

 

そうなんだ! とクーは納得した。

おぉ、プトラちゃんよ……もうちょっと何とかならんかった? え? こっからは私が教えるターン? そっかぁ……。

 

 

進行は順調だ。私達は作戦開始からそう時間をかけず『除菌室』へとたどり着いていた。

なお除菌室なんて銘打っちゃぁいるがR社があらゆる分野を発展させたこの世界において、除菌なんて放射物質であろうと3秒で終わる。

結果として、除菌室は「清潔な空間においておきたい物資だけど今すぐ使うわけじゃないから研究室に置いておくのも邪魔だしここにおいとこ」といった感じで半倉庫と化している。(ダンジョン内資料参照)

 

今日何度も繰り返したクリアリングを行い安全確認をした後は、『制御室』までの道のりの約半分ということも手伝って中間拠点にするようだ。

 

「……あぁ、除菌室だ。道中は基本的に殲滅したから安全なはずだが、油断はするなよ。ルートはロビー、東通路、電子物資保管室の穴から東階段……」

 

この除菌室の入り口も爆破で開けたため、閉じ込められる心配もないだろうと荷物を置いたリーダーは、ここで物資の受け取りもするらしい。消費した爆薬や弾丸を、外で待機していた別班に運んでもらう手筈を整えていた。

 

よって必然的に後続が届くまでは休憩となる。

 

ゲーム時代もここは漁るとたまに美味しいものが出たので、私達は喜々として精鋭モブ君たちと共に勇者行為をしていた。真面目で規範的なアネカリアは偵察に出てるし、ここに私たちの邪魔をするものはいないのだ!

 

「おねーちゃん、これなんかいい匂いする」

「どれどれ……ん? んん~? サーモンっぽい?」

「おいおい、カルシアよぉそれは変換機を通していない、ガチの生モンのサーモンだぜ! っぱR社所属となると研究員でもいいもん食ってたんだなぁ、羨ましいぜ!」「ふっふっふっ……こんなこともあろうかと! 俺は醤油を持ってきている!」「ナイス」「何で持って来てんだよ」「最高」「殺してでも奪い取る」

「っふ……僕はあっちの箱からホタテを見つけた」

「海産物好きな研究員おるな?」

「クーもそれ食べたい!」

「リーダー! リーダーも早く食おうぜというか早くしないと無くなるぜ!」「いや流石にこの量は食べき、れるか?……れねぇよ!」

 

言葉通りの美味しいものが出る~!

ほんとは『汎用接続回路』とか『Lp小瓶』『一次源電池』『対AE-W』とかが欲しいんだけど、リアルになった今はこういった嗜好品もモチベ的には嬉しい。もうチョコないなったしね。

 

「イヌは……雑食だから別にサーモンも醤油の塩分も大丈夫か」

「僕が思うに、そもそもベースが人間だしケミカリーだしでモーマンタイでは」

 

それもそうかもしれん。塩分がー、玉ねぎ食べたらダメー、とか言うにしても、そもそも普通なら人肉食べたら死ぬし。いくらワンちゃん成分が強くなってきたといえどもその程度で体調崩すクッキングケミカリーではないだろう。

 

「ワンちゃん達もおいしいって!」

 

そう考えてまたぐら挟まってサーモンを食べていたクーを見ると、感想を求められたと思ったのか無邪気にそう笑顔を向けてきた。

 

そっかぁ。ワンちゃん達もおいしいって言ってるのかぁ。

 

「これ、ホラーなのかなぁ」

「バイリンガルだと思えばいいんじゃない? 『降霊術』の可能性だってあるし」

「じゃあほのぼの動物番組か」

「いや、うーん……」

 

動物番組ライク(似ているの意)という表現に抵抗があるのか、唸り始めたワニを放ってホタテを口に放り込む。うーむ、ワサビも欲しくなるなぁ。何を隠そう、私は幼少気からそれなりにいいものを食べていたので違いが判る女なのだ。

真に違いが判る女なら素材そのままで味わうのでは? ボブは訝しんだ。

 

「クー、ワンちゃん達って何匹いるの?」

「んー? えっとね、三匹だよ」

「ずっと?」

「うん。クーとずっと一緒にいてくれてるんだ」

 

クーはふにゃりと笑った。

 

 

お化け、亡霊、幽霊。そういった存在が見える時、いくつか候補がある。

 

まずは異能力系統の『降霊術』

アイテムを触媒に、そのアイテムを一番所持していた時間が長かった生物を召喚する。この時、発動者はハッキリと見え、本人以外は紫の光の線で象られた生物が見える。

 

続いて通常スキルツリー、脳拡張分野の『継承』

対象からの師事や一定時間の同行、一部のアイテム。または自身が死を看取った生物のステータスやスキルなどを自身に追加する。

フレーバーテキストでは、「技術、精神。受け取った想い。流転する魂」とある。

 

あと一応、機械化にも『人格インストール』があるが、多分違うので割愛する。

 

それに、えーと、『ウィルス』系統にもなんかあったよな? あ人体強化にも全っ然使われないけど『遺志』ツリーがあるか。それっぽいのはまぁそこそこ存在と。

 

ぶっちゃけるとクーしか見えないワンちゃんの正体自体はどうでもいい。これが人だったら余計な知識を吹き込まれて不都合になる可能性があるが犬なら大丈夫だろう。

 

よって特定しようとしているのは、どちらかというとNZWを長い事やり続けていた私のプライドみたいなものなのだが……。

 

「ウィルスの『浸食』系統か? いやでもあれ言語と思考に真っ先にくるしな……」

「クーが元じっけんにゃらららなのが推測の難易度を上げる」

「それなんだよねぇ」

 

周囲に精鋭モブの皆さんがいるから濁した言い方をするワニに同意する。

R社の科学者達ってほんとなんでもするからなぁ。法律、秩序、倫理、そして共感能力というものは偉大だと、いっそ笑えるぐらい酷い研究報告書を見つけた時思ったものよ。まぁそれ考えて想像したのはNZWのデザイナーなんだけど。

 

「ま。モヤモヤすると言ってもわかんないなら放っとくしかないか」

 

私はそう呟いて、サーモンにパクついた。

……白米が欲しくなる。探すか。外国産ゲームだからお米は無いかもしれないが、それでもパンならあるかもしれない。

そう思っていつの間にか膝に乗っていたクーを降ろして立ち上がる───タイミングで、リーダーが大きな声を出し始めた。

 

「───いやハダン下がれ。 連中は確実に仕留めてくるぞ、ICDは頼りにならん。ルーピシュ援護はいい、お前も逃……おいっモデカモ? ……ダメだ、入ってこい、直進でいい。……チッ」

 

リーダーは立場ゆえに、いつもニヤつくような笑顔を維持しているようなケがあり、それだけにこういった冷静さを失ったような顔と声はらしくない。

 

そのまま暫くプラスウォッチをじっと見て色々と指示を出していたリーダーだが、やがてまた大きく舌打ちをすると、胸元から煙草を取り出し、こちらを向いた。

視線の先には、降って湧いたご馳走に舌鼓を打っていたがそこは戦闘班、リーダーの急変した態度を前に意識を切り替えた精鋭モブ達がじっとリーダーの言葉を待っていた。

 

「……旨いメシを見つけて、レジャーシート敷いて魔法瓶から紅茶出して優雅な休憩をしたかっただろうが中断だ。わかってた事だが現実は悪いニュースと共に良いニュースなんて運んでくれやしねぇ。……外の連中が壊滅した」

 

リーダーの言葉に除菌室にざわつきが走る。嘘だろ、押しつぶされない人数はいただろ、との声が聞こえる中、一人が手を挙げた。

 

「理由は分かってンのか? ゾンビじゃねぇ口ぶりだったが」

「ああ。傭兵会社の連中だ。奴さん、最初っから交渉の余地無しってな感じだったらしい。逃げた連中も追いかけられて殺されて、遠距離に居たルーピシュ以外は連絡が取れなくなった。……大学の方からは連絡は来てないから、俺達、もしくはこの場所を狙っての行動だろう」

 

私は隣のワニと顔を見合わせる。ついでに下のクーとも見合わせた。

傭兵会社がR社実験派出所に来るなんて行動したっけ? これもリアル化の影響か? あるいは誘導している存在……ロシュアがいる?

 

傭兵は……人体強化を専門とする連中だ。というか人体強化以外を認めない連中である。タイプとしてはスペックのゴリ押しなので、現段階の私の成長度合いなら大した障害とはならないが……不確定要素は一つ増えてしまった。

 

「ワニ、確認だけど対処できるレベルだったんだよね?」

「ん、ゴミ」

「じゃあクーでメタれるか」

「?」

「クーと相性が良い、悪い人達がこっち来てるんだって」

「クーはわるい人と相性いいの?」

「あー……クーは良い子だから、悪い人に対しては強いんだよ」

「えと、じゃあおねーちゃんは良い子じゃないの?」

「え、うん」

「認めるのか……」

 

いやだって私、良い子ではないし。というかそれを聞くって事はワニは逆に私の事を良い子だと思ってたってこと? ……私のどこを見てそう判定しているのか気になるが、じゃれている間に方針を纏め終わったリーダーが最終決定を話し始めたので流石にそちらに意識を傾ける事にする。

 

「よし。んならさっき決めたように、俺達は一時撤退をせずにこのまま制御室へと向かう。後方警戒に人数を割く事になるが……そこは今となっては嬉しい誤算だったカルシア達がいるから余裕はまだあるしな。……トッズンとディザーブが後方警戒を行け。物資面は想定より抑えられているし、こっちの部隊での被害は無い。……情報が出揃ってない中での分の悪い賭けは好きじゃないが……傭兵に撤退戦を仕掛けて後ろからゾンビが来るよりかは、ゴールまで付いて背中の安全を確保した方がいい。それに、傭兵連中にこのまま明け渡す方のも怖いしな」

「ま、しゃーねーわな」「モデカモ達の犠牲を無駄にするわけにゃいかんし」「なーに、ぱっといってさっと制御室奪うだけだ、何も難しくねぇ」

「OK。異論がねぇなら……もう行くぞ。ケツ追っかけられてるから巻かなきゃならん。アネカリアが見て来たがこの先、『2F生活空間』までは安全らしい」

 

パターンAなおかつ『2F生活空間』が安全……となると、『西部緊急通路』が使えるケースだ。その分『メインエレベーターホール』で大量のゾンビと交戦するが、まぁ謎解きお使いよりはマシだろう。あそこは機械制御じゃない金属扉があるので、それとなく誘導して逃げ込めばいいだろう。

 

私はそういった意を込めてワニに目配せすると、ワニは我が意を得たりとばかりに頷いた。

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