「来たか」
ゾンビの死体(ゾンビの死体とは?)しか会わずに全員でどたどたと移動する事しばし。表札が整然と並ぶ住居エリアの一角に、壁に体を預ける形でアネカリアが待機していた。
ガントレットを装着しているように見える左腕はその実ゴリゴリに戦闘系に機械化しているだけであり、主に電気系統の改造をしている。また、姉御肌、キツめの美人ということもあり、NZWの二次創作中ではリョナられランキング上位を維持している。
「アネカリア。一人で偵察させて悪いな」
「構わん、それがアタシの仕事だ。前に闖入者に対して失態を犯した分、挽回しないとな。細かい話は後だ、付いてこい」
アネカリアはちらりとこちらを一瞥すると、左手の義手でジェスチャーしながら先導を始めた。
「あ、アネカリアお姉さんも来てたんだねこのさくせん」
「最初からいたよ。ずっと偵察の役割で本隊からは離れてたけど。というか車で一緒に……クーは寝てたか。面識あるの?」
「プトラちゃんと一緒にあそんだりしたよ?」
「「想像できない(な)……」」
ワニも同意見のようだ。
なんというか、姉御肌、キツめの美人ということもあり、NZWの二次創作中では望まぬ妊娠・出産ランキング一桁以内を維持しているイメージしかないので、子供好きとは考えられなくなってて……。
「やさしかったよ? ご飯くれたし」
「この子、判断基準そこしかなくない?」
「おやつもくれた!」
「この子、判断基準そこしかない」
正直アポカリプスな世界で食料を分け与えられることはそれなりに信頼に加算される行為なのだが、ワニにとってはアレルギーが出る行為らしい。クーのガバガバ過ぎる信頼基準にワニは恐怖を抱いたようで、恐ろしいものを見る目でクーを見ていた。そんなことでクーにネガティブな視線送るな。
部隊はアネカリアの先導に従いするすると進み、共用食堂っぽいところ、カウンターっぽいところを抜けてやがて居住区の終わりに近い場所へと到着した。
ここらの通路は荷物などを運ぶことなども想定しているのかそこそこ広く、廊下に2列に向かい合って並んでも余裕がある。
後続の精鋭モブ達も追いつき、全員が自分に注目を集めていることを確認して、アネカリアは自身の後ろを指さした。
「向こうに黒のドアがあるだろう。あれの先に一つ空間……手荷物検査などを行う場所だろうな、その奥に巨大な空間が見えた。『メインエレベーターホール』だ」
プラスウォッチを操作し、アネカリアは立体マップを表示させる。
立体マップは簡単に言えば凸の出っ張っている部分に縦の直方体が付いているものだ。縦の直方体には薄い板が上下していて、そこがエレベーター部分だ。凸の下側長方形部分には左右と下に棒がついており、右の棒には青い点がある。これが私達の位置だとすると、この棒はメインエレベーターホールに繋がる道なのだろう。
「見ての通り、アタシ達の位置はここだ。不便極まりないが、研究員のみを載せるエレベーターが現在下にあり、呼び寄せる1分を待てないためこの荷物を搬入する大型エレベーターを使う。操作に関しては制御室で行うタイプではなく、大型エレベーター内から操作可能なため心配するな。何だヤナギ」
「あ~一応聞いときたいんだが、なんでエレベーターが来るのに1分もかかるんだ? 地下3階まで50mもないんだろ?」
「アタシが知るか。……この施設は現在予備電源で動いていると聞いた。エネルギー不足じゃないか? 次、ボン」
「足止め組はどうなる? ディザーブ達を置いてはいけんぞ」
「研究員用エレベーターの呼び寄せボタンを押してから大型エレベーターに向かう。研究員用エレベーターは右端に位置しているのでアタシ達より簡単だ。次……カルシア」
「ゾンビ、どのくらいいた?」
「あぁ。管理室のカメラで上から確認したが……3桁はいた」
あーそれはちょっと予想外ですね?
数の暴力というものは偉大だ。極端な話、100万の蟻は象をも殺す。消費する物資で、蓄積する疲労で、摩耗する精神で、堆積する死体で。一人長距離で走る私達を、ゾンビは大人数の短距離で食らいつく。
クーと同じく食欲か、それとも生者に対する嫉妬からか、あるいは単にプログラムか。
最初だけはこっそりと抜けようとした私達を目ざとく発見したゾンビは、ご丁寧に大声で挨拶をしながら向かってきた。即座に精鋭モブ君のサイレンサー付きSMG、私の投げナイフ、アネカリアの電気玉が飛んで行ったものの、ゾンビはともかくたまに混じるハイゾンビがハイ故のタフさで自分の死体を引きづって隠れているとこまでタッチダウン。あとはそれに気づいた複数のゾンビに同じことをやられ、ネズミ算式に増えただけだ。
結果として、メインエレベーターホールにいたゾンビと西武通路から出てきたゾンビ、そして何故かメインエレベーターの隙間から這い出てきたゾンビ達が私達の肉を噛みちぎらんと次々大集合していた。
「リンシャン! ボンを援護! 右抜けてくるぞ!」
「おい、真ん中奥にボマーの姿だ! ぶち抜いてくれ!」
今まで小隊に分かれて探索できていたのがおかしいだけで、本来は物量こそがクローン施設の本質だ(今回はロシュアのせいか通常の2倍ぐらいいるけど)。ほんと、つくづく今が夜じゃなくて良かった。これで夜だったら、私達だけだったとしてもやりたくないね。いや私達だけなら緊急通路使うんだけどさぁ。
『メインエレベーターホール』はホールと名を冠している通り、大きな開けた空間となっているが、障害物がないかと言われると普通にありまくる。コンテナは積まれてるし、運搬車は放置されてるし、そもそもチェーンやフェンスで分断されているところもある。
殆どの場合はゾンビの進行を防ぐので有利に運ぶのだが、角を曲がったらぱったりゾンビと出会ったり、上に登ってたゾンビに奇襲されたりとデメリットも目に付く。
「グレネードを投げるぞ、気を付けろ」
「リーダー! これ無理やりメインエレベーターに乗る方がいいんじゃねぇかぁ!?」
「多少減らさねぇとディザーブ達が通れねぇだろうが。せめて1分はここでお掃除だっとぉ」
それなりに苦境なのに余裕ありげに笑っている、リーダー付近のコンテナ上から急にハイゾンビが飛びかかってきた。が、リーダーこれをゴツい左腕でふっ飛ばっし、上空でくの字に曲がっているところを
「いいチームワークだねぇ。私達も負けてらんないよ」
「何か見せてくれるのか?」
サイトから目を離さずに聞いてくる
そこにワニによる矢が飛来し、私が殺したゾンビの後ろにいたハイゾンビが続けて倒れ込んだ。
「……素晴らしい連携だな」
「実はワニが凄いだけ説もある」
「でも僕が合わせられるの波長あった人だけだから、シアねえぐらいしか合わせられな───」
言葉を言い切る前にワニが体の向きを変え、いつの間にか矢を放った姿勢になっていた。体の向き先を見て見ると、クーによって右腕を引きちぎられ左目に矢を生やしたハイゾンビが。
「わっ。ワニちゃんありがとね!」
「………………むーん」
「ちょっと納得いかない顔するな。いい事でしょうが」
僕はそんなふしだらな女では……とちょっと眉をひそませているワニを放って前進する。下がった分は進まなくてはいくら耐久するったってジリ貧だ。それにひとまずは後衛組のためのエレベーターを呼び寄せておきたいのでどうせ戦線は押し上げる必要がある。
「リンシャン、ムロジア。こじ開けるからエレベーターのスイッチ押して来てくれ。アネカリア、妨害を」
「了解。電磁フィールドを展開する」
妨害を任されたアネカリアが頷くと、構えていた銃を下げ義手の右手を突き出した。急な過充電によってバチバチと音を立て放電される右手は、一瞬の目を細めるほどの発光をしたのち球体上となって発射され、奥の壁にぶつかり周囲にスパークを散らした。
人体強化にも似たような効果を持つスキルは存在するがスキルポイントを要求してくる。
「ふっ、んんんんんんんんらァッッッ!」
どんぐわらがっしゃーん!
ホールに大味な効果音が響き渡る。改造
「うし、今の内だな。は~やっぱ俺はこーゆーことしてた方が性に合うわ。アネカリアぁ、今からでもリーダー変わらねえか?」
「断る。指揮幕僚課程は受けていたが……アレは軍人を率いるためのものだ。混合部隊のここでは使えん」
「俺ら寄せ集めだもんな」「俺ぁ軍出身だぞ!」「確かお前は、体を動かすしか能がないからと言っていただろう」「軍への就活って頭の悪さ関係無くってさ……」
「こいった奴らはアタシは指揮できん」
嫌いじゃないけどな、と首を振りつつ苦笑するアネカリアに、苦笑いしながら悪い奴らじゃないからなぁと同意するリーダー。
どうでもいいけど苦笑と苦笑いって微妙にニュアンス違うはずだけど見た目がもう一緒だよね。
さてんなことはさておき火力集中あって道は開かれ、私達は無事研究員用エレベーターに到着。ボタンを押し呼び寄せたので、これからは私達が乗るメインエレベーターへ向かうフェーズだ。
と、言っても距離的にはたいしたことはなく、既にエレベーターが到着しているので待ち時間が発生するわけでもない。しかしだからといって簡単というわけではなく……。
「おねーちゃん! なんかっゾンビふえてきてない!?」
「しかもハイゾンビ多めだしね。ちょっと作為的なもの感じるかもねぇ。クーは体力大丈夫そう?」
「まだまだっへーき!」
クーは息が多少上がっているようだが、前回の絶望防衛戦と違い人数がいるのでまだ温存はできてそうだ。しかし前の『クーだけを生き残らせるために何もさせない』がトラウマになってそうなので、今回も同じシーンになったら無理しそうな予感はあるので、こっちで気を付けないとか。
流れ込んでくるゾンビの勢いは一向に衰えない。キルスコアは全体で見れば80近く、この数字はNZWでもメインホールの殲滅終了辺りの数値だ。と、なるとやはり意図的にゾンビの量が増やされているとしか思えない。
研究所内には殆どの場所に監視カメラが仕掛けられているが、当然その映像はロシュアが監視しているだろうし、きっと今も画面に映る私を睨みながらはよ死ねと念じゾンビを操作していることだろう。この程度じゃ死にはしないよーだ。
そう考えるとカメラに向かってピースでもしときたいところだが、進んだ分後ろからもゾンビが来るようになり、後衛のワニが
「やべぇってリーダー! ケツからも現れてきたぜ!」
「俺らが進んだ分、中央通路のゾンビが回ってきちまうんだろうな。カルシア、ワニ、ヤナギ、メインで見てくれ」
「了解」「ほい」「ん」
ゾンビを蹴り上げ仰向けにふっ飛ばし、止めはワニに任せて前線となった後方へ身を寄せる。私の間合いは中距離メインだが、今はクーとレーンを別れ前衛を張れるのが私しかいないのでいたしかねなし、だ。
バンバンと拳銃を鳴らしながら接近するハイゾンビに牽制を入れる。射撃した2発の弾丸は両方とも頭に入ったが、ハイゾンビクラスとなると今の拳銃だとヘッショ2発じゃちょっと弱い。のけぞっているところを通り過ぎ、逆手で背面にナイフをぶっ刺して次のゾンビハイゾンビ二人組お相手へ。
「あとはナイフをぶっ刺すだけ───っ」
というところで頭上から音がしたのでバックステップ。どうやらコンテナ上から飛びかかろうとしていたハイゾンビがいたようだ。……もっとも、私がバックステップした瞬間にはワニによってヘッショされていたが。
げ、血ぃ降ってきた。最悪。
後ろに右手でひらひらと感謝と文句の意を伝えながらこかしたハイゾンビの顎を蹴っ飛ばし怯ませヘッショ三発。
「というか、そろそろ弾も半分近いんだけど!」
「お前は肉弾戦もやれる口だろ。治療薬なら5個持ち込んでるから即死しなきゃ使ってやるぞ」
「だから安心しろって? んなわけ」
と、言いつつも突貫。ハイゾンビの腹に蹴りを入れくるりと回って横のゾンビを切り、正面のゾンビには肘鉄をかまして倒れたハイゾンビには踵落とし。ぐしゃっという音が嫌な感触と共に戦場に響き渡る。ワニのフォローもあるし、治療薬もある。リミットテストでも行いましょうか。