ゾンビゲー転生サバイバル百合モノ   作:バルロjp

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第37話

「よし、そろそろエレベーター乗るぞ」

 

20体ぐらいを動く死体を動かない死体に再加工した辺り。時間にすれば1分も無いが、それでも「やっとか」という雰囲気が全体に漂った。

 

リーダーの声を聴いて、私は抑えていたゾンビの下顎からナイフを突き刺してから蹴り倒し、マガジンの段数を確認しながらエレベーターへと向かう。

 

うわ、クーかなり血ぃ被ってるな。ちょいちょい様子は確認してて、工業大学組からの援護もあって平気そうだなーとは思ってたけど、流石に返り血返り肉までは防げなかったらしい。とんでもない揮発性を持つ獣右手を除いて赤ずきんと化してる。

 

NZWでも前衛は清潔度が下がりやすく、病気の確率とキャラによっては精神もイカれる。もっともクーは病気にならず精神も大丈夫そうなため、周囲の快適度と私の評判を下げる以外は問題ないわけだが。

 

ポップ頻度がそれなりに落ちてきたゾンビに気を付けながら稼働音を鳴らすエレベーターに移動。立ち位置の都合上私が最後だったため、乗り込むと同時に即ボタンが押されエレベーターが下がり始めた。

 

「よぉー疲れ。弾の補給はいるかい?」

「満タンね!」

「投げナイフも5本預かっていたが……」

「あー、じゃあ使った分の4本を───」

 

ボン(精鋭モブ)からの補給を受け取ろうとして、上から近づいて来る音を聞き取る。そのまま勘と経験で投げナイフを投擲すると、ちょうど出てきたゾンビの胸に刺さり、バランスを崩したそいつはリーダーの義手パンチによって吹っ飛ばされて壁のオブジェとなった。

 

「やっぱ5本で」

「……ほいよ。いやぁマジでいい腕してんなぁ、部活かなんかやってたのか?」

「いや? 案外適当にやっても当たるもんだよ」

「マジかよ、お前の才能恐ろしいぜ。ゾンビに凸れる度胸も含めてな!」

「それは果たして褒めてるのか貶してるのか。気になるところだねー」

 

受け取った投げナイフをホルスターに仕舞い、普通のナイフも刃こぼれを確認して血をふき取る。マガジンも使った分は全て投げ捨てていたので、込められた弾丸を確認して空っぽになっていたリグに突っ込む。

 

なおこの時、私の視線は上だ。未来が舞台のNZWでも大型貨物運搬用エレベーターの移動速度はゆっくりで、普通にさっきみたいにゾンビが無賃乗車して来る。中身スカスカとはいえ普通に物量は強いので撃ち漏らしたら悲惨なこと間違いなし。言っちゃあアレだが私はクーとペアルックは(赤ずきんスタイルも水着マントスタイルも)お断りだ。

……っとそうだった、クーの様子も見に行かないと。ケガは無さそうだったしワニも見てたけど一応ね。

 

「クー?」

「……おねーちゃん」

 

座り込んでぼーっとしていたクーに声を掛けると多少の時間を置いて返事が返って来た。どうもプトラちゃんを食べてから、空いた時間ができれば考え込むようになっている。戦闘中はしゃっきりしてるから別にいいんだけどね。

 

「やほ。調子はどう? ケガとかしてない?」

「ん。ぜんぜんへーき。アネカリアお姉さんとかが、いっぱい手伝ってくれてたし」

「可愛がられてるねー」

 

クーは戦闘班からは、工業大学グループに所属する前に想定していた時のずっと想像以上に可愛がられている。非戦闘員を守り、ゾンビを普段から見ている彼ら達にとって、右腕と食欲以外は普通なクーは恐怖の対象にならないらしい。

それは素直で純粋なクーの性格であったり、カルシアちゃんの『言質』によって安全が約束されていたからかもしれないが───結果として、クーは他人と交流を育み、実験体時代からはちょっとまともな感性を見に付けられたと思っている。

 

また新たに落ちてきたゾンビ───はアネカリアが処理してくれそうなので拳銃は抜かず、クーの隣に腰掛ける。程なくして、ボン(精鋭モブ)から弓矢等の補充品を受け取ったワニも隣に座り込んだ。

 

「おねーちゃん、ときどきたたかってるのを見てたけど、すごかった。クーはこの手をぶんぶんするぐらいしかできないけど、おねーちゃんは体全部でうごいて、たおして……」

「まっ、経験と実力だね」

「ワンちゃんたちみたいにたたかうのが上手だった!」

「ギリ悪口か? これ」

「えーっと、あれあれ! 狂犬みたいだった!」

「いや悪口だな……」

 

狂犬のように戦うのが得意なカルシアちゃんです、どうぞよろしく。クーは純粋に褒めてるんだろうけど、この娘評価基準の高い所に犬があるんだよなぁ。不可、可、()みたいな分類してる。やっぱ犬と仲良くて常に一緒だったからか?

 

あとワニ。こっからワニの顔は見えないけど笑ってるのはわかってんだからな。肩揺れてんだわ。

 

「まー私の戦い方は置いといて……クーももーちょっとしたら手数増やせるけどね。レベルがもう3になりそうだし」

「レベル3? になったらどうなるの?」

「足が任意でワンちゃんのものにできる」

「ワンちゃんに……! それって強そうだね!」

「ワンちゃんが強いというか、半身がトランスフォームできるのが強いんだけどね。クーの今の体じゃどうしても手に振り回されているのを、足腰も強くして十全、とはいかないけど八全くらいには使えるようになるから」

「おねえちゃんみたいに、キックできるようになったりするの?」

「もちろん。私の3倍ぐらい出力違うキックができるようになるよ」

 

クーの足を触る。今は血と煤で汚れてはいるが、人間らしい肌色(肌色がどんな色かは各々の解釈に任せる)に奥の骨の感触がかすかに伝わる柔らかい肉。

……まるで私が食人するかのようなねっとり描写をしてしまったが、ケミカリーLv3ではここもクーの今の腕のような、毛むくじゃらで分厚い筋肉と脂肪に太い骨を持つ獣の脚となる。ゲームだとそんなもんかとしか考えていなかったが、リアルだと普通にびっくり案件である。

 

「……そういえばクーって体柔らかいん? 体術も使ってくなら、体の柔らかさはある程度必要だけど」

「えっ。お、おいしいとは思うよ?」

「クー、クー。シアねぇが聞いてるのは肉質じゃない、多分」

「多分って付けるのやめてくれる? や、ほら。魅せプじゃないとしてもこんぐらいは必要だよってのを今ふと思ってさぁ」

 

私はほれと立ち上がってI字バランスをとる。現実だとY字までしかできなかったが、カルシアの体は私より柔らかいようで余裕でできるのだ。そして私に完全に体重を預けていたワニは気の抜けた声を出して倒れた。

 

「む、絶景」

「そりゃ寝転んだまま見上げりゃそうでしょうよ。ほらクー、私の真似してみ」

「うん。……んっ!」

「普通レベル?」

「……まぁ、普通か」

「僕なんか体固いからもっと酷いもんね。これでも(現実)よりマシだけど」

 

クーの体の柔らかさは胴足足で正三角形を描けるような120°くらい、力任せな戦いなら問題ないが技量で勝負するならもうちょっと欲しいところではある。なおワニは私達に触発されて寝たまま開脚しようとしていたが、足曲げた上で90°すら辛そうである。

 

「ん~……クー、これじゃあおねーちゃんみたなうごきできないかな?」

「まー目標によるね。ここまで柔らかくなくても関節を上手に使ったら似たようなことはできる。───それでも」

 

ちょいと位置調整をしてタイミング良く上から降って来たゾンビを、Y字開脚の先で受け止める。お腹に私の脚が刺さったゾンビは綺麗にくの字に折れ曲がり、明らかに唸り声とは違うタイプの声を漏らした。一応気にかけて見てくれていたアネカリアが感嘆の声をあげているのを横目に見ながら、人体強化によって多少増した脚力でエレベーター外にゾンビを跳ね返した。

 

「───こんな感じで戦おうと思うと、もうちょっと柔らかくなった方が良いね」

「わー! すごい! おねーちゃんとってもすごいねワニちゃん!」

「もう半分魅せプじゃん」

「実用性のある魅せプだし……」

 

ヘッドラインがズレるからPVPでもそれなりに実用性高いんだよねこれ。まぁ『体幹』モーションだから他のにスキルポイント入れた方がいいんだけど。

 

「クーもできるようになりたい! どうすればできるようになる?」

「毎日の柔軟? いやでもちょっと体弄れば軟体生物まっしぐらか」

「おねーちゃんはどうやって柔らかくしたの?」

「最初っから柔らかかったよ。まぁバレエしてたから毎日柔軟してたとも言えるけど」

「ヌッ。シアねぇのバレエ、極めてエッチなものを感じる」

「勝手に感じてな。ほら、もうすぐ地下3階付くよ」

 

う”ぁーと唸っているワニに手を差し伸べる。私の手を引っ張って半身を起こしたワニは、休憩時間とあってふにゃっとした表情だ。(当社比)

 

まそんなことはどうでもいいとして。今口にした通り、エレベーターの稼働音が少しずつ大きく響くようになり、付属のモニターはもうすぐ到着を指し示している。エレベーターに乗るタイミングをロシュアに狙われたように、エレベーターを降りるタイミングもまた狙われやすいポイントだ。なんせ撤退ができないから。

よって私はここまでグレネードを使わず大事に残しておいたわけだが……正直上みたいな物量がもう一回続くと、身内はともかくNPCまで守り切る自信はない。プトラちゃんのために善処はするが……まぁ無理だったらその時はその時だ。

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