全幅の信頼を寄せるクーがじっと見守る中、クーの服を全て剥き終えた。
裸になるとそこには立派なクーがあって実は男の子だったのか! なんて事はもちろんなく、服の下は真っ白でつるぺったんだった。もっとも、その柔肌も凝固した血や純粋な汚れなどで赤黒く染められているが。
「じゃ、とりあえず拭いていくけど……痛かったら言ってね~」
「うん、わかった!」
元気でよろしい。私は別に貯めておいた桶のお湯にタオルを浸し、水気を絞ってクーの体を拭き始めた。
まずは左手……ってやっぱ相当汚れてたんだなぁ。片方を拭いただけでタオルが真っ黒だ。洗って再利用する気が起きないし、そこまで物資に困ってるワケでもないからタオル捨てちゃうか。
なお獣である右手は左手の4倍くらい手間とタオルがかかった。
クーに「んーんー!」言わせながら顔を拭い、T字ポーズさせながら上半身を拭って、バランスを取らせながら下半身も大まかに綺麗にした。
クーのお股拭くとき、「……股洗うならこうだよね。えっちだなぁ……」って感じでクーのお股拭いたけど、ちょっと自分が何に対してえっちだなぁつってんだよって感じで自分でウケて笑っちゃった。私の趣味はロリではありません。
最後にはどうせお風呂入るしと私も服を脱いで、クーを髪が地面に垂れるように膝枕させて頭の洗い流し。いっちばんお湯が真っ黒になった。いやほんとに真っ黒になりすぎてびっくりしたわ。
「はーいお湯かけますよ~、かゆいところございませんか~え、くろ……」
「う~!」(お湯が眼に入らないように眼をぎゅっとしている)
思いっきりこんなリアクションしちゃったもん。私が美容師さんでクーが客だったらクレーム貰ってたね。
それと、髪洗ってる時に気づいたけど、頭頂部にちょっと、柔らかいこぶのようなものが出来てきている。恐らく犬耳の類だろう。
『クッキングケミカリー』の進行度にもよるが、身体的特徴はこれからも出てくる。ゲームの画面上ではちょっとずつ生えてきている感じだったが、この世界でもそれに準拠するようだ。いーってさせたら犬歯らしき伸びてきてる歯もあったし。
ま、そんなこんなであらかたクーを綺麗にし終えて。
桶に残っていたお湯をクーの全身とクーに汚された私の下半身にぶっかけたら、いよいよお楽しみのお風呂だ。
手を突っ込んで確認してみると、予想通り丁度いい温度になっていた。
本来のドラム缶風呂なんて機械か人の手で温度調整しなきゃならないんだろうけど、ゲーム画面上ではんな事してないのでこっちでも同じ。そうだと信じろ。
ドラム缶の底を踏んで火傷しないための木の奴を踏み、そろりそろりとお湯に浸かっていくと、じんわりとお湯の温もりが脚に伝わっていく。その心地よさに抗わずに全身浸かると、言いようのない幸福感が全身に広がって来た。
「~~っ! あ”~~……。やっぱ運動した後のお風呂って文化の象徴なんだよねぇ。ほら、クーもおいで」
「うん……あ、ありがとう。わっ、あったかい……」
クーを誘う、というより台は作ってあるとはいえ小さいクーだと苦労しそうだったので、脇を抱え上げて風呂に入れる。クーの右手が重くてプルプルしたのはご愛敬。でも持てなくはない辺りカルシアの体は高性能だぜ。
しかし流石に二人だとちょっと狭いんだけど、ままクーは(右手を除き)小さいから充分妥協できるラインだ。欲を言えば座るための椅子とか入れときゃよかった。立ちながらってのはちょっとリラックスできない。
………………。
「なんでまだ私を掴んでるのさ」
「あ、ごめん……その、足がつかなくて……」
「……あ~、それは設計ミスだわ」
風呂に入ったクーが何故か私の肩を掴んだまんまなので問いかけると、どうも足がつかないらしい。私基準でお湯張ったから、ロリには溺れるお風呂が完成してしまったらしい。プレミです。
というか二人分+獣手の体積分お湯が溢れる事計算してなかったんだよね。お湯おもっくそ零れたが? 火消えなかったの奇跡だろ。
少し悩んで、クーの腰を抱えて私に密着させ、クーには疑似的に私に座らせる形で落ち着いた。私はお風呂は一人で入るタイプだが(当然)、こうして人の肌が触れ合うのはスベスベしていて気持ちいい。獣の右手も毛が短毛タイプで絡まっていないので、こちらもまた違うスベスベで気持ちぃのだ。うわ変態っぽいな私。
最初は大人しくお風呂を堪能していたクーだが、段々と調子を取り戻してきて私に感想やお話を振ってきた。身振り手振りはいいけど左手だけにしてねー。
「でね、でね、みーんなあっちこっち見てて、くーのことに気づいてくれなかったの。ずっとへんな顔してるし、へんなこと言ってるし……。さわったら気づいてくれるけど、それだとなぐろうとしてくるし」
「まーあれ、一種のステルスに近いからねー。抗体持ってるとなんかゾンビウィルスから検知されなくなる? んだったよ。そういう設定だったはず」
「せってー?」
「世界のコトワリってこと」
「へー。おねーちゃんはものしりだねー!」
そりゃぁもう。5000時間はNZWで遊んでますから。私ぐらいになると太陽の位置とか昨夜の月の形とか半径100m以内のゾンビの湧き数とか夜のノーマルゾンビの強化幅で、この世界が生まれたばっかの赤ちゃんということすらもわかっちゃう。
というかだから即席ドラム缶風呂なんて作ったんだよ。中年の世界だったら水どっぱーんの体流すだけで済ませてたわ。
生まれたての世界は弱いからね。ゾンビも、人も。クーみたいなNPCは知らんけど。
お風呂から出ると、クーは今朝とは見違えるぐらい綺麗になった。
白髪は日光を反射して煌めき、顔はその溌剌とした表情がよく見えるようになり、体はロリ特有の綺麗なぷに肌を取り戻し、右手の爪はよく研がれた包丁のように鋭く黒光りしている。こわい。
さて。私はぱっぱと自身の髪と体を拭いて服を着直す。
隣を見るとクーは私の真似をし、左手のみで頑張って髪を拭こうとしてた。苦笑しながらクーの髪、ついでに右手も拭いてやって───あ。
クーの服のこと、お風呂入ってる間に考えようと思ってたけど忘れてた♡
え、どうしよ。
「おねーちゃん? どうしたの?」
「え、あいや、ちょっと待ってね」
右手を拭き終え固まる私を疑問に思ったのか、クーが不思議そうな顔をして首を傾げているが私の心中はそれどころじゃない。
私という人間が、人としてかなりダメな部類であることは自覚しているが、それでもクーをこのまま裸のまま過ごさせるのはライン超えだろと、小さな良心が責め立ててくる。
ちなみに私は膝立ち、クーにはT字ポーズさせて拭いてる都合上、素っ裸のクーの胸を凝視しながら固まっているがそこに私の良心は動かない。
まず右手が通れば普通の服は着れるっちゃ着れる。つまり袖口とかがめっちゃでかいタイプであれば平気なんだ。
……いやないけど。だからって思い当たるもんないけどさ! ……水着! 水着ってビキニタイプだったらクーの腕通るはず───水着の、ロリを、連れ歩くのか? 私が? ……えぇ。
「? クーの体、おねーちゃんも食べたいの?」
「いや私はクーと違って人食べたら感染間違いナシだから違う」
じーっと体を見てるからかクーがそう尋ねてくる。えっちでえっちじゃない事いうの止めてください。しかも「も」って。その言い方だとやっぱり私の体まだ食いたいんじゃねぇか。
マントはどうだ? あれなら首で留める感じだから右手はネックにはならない。……裸マントって、露出魔じゃね? 私がそれをさせるの? ……いや、他にいいのなかったらさせるけど。ビキニ着せた後マントさせたらまだましでは?
………………あぁもう面倒になってきた。もうそれでいいや。どうせこの世にゃPTAも警察もいない。倫理観なんて邪魔でしかないんだ。最低限の倫理(私を食べない)は欲しいけど。
私はそこらに転がっていたキャリーケースから服を引っ張り出す。
ふふっ、これ見てるお前ら、「水着でいいやって言っても、そう都合よく水着とか見つからんだろ」って思うだろ。入ってるんだなぁ、これが。何せ舞台がアメリカだから、運営が勝手なイメージでキャリーケースにビキニを突っ込んでるんだ。いつぞやの公式動画の裏設定を語るコーナーで喋ったのを覚えてる。
と、いうことで。クーにはビキニを着せれる。
下は黒のデニムパンツで靴は青基調のスニーカー。そして上は赤いビキニに、左側は腰まで右側は丁度胸の位置までしか長さがないブラウンのマント。……まぁ水着で隠してるんだしいいでしょ。
「わー! くーも服もきれいになった! ありがとね、おねーちゃん!」
「ええんやで(くーのためというか私のためってのが大半なんだけどまぁ言わないほうがいいよね故の解答)」
クーは嬉しそうにマントをはためかせながらぴょんぴょんと飛び始めた。はっはっはっ、やっぱり恰好が凄い犯罪臭する……。悪い野良NPCとかに見られるぐらいだったら、ぶち殺してクーのご飯にすればいいだけだけど、良い野良NPCとかに変な目で見られたり、後々合流したいと思ってるフレとかに「お前の趣味こんなんかよ笑」とかイジられるのはやだな……やっぱ新しい服は探しとこう。クーの服、募集中です!*1
「ま、そこらへんは運転しながら考えるかー。クー、私は車取って来るね。しばらくじっとしなくちゃで辛いだろうからまだそこで遊んでていいよ」
「はーい!」
余ったタオルを脇に抱えてクーに一声。クーが車酔いするタイプじゃなきゃいいんだけどなー。
クー、最初はぶってくるとかそういう年齢相応の単語で言わせようと思ったけど、研究所監禁時代は研究員に「言うこと聞かねぇなら殴っとけ」とかそういうの聞いて育ってるし殴るでええか。となった。