ゾンビゲー転生サバイバル百合モノ   作:バルロjp

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24/5/14


餌やり

「あ」

「どうしたの? おねーちゃん」

 

あの後、見つけたゾンビを交互に処理していきながら、駐車したところから真反対の『町』の入口まで来たところで私はそれを見つけた。

 

荒野に広がる一面の茶色な地面。それ以外の色と言えば、暗くなってきた空の色と所々に生える木の色くらいだ。

それが荒廃したこの世界では普通の光景なのだが今回は違った。

 

「ほれクー、こっちきて見てみ」

「なになに? ……わっ、どう、ろ? 道だー」

 

そう、道。コンクリートで舗装されてるわけではないものの横3mほどの色違いの地面が、ずぅっと長く伸びていた。

 

「これって、どこかにつながってるのかな? この道の上をあるいていけば、なにかあるの?」

 

私に呼ばれて隣に来たクーは背伸びをして遠くを見ようとしていた。頭相応の行動で可愛らしいけど、暗くなってきたし若干砂煙あるしでそんな先は見えないと思うよ。

 

「あるよ。あるというか、この道を辿っていけば目的地の『都会』に着く。朝になったら使おうか」

 

道は『町』から『都会』をつなぐルートだ。具体的には30%の確率で生成される。道だけを見つけてもとりあえずどっちかに『都会』があるのが確定されるので、プレイヤーのお供である。

ま、できれば陽が落ちる前に見つけておきたかったが……『都会』に夜になるタイミングで入りたくはないし、そもそも見つかっただけ御の字か。これで明日には『都会』入りが確定したわけだし。

 

「うむうむ、これまた嬉しい誤算だ。……ま、ともあれまずは今夜の宿を確保しますか。次は向こう側を見るよ、クー」

「わかった!」

 

 

一時拠点にするならやっぱりガソスタ。燃料の補充もできるし裏口がある建物はそれだけでやりやすいんだよねー。や、民家も裏口とかあるタイプは生成されるけど、民家は複数パターンあるのに対しガソスタって2パターンしか生成ないからさ。安定した方法が確立されてるんだよ。

 

ちゃっちゃっと燃えるものを集め、ガソスタに置いてあったガソリン撒いてファイヤー。ここらへんはゲームでもよくやっていたことだから手慣れたものだ。

 

ちなみにクーはというと、「あっちからいやな匂いがするー」とか言って民家に不法侵入を繰り返しにいった。

家の中にいるゾンビなんて大きな音立てなきゃ来ないし、全部の民家見回るなんて面倒だからパスしようと思ってたんだけど、クーは犬タイプだからその嗅覚で位置を把握できるらしい。

普通に私の『気配察知』より範囲でかいし……これはゲーム内ではなかった能力だった。やはりゲームとリアルじゃ多少の差異はでるか。

 

さっきの戦闘を見て、もうここらだったら好きにしてくれって感じの戦闘能力なのはわかっているので私は「なんかよさそうなのあったら持ってきて」とだけ伝えクーは送り出した。どうせここにいても何かできるわけじゃないし……。

 

「ふむ、ガソスタ内に結構いい食料あったな」

 

クーが帰って来るまでにまだ余裕がありそうだったので、ゾンビから貰った(剥いだ)プラスウォッチを弄る前にガソスタ内部に入ったところ、割といい食料がドロップしていた。

 

具体的にはツナ缶に鳥缶に乾燥トマト、ドックフード。

 

おい最後と思わない事もないが、これは普通に私も食べる予定なので大丈夫だ。断じてクーに食べさせようと思ってドックフードを取ったわけじゃない。確かにあの子犬っぽいけど、というか2割ぐらい犬なんだけど、それが理由ではないです、はい。

 

「うぅむ……いや、もう今日使っちゃうか。エネルギーバーほど持つワケじゃないし」

 

ドックフードは優秀な食糧だ。

まず早々腐らない。3ヶ月はもってくれる。そして量も腹持ちもとてもよい。これで生成率が高く、とある問題がなければ絶対にtier1に入る食糧だっただろう。

 

けどなぁ……。

 

「私に料理の才能はないんだよねぇ……」

 

才能。つまりスキル。リアルの私も料理ができなかったので、もちろんこのドックフードを調理するには料理スキルが必要となる。ドックフードを調理するってなんだよ。

 

読者の皆はもちろんドックフードを食べた事があるので知っていると思うが、ドックフードってのは匂いに反してとにかく味が無い。ちなみにこれはキャットフードも同じ。

それの再現なのかドックフードは調理しない状態だと、満腹度こそ高く回復してくれるが、精神力が落ちる。それはもう、ゾンビに一回攻撃受けたぐらいがくっと。

 

PC前に座ってた時は自キャラ(カルシア)にお前ゾンビ見ても精神力落ちねーくせにドックフード食った程度で精神力減らしてんじゃねーぞと文句を言っていたが、試しに久々にドックフードを一個食べてみると「あぁ……」ってなったので文句は撤回することにした。これは精神力減るわ。

なんでこんな芳醇な匂いしてるのに、こんな味なくてもそもそしてるんだろう。ほんとわかんない。

 

まともかく、こんなのがドックフードという食糧なので、精神力が落ちないようにしっかりとした味付けを行う必要がある。だから、料理スキル必要となるんですね。

 

「えー、けどなぁ。流石にドックフードのためだけに料理スキル取りたくないもんなぁ……」

 

料理スキル。料理をするためのスキル。これいる? 戦闘に一切関係無いよ? レーションとか缶詰で良くない?

 

「そーなんだけどなぁ、クーもいるしなぁ……」

 

クー。私が面倒を見ると決めた……というより便利だから手放したくない子。今の懐き度からして、ご飯がマズいからといってばいばいとはならないだろうけど、『食人癖』を私に発動させてきそうで怖いんだよなぁ……。

 

私一人だったら、食料調達も生産も安定するまで妥協できるんだけど……クーはそこらへんわかんないしなぁ。

 

ううううう……。

 

口を曲げ眉を顰め腕を組み、私は天を向いて考える。光溢れる都会と違ってキャンプファイヤーしか光源がない今、空には無数に輝く綺麗な星々が見える。

気温は丁度よく、涼しい風が吹き、目の前のキャンプファイヤーはぱちぱちと時折火花を散らす。少し遠くからはたまに破壊音が聞こえ、クーが元気にやっていることがわかる。

私の悩みなど知らず、嗅覚を活かしてまだゾンビ狩りしてるのだろう。夕飯の献立に悩む母親の気持ちってのはこんなものなのだろうか。

 

……あああああ! もう知らん! 要は精神力が減らない程度に食えるもんになってればいいんだ! 幸い予定外に手に入ったから消費しちゃっても構わない食料があるんだから!

 

私は鍋に水を張った後、野草とドックフードとツナ缶と乾燥トマトを全て鍋にぶち込んだ。

 

 

「ただいまー! ちょっと遅くなっちゃった、ごめんなさい」

「おかえり。丁度ご飯できたとこだよ」

 

()()()も終えて皿に盛った……ドックフード雑炊(?)を混ぜ終わったところでタイミングよくクーが帰ってきた。

 

皿から視線を外しクーを見ると、案の定ケガもなくピンピンしていた。揮発性が高いのか布か何かで拭ってきたのか、体はもちろん右腕にも血や肉片一つついていない。

左手には出会った時持っていたような肩さげタイプのカバンを持っており、恐らく私のお願いを律儀に守って使えそうなものを取ってきてくれたのだろう。

……そういえばクーが最初に持っていたカバン、後部座席にいつのまにか積まれてたけど、中身なんなんだろ。「クーのお友達!」って生首出てくるパターンとかだけは止めて欲しいぞ。異臭はしないからそれはないだろうけど。

 

クーはそのまま私の隣に座りこみ「これ、使えそうなの!」とカバンを渡そうとしてきた。が、そのまま左手を伸ばした体勢で固まって、鼻をすんすんと鳴らしはじめた。

 

「どったの?」

「ん、いや……おねーちゃん、ケガした?」

 

とりあえず固まったクーからカバンを受け取りながら訊ねると、クーがじっと私を見ながらそんな質問。流石にクーの嗅覚は鋭いな。

けどあくまでも私の体への言及。犬系ということも相まって、ドックフードでの誤魔化しはうまくいけそうだ。

 

「あー、料理中にちょっとね。大したことないから大丈夫だよ。もう消毒液ぶっかけて処置したし」

「そうなの? なら、よかった」

 

クーはそれで納得してくれたらしく素直に引き下がってくれる。ほんと人を疑うって事を知らないなこの子。消毒液で処置したってのも本当だしね。私もシンナー系統の匂い感じるもん。逆に言えばその匂いを突破して私の血の匂いをクーは嗅ぎつけたって事だけど。

 

「それじゃ、ご飯にしようか。はいクーの分。……あぁ、スプーンの使い方ってわかる?」

「ありがとう! スプーン……これ? これの使い方ならわかるよ!」

「ならおk。いただきまーす」

 

クーがスプーンを使えるか一応確認して食事開始。昨夜はサンドイッチで今日の朝昼は食器を使わないエネルギーバー。実験体暮らしだったクーが使えるか一応の確認をね。

 

作ったドックフード雑炊を口に運びながら、視界の端に映るクーを観察する。クーは私の真似をして「いただきまーす!」と手を合わせているところだった。

 

私の方は何の変哲もないドックフード雑炊だ。水でふやかされたドックフードにトマトが染み込み赤くなり、そこに所々ツナと野草が混じっている。

ドックフード雑炊が何の変哲もない……? 私二日目にしてこの世界に馴染み過ぎか?

 

しかし、クーの方は違う。クーの雑炊には、それらに加えて私の血がそれなりに入っている。理由はもちろん、クーの『食人癖』がどういった性質なのかを見極めるため。適当に腕を切り、100CCぐらいを混ぜ入れた。

 

もちろん、私から取れる分だけじゃ『食人癖』の暴走を抑えるのは難しいので、その内ゾンビやらNPCやらを食わせる気ではいるが……それでも、私を食べた時のクーの反応は見ておきたい。直接コップに入れて渡しても良かったけど、今回はリスク管理で生産者不明で。

 

もし私の血肉がクーにとって好物に分類されるならば、今後ご褒美というニンジン棒で操作するのがやりやすくなる。

 

果たしてクーの反応は……。

 

あーんと口を開いたクーが、スプーンいっぱいにすくった雑炊を口に入れぱくんと閉じる。スプーン引き抜いて、もぐっと口を動かして……急に電撃が走ったようにぴしっと俊敏に背筋を伸ばし目をかっぴらいた。

そのまま三秒くらい固まったと思ったら、ごきゅんと私に聞こえるほど大きく喉を鳴らして呑み込んだ。お前今ちゃんと噛んだ?

 

「お、お、お……!」

「おいしい?」

「うまいっっっ!!!!!」

「おはなんだったんだよ」

 

そして大声で叫んだ。立ち上がって、天を向いて。全力のオーバーリアクションだった。

 

「おいしいっ! おいしいよこれっおねーちゃん! なんていうのこれ!」

「ドックフード」

「くードックフードだい好きっ!!!」

 

やべぇ。想像以上にクーの好物になってしまった。




私はキャットフードしか食べた事がありません。

精神力…要はSAN値
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